M&Aストーリー
M&Aを実施する目的や背景は多岐にわたって存在するため、
ひとつとして同じ案件や事例は存在しません。
近年、成長産業として注目されている半導体業界では市場の競争も激化しており、企業が生き残っていくためにM&Aを行うケースも少なくありません。
しかし、M&Aは入念な準備を行っておかないと契約が成立した後にトラブルに発展したり、経営がさらに悪化していくリスクもあります。
このような失敗を防ぐために、半導体メーカーにとってのM&AのメリットやM&Aの主な手法、参考にしていただきたい成功事例などを詳しくご紹介します。
目次
半導体業界では国内・国外を問わずさまざまなメーカーのM&Aが活発に行われています。
それはなぜなのか、主に考えられる2つの理由をもとに解説しましょう。
数ある業界の中でも、半導体業界は特に成長が期待される産業のひとつです。
半導体は主に家電製品やPC、スマートフォンといった電子機器に用いられていますが、昨今ではAIや5G、IoTといった先端テクノロジーが次々と実用化されたことで半導体の需要は爆発的に増加しました。
実際にWSTS(世界半導体市場統計)が発表した調査結果でも、2024年の半導体の市場規模は前年から13.1%増加し5,883億ドルにまで達すると予想され、過去最高を更新する見込みです。
しかし、同時にメーカー同士の競争も激しさを増しており、ニーズに対応できる高品質な半導体を大量に製造するためには経営規模の拡大や技術革新も求められます。
資本力に乏しい小規模なメーカーは生き残っていくことが難しくなり、経営環境の改善や競争力向上のためにM&Aを選択する企業もあるのです。
かつて日本は世界の半導体市場において約半数のシェアを誇っていましたが、現在では1割以下まで落ち込み、海外のメーカーが高い競争力をもつようになりました。
しかし、半導体製造における技術力の高さは今も健在であり、実は半導体製造を担う工場の数は世界一を誇ります。
そこで、政府は成長産業である半導体業界を後押しし国内の経済成長につなげるためにさまざまな政策支援を行っています。
近年では台湾の半導体メーカー大手であるTSMCや、国内半導体メーカー大手のキオクシアなどが国内に工場を次々と建設しており、地域の雇用創出にも貢献しています。
一口にM&Aといってもさまざまな手法があり、目的に応じて選択することが大切です。
M&Aでは具体的にどういった手法がとられるのか、それぞれの特徴も踏まえて解説しましょう。
株式譲渡とは、売り手企業の株式を買い手企業に売却する方法です。
株式をそのまま譲渡するため経営権が買い手企業に移行するほか、半導体メーカーがもつ特許や権利なども一括で引き継ぎます。
株式譲渡はM&Aの手法の中でもシンプルで分かりやすい方法といえますが、本来必要としない設備や技術があったとしても、それらも含めて引き継がなければなりません。
事業譲渡とは、会社そのものではなく一部の事業のみを切り離して引き継ぐ方法です。
株式譲渡では無駄が多く経営のリスクになると判断した場合や、個別の事業のみを承継したい場合には事業譲渡が合理的な方法といえるでしょう。
一方、株式譲渡に比べると事業譲渡は権利の引き継ぎや手続きが複雑で時間を要するという課題もあります。
合併とは、複数の会社を1つに統合する方法であり、吸収合併と新設合併の2パターンがあります。
吸収合併は既存の会社がもう一方の会社を吸収する方法で、株式譲渡と同様に特許や権利、設備などを全て引き継ぎます。
新設合併はその名の通り合併後の会社を新たに設立する方法です。
新設合併は吸収合併に比べて手続きが煩雑で、許認可なども新たに取得し直す手間がかかることから、吸収合併が選ばれるケースが少なくありません。
資本業務提携とは、業務提携先の企業に対して資本金を注入し、資本金を提供した企業が議決権を得る方法です。
企業規模によっても資本業務提携の形はさまざまで、たとえば上場企業同士の場合であればお互いに半分ずつを出資し株式を持ち合ったり、新会社を設立するといった資本業務提携もあります。
一方、上場企業と非上場企業の場合は、上場企業が非上場企業に資本を注入しグループ会社として資本業務提携を結ぶことも少なくありません。
関連記事:M&A買収された後の会社はどうなる?運営のポイントや給料事情
M&Aは買い手と売り手それぞれの企業にとってメリットがあって初めて成立します。
