2024年5月7日

土木のM&A事例や譲渡で注意すべき点|譲渡を検討する際のガイド

MABPマガジン編集部

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道路やトンネル、橋などの建設・メンテナンスを行うためには、土木会社が欠かせない存在です。

土木業界は公共インフラを支える存在といっても過言ではないほど重要な役割を担っていますが、さまざまな経営課題を抱えた土木関係の会社も少なくないでしょう。

会社の生き残りをかけてM&Aを検討している経営者に向けて、会社の売却にあたってはどのような点に注意すべきなのか解説します。

土木業界の現状とM&Aの必要性

はじめに、土木業界は現在どのような課題を抱えているのか、実情を踏まえながらM&Aのニーズが高まっている背景を解説しましょう。

人材不足と高齢化

土木や建築といった分野は、従来から「3K(きつい・汚い・危険)」のイメージが根強く、特に若年層からは敬遠されることが多い業界です。

昨今の求人市場は売り手有利の状況が続いており、労働条件にもよりますが、土木業界を志す人は決して多いとはいえません。

また、仮に人材を採用できたとしても賃金の低さや体力的な問題、将来性などの理由によって退職を選ぶ人も多く、業界全体が慢性的な人手不足に陥っています。

離職者が増えると現場に残るのはミドルからシニア世代であり、作業員の高齢化に頭を悩ませている企業も少なくないでしょう。

後継者不在の深刻化

土木業界で不足しているのは現場で働く職人や作業員ばかりではなく、会社そのものを承継する後継者不足も深刻化しています。

土木会社のなかには地元で長年にわたって事業を展開してきた老舗企業も多いですが、そのような歴史ある企業ですら会社を引き継ぐ人が見つからないというケースが増えているのです。

従来であれば経営者の家族や親族が引き継ぐことが多くありましたが、経験不足であったり、自分の子どもには好きな仕事をさせたいと考える経営者も増えています。

後継者不足は会社の経営に直結する重大な問題でもあることから、経営を立て直したり会社を存続させていくためにM&Aはひとつの選択肢として挙げられます。

公共インフラへの投資縮小の懸念

土木会社にとって道路やトンネル、橋といった公共インフラの工事はメインの事業ともいえます。

しかし、少子化によって社会保険料は年々増大しており、国や地方の財政は悪化の一途を辿っています。

そのような中で公共工事に割ける予算は今後減少していく可能性があり、必ずしも明るい将来が期待できるとはいえない現状があります。

コロナ禍の影響と業界の堅調性

土木業界のポジティブなトピックスとして挙げられるのは、コロナ禍の影響が限定的であったことです。

屋外での作業が多いという特性上、緊急事態宣言下でも安全対策を講じながら工事は継続できたため、売上が大幅に減少するといった事態は防ぐことができました。

また、公共インフラの予算が減少したとしても、道路や橋などは定期的なメンテナンスが必須であり、完全に工事がなくなることはありません。

そのような意味では、土木工事は堅調な事業と考えることもでき、M&Aによってさらなる成長が期待できる業界でもあるのです。

土木業界のM&Aの最新動向

M&Aを成功させ会社を成長軌道に乗せていくためには、業界における最新の動向を知っておく必要もあります。

公共工事の一定数発生と人手不足問題

上記でもご紹介した通り、将来的に公共工事の需要は減っていくとしても、完全にゼロになるわけではありません。

特に日本は自然災害が多いことから、道路の素早い復旧や水害対策などのために土木工事を担う専門業者は欠かせません。

新たに道路を建設したり、トンネルを通したりといった工事は減るとしても、メンテナンスや復旧の工事需要は横ばいで推移していくでしょう。

国や地方の重要なインフラを維持するためにも、土木業界の深刻な人手不足は解決しなければなりません。

中小企業におけるM&Aが増加傾向

土木工事を担っているのは小規模から中規模の会社がほとんどですが、地方の土木会社を中心に後継者不足は深刻化しており廃業の数が増加しています。

しかし、経営者には会社で働く従業員の雇用を守り、顧客にサービスを提供し続けていくためにも、会社をできるだけ長く存続させていく責任があります。

そのための選択肢として、M&Aに踏み切る中小企業も増えています。

土木業界のM&Aによる人材確保と事業規模の拡大

土木業界でM&Aが増えているのは、単に会社を存続させていくだけでなく、さらなる成長につなげ「攻め」の経営に転換するといった目的もあります。

たとえば、長年にわたって地元で経営してきた企業が専門人材の確保や商圏を広げるために、それ以外のエリアで事業を展開している企業とM&Aを行うケースも少なくありません。

また、土木会社同士だけでなく、建設や電気工事など異なる分野の会社と手を組むことでシナジー効果を狙うM&Aもあります。

土木業界でM&Aを行うメリット

土木会社がM&Aを行うことでどのようなメリットがあるのでしょうか。

後継者不在の問題解消

企業にとって特に大きな経営課題である後継者不足はM&Aによって解決できる場合があります。

信頼できる企業と手を組むことによって、譲渡先企業の経営者が責任をもって事業を引き継ぎ、会社を存続させることが可能です。

従業員の雇用維持

会社の存続を第一優先に考えたとしても、現在の経営体制のままでは従業員の雇用を維持できず、事業縮小などによってリストラを検討せざるを得ないこともあるでしょう。

しかし、M&Aによって会社を存続させることにより、資金面での援助などによって経営体制を立て直し、自社で働いている従業員の雇用もそのまま維持できる可能性が高まります。

