M&Aストーリー
M&Aを実施する目的や背景は多岐にわたって存在するため、
ひとつとして同じ案件や事例は存在しません。
家電製品やスマートフォン、PCなど、私たちが普段使用するハードウェアは数多くの電子部品で構成されています。
端末の高機能化や小型化、省電力化などに伴い、電子部品メーカーの技術開発競争も激しさを増しており、企業が生き残っていくための方法としてM&Aが選択されることがあります。
本記事では、電子部品業界のM&Aはどのような現状となっているのか、M&Aを行う際に課題となるもの、M&Aに成功した企業の事例などもあわせてご紹介します。
目次
日本国内には電子部品の製造を手掛ける企業が数多く存在しますが、企業によっても得意とする分野や保有している技術・ノウハウなどは異なります。
事業をさらに成長させていくためには、他社にない優れた技術や研究開発によって差別化を図る必要がありますが、これには多くの時間と労力を必要とします。
そこで、M&Aによって他社の技術や専門人材を獲得する企業も少なくありません。
また、企業間の競争が激しくなると価格競争に巻き込まれ利益が圧迫されることも多いため、事業の見直しや経営の立て直しを図るために一部の事業を売却する動きも見られます。
さらに近年増えているのが、異業種による電子部品メーカーの買収です。
デジタル化やDXの大きな波が押し寄せる中で、IoTをはじめとした先端技術のニーズが高まっていますが、これらの開発には電子部品製造に関する高度な技術や知見が不可欠です。
そのため、IT系の企業や半導体メーカー、電子部品を扱う商社などが電子部品メーカーを買収するケースも珍しくありません。
M&Aを進める際、必ずしも相手先企業との交渉が円滑に進むとは限らないほか、経営統合や合併のプロセスにおいてさまざまな課題が浮かび上がってくることがあります。
具体的にどういった課題が考えられるのか、企業がとるべき対策も含めて解説しましょう。
電子部品にはダイオードやICチップといった精密部品のほか、スイッチやコネクタ類なども含まれ、企業によっても手掛ける製品は異なります。
事業規模を拡大し競争力を高めていくために、これまで自社で取り扱ってこなかった製品に関する技術をもった企業とのM&Aは有効な手段といえるでしょう。
しかし、買い手企業と売り手企業がWin-Winの関係を築くためには、それぞれの技術を統合しシナジー効果を得る必要があり、これは決して簡単なことではありません。
また、社風や文化が異なる企業が統合・合併するとなると、環境が大きく変化し戸惑う従業員も出てくる可能性があります。
そのため、M&Aを行う際には相手先企業を深く理解したうえで、どういったビジョンや戦略でビジネスを展開していくのかを十分に検討しておくことが大切です。
M&Aを行う企業の規模によっては、独占禁止法によって一定の制限がかけられる可能性があります。
たとえば、株式譲渡によるM&Aの場合、以下の条件を満たす場合には公正取引委員会への届出が必要となります。
公正取引委員会へ届出を行った後は、一次審査および二次審査が行われ、審査をクリアして初めてM&Aの許可がおります。
ただし、独占禁止法上問題があるとみなされた場合、M&Aそのものが許可されず白紙に戻ってしまう可能性もあります。
公正取引委員会では、届出や審査に入る前のタイミングで任意での相談も受け付けているため、事前に届出前相談をしてみるのもおすすめです。
電子部品業界は経済状況や市場のニーズによっても売上が大きく変動することがあります。
M&Aを検討した時点では需要が大きかった製品も、5年後、10年後も変わらず需要が期待できるとは限りません。
将来の市場がどのように変化するのかを予測し、万が一市場のニーズが変わった際に新たな製品やサービスを開発できる技術力やノウハウがあるのかを考え、慎重に判断することが大切です。
関連記事:M&Aにおけるシナジー効果とは?種類や成功事例、フレームワークを紹介
電子部品の技術開発は時代とともに進化しており、M&Aにあたっては業界全体がどのように変化していくのか不安に感じる経営者も多いでしょう。
そこで、今後の電子部品業界の展望を予測するとともに、M&Aがどのような役割を果たすのかもあわせて解説します。
