2023年6月30日

M&Aとは?目的や流れ、メリット・デメリットについて解説

MABPマガジン編集部

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M&Aとは?目的や流れ、メリット・デメリットについて解説

M&Aとは、簡単にいうと企業の合併と買収のことを指します。

合併や買収といっても手法はさまざまであり、企業の状況によって最適なM&Aの実行方法も異なります。

M&Aを検討している人の中には、M&Aを行うことによる効果や、M&A成功のためのポイントなどが気になる人も多いでしょう。

この記事では、M&Aの概要や種類、メリット・デメリット、流れ、仲介業者の選び方などを詳しく解説していきます。

目次

M&Aとは

M&A(エムアンドエー)とは「Mergers(合併)and Acquisitions(買収)」の略称です。

M&Aは「企業の合併・買収」のことであり、2つ以上の企業が一つになったり、ある企業がほかの企業を買収したりする「企業または経営権の取得」の意味をしています。

企業の買収や事業譲渡、合併による経営権取得、出資や業務提携などがM&Aに含まれます。

従来、M&Aには敵対的買収や外資系企業による乗っ取りなどのマイナスイメージがありました。しかし、近年は企業の成長戦略の手段として検討されています。

M&Aを実施することで、売り手と買い手が抱える経営に関するさまざまな課題を効率よく解決できるため、主に中小企業で実施されることが多い傾向にあります。

経営課題を抱える企業は業界問わず数多く存在しているため、今後もM&Aの需要は伸びていくものと考えられるでしょう。

関連記事:M&Aとは?概要や流れ、メリットなどについて徹底解説

M&Aのスキーム(種類)

M&Aのスキームは大きくわけて「買収」と「合併」の2種類があります。

M&Aには狭義と広義の意味合いがあり、企業買収や合併といった株式・経営権の移動を伴うM&Aは狭義のM&Aです。一方で広義のM&Aは、狭義のM&Aに加え、業務や資本の協力といった株式・資本の移動を伴わない「提携」を含めたものも指します。

M&Aのスキーム概要としては以下のような分類となります。

 

買収とは

買収は、株式の取得または事業の取得を通して、売り手側の経営権や事業を譲り受けることです。

買収の手法は大きく「株式取得」「事業譲渡」「会社分割」に分けられ、株式取得と会社分割についてはさらに細かく分類されます。

それぞれの買収手法の意味については以下の表の通りです。

株式譲渡売り手企業の株主が所有する株式を、対価と引き換えに買い手企業へ譲渡する手法
株式交換子会社となる企業が保有しているすべての株式を、親会社となる企業に取得させる手法
株式移転既に存在している企業のすべての株式を、企業に取得させる手法
事業譲渡企業が所有している事業のすべて、または一部をほかの企業に譲渡する手法
吸収分割特定の事業に関して保有している権利義務の一部を分割し、対価と引き換えにほかの企業へ移転する手法
新設分割特定の事業に関して保有している権利義務の一部を新たに設立する企業に継承し、設立された企業の株式を取得する手法

 関連記事:事業譲渡と会社分割の違いとは?それぞれのメリットやデメリットについて

合併とは

合併とは、複数の企業を一つの企業に統合させるM&Aの手法の一つです。

合併の手法には「吸収合併」と「新設合併」の2種類があります。

吸収合併は、解散する企業の権利・義務のすべてを、存続する企業が吸収して承継する手法です。解散する企業が保有していた事業の許認可や免許などを包括的に承継できるため、承継すべき権利・義務が多数ある場合などにメリットがあります。

一方で新設合併は、合併の対象となるすべての企業が解散し、新たに設立する企業へすべての権利義務を承継させる手法です。

新設合併は、お互いに対等な立場でのM&Aという印象を持たれやすく、社内の従業員も対等なM&Aである認識を持つため、不満やモチベーションの低下が起こりにくいメリットがあります。

