2024年5月24日

【キャッシュフロー計算書の作り方】初心者でも分かるように解説

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【キャッシュフロー計算書の作り方】初心者でも分かるように解説

企業の健全な経営のために、キャッシュフロー計算書の作成は欠かせないと言えるでしょう。なぜなのでしょうか。本稿ではキャッシュフロー計算書の概要と作成のメリット、経営分析方法、作成方法などを解説します。理解を深めたい方は、ぜひ参考にしてください。

キャッシュフロー計算書とは

キャッシュフロー計算書は、賃借対照表や損益計算書と並んで、決算書の「財務三表」と呼ばれています。「C/F(Cash Flow Statement)」と省略して表記されることがあります。

企業の現金がどのように流れているか示すことができるので、「手元にある現金」の把握に役立ちます。

例えば、決算期をまたぐ売掛金は損益計算書に「売上」としてプラス表記されますが、キャッシュフロー計算書には、原材料費などが「支出」としてマイナス表記されます。

上場企業はキャッシュフロー計算書の作成が義務付けられています。しかし、自らの経営状況を把握するため、中小企業や個人事業主等も作成をおすすめします。

キャッシュフロー計算書の構成

キャッシュフロー計算書は、次の3つの区分で構成されます。

  • 営業キャッシュフロー

営業キャッシュフローは、当該企業の主要なビジネス活動による手元の現金の動きを表します。

  • 投資キャッシュフロー

投資キャッシュフローは、投資活動による現金の動きを表します。資産の購入や売却、剰余金の運用等がこれにあたります。

  • 財務キャッシュフロー

財務キャッシュフローは、金融機関からの資金調達・返済をはじめとした、営業と投資活動を支えるための現金の動きを表します。

では、次の項目で詳細に確認していきましょう。

営業活動によるキャッシュフロー

営業キャッシュフローは、当該企業の主要なビジネス活動による手元の現金の動きを表します。

営業キャッシュフローは、以下のような項目で構成されます。なお、計算方法によって項目表示に差異があります。計算方法については後述します。

【直接法】

  • 営業収入
  • 原材料または商品の仕入支出
  • 人件費の支出
  • その他の営業支出 など

【間接法】

  • 税引前当期純利益
  • 減価償却費
  • 有価証券売却損益
  • 売上利息および受取配当金 など

この項目の小計がプラスの数値になっている企業は、本業でしっかりと利益を出してキャッシュを手元に保有できている状態だと考えられます。

投資活動によるキャッシュフロー

投資活動によるキャッシュフローは、投資活動による現金の動きを表します。項目は次のとおりです。

  • 有形固定資産の購入
  • 有形固定資産の売却
  • 投資有価証券の取得
  • 投資有価証券の売却 など

ここでは、企業が将来的な成長を見据えてどれだけ投資ができているのかがわかります。成長している企業は、継続的に設備投資や資産運用を行うので、投資活動によるキャッシュフローはマイナスになる傾向があります。

財務活動によるキャッシュフロー

財務活動によるキャッシュフローは、金融機関からの資金調達・返済をはじめとした営業と投資活動を支えるための現金の動きを表します。

財務活動によるキャッシュフローは、次のような各項目で表されます。

  • 短期借入による収入
  • 短期借入金の返済による支出
  • 長期借入による収入
  • 長期借入金の返済による支出
  • 社債の発行による収入
  • 社債の償還による支出
  • 配当金の支払額 など

財務活動によるキャッシュフローのプラスマイナスの分析は、他の項目を見て総合的に判断する必要があります。

キャッシュフロー計算書の作成方法

キャッシュフロー計算書の作成方法

このようにキャッシュフロー計算書は、手元のキャッシュを把握でき、さらに経営状況の分析につながる便利な資料です。ここでは、キャッシュフロー計算書に掲載する数字の集め方を確認していきましょう。

直接法と間接法の違い

キャッシュフロー計算書の営業活動によるキャッシュフローの算出は、「直接法」と「間接法」と呼ばれる2つの手法があります。

「直接法」は、営業活動によるキャッシュの収入や支出の流れを総額で捉えた表示方法です。具体的には、主要な取引ごとにキャッシュフローの総額を表します。同じ営業活動の販売と仕入にかかった支出は、それぞれ別々に表示します。具体的な収支の内訳がわかりやすい点がメリットであり、国際会計基準においても推奨されています。手間と時間がかかる点がデメリットですが、今後、国内でも直接法に統一する流れがあることから、作成義務がある上場企業では「直接法」を取り入れていくのが望ましいでしょう。

一方、「間接法」は、現在多くの国内企業で活用されています。損益計算書の税引前当期純利益から、売上債権や仕入債務といった営業活動に関わる項目を加減して算出します。営業収入や費用を直接計算せず、税引前当期純利益から導き出すため、間接法と呼ばれます。時間や労力をかけずに作成することができますが、取引ごとの現金を把握しにくい点がデメリットでしょう。

なお、いずれの方法をとっても、営業活動によるキャッシュフローの最終的な値は一致します。

各活動別のキャッシュフロー計算

投資活動によるキャッシュフロー、および財務活動によるキャッシュフロー項目は、決算時点の勘定科目の残高から算出します。営業活動によるキャッシュフローのように、特段計算方法の区別はありません。貸借対照表や損益計算書の作成過程で、同時に数値を算出できるでしょう。