電子部品業界における今後の大きなトレンドとしては、IoTや自動運転の実用化などに伴い、部品そのものの軽量化や薄型化が求められることはもちろんですが、省エネ化、長寿命化などニーズが高度化していくと考えられます。
また、さまざまな業種において今後さらに人手不足が深刻化していくと考えられ、生産効率を上げるためにも複数の電子部品から構成されるモジュール部品のニーズが高まっていく可能性もあるでしょう。
これらを実現するためには、高度な技術力やノウハウをもった企業とM&Aを行い双方の企業がもつ知見を掛け合わせることが求められます。
精密さが求められる電子部品は、世界の中でも日本がトップクラスの技術力を持っており高いシェアを誇ります。
電子部品メーカーの中にはさらなる事業規模拡大と競争力を高めるために、海外に進出するケースが相次いでおり、今後もグローバル化の流れはさらに加速していくでしょう。
しかし、一から海外に進出し市場を開拓していくのは簡単なことではなく、多くの時間と労力を必要とします。
そこで、すでに海外進出を果たしている企業や、海外での事業展開のノウハウが豊富な企業とM&Aによって手を組むことでスピーディーな海外進出に成功できる可能性が高まります。
自動車や家電製品、情報端末などを製造するメーカーは、電子部品メーカーを含めさまざまな取引先とサプライチェーンを構築しています。
メーカーにとってはどの取引先も欠かせない存在であり、ひとつでもサプライチェーンが欠けてしまうと製造ラインが止まり大きな影響を及ぼすこともあるでしょう。
特に昨今は毎年のように自然災害が発生しており、海外に目を向けると政治的な情勢も不安定化しています。
そこで、災害や戦争、紛争、テロなどさまざまな要因を想定し、安定的なサプライチェーンを構築するために電子部品メーカーとのM&Aはひとつの選択肢として考えられるでしょう。
関連記事:M&Aの事業買収とは?手法からメリット、注意点、成功事例などを徹底解説
電子部品メーカーのM&Aにはどういった事例があるのでしょうか。今回は異業種とのM&Aを成功させた企業の事例をご紹介します。
ax株式会社はプリント基板の設計や製造を手掛ける株式会社アクセルの子会社です。
近年では将来的な事業規模の拡大を見据え、AIやブロックチェーン、セキュリティといった新規事業にも積極的に乗り出しています。
特にAIの分野においては専門的な知見をもった人材の採用競争が激しく、求人を出しても候補者がなかなか集まらない企業も珍しくありません。
そこでaxは、画像認識システムの開発を行っているモーションポートレート株式会社の株式を取得し子会社化。
モーションポートレート社が提供する画像認識システムとax株式会社のAIを連携することで、さらに高度な画像認識システムに進化しユーザーに新たな価値を提供できると期待されています。
AIや機械学習といった分野は近年急速に注目度が高まり、スタートアップ企業も続々と誕生しています。
また、AIはIoTとも親和性が高い分野であることから、電子部品メーカーとAIスタートアップ企業とのM&Aは今後さらに増えていくのではないでしょうか。
関連記事:M&Aの目的を買い手・売り手の両視点から解説!課題やポイントも紹介
家電製品や情報端末、自動車などの進化に伴い、電子部品業界もさまざまな技術開発が行われており、メーカーは激しい競争環境の中で生き残っていかなくてはなりません。
加えて、近年では人手不足も深刻化しており、新たな人材を採用したくても候補者が集まらず苦戦している企業も多いでしょう。
このような先送りできない経営課題を解決するためにM&Aは有効な選択肢のひとつであり、自社の存続と従業員の雇用を守ることにもつながります。
電子部品業界にはさまざまな技術、ノウハウをもった企業があるため、自社の方向性やビジョン、経営戦略と照らし合わせながら慎重に相手先企業を選ぶことが大切です。
M&Aを実施する目的や背景は多岐にわたって存在するため、
ひとつとして同じ案件や事例は存在しません。
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