M&Aストーリー
M&Aを実施する目的や背景は多岐にわたって存在するため、
ひとつとして同じ案件や事例は存在しません。
事業譲渡における登記は、状況によって必要・不要が分かれます。
さらに、免責登記など特殊なケースもあるため、正しく理解しておきましょう。
この記事では、事業譲渡の登記に関する基本的な知識を解説します。
どのようなケースで登記が必要か、必要書類や手続きの流れ、登記にかかる費用などについて気になる人は、ぜひ参考してください。
目次
事業譲渡は、自社の事業の全部または一部を、別の企業に移管する手法です。
ここからは、登記に関する基本的な事項から解説します。
登記とは、必要な情報を登記簿に記入する手続きを指します。
この手続きにより、権利関係などの情報を公に示すことが可能です。
登記簿は地域ごとの法務局によって管理されています。
なお、登記変更手続きは、登記簿に記載された情報に変更が生じた際に行う必要があります。
登記の主な種類は、不動産登記と商業登記です。
不動産の譲渡には「所有権移転登記」が欠かせません。
事業を他社の経営者に移行する場合には、不動産の所有権が変わります。
土地や建物の譲渡時には、所有権の移転を公にするために登記が必要です。
この手続きにより、所有権の正当な移転が明確にされるため、法的保護やトラブル防止につながります。
「商業登記」の場合は、基本的に登記手続きは不要です。
商業登記は企業の概要を公にする手続きであるため、法人格の消滅は伴いません。
一方で法人名を変更する場合には登記変更が必要です。
しかし、合併や会社分割などのケースでは、商業登記が必要となります。
この手続きを行うことで、企業の変更事項が公に記録されるため、会社の社会的な信用性が高まるでしょう。
「免責登記」とは、譲渡される事業の予期せぬ負債などから譲受側を守るための登記です。
免責登記により、譲渡先が急な負債に巻き込まれるリスクを軽減できます。
免責登記の詳細な書類や手続きについては後述しますが、この手続きを行うことで、譲渡取引の際の信頼性が向上するでしょう。
「登記原因証明情報」とは、事業譲渡における所有権移転時に使用される重要な文書です。
特に、不動産の所有権が譲渡される際に、売り手が申請書に添付します。この情報は、所有権の移転が適法であることを証明するため、譲渡の正当性を確保します。
この証明情報は法務局で管理されているため、認められた人しか閲覧できません。所有権移転の手続きが透明かつ適切に行われたことを示し、紛争や不正を防止します。
以前は「登記原因証書」と呼ばれていましたが、名称は2005年に変更されました。しかし、その役割と重要性は変わることなく、不動産の所有権移転において依然として欠かせない文書です。この証明情報により、事業譲渡の所有権移転手続きが合法であることを証明します。
次に、事業譲渡の所有権移転登記と免責登記において、必要な書類を解説します。
所有権移転登記を行う際に必要な書類は、以下の通りです。
登記申請書 | ・所有権移転手続きを申請するための書類 ・売り手と買い手の情報や譲渡の詳細が記載される |
登記識別情報 | ・不動産の名義変更された場合に、名義人に法務局から通知される書類(情報) |
固定資産税評価証明書 | ・譲渡対象の不動産の評価額を示す書類 ・所有権移転に伴う税金の計算に使用される |
印鑑登録証明書 | ・売り手の印鑑が登録されていることを証明する書類 ・個人は市区町村、法人は法務局が発行する |
住所を証する書面 | ・住民票の写し ・買い手の住所を証明するための書類 |
これらの書類は、所有権移転の合法性と透明性を証明できるため、不動産取引の信頼性を向上させる役割があります。
免責登記を行う際に必要な書類は、以下の通りです。
譲渡企業の承諾書 | ・譲渡先の企業が免責登記に同意することを示す書類 ・譲渡に伴う負債から免責されることを確認する |
譲渡企業の印鑑証明書 | ・譲渡企業の正式な印鑑が登録されていることを証明する書類 ・正確な印鑑使用を確認する |
譲渡企業の登記簿謄本 | ・譲渡企業の登記情報を示す書類 ・法的な組織情報や代表者の確認に使用される |
これらの書類は、免責登記の正当性を確認し、負債の移転に関する合法性を保証します。
免責登記は、譲渡先が負債から免除されるための手続きであるため、適切な書類の提出が必要です。
次に、事業譲渡の所有権移転登記と免責登記について、それぞれどのくらいの費用がかかるのか解説します。