キャッシュフロー計算書の読み方

キャッシュフロー計算書は、読み方を知れば、企業の経営傾向を掴むことができます。ここではキャッシュフロー計算書の読み方について説明します。

キャッシュフロー計算書の分析ポイント

キャッシュフロー計算書の、営業活動によるキャッシュフロー、投資活動によるキャッシュフロー、財務活動によるキャッシュフローの3つの項目の、「プラス」または「マイナス」の並びを確認することで、企業の経営傾向を把握することができます。

次に代表的な5事例をご紹介します。

【優良企業の場合】

営業:+

投資:ー

財務:ー

営業キャッシュフローが、投資キャッシュフロー・財務キャッシュフローの数字の合計を大きく上回り、この二つの数値のマイナス分を補っている場合、非常に優良な企業と言えるでしょう。債務の返済が進んでいるため、財務項目はマイナスになります。

【成長企業の場合】

営業:+

投資:ー

財務:+

いわゆる成長企業の場合、調達した資金をフル活用して将来への投資を積極的に行います。投資活動のキャッシュフローは、大きなマイナスの場合もあるでしょう。

【ベンチャー・スタートアップ企業または、再建中の企業】

営業:ー

投資:ー

財務:+

まだ利益を生み出せていない企業、または再建中の企業が、この形に該当します。金融機関などから、資金調達したお金を使い、積極的に投資を行い、本業の売り上げを上げている過程でしょう。

【債務超過解消中の企業】

営業:+

投資:+

財務:ー

本業で得たお金と、資産の売却で作ったお金を、債務解消に使っている状態です。

【倒産の危険がある企業型】

営業:ー

投資:+

財務:+

要注意の状態にある企業が、本業の赤字を、固定資産等を売却し、穴埋めをしようとしている状態です。外部からの資金調達のため、投資と財務項目はプラスになるでしょう。

他の計算書との関係性

キャッシュフロー計算書は、ほかの財務三表(貸借対照表・損益計算書)と合わせて確認することで、詳細な経営分析をすることができます。

貸借対照表は、決算日時点の企業の財政状態を確認するための書類で、バランスシートとも呼ばれます。 損益計算書は、該当年度の収益と費用を計上することで、会社にどれくらいの利益があったのか示す書類です。

この3点の書類から、該当企業の「黒字倒産」の危険性や、当期の赤字は倒産に繋がるのか、読み解くことができるでしょう。

この他に、キャッシュフロー計算書の分析として、フリーキャッシュフロー項目を算出することで、分析ができます。フリーキャッシュフローとは、営業と投資のキャッシュフローを足した数値です。その金額が大きいほど、企業が安定して収益を上げる能力があることを示します。

キャッシュフロー計算書作成のメリット

キャッシュフロー計算書は、事業年度の手元の現金の把握や、企業の経営傾向を把握することができるほかにも、企業経営にとってさまざまなメリットがあります。

資金繰り管理への活用

キャッシュフロー計算書を作成をすることで、資金ショートを防ぐことができるでしょう。

資金ショートとは、手元の現金が枯渇し、経費等の支払いができなくなることです。資金ショートの原因は、コストの増加や、売掛金の増加などが考えられます。資金ショートを解消できない場合、そのまま倒産につながります。キャッシュフロー計算書で、現金の流れを把握し、資金ショートや、売掛金の未回収といった不測の事態に備え、適切な蓄えを検討することもできます。

経営判断材料としての活用

キャッシュフロー計算書は、事業の拡大や新規事業への投資に役立ちます。正確で詳細なキャッシュフロー計算書を備えおくことで、金融機関や市場からの信用を得やすくなり、設備投資や事業拡大のための資金が円滑に調達できるでしょう。

キャッシュフロー計算書作成ツール

キャッシュフロー計算書作成ツール

最後に、キャッシュフロー計算書作成に役立つ、無料で提供されているツールをご紹介します。

会計ソフトの活用

(中小企業庁トップページ>財務サポート>会計)

小冊子「中小企業の会計31問31答 平成21年指針改正対応版」に対応したExcelツール集です。2期分の決算内容を入力すると、キャッシュフロー計算書が自動で作成されます。

(日本公認会計士協会トップページ>専門情報>専門情報一覧>第21号)

当期と前期の貸借対照表と、損益計算書の一部を入力するだけで、キャッシュフロー計算書を作成することができます。

エクセルテンプレートの利用

(Microsoft Create>検索「キャッシュフロー計算書」)

月次の入出金を登録することで、キャッシュフロー計算書を作成できます。

まとめ

キャッシュフロー計算書は、企業の経営に欠かせない、重要な決算書類の一つです。

期間内の現金の流れと残金を把握でき、貸借対照表・損益計算書と合わせて、経営状況の分析ができます。

1番のメリットは、倒産につながる「資金ショート」を、未然に察知できることでしょう。また、詳細なキャッシュフロー計算書を準備することで、市場と金融機関から高い評価を得て、資金調達が容易になる可能性があります。作成が義務付けられていない、中小企業や個人事業主も、無料で提供されている、簡易に作れるツールを利用し、キャッシュフロー計算書を備えおくことをおすすめします。

M&Aベストパートナーズでは、様々な御社の経営に関するご相談をお受けします、ぜひ一度ご相談ください。 

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