売却益の獲得

M&Aは従業員だけでなく、経営者にとってもメリットが得られる場合があります。

たとえば、自社の株式を保有している経営者の場合、M&Aによって株式を譲渡することで売却益を得られます。

次の事業を始めるための資金や投資に回すといった使いみちも考えられるでしょう。

買収側とのシナジー効果による成長

経営規模の小さい会社は従業員の数が限られ、運転資金も決して多くないことから売上を倍増することは簡単ではありません。

しかし、M&Aによって会社の規模が拡大すると、譲渡先企業のリソースを活用しながら事業規模を拡大し、売上を伸ばしていける可能性があります。

また、近年では土木業界以外の異業種と手を組みM&Aを行うケースも増えています。

自社が培ってきた土木工事に関するノウハウと、他業種のノウハウを組み合わせることで革新的なビジネスモデルが生まれ、シナジー効果を得られる可能性もあるでしょう。

土木業界でM&Aを成功させるポイント

土木会社のM&Aを成功に導くためには、どういったポイントに注意すべきなのでしょうか。特に押さえておきたい3つのポイントをご紹介します。

適切なマッチングの重要性

土木業界に限ったことではありませんが、M&Aを行う以上、譲渡先企業と譲受企業の双方が明確なビジョンをもち、お互いの必要性を認識できることが大切です。

たとえば、自社の経営規模を拡大したいと考えた場合、他エリアで展開している同じような業種の企業をM&Aの候補先として検討する必要があります。

事前の準備と評価の精度

M&Aにあたっては、企業価値を適切に評価し買収額を決定する必要があります。

評価の精度が低かったり、評価の指標が不明瞭であったりすると交渉が難航し、最悪の場合は決裂する可能性もあるでしょう。

ちなみに、企業価値評価にあたって活用できる数値には以下のようなものがあるため、参考にしてみましょう。

【土木工事業の収益性】

売上高成長率:0.4%

粗利率:20.3%

営業利益率:3.9%

【土木工事業の生産性】

売上高:1,892万円/人

人件費:481万円/人

参考:経営承継支援「土木建設工事業界におけるM&A成功ポイント大公開!

企業文化や企業風土の相互理解

同じ土木業界であっても、その会社によって企業風土や文化は異なります。

従業員によっては、それまで第一線で活躍していたものの、M&Aによって会社の雰囲気や仕事のやり方が変わったことで実力を発揮できず、退職を余儀なくされるといったことも考えられるでしょう。

そのため、M&Aにあたってはそれぞれの企業の文化や風土を互いに理解することが大切です。

土木業界のM&A事例

土木業界においてM&Aに成功した企業としては、どういった事例があるのでしょうか。

合資会社真栄田組

合資会社真栄田組は、沖縄県名護市において土木工事や足場工事などを請け負っている会社です。

設立から55年以上の歴史があり、土木工事を通じて地元に貢献してきました。

しかし、近年では公共事業の縮小によって経営が悪化してきたことから、生き残りをかけてM&Aを検討し始めました。

同じ沖縄県内にある仮設材のリース業を営む鉢嶺総合仮設株式会社と、トップ同士の面談が行われた結果、企業買収という形ではなく35%の株式を譲渡する業務提携が行われることになりました。

地元大手企業と提携できたことで、工事に使用する資材の在庫が潤沢に用意でき、営業力のアップにもつながったといいます。

株式会社横浜システック

株式会社横浜システックは土木工事はもちろんのこと、橋やトンネルといったコンクリート構造物の寿命を延ばすためのコンクリート補修を手掛けている企業です。

2002年に設立された比較的新しい会社ですが、しばらくは売上も順調に伸び盤石な経営が続いていました。

しかし、ここ数年で人手不足が深刻化し、売上が停滞し始めたこともありM&Aを模索し始めます。

いくつかの候補があった中で、生コンクリート事業や不動産事業を柱としている横山産業からの提案を受け入れM&Aに至りました。

お互いにコンクリートに関する事業という共通点はありますが、横浜システックは補修やメンテナンスであるのに対し、横山産業は建設事業のため競合することもありません。

親和性は高いものの、適度な距離感があるため両者の事業はちょうど良いバランスが保たれているといいます。

土木のM&Aについてのまとめ

土木業界は公共事業の減少や人手不足などさまざまな課題を抱えています。

特に後継者不足は業界全体が抱える大きな問題といえますが、M&Aは会社が生き残っていくための具体的な解決策のひとつになり得るでしょう。

M&Aにあたっては、買い手である譲渡先企業と売り手の譲受企業それぞれの目的やビジョンがマッチしていることが重要であり、株式の譲渡や売却にあたって公正な評価や準備も必要です。

成功事例でもご紹介した通り、すべての株式を譲渡する方法以外にも、譲渡の割合を抑えた業務提携などの方法もあるため、M&Aを検討している方はぜひ参考にしてみてください。

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