2024年5月8日

ホテルのM&A事例や譲渡で注意すべき点|譲渡を検討する際のガイド

MABPマガジン編集部

M&Aベストパートナーズ

Twitter Facebook

ホテル業界は慢性的な人手不足が続いており、さらに2020年からはコロナ禍をきっかけに観光産業は大きな打撃を受けました。

苦しい経営が続くなかで、事業の立て直しを図っているホテルも多いと思いますが、そのための手段のひとつにM&Aが挙げられます。

経営者にとってはネガティブなイメージがつきもののM&Aですが、中には経営の立て直しに成功した企業も存在します。

本記事では、ホテル業界におけるM&Aの成功事例や、売り手・買い手にとってのメリット、譲渡にあたって注意すべき点をご紹介します。

ホテル業界のM&Aの動向

日本では2013年に年間の訪日外国人旅行者が初の1,000万人を超え、2016年には2,400万人、2019年には3,200万人と推移してきました。

これに伴いホテル業界の市場規模も右肩上がりで拡大してきましたが、企業間の競争も激化し業界再編の波が押し寄せ、近年ではM&Aも活発化しています。

ホテル業界の最新の動向とM&Aの傾向、さらに今後業界はどのように変化していくのかを詳しく解説しましょう。

人材不足

ホテル業界は2010年代半ばからインバウンド需要が高まり、市場規模も右肩上がりを続けてきました。

しかし、それとは対照的に業界全体の人手不足は深刻化しており、人材の定着化が大きな課題となっています。

国土交通省の調査でも、各産業別の入職率・離職率の割合は20%以上に達しており、これは全産業の中で2番目に高い数値となっています。

慢性的な人手不足は重要な経営課題のひとつであり、これを解決するためにもM&Aはひとつの選択肢となるでしょう。

コロナ後の倒産・廃業の状況

2020年に拡大した新型コロナウイルス感染症により、年間の訪日外国人旅行者は一気に400万人にまで減少し、市場も大幅な落ち込みを記録しました。

ホテル業界の年間倒産件数は前年の75件から約1.5倍の118件に達し、かろうじて生き残ったホテルも苦しい経営を余儀なくされました。

また、経営危機を脱するために大手事業者とM&Aによって手を組むケースもあったと想定されます。

業界の課題と展望

ホテルの経営を安定化するためには、多くの旅行客や観光客を取り込むことが何よりも重要です。そこで大きな課題となるのがホテルのブランディングと競争力の向上です。

サービス面の充実はもちろんですが、より多くの人にホテルの名前を知ってもらうことがユーザーを取り込む重要な要素となります。

しかし、経営規模の小さいホテルは広告や宣伝にかけられる費用も限られており、いかに効率的なマーケティング施策を実行できるかが勝負となるでしょう。

ホテル業界でM&Aを行うメリット

コロナ禍の影響や人手不足などによって苦しい経営を強いられるホテルが増えている中で、打開策のひとつとしてM&Aが注目されています。

ホテル業界のM&Aは、売り手企業と買い手企業それぞれにメリットがあります。

売り手側のメリット

売り手企業にとっての主なメリットは以下の3点が挙げられます。

経営改善

赤字が続き採算がとれていないホテルや、十分な利益が出ていないホテルの場合、M&Aによって外部の企業に買い取ってもらうことで経営の立て直しが可能になることもあります。

大手のホテルチェーンの傘下に入れば資金力を活かせるほか、ホテル以外の事業を手掛ける企業と組む場合には買い手企業とのシナジー効果によって売上や収益の改善につながる可能性もあります。