 関連記事:吸収合併とはなに?メリットやデメリット、手続きの流れについて

提携とは

提携とは、2社以上の企業が業務または資本面で協力することを指します。

企業の株式や経営権を取得するといった目的がないため、狭義のM&Aには含まれません。

しかし、業務・資本面で強い協力関係を構築できれば、買収・合併と同じようなシナジー効果が得られるため、広義のM&Aとして考えられる場合があります。また、提携には業務提携と資本提携の2種類があります。

業務提携とは、複数の企業が業務上の協力関係を持つことです。業務提携を行うことで、お互いの技術やノウハウを共有するため事業成長が期待できます。

資本提携とは、一方の企業が提携先企業の株式を取得、または双方の企業が株式を持ち寄り、業務面・資金面で協力し合い、業務提携の関係性をより強化する方法のことです。

【売り手側】M&Aの目的

売り手側企業がM&Aを行う目的はさまざまですが、ここでは代表的な3つの目的について具体的に解説していきます。

 

事業継承問題を解決する目的

「事業を受け継ぐ後継者がいない」といった理由から、事業承継が難しく、廃業を検討するケースがあります。

しかし、今まで働いていた従業員の生活や取引先との関係、廃業によるコストを考えると、廃業に踏み切れないこともあるでしょう。

このような後継者不足による事業継承問題を解決することを目的とし、M&Aが活用されています。

第三者に経営権や事業を譲り渡すことで事業承継が可能となり、従業員の雇用を守ることにもつながるため、M&Aは事業承継問題を解決する有効な手段の一つといえます。

 

創業者利益を得る目的

新規事業や経営をリタイアしたあとの生活のための資金調達を目的として、M&Aにより企業や事業を売却するケースもあります。

企業の規模にもよりますが、M&Aにより企業や事業を売却した場合、数百万円~数千万円もの利益の授受が可能です。

M&Aで創業者利益を得ることができれば、新規事業を立ち上げる際に融資資金の調達をせずに、創業者利益をそのまま事業資金として利用できます。

創業者利益を使って早期リタイアを選択する経営者も少なくありません。しばらく生活に困らない額のまとまった資金が手に入り、仕事の重圧からも解放されるため、余暇の時間の確保や、ストレスフリーな健康的な生活が得られます。

 

債務保証から解放される目的

中小企業では、経営者が事業資金を確保するために、不動産のような個人資産を債務保証として金融機関に提供しているケースがあります。債務保証は事業資金の調達のために必要です。

しかし、事業失敗による債務のリスクを恐れて、新規事業への参入や事業承継に踏み込めない企業もあるでしょう。こういった債務保証による問題からの解放を目的として、M&Aを利用するケースもあります。

M&Aにより他社に企業や事業を売却した場合、売り手側のすべての資産・負債を引き継ぐ形になるため、債務保証も買い手側に引き継ぐことが可能です。そのため、売り手側は債務保証から解放され、将来発生する可能性のある債務リスクを回避できます。

また、M&Aには売却益の獲得というメリットもあるため、債務保証を気にすることなく、新規事業参入への資金として充てることも可能です。

 

【買い手側】M&Aの目的

次に、買い手側にとってのM&Aの目的について解説していきます。

 

新たな市場に参入する目的

新たな市場への参入を検討している企業が、参入する時間の短縮やコストの削減を目的としてM&Aを実施するケースが多くみられます。

これまでに経験のない新しい市場に参入する際は、人材や資金、技術の習得など多大なリソースが必要です。これらを自社内で一から調達するには相当な時間とコストを要します。

しかし、M&Aによってその市場で実績を積んでいる企業を買収できれば、市場の知識に精通している新たな人材や技術などを獲得することが可能です。そのため、新規事業の参入における時間やコストを大幅に削減できます。

 

事業を拡大する目的

さらなる利益を追求するため、事業拡大を目的としたM&Aが行われるケースもあります。事業拡大において、人材の確保や体制を構築する必要があります。

また、新たな分野へ新規参入する場合は、ブランド力を一から継続的に高めることが必要です。これらを実現するためには、多くの時間やコストがかかります。

しかし、買収先の企業が拡大予定の分野において一定の知名度を持っている場合、そのブランド力を活用して参入が難しかった市場に乗り出しやすくなります。そのため、事業のスムーズな拡大が実現できるでしょう。

