2023年11月23日

林業における人手不足の実態とは?原因や期待される取り組み、解決策を紹介

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林業における人手不足の実態とは?原因や期待される取り組み、解決策を紹介

住宅や家具など、生活するうえでさまざまな場所に木材が使用されています。

林業は、こうした木材の基になる木の植え付けや育成、伐採などを行ううえで欠かせません。しかし、昨今の林業では、人手不足に頭を抱えている会社も多いのではないでしょうか。

本記事では、林業における人手不足の実態や原因についてお伝えします。

人手不足対策として期待される取り組みや解決策も紹介するため、林業において人手不足に悩んでいる人は、ぜひ参考にしてください。

林業における人手不足の実態

林業における人手不足の実態

さまざまな業種において人手不足が課題となっていますが、林業も例外ではありません。

まずは政府のデータを交えながら、林業における人手不足の実態についてみていきましょう。

 

林業従事者数は減少傾向にある

林野庁より公開されている「一目でわかる林業労働」によると、林業従事者数は昭和55年ごろから減少の一途をたどっています。

昭和55年時点で約14.6万人いた林業従事者数は、令和2年時点だと約4.4万人しかいません。実に約70%もの人材が減少したことになるでしょう。

(引用:林野庁|一目でわかる林業労働(データ編)

これは、10人で業務を回していたチームから、7人が抜けたことを意味しています。このように、林業では従来と比べて多くの人材が減少しており、人手不足が深刻化していることがわかります。

 

有効求人倍率は全産業平均よりも高水準

林野庁より公開されている「林業労働力の確保の促進に関する基本方針の変更について」によると、林業の有効求人倍率は令和2年時点で約2.21倍です。同年における全産業平均が1.01倍であることを考えれば、 林業の有効求人倍率は高水準といえます。

(引用:林野庁|「林業労働力の確保の促進に関する基本方針 」の変更につい

そもそも有効求人倍率 とは、求職者1人あたりの求人数のことです。有効求人倍率が高ければ高いほど、求職者にとっての求人の選択肢は多くなります。言い換えれば、労働力を供給する求職者よりも、人材の需要を抱える企業のほうが多いといえるでしょう。

林業の有効求人倍率に置き換えると、求職者1人あたりに約2.21件の求人が存在することになります。つまり、人材の需要(求人)に対して供給(求職者)は半分にも満たず、多くの林業会社は人手が足りていない状況が窺えます。

林業で人手不足が深刻化している4つの原因

多くの林業会社が人材を求めている一方で、林業従事者数は減少し続けているのが実態です。

なぜ、このように林業で人手不足が深刻化しているのでしょうか。

ここからは、林業で人手不足が深刻化している4つの原因について解説します。

 

原因1:既存人材の高齢化

まず考えられるのは、「既存人材の高齢化」でしょう。

先述した林野庁で公開されている「一目でわかる林業労働」によると、林業従事者全体に占める高齢者(65歳以上)の割合は、令和2年時点で約25%です。 全産業平均を10%近く上回っているため、高齢者率が高いことがわかります。

昨今では、専用の林業機械を使用することが一般的であるものの、デスクワークと比べて体力的な負担は大きいでしょう。既存人材の高齢化が進めば、体力面の不安からリタイアを検討する人が増えることは避けられません。

経験の豊富なベテラン人材が抜けることは、労働力の大きなロスといえます。

 

原因2:新規雇用の難しさ

林業は「新規雇用のハードルが高い」ことも一因と考えられます。

林業は「危険」「力仕事」といったイメージを持たれやすい業界です。そのため、若い人材のなかには敬遠する人が多いでしょう。キャリアが多様化している昨今では、新規雇用は難しいといえます。

実際、先述した林野庁より公開されている「林業労働力の確保の促進に関する基本方針の変更について」によると、林業の災害発生率は他産業の10倍を超えるとされています。

チェーンソーのような機械を用いる伐採作業は災害発生数が多く、求職者から「危険」とイメージされているのも無理はありません。

また同資料によると、林業従事者の平均年収は約340万円です。 全産業平均と比べて100万円近く低い平均年収も、求職者が林業を敬遠する要因といえるでしょう。

 

原因3:若手人材の定着しづらさ

「若手人材が定着しづらい」ことも人手不足の一因と考えられます。

若手人材を雇用できたとしても、数年で辞めてしまうケースが多くあります。これは、前述したような作業の危険性だけではなく、ワークライフバランスの維持が難しい面も関係しているでしょう。

人々の生活に欠かせない林業は、公共事業から大口の発注を受けることもあります。林業会社によっては忙しい時の波が大きく、私生活との両立が難しいケースも考えられるでしょう。

そのため、この原因を解決するには、労働環境や福利厚生などの改善が求められます。

 

原因4:需要と供給のギャップ拡大

「木材の需要と供給のギャップが拡大している」ことも人手不足の大きな原因です。

前述した通り、人材の供給が伸びない林業では、供給できる木材の量にも限界があります。一方で、国内の木材需要は安定して高く、供給とのギャップが大きい状況です。

林野庁より公開されている「木材需給表」によると、国内の木材需要は令和3年までの10年で7,000万~8,000万立方メートルと安定しています。

一方で、同年までの国内における木材供給は、2,000万~3,000万立方メートルほどです。つまり、国内供給だけでは国内需要をまかなえておらず、過半数を輸入に頼っている現実があります。

