2024年1月18日

IT業界のM&A動向とは?基礎知識や成功ポイントについて理解しよう

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IT業界のM&A動向とは?基礎知識や成功ポイントについて理解しよう

IT社会の日本を支えるIT業界において、「M&A」を実施する企業が増えています。

しかし、M&Aがどのようなものか詳しく把握していない人も多いのではないでしょうか。

この記事では、IT業界におけるM&Aについて、基本からわかりやすくお伝えします。

IT業界のM&A動向や事例、成功のポイントも紹介するため、ぜひ参考にしてください。

IT業界・M&Aの基礎知識

IT業界・M&Aの基礎知識

IT業界」という言葉はよく使われるものの、人によって解釈が異なるでしょう。

まずは、前提知識として、そもそもIT業界やM&Aの概要から整理していきましょう。

 

IT業界とは

IT業界とは、IT=情報技術(コンピューターで情報を扱う技術)に関連する製品・サービスを提供する業界のことです。

コンピューター」はパソコンだけでなく、スマートフォンや製造機械など、さまざまな機器に組み込まれた「頭脳」を指します。こうしたコンピューターを基盤として、情報技術の実現を後押しするのがIT業界です。

IT業界の具体的な仕事内容はさまざまですが、主に次のようなものが挙げられます。

・ソフトウェア製品(コンピューターを動かす仕組み)の開発や提供
・ハードウェア製品(コンピューターの土台となる機器)の開発や提供
・インターネットを介したWebサービスの開発や運営、提供
・ITインフラの構築や運用、保守

昨今のビジネスや私たちの生活には、ITが欠かせません。パソコンやスマートフォンに限らず、家電製品や信号機など、日常のさまざまなものはITを基盤としています。

こうしたITを支えるIT業界は、これからの日本になくてはならない業界です。

 

M&Aとは

IT業界に属するIT企業は、さまざまな経営課題に直面しています。これらの解決策として、有力となるのがM&Aです。

M&Aとは、合併(Merger)や買収(Acquisition)を通じて複数企業が統合を図る経営戦略を指します。

M&Aの実施にあたっては、買い手・売り手という2社間で取引を行います。買い手・売り手の業界は異なっても構いません。例えば、IT企業同士が統合することも、IT企業と他業種の企業が統合することも可能です。

日本のIT業界におけるM&Aの現状・動向

日本のIT業界におけるM&Aの現状・動向

M&Aは業界ごとに傾向が異なります。ここでは、日本のIT業界におけるM&Aの現状・動向について把握しましょう。

 

M&Aの案件数は大きく伸びている

近年のIT業界におけるM&Aの案件数は、大きく伸びています

経済産業省(委託事業)の調査報告書をもとに計算すると、IT系上場企業のM&A案件数は、2010年時点では約75件でした。しかし、2019年には約215件と、3倍近くにまで伸びています

また、上場企業全体のM&A案件数に占めるIT業界の割合は、2019年時点で14%です。 これは全業界の中で3番目に高く、IT業界ではM&Aが盛んに行われているといえます。

(引用:経済産業省|令和2年度産業経済研究委託事

 

M&Aの投資金額は比較的低い

IT業界M&A案件数他業種と比べても多い一方で、投資金額は低い状況です。

上記の調査報告書によると、2010~2019年度におけるIT系上場企業1社あたりのM&A投資金額は約9,000万ドルでした。 これは12業界中10番目にあたり、最高額の通信サービス(約6.9億ドル)と比べると8倍近くも差があります。

よって、IT業界のM&Aにおける投資金額はそれほど高くないといえるでしょう。

つまりIT業界では、小規模なM&Aが盛んに実施されている傾向があります。

IT業界のM&Aがもたらす主なメリット

M&Aを実施するメリットの大きさが、IT業界のM&A案件数を押し上げています。

IT業界のM&Aがもたらす主なメリットは、次の4つです。

 