 

人材を獲得し技術力向上を図る目的

M&Aにより企業を買収することで売り手側の優秀な人材を確保でき、技術力の向上を図れるメリットがあります。

特定の事業や商品に関するノウハウを持っている人材をM&Aにより確保できれば、事業内容やサービスの質の向上につながります。

獲得した人材のノウハウを自社内に引き継いでいけば全体的な技術力の向上にもつながり、さらなる企業の発展にも期待できるでしょう。

また、売り手企業に高いブランド力や知名度がある場合、それを活用してさらに優秀な人材を獲得するきっかけになる可能性もあります。

 

リスクを分散する目的

M&Aを行うことで、自社の事業内容を多角化でき、失敗するリスクを軽減できます。

特定の事業に偏った経営を行っていると、その事業が失敗してしまった場合に経営が傾きかねません。

とはいえ、自社で新規事業を一から立ち上げて進める場合には時間やコストがかかるうえ、成功するかの見通しもないなかで進めるため、常にリスクがついて回ります。

しかしM&Aを活用すれば、既にビジネスとして確立している事業を獲得できます。

さらに企業を支える事業が増えることにもなるので、片方が失敗した場合のリスクを分散できるでしょう。

【売り手側の企業】M&Aの流れ・手順

 

M&Aを実行する際の流れは以下のようになります。

 M&Aを実行する際の流れ

ここからは、売り手側企業がM&Aを行っていくうえでの各プロセスの内容と注意点について解説していきます。

 

準備

M&Aを行ううえでの最初のプロセスは「準備」です。

準備では以下のような対応を行います。

 

M&Aの検討

まずは、「M&Aが自社にとって最適かどうか」を検討することから始めましょう。場合によってはM&A以外の方法を検討することも重要です。

併せてM&Aの目的や条件も検討しておきます。例えば、「M&Aによって事業拡大を実現したい」といった、具体的な目的を検討段階で明確にすることが大切です。

 

自社の経営状況や純資産の洗い出し

M&Aを行う前に、自社の経営状況やM&Aの交渉材料となる「自社で所有している特許技術やノウハウ」といった純資産を洗い出しておきましょう。

これらの洗い出しを行うことで、M&Aの交渉がスムーズに進む可能性が高くなります。

 

M&Aの仲介業者を選ぶ

M&Aの目的や自社の経営状況の洗い出しを行ったあとは、M&Aの仲介業者を選びます。

M&Aのプロセスは長期間にわたるため、自社の内情に寄り添ってくれる信頼できる仲介業者を見つけましょう。

 

交渉

M&Aの準備が完了したら交渉へと移っていきます。

交渉では、主に以下のような対応が発生します。

 

ノンネームシートや企業概要書の作成

ノンネームシートは企業が特定されない範囲の情報をまとめたものです。主に売り手企業を買い手企業に紹介する際に使用されるもので、一般的に会社概要や財務状況などを記載します。

ノンネームシートに関心を持った企業に対して、より詳細な企業概要や財務状況、自社の強みを洗い出した企業概要書を作成します。

企業概要書をもとに買い手企業がM&Aを進めるかどうかを判断するため、買収におけるメリットを最大限伝えることが大切です。

 

M&Aの種類を決める

M&Aにも株式譲渡や合併、会社分割などさまざまな種類があるため、M&Aの目的に沿ったスキームの選択が重要です。

それぞれのM&Aのスキームで得られる効果に違いがあるため、間違ったスキームを選ぶとM&A後に影響が発生します。どのスキームが一番効果的かを十分に検討したうえで選択することが大切です。

 

