ガス管や水道管といった配管設備の工事を行う「管工事業」は、日本のインフラを支える大切な存在です。
しかし管工事業界に興味はあっても、その現状について把握している人は少ないのではないでしょうか。
管工事業界への転身を考えるのであれば、業界の動向や課題を把握することが大切です。
本記事にて、管工事業界に対する理解を深めるとともに、参入の有力な解決策となる「M&A」についても把握しましょう。
目次
管工事業界の概要と課題
まずは、管工事業界の仕事内容や業界構造について解説します。
また、管工事業界の課題について事前に把握しておきましょう。
管工事業界について
管工事業界とは、配管設備全般を取り扱う業界のことです。
配管設備の施工や修理だけでなく、定期的なメンテナンスなども管工事業界の仕事に含まれます。
ガスや水、空気など、さまざまなものを施設・住まいに送り届ける役割を担うため、日本社会に欠かせない存在といえるでしょう。
管工事業界の業務形態は大まかに、1社で完結させる「自己建設」、複数社をともなう「元請け・下請け」の2種類が存在します。
自己建設は顧客から直接依頼を受け、自社だけで計画から管理までを請け負う業務形態です。
顧客と管工事業者の間に、別の企業を介さない特徴があります。
一方の元請け・下請けは、顧客から依頼を受ける企業と、実際に工事を行う企業が異なる業務形態です。
元請け業者(総合建設業者、いわゆるゼネコン)が顧客から依頼を受け、それを下請け業者である管工事業者へ発注する流れとなります。
自己建設だと利益率は上がりやすいものの、業務範囲が広いため社員の負担が大きいことが難点といえるでしょう。元請け・下請けの場合は、管理や工事を分業できるため負担を減らしやすい一方で、利益率が下がりやすい難点があります。
管工事業界の課題
昨今の管工事業界には、さまざまな課題があります。主な課題は次の3つです。
・多重下請け構造
管工事業界で多くの企業が採用している業務形態は、元請け・下請けです。
そればかりか「多重下請け構造」の傾向が強まっており、問題視されています。多重下請け構造とは、元請けから依頼を受けた下請け業者が、さらに別の下請け業者に再発注する、といった受発注が多重に行われる構造のことです。
多重下請け構造だと、下層の下請け業者ほど利益率は低くなり、現場の職人に負担がかかります。また、下請け業者が増えることで価格競争が激化するケースも少なくありません。さらに、関連企業が増えることで連携が困難になり、管工事の品質低下を引き起こす可能性もあります。
このように、多重下請け構造はさまざまな問題につながるため、いかにして脱却するかが重要な課題です。
・職人の高齢化と人材不足
建設業界の一部といえる管工事業界では、職人の高齢化・人材不足も深刻化しています。
管工事業界に限らず、現場作業をともなう仕事は多忙なイメージがあり、敬遠される傾向にあるでしょう。IT化や働き方の多様化による影響もあり、管工事業界に参入する若い人材はあまり増えていません。
優れた技術を持つベテランの職人も、いつかは業界を退くでしょう。このまま若い職人が増えなければ、管工事に携わる職人が足りず、事業の継続は困難になります。こうした人材不足を解消することも、管工事業界における大きな課題といえるでしょう。
・後継者不足
特に中小企業では、職人だけでなく後継者の不足も深刻な問題となっています。
後継者がいないために事業を継続できなくなり、廃業を余儀なくされるケースもあるでしょう。日本のインフラを支える管工事業界が衰退すれば、日本社会にも多大な影響があります。管工事業界の後継者不足を解消し、いかにして企業を存続させていくかも重要な課題です。
管工事業界におけるM&Aの動向
職人不足・後継者不足が深刻化する管工事業界において、「M&A」が注目されています。
M&Aとは、複数の企業が合併(Merger)したり、別の企業を買収(Acquisition)したりする経営戦略のことです。
管工事業界では、さまざまな形でM&Aを取り入れる企業が増えています。具体的な動向として挙げられるのは、次の4つです。
・関連業界とのM&Aの増加
管工事業界に関連する業界の企業とM&Aを行うようなケースが増えています。
関連業界と統合することにより、販路拡大や経営基盤の強化につながるでしょう。
・異業種とのM&Aの増加
事業の拡大・多角化を図り、異業種とM&Aを行うケースも増えています。
例えば、管工事業者と製造業者が統合する事例も少なくありません。
・海外M&Aの増加
海外、特に新興国の企業とM&Aを行い、事業展開を図るケースも増えています。
新興国の企業は日本の管工事技術を吸収でき、日本の管工事業者は販路開拓を図ることが可能です。
・後継者不足の解消に向けた事業継承の増加
後継者不足を解消するために、事業継承を行うケースも増えています。
事業継承すれば相手企業の職人を取り込めるため、人材不足の解消にもつながるでしょう。
管工事業界でM&Aを行うメリット
管工事業界の企業がM&Aを行うことはメリットが多く、さまざまな課題の解決につながります。
ここでは、管工事業者でM&Aにより事業継承を行った場合のメリットを、売り手側・買い手側に分けて解説します。
売り手側が得られるメリット
事業を売る側が得られる主なメリットは、次の3つです。
・廃業の回避
M&Aにより相手企業に経営を委ねることで、廃業を回避できます。
企業自体が完全になくなるわけではないため、取引先との関係性も維持できるでしょう。経営権を譲渡した経営者には、役員として残る選択肢もあります。
・自社従業員の雇用確保
後継者不足により廃業すれば、自社従業員は職を失うでしょう。しかし、M&Aにより事業継承すれば、自社従業員は相手企業で働き続けられます。
そのため、M&Aは自社従業員を守ることにもつながるでしょう。
・経営基盤の強化
自社よりも大きな企業とM&Aを行うことで、経営基盤の強化が可能です。
資金力のある親会社の存在があれば、資金繰りに困る事態は減るでしょう。また、自社の負債を引き継いでもらえる場合もあります。
買い手側が得られるメリット
事業を引き継ぐ企業が得られる主なメリットは、次の3つです。
・販路拡大
M&Aにより、相手企業の取引先や事業エリアを取り込めるため、自社の販路拡大を図れます。
例えば、自社と事業エリアの異なる企業間でM&Aを行えば、新しい地域へ自社サービスの展開が可能です。自社サービスの販売チャンスが増えることで、売上拡大につながるでしょう。
・優秀な人材の確保
M&Aを行うことで、相手企業の優秀な人材を取り込めます。
採用コストを抑えながら人材を確保できるうえに、人材レベルの底上げによる成果アップにもつながるでしょう。
・事業の多角化
異業種の企業とM&Aを行えば、事業の多角化がしやすくなります。
例えば、機械製造会社とM&Aを行えば、機械製造の技術や人材を相手企業から取り込むことが可能です。新事業を立ち上げる際のコストを抑えて、新しい分野へ参入しやすくなるでしょう。
まとめ
配管設備全般を取り扱う管工事業界は、ライフラインを支えているため、日本社会に欠かせない存在といえるでしょう。
その一方で、多重下請け構造や職人・後継者の不足といった多くの課題も抱えています。管工事業界の課題を解決するには、企業の合併や買収により人材を確保できるM&Aが有力な解決策です。
これから管工事業界への参入を考えている人や、後継者問題により廃業を考えている経営者には、M&Aの前向きな検討をおすすめします。
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