優秀な人材や技術を取り込める

M&Aでは、両社の人材や技術、設備といった経営資源を統合します。そのため、別のIT企業とM&Aにより統合すれば、相手企業が持つ優れた人材や技術を取り込むことが可能です。

特に、人材確保が容易に行えるメリットは大きいでしょう。専門性の高いIT人材の供給は需要に追い付いておらず、人手不足に苦しむIT企業は多く存在します。

その点、人的余力のあるIT企業とM&Aを実施すれば、多くの人材を容易に確保できるでしょう。

 

後継者を見つけやすい

後継者問題を抱える企業は、IT業界に限らず数多く存在します。

しかしM&Aを実施すれば、後継者を見つけやすくなるでしょう。

これは、M&Aであれば社外のさまざまな人材を候補者にできるためです。自社や親族だけでは、後継者の選択肢が限られてしまうでしょう。

経営者の高齢化が進むIT業界にとって、事業承継(後継者への事業引き継ぎ)は重要な課題です。事業承継を実施できない場合、廃業を余儀なくされてしまうでしょう。

M&Aを実施し、後継者問題を解決できれば、廃業を防ぐことにもつながります。

 

組織再編を図れる

組織再編を図るうえでもM&Aは有効な手段です。

M&Aには、「合併」や「会社分割(事業の切り離し)」といった組織再編に使えるスキーム(手法)があります。

例えば、事業の統合による無駄の削減や、不採算事業の切り離しによる経営のスリム化も可能です。

IT業界では多重下請け構造の傾向が強く、課題を感じているIT企業も多いでしょう。相手企業の人材を含めて組織体制を再検討できるM&Aであれば、多重下請け構造から脱却できる可能性もあります。

 

成長戦略を実現しやすい

自社の成長戦略に合った相手企業を選んでM&Aを実施すれば、その実現が近づきます。相手企業の経営資源を活用することで、短期間で事業拡大や事業多角化を図れるでしょう。

例えば、IT企業が別のIT企業と統合すれば、拠点や開発プロジェクトを拡充して事業拡大を図れます。また、他業種の企業がIT企業と統合することで、短期間でIT業界に参入するのも可能です。

ゼロから事業を立ち上げるのと比べれば、コストや期間を抑えやすいでしょう。

IT業界におけるM&A事例4選【主なM&Aスキーム別】

IT業界におけるM&A事例4選【主なM&Aスキーム別】

IT業界においてM&Aが増加しているものの、具体的なイメージが湧いていない人も多いのではないでしょうか。

ここからは、IT業界のM&A事例を4つピックアップし、主なM&Aスキームの説明を交えて紹介します。

 

建設業A社とPCソフト開発B社のM&A【株式譲渡】

A社は、土木建設の調査や分析などを含む、建設コンサルタント事業を手掛ける企業です。

A社は自社サービスにITを取り入れるべく、IT企業のB社をM&Aにより子会社化しました。このとき採用したM&Aスキームは、「株式譲渡」と呼ばれるものです。

株式譲渡では、売り手経営者が保有する株式を買収することで、買い手が経営権を取得します。A社は、B社の株式を全て取得することで、完全子会社化しました。

これにより、B社の熱流体解析ソフトを自社サービスに組み込むことが可能となり、事業拡大につながっています。

 

モバイルアプリ開発C社と新聞社D社へのM&A【事業譲渡】

C社は、モバイルアプリやWebサービスを開発・提供するIT企業です。

あるSNSアプリを開発したものの、経営資源を投入する余裕がありませんでした。そこで、同SNSアプリを新規事業として、他社へ譲渡するためにM&Aを実施しています。

このとき採用したスキームは「事業譲渡」です。事業譲渡は、売り手の対象事業にまつわる資産や権利などを、全て買い手へ承継します。C社は、同SNSアプリを成長させる土壌が整っている新聞社D社へ事業を委ねました。

これにより、同SNSアプリの成長につながっただけでなく、経営資源の集中投入も可能となっています。

 