トップ面談の実施

M&Aの候補先が2~3社ほどに絞られたタイミングで「トップ面談」を行います。

トップ面談は、売り手と買い手の企業同士の経営者が直接顔を合わせ、互いのビジネスや経営ビジョン、売却後の運用方針など、お互いの理解を深める場です。

互いのビジネスに関する疑問点や、伝え漏れていた情報などがあればこの場で伝えます。

 

M&A基本合意書の締結

トップ面談後に買い手からの条件提示を受けて、売り手側が同意したのちに基本合意書を締結します。

基本同意書にはM&Aの条件や契約の有効期限、契約解除の条件などが記載されています。

これは仮契約のようなものであり、M&A成立の確約を得るものではありません。しかし、基本同意書を締結した時点で独占的交渉権が付与されるため、売り手側は第三者とのM&A交渉が一定期間禁止されます。

基本合意書の締結後は、法務や税務上の問題がないか「デューデリジェンス」と呼ばれる企業調査を買い手側が売り手側の企業に対して実施します。

 

契約

基本合意書の事項とデューデリジェンスの結果を鑑みて最終的なM&Aの契約を進めます。

 

M&Aの最終契約締結

最終契約により、M&Aにおける最終的な合意内容が締結されます。

基本合意書の内容をもとにして作成されることが多いため、最終合意前に入念な確認が必要です。

 

クロージング

クロージングにて、最終契約に基づきM&Aの取引が実行されます。

これを行うことでM&Aの取引が完了し、経営権の移転や売却益の支払いが発生します。

関連記事:M&Aにおけるクロージングとは?手続きや流れ、書類をわかりやすく紹介

 

事後処理

クロージングにてM&Aが完了したあとは、事後処理を行います。

例えば、新体制に伴う臨時株主総会の開催や、経営者が変わる場合には取締役会の実施などが挙げられます。

【売り手側】M&Aを行うメリット

ここではM&Aにおける売り手側のメリットについて解説します。

 

従業員の雇用が安定する

M&Aは、事業売却による利益を得られるだけではなく、従業員の雇用が安定するというメリットがあります。

M&Aでは多くのケースで、買い手側の企業に対して「従業員の雇用を維持すること」を条件として提示します。従業員の雇用を守ることは経営者にとって重要な役割の一つです。

廃業を選択した場合、従業員は職を失うことになり、再就職も難しいといったケースもあるでしょう。しかし、M&Aによって、事業を継続する状況を整えることができれば、経営者が引退した後も従業員の雇用が安定します。

また、買い手企業が大企業の場合、労働条件がよりよいものになる可能性があります。

さらに、買収した側の規模が大きい場合は従業員の仕事内容やキャリアの幅も広がるため、新たな業種にチャレンジでき、新たなスキルを身に着けることができるでしょう。

 

独自の技術や知識などが継承される

技術やノウハウを継承できる点もM&Aのメリットの一つです。

廃業を選択してしまった場合、これまで積み上げてきた独自の技術やノウハウを次世代へ継承できません。技術の継承が途絶えてしまうことは、企業の損失だけではなく、その技術で社会に貢献することも叶わなくなってしまいます。

M&Aを行うことで、長年磨いてきた技術や蓄積してきたノウハウを買い手側の企業に引き継ぐことが可能です。技術の価値を理解した企業に継承することで、さらなる価値を社会に向けて届けてくれるでしょう。

 

個人保証人を解除できる

中小企業が金融機関から融資を受ける際に、経営者個人が借入時の債務を返済する保証人となっている場合があります。

この個人保証人が足かせとなり、新たな事業への参入や早期リタイアに踏み切れない経営者も少なくありません。

M&Aを行うことで、資産の売却と同時に個人保証や借入時の負債を買い手側の企業が肩代わりします。

これにより売り手側の企業は個人保証や債務返済から解放されるため、M&Aによって得た売却益を元手に新規事業に挑戦できます。

もしくは、M&Aをきっかけに経営から退いて、安定した生活を送ることも可能です。

 

【買い手側】M&Aを行うメリット

次に買い手側のM&Aにおけるメリットを解説していきます。

 

