介護のM&A事例や譲渡で注意すべき点|譲渡を検討する際のガイド

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介護業界は慢性的な人手不足が続き、介護報酬も頭打ちになっていることから経営に苦戦している法人も少なくないでしょう。

経営課題を解決するためにはさまざまな方法が考えられますが、中でもM&Aは有効な解決策のひとつに挙げられます。

本記事では、介護事業者がM&Aを行う際に注意すべき点や成功事例などを詳しく解説します。

介護業界のM&Aの概要

少子高齢化が進む中で介護業界は社会的に重要な存在となっており、市場規模も拡大し続けています。

しかし、その反面で業界再編が進んでいることも事実であり、M&Aを選択する企業もあります。

介護業界におけるM&Aの現状はどうなっているのか、最新の動向について解説しましょう。

介護業界のM&Aの現状と動向

近年になって介護業界の再編は加速しており、介護事業を手掛ける企業のM&Aは増加傾向にあります。

従来の介護事業は医療法人や社会福祉法人が運営するケースが多くありましたが、近年では株式会社や合同会社といった一般の企業もM&Aによって参入するケースも珍しくなく、大手による介護事業者の買収も進んでいます。

介護業界でM&Aが注目される理由

M&Aはさまざまな業界において行われていますが、その中でも介護業界の注目度が高まっている理由として以下の3つが考えられます。

  1. 少子高齢化
  2. 介護保険法の改正
  3. 慢性的な人手不足

高齢化が進む現在の日本では介護サービスのニーズが急激に拡大しており、今後も成長が見込まれている業種のひとつです。

従来の介護サービスは、医療法人や社会福祉法人といった非営利法人でなければ運営することができませんでしたが、介護保険法の改正によって営利法人でもサービスを提供できるようになりました。

その結果、大手の民間企業をはじめとして続々と介護業界に参入する企業が増え、M&Aが活発に行われるようになったのです。

人手不足とM&Aの関係

介護業界は長年にわたって人手不足に悩まされており、つねに人手が足りず綱渡り状態で業務を回しているという現場も少なくないでしょう。

介護サービスは機械やロボットによって簡単に自動化できるものではなく、人の手に頼らざるを得ない業務が数多くあります。

現場を担うスタッフが確保できないということは、介護事業者にとって経営そのものが成り立たなくなることを意味します。

M&Aによって大手の傘下に入ることができれば、人手不足の問題が解消できる可能性が高くなるほか、買い手側としても即戦力人材が確保でき速やかに事業をスタートできるメリットがあるのです。

介護業界のM&Aの相場

売り手である介護事業者にとっては、M&Aによってどの程度の価格で売却できるのかが大きな懸念事項といえるでしょう。

そこで、2024年時点における介護業界のM&A相場と価格が変動する主な要因をご紹介します。

2024年時点での相場

介護業界におけるM&Aでは、事業者の規模によっても売却価格が異なるため一概に相場の金額を断言できるものではありません。

ただし、以下の計算式に当てはめることで概算の売却額を算出できます。

概算売却価格=時価純資産+(営業利益×2〜5年分)

たとえば、時価純資産が5,000万円、1年間の営業利益が2,000万円の介護施設で計算すると、

5,000万円+(2,000万円×2〜5年)

となり、およそ9,000万円から1億5,000万円で売却できる可能性があることになります。

相場の変動要因

上記はあくまでも概算であり、さまざまな要因によって売却価格が変動することがあります。

相場価格が変動する主な要因としては以下が考えられます。

  • 市場の動向
  • 不動産の所有者
  • 従業員の年齢・勤続年数
  • 資格保持者の数

たとえば、土地や建物が自社保有であれば資産額が大きいため高額での売却が見込めるでしょう。

さらに、介護事業者にとってスタッフは経営を左右するほど重要な存在であり、多くのスタッフがいるほど事業規模も拡大しやすくなります。

ただし、高齢のスタッフが多かったり、平均の勤続年数が極端に短い介護事業者の場合、M&Aで買収をしてもスタッフが退職し人材が定着しにくいとみなされ、売却額が下がる可能性があるでしょう。

介護業界のM&Aに関するニュースとトレンド

介護業界のM&Aに関する最新のニュースと関連トピック、今後のトレンドの予測についてもご紹介しましょう。

最新のM&Aニュース

介護業界のM&Aで特に大きなニュースとして報じられたのが、日本生命によるニチイホールディングスの買収です。

ニチイといえば、介護保険法の改正に伴い、介護業界へ進出した大手企業のひとつとして有名でしたが、さらに経営規模の大きな日本生命に買収されることが決まり、業界に大きな衝撃が走りました。