不動産の移転する際は、登録免許税が必要です。
この税金は土地または建物の価格に対して2.0%が課税されます。
さらに、司法書士の依頼料や印鑑証明書の取得費用などの諸経費も考慮すべきです。
一般的な相場として、依頼料を含めた総費用は取引金額の約1~2%ですが、地域や具体的な事情によって異なるケースがあります。そのため、依頼する際は正確な見積もりを取得したうえで、慎重に計画することが重要です。
免責登記には、まず登録免許税として約3万円が必要ですが、これは申請書に収入印紙を貼ることで支払います。さらに、司法書士の依頼料やその他の諸経費も発生することも考慮しておきましょう。
一般的な相場としては、依頼料を含めた総費用は数万円から数十万円程度が一般的ですが、具体的な事情や手続きの複雑さによって異なります。そのため、正確な見積もりを取得したうえで検討することが重要です。
次に、事業譲渡における登記手続きの流れについて、5つのステップに分けて解説します。
登記手続きを始める際には、まず申請書を準備します。
フォーマットを用いて自ら作成することも可能ですが、専門家である司法書士に依頼することで時間をかけずにスムーズに行えるでしょう。
所有権移転登記と免責登記では、異なるフォーマットが必要とされます。そのため、専門家でなければどちらを用意すればよいか、混合してしまう可能性があるでしょう。司法書士の協力を得ることで、適切な申請書作成と手続きの遂行が保証されるので、スムーズな事業譲渡を実現できます。
登記申請書を作成したあとは、先ほど紹介した必要書類を準備することが重要です。
必要な書類には、身分証明書、法人登記簿謄本、固定資産税評価証明書などが挙げられます。これらの書類は正確で合法的な手続きを実現するために必要です。
なお、登記申請書への添付が必要な場合もあるため、事前に必要書類を整えることでスムーズに手続きが進められます。
必要な書類を揃えたあとは、登記申請書を管轄の登記所に提出します。
管轄外の場合、受け付けが拒否されるため、事前に所轄の登記所を確認しておきましょう。また、書面で申請する場合、登録免許税は収入印紙を台紙に貼付して納付する必要があります。手続きの円滑な進行と正当性を保証するには、適切な支払い手続きが必要です。
なお、不動産の登記事項証明書は、所有権移転登記が完了するまで交付されません。所有権の移転が正式に完了するまでの過程を確認したうえで、必要な書類や手続きの準備を着実に進めていきましょう。
登記申請書の審査結果は、登記所のウェブサイトや窓口に問い合わせる方法などがあります。
審査の目安期間は登記所や地域によって異なりますが、一般的には数日から数週間ほどです。
登記手続きが完了すると、登記完了証と登記識別情報が発行されます。
登記完了証は、事業譲渡の登記が正式に完了したことを証明する重要な文書です。登記識別情報は、事業譲渡に関連する情報や権利関係を含む書類であり、将来の取引や証明に使用されます。
これらの書類は、関係者との信頼性を構築するために必要です。受け取った書類は慎重に保管しておきましょう。
事業譲渡における登記手続きにはいくつかの注意点があります。
まず、商号を引き継ぐ場合、買い手側が売り手の未清算の負債を引き継ぐ可能性があるため、十分なリスク評価が必要です。過去には商号とともに負債を引き継いだ事例も存在します。自社にとって不利益な状況に陥らないためにも、負債の清算や評価を正確に調査することが大切です。
また、事業譲渡は複雑なプロセスを伴うため、事業譲渡の専門家である法律事務所や司法書士などの専門家のサポートを受けるようにしましょう。専門家であれば、書類作成から手続きの遂行まで一貫したサポートを行います。専門家のアドバイスに従い、適切な手続きを行うことで、トラブルや法的問題が未然に防げるでしょう。
事業譲渡において不動産が関与する場合、所有権移転登記が必要です。
所有権移転登記は自身でも行えますが、必要書類の作成や収集には手間がかかります。
そのため、専門家にサポートを依頼したほうが、手続きにミスがなくスムーズに進められるでしょう。
登記に関して不安を感じる人は、豊富なM&Aサポート経験を持つ「M&Aベストパートナーズ」へお気軽にご相談ください。
この記事は田渕司法書士・行政書士事務所様に監修して頂きました。
M&Aを実施する目的や背景は多岐にわたって存在するため、
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