(引用:林野庁|木材需給表

昨今では、円安の影響で輸入木材が高騰しており、国産木材の需要が高まっています。しかし、需要にあわせて供給を増やそうとすれば、既存人材に対する業務負荷は高くなるでしょう。その結果、人手不足につながっています。

林業の人手不足対策として期待される取り組み

林業の人手不足対策として期待される取り組み

さまざまな原因から、林業の人手不足は深刻化しています。

ここからは、林業の人手不足に対策するために、期待される2つの取り組みについてみていきましょう。

 

スマート林業の推進

林野庁が推進している「スマート林業」は、人手不足の解決策として期待されています。

スマート林業とは、デジタル技術を活用して林業を効率化・自動化する取り組みのことです。例えば、ドローンを用いて森林の状況を把握したり、センサーから取り込んだデータを分析したりできます。森林の管理業務をドローンでカバーできれば、既存人材はほかの業務に注力できるでしょう。

また、危険を伴う作業にデジタル技術で代替できれば、安全性の確保による人材定着率の向上も期待できます。

 

M&Aの実施

林業における人手不足の解決策として、「M&A」を実施する林業会社も増えています。

M&Aとは、合併(Merger)や買収(Acquisition)などにより企業と企業を統合する経営戦略のことです。M&Aは、次のような理由から人手不足の解決につながります。

・他社の人材を取り込める
M&Aによって、人材を含む経営資源を相手企業と統合できます。人的な余力のある企業と統合することで、新規雇用よりも手軽に人材を取り込めるでしょう。

・労働環境の抜本的な改革が可能
M&Aでは、人事制度や福利厚生などを含めた経営の統合が行われます。労働環境の整った買い手企業の傘下に入れば、自社の労働環境を抜本的に改革することも可能です。

・ブランド力の向上により人材が集まりやすくなる
ブランド力の高い買い手企業の傘下に入れば、自社のブランド力の向上も期待できるでしょう。結果として、自社の新規雇用において人材が集まりやすくなる可能性があります。

林業における人手不足の解決策となるM&Aの主なメリット

林業における人手不足の解決策となるM&Aの主なメリット

前述した通り、M&Aは林業の人手不足を解消できるだけでなく、さまざまなメリットを得られます。

林業会社がM&Aを実施する場合の主なメリットは、次の4つです。

 

後継者問題の解決につながる

林業会社の経営者が、親族や従業員のなかから後継者を探す場合、候補が少ないために適任者が見つからないケースがあります。しかし、M&Aであれば社外のさまざまな人材から後継者を探すことが可能です。

幅広い候補者のなかからから適任者を探せるため、後継者問題の解決につながりやすいでしょう。

 

事業の拡大・多角化がしやすい

M&Aを実施する相手企業の選び方次第で、事業の拡大・多角化が可能です。例えば、同業種で地域が異なる会社と統合することで、商圏の拡大を図れます。

また、自社とはまったく異なる業種の会社と統合すれば、新しい分野への参入も容易に行えるでしょう。つまり、ゼロから何かを立ち上げるためのコストや手間を削減することが可能です。

さらに、相手企業の人材だけでなく、ノウハウや取引先など多くの要素を取り込めるため、事業戦略を実現しやすくなります。

 

経営資源を統合して無駄を減らせる

M&Aによって経営資源を統合することで、無駄を減らすことも可能です。

例えば、木材の生産業者・加工業者がM&Aを実施すれば、物流ネットワークが1社に統合されて円滑になる可能性があります。

また、経理や人事などの重複する部門・業務を統合することで、既存人材の業務負担を軽減できるでしょう。M&Aによって無駄が減ればコスト削減だけでなく、余剰人員を新しい事業に活かすことも可能です。

 

経営者が利益を得られる可能性がある

経営者が主体となって相手企業と取引するM&A手法の場合、経営者が利益を得られる可能性があります。

代表例は、株式を譲渡することで売り手企業の経営権を承継する「株式譲渡」です。株式譲渡では、株式の取得に要した金額よりも高額で株式を売却できた場合、差額が経営者の売却益となります。

また、経営者が債務の個人保証を抱えている林業会社も多いでしょう。M&Aの内容によっては、経営者が個人保証から解放される可能性があるのもメリットといえます。

まとめ

まとめ

人材を求めている林業会社は多いものの、林業従事者数は減少し続けているのが実態です。

林業では、既存人材の高齢化や若手人材の定着しづらさなどによって、人手不足が深刻化しています。林業の人手不足を解消するには、スマート林業の推進やM&Aの実施といった取り組みが有効でしょう。

特に、M&Aを実施するメリットは多く、林業会社のなかでも実施ケースが増えています。ただし、M&Aには多くの専門知識が求められるうえに、さまざまなプロセスを長期にわたり進めていかなければなりません。

M&Aを成功させたい場合には、M&Aの専門家からサポートを受けることが確実です。

「M&Aベストパートナーズ」では、M&A・事業継承の豊富な実績があります。自社だけでM&Aを進められるか不安であれば、お気軽にご相談ください。

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