建設業のM&A事例やメリットを紹介|譲渡で注意すべき点とは

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M&Aベストパートナーズ MABPマガジン編集部

建設業界は深刻な人手不足に直面しています

特に中小企業においては技術・ノウハウの継承ができなかったり、後継者不足に頭を悩ませるケースも少なくないでしょう。

このような課題を解決するひとつの方法としてM&Aがあります。

建設会社にとってM&Aにはどのようなメリットがあるのか、注意すべき点や成功事例などもあわせてご紹介します。

建設業のM&A動向

建設業界におけるM&Aは近年増加傾向にあり、ある調査会社のデータによると2015年と比較して3倍にまで増えています

◆参考:日経コンストラクション【次の業界再編の波は「建設」か、増え続ける地方でのM&A】◆

公共工事の入札へ参加する機会が制限されるなどのデメリットから、建設企業のM&Aは行われにくい傾向がありました。

それにもかかわらず、M&Aが増えているのはなぜなのでしょうか。

建設業界のM&Aが増加している背景

建設業界のM&Aが増加している大きな理由として挙げられるのは、後継者不足です。

建設業といえば、従来「3K(きつい・汚い・危険)」とよばれるネガティブなイメージがあり、若年層は仕事に就きたがらない傾向がありました。

その結果、慢性的な人手不足に悩まされ、次の世代に会社を引き継ぐことも難しくなっています。

小規模な建設会社であっても、優れた技術やノウハウをもつ会社は多いことから、中堅・大手企業が事業承継に乗り出すケースが増えているのです。

また、もうひとつの背景として資材価格や人件費が高騰していることも挙げられます。

下請けの建設会社へ工事を依頼するとなるとコストが増加するため、中堅・大手企業の中にはM&Aを行い、自社で内製化に踏み切る戦略に切り替えるケースも増えています。

関連記事:建設業界におけるM&Aを行うメリットとは?業界の現状や課題について解説

建設業界の市場規模とM&Aの影響

M&Aが増えたことによって建設業界の再編が活発化し、建設業許可業者数は減少傾向にあります

国土交通省の調査によると、1999年の時点で60万社あった建設業許可業者は2010年に初めて50万件を割り込み、2020年の時点で47.5万社まで減少しています。