もともと両社は1999年に業務提携を行い協業を続けてきた関係性がありましたが、さらなる生産性の向上と経営を安定化させることを目的としM&Aに踏み切ったとのことです。

M&Aに関する業界の動き

上記で紹介した日本生命によるニチイホールディングスの買収に象徴されるように、多くの業界で再編が進んでいます。

特に経営が苦しい介護事業者は、大手の傘下に入ることで資金的な問題の解決や収益性の向上が見込めるでしょう。

また、介護サービスそのものの質を向上させるために、医療機関や医療分野の企業とM&Aを行う事業者もあります。

将来のM&Aトレンド予測

少子高齢化が進む中で、介護業界の人手不足はさらに深刻化していくことが予想されます。

そのため、今後の介護業界は人材確保を目的とした介護事業者同士のM&Aがさらに加速していくと考えられるでしょう。

また、介護事業の成長を見据え、人手に頼らない新たなビジネスモデルを模索する動きも見られます。

たとえば、ロボット技術やIoT、AIなどの先端技術を組み合わせることで現場の負担を大幅に軽減するソリューションも注目されています。

これらを実現するために、IT関連など異業種によるM&Aがさらに加速していく可能性もあります。

介護事業のM&Aでの失敗を避けるために

介護業界にかかわらず、M&Aの実施にあたっては交渉が決裂し失敗に終わることがあります。

企業同士の交渉である以上、全てが成功に終わるとは限りませんが、失敗を避けるためにはどのような点に注意すれば良いのでしょうか。

失敗の主な原因

M&Aが失敗に終わる主な原因としては以下が挙げられます。

情報の漏えい

M&Aの交渉を行っていることが外部に漏れてしまうと、相手方の不信感を招き白紙に戻るケースがあります。

情報の隠蔽

故意・過失を問わず、帳簿に記載されていない債務(簿外債務)が発覚した場合も、相手方の不信感を招きM&Aが失敗に終わることがあります。

売りどき・買いどきを逃す

M&Aの交渉先を選ぶ段階で、「もっと良い条件の交渉先が見つかるはず」と先延ばしにしていると、自社の業績が悪化するなどして当初の条件では交渉先が見つからなくなることもあります。

失敗しないためには

M&Aには専門的な知識やノウハウはもちろんのこと、相手方との信頼関係を構築し交渉をスムーズに進めなければなりません。

上記のような失敗のリスクを抑えるためには、M&A支援会社に相談・依頼することが重要です。

M&A支援会社では情報漏えいを防ぐために秘密保持契約(NDA)を締結するほか、M&Aに必要な情報や資料なども詳しく説明してくれるため専門知識がない場合でも安心して任せることができます。

また、これまで数多くのM&Aを支援してきた実績もあることから、売りどきや買いどきに関して適切なアドバイスを受けることも可能です。

介護業界のM&Aの成功事例

最後に、M&Aによって経営課題を解決した介護事業者の事例をご紹介します。

株式会社樫の木様

株式会社樫の木は2004年の設立以降、山形県酒田市においてグループホームや有料老人ホームなどを運営してきた介護事業者です。

経営努力によって14期連続で増収を果たし、2024年時点で年商5億円を超えるまでに成長してきましたが、その一方で介護報酬の伸び悩みや人材確保のしにくさに頭を悩ませるようになりました。

これらの課題を解決し、自社を成長させていくための方法としてM&Aを検討しはじめます。

M&Aにあたって特に重視したのは、「地域と従業員、同業他社のためにより良い選択をし、介護業界をさらに発展させていくこと」でした。

そのためには、自社が培ってきた文化と価値観を理解し、尊重してくれるパートナーを選択する必要があります。

M&A支援会社から提案のあった譲受企業のトップと面談を行った結果、自社の理念やビジョンを理解してくれ、さらには従業員の雇用を継続し社長自身も引き続き代表として経営に関わることを相手方が受け入れてくれたためM&Aが無事成立しました。

M&Aによって経営基盤がさらに強化されたことにより、今後も引き続き介護事業を通じて地域社会に貢献していくことはもちろんですが、近隣地域との連携も強化し医療・福祉サービスの質の向上につなげていきたいと考えています。

介護業界のⅯ&Aについてのまとめ

高齢化が進む日本において、介護業界のニーズは今後も拡大していくことが予想されています。その一方で介護報酬の頭打ちや人材確保に頭を悩ませている介護事業者も多いでしょう。

2023年11月には介護業界最大手がM&Aによって買収されるという大きなニュースもあり、介護業界の再編は今後さらに加速していくと見られています。

M&Aは決して「会社を売り払う」、「会社を乗っ取られる」というネガティブなものではなく、売り手と買い手の双方がともに成長していく手段のひとつといえるのです。

著者

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