技術や知識を獲得できる

M&Aにより技術や知識を獲得できることは、買い手側の企業の大きなメリットといえます。

企業が新しい市場に参入するためには、それらに対応する知識や技術の取得が必要不可欠です。しかし、一から自社で新規参入のための準備を行うとなると、競合より優れた技術・ノウハウを取得するためのコストや時間がかかります。

M&Aを行うことで既に新しい分野や市場に精通している企業を買収できるため、時間やコストをかけることなく、関連する特殊な技術・ノウハウなどを獲得できます。

 

優秀な人材を獲得できる

優秀な人材を確保することはM&Aを行うメリットです。

日本は人口の減少や少子高齢化などの影響で労働人口が年々減少している傾向にあります。そのなかで優秀な人材を確保することは、企業成長のために重要なことです。

特に建設業や調査委薬局、病院といった業界では、スキルと資格を持っている人材の確保が業績や事業規模の拡大に欠かせません。新卒や中途採用で人材を確保できたとしても資格取得やスキルの育成に長い時間が必要です。

しかしM&Aを行うことで、有資格者や専門的なスキルを持っている優秀な人材を獲得できるため、時間やコストをかけずに企業の即戦力として迎えられるでしょう。

 

事業エリアが広がる

M&Aによって企業を買収することで、今まで進出できなかった事業や地域への参入が可能です。

新たな地域に進出しようとした場合、その地域の競合の調査やマーケット調査、地域の特色や文化などを把握するために時間とコストがかかります。

既に特定地域におけるブランド力や実績を持っている企業を傘下として買収することで、買収先企業のブランド力を利用して、スムーズに事業エリアを拡大できます。

またM&Aによって、新たな事業を取得できるため、多角的な事業展開が可能になるメリットがあります。

事業を取得するだけではなく、メインの事業に生かせるようなシナジー効果を生むことができれば、既存事業と新規事業の双方の売上向上が期待できるでしょう。

【売り手側・買い手側】M&Aを行うデメリット

M&Aにはメリットも多くありますが、一方でデメリットも存在します。

ここからは売り手側と買い手側に分けてM&Aにおけるデメリットを解説していきます。

 

売り手側のデメリット

売り手側のデメリットは以下の通りです。

 

従業員の労働環境が悪化する可能性がある

M&Aを実行すると、買収元企業の従業員は買収先企業に引き継がれます。

しかし労働条件や待遇は買収先企業のものが適用される場合があり、従業員の労働環境が前よりも悪くなるという可能性があります。

労働条件が前よりも悪化してしまうと従業員のモチベーションが低下し、離職する人がいるかもしれません。

このような事態を避けるためにも、従業員に向けてM&Aについての説明や、労働条件を考慮したうえで交渉を行うことが重要です。

 

既存の顧客や取引先との関係性が悪化する可能性がある

M&Aを実施することで今まで関わってきた顧客や取引先からの反発を買うケースもあります。

M&Aにより経営母体が変わることで、契約条件や取引担当の変更などの見直しが発生します。これにより、既存の顧客や取引先から反感を買い、今後の取引を打ち切られてしまう可能性がります。

このようなデメリットを軽減するためには、事前に既存の顧客や取引先に十分な説明を行うことが大切です。

 

買い手先企業とのミスマッチが起こる可能性がある

企業にはそれぞれ特有の文化や社風が存在するでしょう。

M&Aによる企業統合後にお互いの文化や考え方のずれが大きくなった場合、社内の人間関係の悪化、社内システムの統廃合、人事制度の一新などの負担がかかる可能性があります。

そのため、M&Aを行う前に両社の企業文化にどのような違いがあるかを把握したうえで、それが受け入れられるものなのか考えることが大切です。

 

買い手側のデメリット

買い手側のデメリットは以下の通りです。

 

短期間ではシナジー効果が表れにくい

M&Aは検討から成約まで長い時間をかけて実行されます。そのうえ、社風やビジネスにおける考え方の違う企業同士が、M&A後にすぐに協力して効果を発揮することは稀です。