建設業界全体の市場規模も平成中期から減少しはじめ、2010年にはピーク時の半分程度にまで落ち込んでいます。

東京オリンピックを見据えた建設特需によって、2014年頃から市場規模はわずかに回復したものの、それでもピーク時の3分の2程度となっています。

建設業でM&Aを行うメリットとは

建設業においてM&Aが活発になるとどのようなメリットがあるのでしょうか。

技術力と専門知識の統合

M&Aを行うことで、異なる企業が持つ技術や専門知識がひとつに集約され、事業規模の拡大につながるメリットがあります。

一口に建設会社といっても、個人向けの一般住宅を得意とする会社もあれば、高層ビルやタワーマンション、あるいは道路や橋といった公共工事を得意とする会社も存在します。

そのため、それぞれが持っている技術やノウハウは異なります。

複数の会社の専門分野を統合することで、より包括的なサービス提供が可能となり、さまざまなクライアントのニーズに対応できるでしょう

ライセンスと資格の共有

建設業では工事分野に応じた建設許可を取得する必要がありますが、M&Aを行うことで両社が持つライセンスや資格を共有できる場合があります。

これにより、新たに設立された会社は建設業におけるさまざまな規制や法的要件に対処でき、より多くの市場に参入できる機会を得られるでしょう

また、新たな工事分野に対応しようとすると一から従業員を教育したり、ノウハウを習得しなければなりません。

しかし、専門性のある会社をM&Aによって統合することで、そのような手間や時間を省くこともできます。

サプライチェーンの最適化

建設業では建材や部品の調達、物流、施工など、さまざまなサプライチェーンが関わることが一般的です。

M&Aによって複数の会社が統合されると、それまで各社が活用してきたものよりも効率的なサプライチェーンが構築できます。

そのため、より安価で効率的に原材料を調達することもできるでしょう。これにより、生産性が向上しコスト削減が可能となります。

地域の拡張による市場の多様化

各地域で長年にわたって運営してきた建設会社は、そのエリア内において高い知名度やブランド力を持っています。

ほかの建設会社が事業規模を拡大するために進出しようとしても、地域に根付いた他社のブランド力には負けてしまうケースが少なくありません。

しかし、M&Aによってその企業を統合できれば、地元エリアでのブランド力が大きな武器となり一気に事業エリアが拡大していくことも期待できます

関連記事:建設業界の課題である若手不足の原因とは?改善方法についても解説

建設業におけるM&Aの注意点

建設会社がM&Aを行う際には、いくつか注意しておかなければならない点が存在します。

売り手と買い手の双方における留意点

売り手と買い手双方が注意しておくべきことは、建設業許可の引き継ぎと、請負中の案件引き継ぎの2点です。

株式を譲渡し、会社そのものを承継する場合には、建設業許可も買い手企業に引き継がれます。

しかし、事業の一部のみを承継する場合には、売り手企業に建設業許可が残ったままになります。

M&Aのパターンに応じて建設業許可がどのような扱いになるのかを確認しておく必要があるでしょう。

また、売り手企業に請負中の案件があった場合、買い手企業がそれを引き継げるかどうかも大きなポイントとなります。

技術的な面はもちろんですが、建設にかかる費用の負担や報酬の扱いなども決めておかないとトラブルに発展するおそれがあります。

場合によっては、取引先やクライアントの信頼を失ってしまうケースもあるでしょう。

業界特有の課題への対応

建設業界にはさまざまな工事分野があり、ひとつの会社がすべての分野を網羅できるとは限りません。

そのため、自社で対応できない工事は他社に依頼する必要があり、横のつながりが強い業界でもあるのです。

経営者の人柄や人間関係で協力関係を築いている会社も多いので、M&Aが成立したタイミングで経営者が代わるとそれまでの関係が維持できなくなることもあるでしょう

また、建設業界は契約から納品までの期間が長いこともあり、会計処理が複雑な特徴もあります。

粉飾決算をはじめとした会計上のリスクが考えられることから、M&Aを行う前にはしっかりと財務状況を確認しておかなければなりません。

関連記事:M&Aとは?目的や流れ、メリット・デメリットについて解説

建設業のM&A事例

建設業のM&Aによって高い成果を挙げている企業の事例を紹介します。

インフロニア・ホールディングス

インフロニア・ホールディングスは、前田建設工業が前田道路や前田製作所と経営統合して誕生した持株会社です。

2021年10月に発表された10年間の中長期経営計画において「新規建設の請負市場の縮小」「老朽化するインフラの維持・修繕需要の増大」

「自治体の財政難」などを見越した経営戦略について述べました。そして「請負型」のビジネスモデルを改めました。

インフラ運営の上流から下流までのサービスをグループで提供する「総合インフラサービス企業」への変革を経営戦略の中核に掲げ、M&Aを活用した事例です。

参考:MARR Online【インフロニア・ホールディングス M&Aを活用し、建設業から総合インフラサービス企業への脱皮を目指す】

建設業のM&Aについてのまとめ

建設業には大手から中小までさまざまな会社がありますが、工事分野は多岐にわたるためそれぞれの強みを活かした会社経営がなされています。

一方、深刻な人手不足に陥り、新たな人材を募集してもなかなか人が集まってこない企業や、後継者不足に頭を悩ませている企業も少なくないでしょう。

そのような企業にとってM&Aは有効な選択肢のひとつといえます。

ただし、建設業のM&Aにおいては、建設業許可の引き継ぎと請負中の案件引き継ぎ、財務状況の確認など注意しなければならないことも数多く存在します。

また、M&Aと聞くと敵対的買収のようなネガティブなイメージがつきものですが、対等な立場で進められるケースも数多くあります。

後継者不足にお悩みの企業は、M&Aも前向きにご検討ください。

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