資本提携とは?子会社化との違いやデメリットをわかりやすく解説

著者
M&Aベストパートナーズ MABPマガジン編集部
資本提携のメリットとは?実施するときの注意点や事例を把握しよ

会社の経営者であれば、「資本提携」という言葉を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

資本提携には、さまざまなメリットがあり、多くの企業が実施しています。しかし、資本提携を成功させるには、注意点や実施する流れなども把握しておかなければなりません。

この記事では、資本提携の基本的な概要や、実施するメリット、注意点などについて解説します。

また、実施する際の流れや事例についても紹介するため、資本提携を検討している人は参考にしてください。

資本提携とは?意味をわかりやすく解説

資本提携の概要

資本提携とは、複数の企業同士が資金や業務などで協力しあうために提携関係を築くことです。

具体的には、企業の経営権を獲得しない範囲(3分の1未満 )の株式を別の企業が持つことで、提携関係を築きます。

資本提携では、どちらか一方の株式を別の企業が持つこともあれば、双方の株式をそれぞれが持つ場合もあります。企業の将来の展望を広げるための重要なステップとして、多くの企業が採用している手法です。

「子会社化」「業務提携」「M&A」との違い

資本提携と混合されやすい言葉として、「子会社化」「業務提携」「M&A」などが挙げられます。

資本提携を検討している人は、それぞれの意味を把握しておきましょう。資本提携、業務提携、M&Aの違いは以下の通りです。

資本提携・経営権を獲得しない範囲の株式を持ち、資本面・業務面で協力しあう
子会社化・他の企業の株式を過半数以上保有し、経営権を取得する
業務提携・業務面の協力のみで、株式の移動はない
・企業同士の提携関係は、資本提携に比べると弱い
M&A・売却側企業の経営権は、買収側企業が獲得する

子会社化との違い

「子会社化」とは、ある企業(親会社)が他の企業(子会社)の株式を過半数以上(通常は50%以上)保有し、経営権を取得することを指します。

これにより、子会社は親会社の支配下に入ります。子会社化には「株式取得」や「事業譲渡」といった方法がとられるのが一般的です。

また、子会社には以下の種類があります。

  • 連結子会社:親会社の連結財務諸表に含まれる子会社
  • 完全子会社:親会社が100%の株式を保有する子会社
  • 非連結子会社:重要性が低いなどの理由で連結財務諸表から除外される子会社

子会社化は企業戦略の一環として広く利用されており、事業の多角化や市場拡大の手段として有効です。その反面、適切な管理や統合が求められるため、慎重な計画と実行が必要です。

業務提携との違い

「業務提携」とは、複数の企業が互いの経営資源(技術、ノウハウ、販売チャネル、人材など)を共有し合い、協力してビジネスを進める形態のことです。

単独では達成しにくい目標を共同で実現することを目指して行われる場合がほとんどです。

​「販売提携」「技術提携」「生産提携」「共同開発提携」など、事業単位で結ばれます。

業務提携は各企業の強みを活かしつつ、リスクを共有して新たな価値を創造する有効な手段です。成功のためには提携先の選定や契約内容の明確化が重要となるでしょう。

M&Aとの違い

M&Aとは「Mergers and Acquisitions」の略で、日本語では「合併と買収」を意味します。企業の合併や買収を通じて事業拡大や新市場への参入を目指す経営戦略です。