企業文化の統一化や企業で利用しているシステム、評価制度の統合などを実施し、両社の協力体制を徐々に整えていかなければなりません。

そのため、シナジー効果を得るためには長期的に取り組む必要があります。

関連記事:M&Aにおけるシナジー効果とは?種類や成功事例、フレームワークを紹介

予想よりも収益が上がらない可能性がある

M&Aは事業の拡大や新規事業への参入を通して、収益の拡大を目指しますが、期待通りの結果を得られるとは限りません。

M&Aでは「のれん代」とよばれる、期待するシナジー効果やブランド力などの形ない財産を含めて企業買収を行います。そのため、これらを見誤ると想定した収益がでない可能性も。

のれん代を見誤らないためにもM&Aを行う前に把握し、対処しなければなりません。

関連記事:M&Aの「のれん」とは?基礎知識から計算方法、仕訳、会計処理、注意点について

 

統合後にミスマッチが起こる可能性がある

M&Aの成約後は、売り手側と買い手側の企業の従業員が同じ環境で仕事をします。そのため、意見の衝突や価値観のミスマッチなどが発生する可能性があります。

従業員同士の衝突は企業にとっても不利益であるため、M&A前後には従業員同士の交流の場を設けることが大切です。

従業員同士の相互理解を深めることで、このようなデメリットを回避できる可能性が高まるでしょう。

M&Aにおける企業価値の評価方法

M&Aにおける企業価値評価は、買収企業全体の価値を評価することです。

企業全体の価値とは、企業が所有している資産の価値だけではなく、今後創出する収益力を見込んだ全体的な企業価値を指しています。

企業価値評価で算定された金額をもとにM&A の交渉が行われ、最終的な金額が確定するため、企業価値評価はM&Aを行ううえで重要なプロセスです。

M&Aを行う際の企業価値を評価する代表的なものとして、「ネットアセット・アプローチ」、「マーケット・アプローチ」、「インカム・アプローチ」の三種類があります。

アプローチ評価方法メリットデメリット
ネットアセット・アプローチ対象企業の現在の純資産をもとに評価シンプルで客観的将来の企業価値を加味しにくい
株価の相場を反映できない
マーケット・アプローチ同業の株式市場の相場をもとに評価実際の相場感、トレンドを反映できる・中小企業の多くは上場企業と違いすぎる
インカム・アプローチ対象企業の将来の収益性をもとに評価将来性を見るため、投資判断として最も理論的・評価者の主観性が入る余地が大きいため、算定結果が大きく異なる可能性がある

 

M&A仲介業者を選ぶ際のポイント

M&A仲介業者を選ぶ際のポイント

M&Aを成功に導くためには、一緒に伴走してくれる仲介業者を適切に選ぶことが大切です。

M&Aの仲介業者を選ぶ際に確認するべきポイントについて解説します。

 

仲介型かアドバイザリー型かを選ぶ

仲介業者には「仲介型」「アドバイザリー型」の2種類があります。

仲介型は、買い手側の企業と売り手側の企業のマッチングを行い、スムーズにM&Aの交渉をサポートする業者です。

両社のM&Aにおける要望の妥協点を見出して買収価格などを決定するため、必ずしも利益が最大化するわけではありません。

しかし、双方の利益となるように円滑なマッチングを行ってくれるため、M&Aの交渉がまとまりやすいメリットがあります。

仲介型は、M&Aをスムーズに進めたい人やM&Aの買収先企業を見つけたい人に向いているでしょう。

一方で、アドバイザリー型は利益最大化の支援を行う業者です。契約企業がM&Aで不利にならないように交渉を進め、M&Aの各フェーズに関するアドバイスも行うことで企業価値の向上に貢献します。

アドバイザリー型は自社の利益最大化を優先したかったり、M&Aに不慣れであったりする人におすすめです。

 