従業員の雇用維持と待遇の改善

経営状態が悪化し倒産ということになれば、従業員の雇用を守ることができず大きな反発を招くこともあるでしょう。

しかし、M&Aによって事業を引き継ぐことができれば従業員の雇用は維持されます。

また、ホテルをはじめとしたサービス業界は、他社との価格競争に巻き込まれやすく従業員の待遇改善がしにくいこともあります。

しかし、M&Aによって経営環境が改善されれば、従来よりも待遇が改善できる可能性が見えてくるでしょう。

マーケティング施策の効率化

今後ホテル業界で生き残っていくためには、ブランディングと競争力の向上が重要であるとご紹介しました。

たとえば、M&Aによって大手ホテルチェーンの傘下に入ることができれば、その知名度とブランド力を活かし多くのユーザーを取り込みやすくなるでしょう。

自社で多額の広告宣伝費を注ぎ込まなくても効率的なマーケティングが可能です。

買い手側のメリット

次に、買い手企業にとってのメリットを3つご紹介します。

不動産投資

ホテルを買収するということは、その企業が所有する土地や建物なども一緒に取得することも意味します。

ホテルの多くは繁華街や駅前など立地条件の良い場所にあるケースが多いことから、資産価値が見込める魅力的な不動産投資といえるでしょう。

人材の確保

ホテル事業へ参入するには土地や建物を用意するだけで終わりではなく、ホテルで働く従業員も確保しなければなりません。

しかし、接客スキルを身につけてもらうためには教育が必要であり、人材育成には多くのコストと時間を要します。

ホテルを買収することができれば、それまで働いてきた従業員の雇用も引き継ぐため即戦力人材を確保できます。

異業種からの参入が容易に

買い手にホテル経営に関するノウハウがない場合、一から土地や建物を取得し専門人材を確保・育成していくとなると多くの時間と労力を要します。

しかし、M&Aによってホテルを買収できれば経営に必要なリソースをすぐに手に入れられるだけでなく、既存の顧客もそのまま引き継げるため即座に収益を得られるでしょう。

そのため、異業種からホテル業界へ参入する場合にM&Aは有効な手段といえるのです。

ホテルのM&Aを成功させるための注意点

準備不足のままM&Aに着手してしまうと、その過程においてさまざまなトラブルが生じ相手方の不信感を招く可能性もあります。

ホテルのM&Aを成功させるためには、どのような点に注意すべきなのでしょうか。

許認可の引き継ぎ

法務面で重要なのが許認可を引き継げるかどうかです。

株式譲渡や合併、および会社分割によってM&Aを行う場合には、売り手であるホテル事業も包括的に承継されることから許認可もそのまま引き継ぐことが可能です。

しかし、法人ではなく個人として経営しているホテルや旅館などを取得する、あるいは事業譲渡を行う場合には、許認可を引き継ぐことはできないため買い手側で許認可を取り直す必要があります。

許認可の取り直しにあたっては、申請から取得まで1ヶ月以上の期間を要するケースが多いことと、法令の改正によって建物の審査基準や必要な資格なども変わっていることがあるため注意が必要です。

情報漏洩への対策

M&Aを進める中で、外部への情報漏洩には十分配慮しなければなりません。

M&Aを検討している、または進めていることが漏れてしまうと、顧客や取引先、従業員に対して不安を与え経営に大きな影響を及ぼす可能性があります。

その結果、相手方の不信感を招き交渉が決裂するおそれも考えられるでしょう。

このような事態を防ぐためにも、秘密保持契約(NDA)の締結や信頼できるM&A支援会社の選定を行うことが大切です。

ホテル業界のM&Aの成功事例

最後に、ホテル業界においてM&Aを成功させた事例をご紹介します。

浦島観光ホテル株式会社様

浦島観光ホテル株式会社は、和歌山県内で4つのホテル、旅館を運営する企業であり、1956年の創業以降、半世紀以上にわたって南紀エリアの観光産業に貢献してきました。

しかし、その長い歴史とともに建物・設備も老朽化し、設備投資額が増大。

持続的な成長を実現するためにも、これまでの事業のあり方を変え立て直す必要があると考えるようになりました。

地元の観光資源を活かしつつ、ホテルの経営を安定化させていくためにさまざまな手段を検討した結果、M&Aによって日本共創プラットフォームへ株式譲渡することを決断しました。

M&Aと聞くと会社を売り払うといったネガティブなイメージがつきものです。

しかし、日本共創プラットフォームは地方創生を実現するための支援を行っている企業であることと、地元の南紀白浜空港の運営も担っていることもあり、浦島観光ホテルがこれまで行ってきた経営を安心して引き継げると判断し契約に至りました。

今後は南紀白浜空港との連携によって多くの旅行客・観光客を受け入れるとともに、事業立て直しのために海外富裕層をターゲットとすることも検討しているといいます。

ホテル業界のM&Aについてのまとめ

コロナ禍をきっかけに売上が減少し、苦しい経営を強いられているホテルも少なくないでしょう。

徐々に観光産業は回復を見せていますが、慢性的な人手不足は続いておりホテル業界の課題はまだまだ多いのが現状です。

多くの旅行客や観光客を取り込むためには、ホテルのブランディングと競争力の向上が急務となっていますが、M&Aはそのための有効な手段といえます。

売り手にとっては大手企業の傘下に入ることで、経営改善や従業員の待遇向上、マーケティング施策の効率化といったメリットが期待できるでしょう。

M&Aによって経営の立て直しに成功した企業もあることから、会社の持続的な成長のためにもぜひご検討ください。

著者

MABPマガジン編集部

M&Aベストパートナーズ

M&Aベストパートナーズのマガジン編集部です。

M&Aストーリー

M&Aを実施する目的や背景は多岐にわたって存在するため、
ひとつとして同じ案件や事例は存在しません。

Preview

Next

製造、建設、不動産、
医療・ヘルスケア、物流、ITのM&Aは
経験豊富な私たちがサポートします。