合併は複数の企業が一つに統合される形態です。企業の規模や資源の増強を目的に行われます。

買収はその名のとおり、ある企業が他の企業の株式や資産を購入し、その経営権を取得することです。買収側の企業は新たな市場や技術、人材を獲得できることがメリットです。

M&Aは企業の成長戦略として有効ですが、その実行には慎重な計画とリスク管理が求められます。適切なパートナー選定や契約条件の明確化が成功の鍵となるでしょう。

資本提携のメリット

資本提携を実施するメリット

次に、資本提携を実施するメリットについて解説します。

シナジー効果への期待

資本提携を実施するメリットとして、シナジー効果が生まれやすいことが挙げられます。

資本提携は株式の移動が伴う強固な関係により、双方の技術やノウハウなどを共有しやすく、シナジー効果を発揮しやすいのがメリットです。

また、資本提携する相手企業のブランド力や社会的な認知度が高い場合は、自社のブランド力強化につながる可能性にも期待できるでしょう。

各企業の独立性を維持できる

資本提携を行うことで、各企業の独立性を維持しつつ強固な関係を築けます。

そのため、企業は自社の経営方針や特色などを保持しながら、他社との協力関係を深められるのがメリット。

また、資本提携ではあくまで提携関係を結んでいるだけであるため、相手企業とミスマッチが起こっても容易に関係の解消が可能です。

リスクを抑えた経営が可能

資本提携の実施により出資を受けた側の企業は資本金が増加するため、経営基盤の強化につながります。

さらに提携先との共同事業を進める際、資金を分担することでそれぞれの負担が軽減されるのもメリットです。

資本提携は企業にとって多くの恩恵をもたらし、安定した経営を実現する手助けとなるでしょう。

資本提携のデメリット

資本提携にはメリットばかりではなくデメリットも存在します。

マイナスポイントを押さえておくことで、より安全かつ効果的な資本提携を進められるでしょう。

ここでは、資本提携を実施する前に知っておきたい注意点について解説します。

株式購入のために資金が必要になる

資本提携を実施する際は、第三者割当増資や株式譲渡などの対価として現金を用いる方法で行うのが一般的です。

そのため、出資する側の企業は提携先の株式を購入する資金を用意しなければなりません。

また、株式市場の変動により、提携先の株価が下がった場合の含み損のリスクも考慮する必要があるでしょう。

提携先による経営への干渉

資本提携では出資する側の企業が提携先の3分の1未満の株式を取得するのが一般的ですが、それ以上の割合となる場合には経営に干渉される可能性がないとは言い切れません。

特に出資割合が大きい場合や、出資した企業が業界での影響力を持つ場合は、経営への影響が大きくなるでしょう。

資本提携を成功させるには事前に機密情報の取り扱いや経営方針について双方の合意を明確にし、戦略的な提携内容を設定することが重要です。

提携解消時に株式の買い取りが必要なケースも

資本提携を解消する際、出資された側は出資した側が持つ自社の株式の買い取らなければならないケースがあります。

しかし、資本提携を結んだときに出資された資本金は既に使用されている場合が多く、出資した側が持つ自社の株式を買い取るための資金を用意するのが難しくなることも。

また、資本提携を結んだときの株価と買い取るときの株価に大きな変動がある場合は、買い取る株価をいくらにするのか話し合いをしなければなりません。

その結果、買い取るときのほうが高額になるという可能性も考えられるのです。

資本提携を結ぶ前に、こうしたリスクがあることを把握して備えておくことが大切です。

資本提携の手続き・流れ

資本提携の流れ

資本提携は、企業同士が強い連携を築くための重要な取り組みですが、計画を立てずに進めると、期待する効果を十分に得ることは難しいでしょう。

成功へと導くには、一定の流れに沿って計画的に進めることが大切です。

ここでは、資本提携を進める際の基本的なステップについて順を追って解説します。

目的を明確化する

資本提携を進める際、まずは目的を明確化しましょう。

このときに、資本提携後に期待する成果を具体的に数値化することが大切です。

また、業界における自社の立ち位置や強み、不足している弱みを正確に把握することも並行して行いましょう