両者の立場からどういったメリットがあるのかを見ていきましょう。
成長が期待される半導体業界であっても、メーカーの中には経営状況が悪化していたり、人手不足や資金不足によって事業の継続が困難になっているケースもあります。
最悪の場合、経営が立ち行かなくなり倒産ということになれば、取引先に迷惑をかけてしまったり、従業員とその家族の生活も守れなくなるでしょう。
経営課題が深刻化すると自社だけでは立て直しが難しくなることから、M&Aは有効な手段のひとつといえるのです。
また、会社の経営は順調であるものの、自社のさらなる成長や競争力を強化したい場合にはM&Aによって大手の傘下に入ることも有効な選択肢といえます。
たとえば、昨今は円安が進み物価が高騰していますが、大手の傘下に入ることで原材料の調達コストを抑えられるなどのメリットも期待できるでしょう。
半導体メーカーの中には、優れた技術をもっているものの苦しい経営を強いられている企業も少なくありません。
反対に、経営規模は大きく安定しているものの、技術力やノウハウなどが少なく将来性に不安を抱えている企業もあります。
そこで、優れた技術をもつ半導体メーカーを買収することにより、自社にはないノウハウや権利、優秀な人材も獲得でき、競争力を高められる可能性があるでしょう。
また、自社が蓄積してきた技術と他社の知見を融合することでシナジー効果が生まれ、新たなビジネスチャンスを発見できるかもしれません。
関連記事:M&Aのメリット・デメリットとは?買い手・売り手側からわかりやすく解説
半導体メーカーの中でM&Aに成功した企業にはどういった事例があるのでしょうか。
京西テクノス株式会社は、主に医療機器や情報通信機器などのメンテナンス事業を手掛ける企業であり、近年ではIoTによるリモートメンテナンスのサービスも提供し始めました。
先端技術を活用したメンテナンス事業では、半導体をはじめとしたハードウェアの高い知見が求められます。
そこで、M&A仲介会社の紹介で福岡の半導体メーカーである株式会社TCKとのM&Aを模索しはじめました。
TCKも医療業界向けの精密装置の開発や理化学機器の設計・製造を得意としていたことから、両社は親和性が高く交渉開始からわずか3ヶ月というスピードで株式譲渡によるM&Aが正式に成立しました。
従来、京西テクノスではIoT機器の調達や開発など外部の企業に委託していた業務も多かったといいますが、TCKがもつ優れた技術を活かしながら内製化を目指していくとしています。
関連記事:M&A戦略とは?必要性や基本的な流れについて詳しく解説します
スマートフォンの普及やAI、IoTといった先進テクノロジーの進化、さらに今後は自動運転技術の実用化なども見込まれており、半導体の需要はこれまで以上に高まっていくと予想されます。
従来の半導体はPCや家電製品など用途が限定的でしたが、近年は急速に裾野が広がっています。
このような動きを考慮すると、これまで半導体とは無縁と思われてきた企業が半導体メーカーをM&Aによって買収するケースも増えてくるでしょう。
上記でご紹介した京西テクノスの事例のように、実際に異業種の企業による半導体メーカーの買収は増加傾向にあります。
ただし、企業にとってM&Aは経営課題を解決するための手段に過ぎず、どういった課題を解決したいのかを明確にしておくことが何よりも重要といえるでしょう。
解決すべき経営課題が明確になれば、どういった企業を対象にM&Aを行うのか、そのための手法や交渉方法なども見えてくるはずです。
スマートフォンやPCはもちろんのこと、AIやIoTといった先端テクノロジーが拡大しつつある現在、半導体の需要はますます高まっています。
市場の競争が激化すれば淘汰される企業も出てきますが、自社が生き残っていくためにはM&Aも有効な選択肢となり得るでしょう。
経営者の中にはM&Aに対して否定的な印象を抱く方も多いですが、今回ご紹介した事例のように、お互いが大切なパートナーとして共存していくためにM&Aを選択する企業も少なくありません。
大切に育ててきた自身の会社を今後も成長させていき、従業員の雇用を守るためにもM&Aを前向きに検討してみてはいかがでしょうか。
M&Aを実施する目的や背景は多岐にわたって存在するため、
ひとつとして同じ案件や事例は存在しません。
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