Web事業E社と同業F社のM&A【新設分割+株式譲渡】

E社は、交通関係のWebサービスを開発・提供するIT企業です。

E社は事業の多角化を図るべく、広告関係のシステムを開発するIT企業のF社から広告事業を買収しました。このとき採用したM&Aスキームは「新設分割」、そして前述の株式譲渡です。

新設分割では、売り手の事業を切り離して、新設した企業へ承継します。まずF社は広告事業を切り離して、新設したF’社として独立させました。次にE社が株式譲渡により、F’社が保有する株式を取得することで広告事業を獲得しています。

これにより、E社は自社サービスの収益性アップにつなげました。

 

Web事業G社と同業H社のM&A【株式交換】

G社は、フリーマーケット関連のWebサービスを開発・提供するIT企業です。

G社は事業拡大を図るべく、自動車関連のWebサービスを開発・提供するH社を子会社化しました。このとき採用したM&Aスキームは、「株式交換」と呼ばれるものです。

株式交換では買い手と売り手の株式を交換し、お互いが株式を保有し合うことで親子関係を構築します。買い手のG社が親会社、売り手のH社が子会社です。

これにより、G社はH社のWeb基盤を取り込むことに成功し、自動車分野への事業拡大を果たしました。

IT業界のM&Aを成功につなげるポイント

M&Aは、プロセスを適切に進められないと失敗に終わってしまうケースもあります。

IT業界のM&Aを成功につなげるポイントとして、次の3つを押さえておきましょう。

 

【買い手】売り手のリスクを事前に精査する

M&Aの買い手となる企業の場合、売り手のリスクを事前に精査しましょう。M&Aスキームによっては、資産や権利だけでなく債務を引き継ぐことになってしまいます。

売り手が都合の悪い情報を隠そうとするケースもあります。

そのため、買い手が十分な調査を行えなかった場合、売り手の債務に気付けないことも考えられるでしょう。買い手は、最終契約前にデューデリジェンス(リスク調査)を正確に行うことが大切です。

 

【売り手】買い手にとっての魅力を増やしておく

M&Aの売り手となる企業の場合、買い手にとっての魅力を増やしておきましょう。

M&Aは原則として、お互いにメリットがなければ成立しません。相手企業にメリットを提供できなければ、買い手を見つけることは難しいでしょう。

そのため、買い手に敬遠されるリスクを減らし、魅力を増やす努力を行いましょう。例えば、債務を極力整理したり、需要の高い許認可を取得したり、といったことが挙げられます。買い手に選ばれる企業を目指すことで、M&Aの契約成立が近づくでしょう。

 

【買い手・売り手】信頼のおけるM&Aの専門家に依頼する

M&Aの買い手・売り手にかかわらず、信頼のおけるM&Aの専門家に依頼することが大切です。M&Aには多くのプロセスがあり、さまざまな専門知識が要求されます。M&Aの経験がない場合、独力でM&Aのプロセスを適切に進めることは困難です。

そのため、M&Aを確実に成功させたい場合、専門家への依頼が欠かせません。

M&Aに特化した仲介会社やアドバイザリーといった支援機関を利用すれば、さまざまな専門家からアドバイスを受けられます。その結果、M&Aの成功率が大幅に高まるでしょう。

まとめ

IT業界におけるM&Aの案件数は近年大きく伸びており、小規模なM&Aが盛んに実施されている傾向があります。

人材や技術の獲得、後継者問題の解決など、IT業界のM&Aがもたらすメリットは大きいといえるでしょう。実際に、IT業界には紹介した以上に多くの事例が存在します。

ただし、M&Aの成功には豊富な専門知識が不可欠です。自社で適切な人材を確保できない場合、M&Aに特化した専門家に依頼しましょう。

IT業界のM&Aを自社だけで進められるか不安であれば、M&A・事業承継の実績が豊富な「M&Aベストパートナーズ」へお気軽にご相談ください。

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