目的の明確化や自社の分析を行うことで、提携先との交渉で強みをアピールができたり、効果を最大限に発揮できる提携先が見つかったりする可能性が高まります。

提携先の会社を探す

資本提携を成功させるには、適切な提携先を見つけることが大切です。

提携先の選定では、双方の企業の技術やノウハウ、財務状況などをある程度把握しなければなりません。

このような調査には専門的な知識が必要になるため、M&Aの専門家に依頼するのが無難です。

専門家のアドバイスを受けることで双方にとって価値のある提携先を見つけ、良好な関係の構築が期待できるでしょう。

出資比率などの詳細を取り決める

資本提携を進める際の出資比率の取り決めは、提携を成功させる上で非常に重要です。

出資比率が高すぎると経営に影響を及ぼすリスクが高まりますが、かといって低すぎると資本提携の意義が薄れて強固な関係形成は難しくなるでしょう。

さらに技術や生産、販売など、双方がどの程度協力するのかを決める必要もあります。双方の利益を最大化し良好な関係を維持するには、このバランスの見極めが重要です。

提携条件などの交渉を行う

提携条件の交渉は、双方の要望や考え方を明確にするために必要な手順です。

交渉の過程で、双方の意見や考え方の違いが浮き彫りになることもあるでしょう。このような場合には、双方が譲歩できる点や譲れない点を明確にし、相手に伝えることが大切です。

双方が納得するまでの議論を重ねれば、より良い提携関係を築く土台となります。一方的な要求や早急な合意を迫るのではなく、双方が納得できる結果を目指して交渉を進めましょう。

契約書を作成して契約締結する

資本提携の最終段階は契約書の作成と締結です。

このステップでは交渉内容を正確に文書化し、双方の合意を形にします。

契約書は提携の基盤となるため、内容の確認は欠かせません。

また、契約書を作成する際は将来的なトラブルを避けるために専門家の意見を取り入れることも大切です。協議を重ねて双方が納得したうえで契約を結ぶことで、安定した提携関係を築けるでしょう。

資本提携の事例について

資本提携には、技術革新や市場拡大、ビジネスモデルの変革など、さまざまな目的が存在します。

ここでは、資本提携の事例について解説します。

異業種間での資本提携の事例

まず紹介するのは、全国に広がるネットワークを持ち物流・金融サービスでの実績があるA社と、ECサイトの運営・フィンテック分野での実績があるB社の資本提携の事例です。

両社は、物流やモバイル、金融領域など、幅広くDXを強化していくという目的があります。具体的には、以下のような内容です。

  • 共同の物流拠点、配送システム、受け取りサービスの構築
  • A社内にあるイベントスペースの活用によるB社の申込みカウンターの設置
  • B社からA社に対するDX人材の派遣
  • キャッシュレスペイメント分野での協業

このような取り組みを通じて、A社とB社は、異業種間でのシナジーを最大限に活かし、新しい市場の創出を目指しています。

関連業種間での資本提携の事例

関連事業同士の資本提携は、双方の強みを活かしあい、新たな価値を生み出す可能性を秘めています。

日本の航空会社A社とアメリカの航空機開発・製造会社B社の資本提携は、関連事業間での事例の一つです。

この提携の狙いは、超音速旅客機の開発と普及です。B社は優れた技術を持つ企業として知られており、A社はその技術を活用して、顧客価値の向上を目指しています。

超音速旅客機の導入により、従来の飛行時間を大幅に短縮することが期待されており、ビジネスや観光のスタイルも大きく変わるでしょう。こうした資本提携により、企業は市場価値や競争力を高めています。

まとめ

まとめ

資本提携には独立性を維持しつつ他企業とのシナジー効果が期待できるといったメリットがあります。

その一方で経営への干渉のリスクや資金面でのハードルなどは、注意すべき点です。

また、資本提携は計画的に進めなければ、十分な効果を得られません。その過程での交渉や契約、さらには提携後の取り組みなど、多くのステップが必要とされます。

これらのステップをスムーズに進めるには、専門的な知識が必要です。

資本提携を検討している人は、「M&Aベストパートナーズ」にご相談ください。

多くの成功事例を持つ信頼のパートナーとして、資本提携の成功をサポートいたします。

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