企業の規模や業種に合っているかを確認する

M&Aの仲介業者のなかには中小企業を専門に手掛ける業者や、対応エリアが限定的な業者もいます。

そのため、自社の規模や業種に合う案件を取り扱っているのかをあらかじめ確認しておくことが重要です。

なお、M&Aを進めるうえで法律や会計などの専門知識が必要になる場面があります。

そのため、士業関連のサポートを受けられるように、有資格者が業者内にいるか、提携の法律事務所や会計事務所があるのかの確認をしておきましょう。

 

多数の実績があるのかを確認する

仲介業者にM&Aの実績が多数あるのかどうかを確認することも、M&Aの成功に関わる大切なポイントです。

M&Aの実績数や成約数については、各社のホームページに公開されていることが多いため、仲介業者を選ぶ際には入念にチェックしておきましょう。

ほかにも、実際にM&Aを成約した案件の例を確認しておくことで、その仲介業者が得意としている業界を知ることができるため、併せて確認しておくことをおすすめします。

また、実際にM&Aをサポートしてくれる担当者との相性も重要です。相性が悪ければ意見の衝突が発生し、M&Aのスムーズな進行にも支障をきたしてしまう可能性があります。

そのため、ホームページの情報だけで仲介業者を決めてしまうのではなく、実際に担当者と話してみて、信頼できる仲介業者かどうかを判断しましょう。

M&Aの成功事例

ここからは、M&Aベストパートナーズが支援したM&Aの成功事例を2つご紹介します。

 

コンクリート事業で双方満足のM&Aを実現

コンクリートの補修事業を手掛ける株式会社横浜システックは、会社設立から20年で人材不足による業績の停滞が課題となり、M&Aによる株式譲渡を検討し始めました。

「今の会社のよさを生かしながら、さらに高みを目指せる会社を紹介してほしい」という同社の要望を受け、M&Aベストパートナーズのアドバイザーは同社の課題である人材面を解決でき、かつよいところを伸ばしながらシナジー効果が期待できる会社を提案しました。

提案したなかに、生コンクリート事業と不動産事業を展開する企業があり、生コンクリートと親和性のある補修工事を手掛ける横浜システックに興味を持ち、M&Aが実現しました。

その結果、横浜システックは親会社のバックアップのおかげで人材を確保でき、さらなる事業拡大を目指しています。

 

後継者問題や人手不足をM&Aで解消

空気調和設備工事を中心とした建設設備業を営む、株式会社日之出エヤコンは、「事業承継」と「技術者不足」の課題に直面していました。

事業承継を成功させるだけではなく、会社や地域社会の繁栄を切に願っていた同社は、M&Aを検討し始め、建設業に詳しい担当者を有しているM&Aベストパートナーズを仲介業者として選択しました。

さまざまな選択肢と提案がされるなか、ガス・熱・電気供給事業を手掛ける会社を提案されます。

その会社は同社と同じく、地域に根差している会社であり、「愛する地元を維持発展させたい」という同社の思いと通じるものがあり、株式譲渡によるM&Aが成約しました。

その結果、日之出エヤコンは完全子会社としてスタートを切り、譲渡先企業の社員が役員として同社に就任したことで事業承継の問題を解決、人材不足も譲渡先企業と連携しながら進めていくことができました。

まとめ

まとめ

M&Aを行う際には、「なぜM&Aを行うのか?」という目的を明確にし、実際のM&Aの流れやメリット、デメリットを把握することが重要です。

また、M&Aでは仲介業者の選び方が成否をわけるといっても過言ではありません。

M&Aベストパートナーズでは、建設や不動産、医療・ヘルスケアなどの業界に特化した高い専門性を有しているアドバイザーが多数在籍しているため、質の高いサービスを提供させていただきます。

M&Aの進め方に不安がある方はM&Aベストパートナーズにご相談ください。

著者

MABPマガジン編集部

M&Aベストパートナーズ

M&Aベストパートナーズのマガジン編集部です。

M&Aストーリー

M&Aを実施する目的や背景は多岐にわたって存在するため、
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