2024年2月1日

コンクリート製造業界の現状とM&Aの動向について分かりやすく解説

MABPマガジン編集部

M&Aベストパートナーズ

Twitter Facebook
コンクリート製造の様子

コンクリート製造業界は、コンクリートを加工したり製造したりする事業です。

コンクリートの原料であるセメントの歴史は古く時代は明治初期まで遡り、ビルやダム、トンネルなど、社会基盤整備において広く貢献しています。

しかし、将来性が期待されるセメント産業・コンクリート製造業界において、近年は企業の吸収合併を行うM&Aの動きが多く見られます。

今回はコンクリート製造業の現状や抱える課題を元に、M&Aの重要性や実施のメリットを紹介します。

企業の永続的な成長を検討する場合、他の企業と連携する方法も検討しましょう。

コンクリート製造業界の現状

建築家土木で使用されるコンクリートのほとんどが「生コンクリート」という形で使用されています。

生コンクリートは、先述したセメントや混和剤、水等を混ぜて製造されており、ミキサー車で運搬し工事現場で活用します。

この製造方法が導入されたのは戦後1949年以降でしたが、そこから約10年で急速に発展し、1953年には品質基準を日本工業規格(JIS)で定めたことから一般化。現代においては、建築土木に欠かせない存在です。これらの仕事を一手に担う生産業者は多くが中小企業で全国で、2778社にものぼります。

しかし、コンクリート製造業界においては需要が低迷している現状を抱えています。

オリンピックや災害復興等、一時的な需要は見られるものの、少子高齢化により公共インフラ整備の必要性が低下すると、その未来は芳しくありません。また、少子高齢化は働き手にも大きな影響を及ぼします。未来を担う人材確保が追いついていない、直近の人手不足が顕著である、と各企業は課題を抱えています。

人手不足、事業継承の困難を解消するには、各企業が手を取り合って商品やサービスを提供する必要があるでしょう。

コンクリート製造業界のM&Aの動向と特徴

ここではコンクリート製造業界におけるM&Aの動向を考察します。

コンクリート製造業界におけるM&Aの動向は4つの課題解決をテーマに行われる傾向があるでしょう。

 

機械化によるコスト削減

各業界で機械化によるコスト削減が進んでいます。

経理や総務などバックオフィスを機械化することで、人件費削減やペーパーレスを推進しコストを減らし、価格に反映させる動きが顕著です。

その結果、M&Aを通じて機械化のノウハウを持つ企業と連携したり、自社が持つノウハウをより効率的に活かせる企業との連携したりといった動きが見られます。

 

経営者や技術者の高齢化

コンクリート製造業界における経営者や技術者の高齢化もまたM&Aの特徴として挙げられます。

コンクリートの規格化や需要が高まり始めた頃に働き始めた方は高齢化が進み、プレイヤーはもちろん、指導者としても退いているケースがほとんどです。

その後、技術を継承した方も高齢化が進み「技術の伝承や経営の継続が難しい」という企業も多く見られます。特に、近年は転職ブームや職業の多様化から人材の定着が難しい課題を業界問わず抱えています。

コンクリート製造業界においてもまた、後継者不足がM&Aを決定する要因となっているのです。

 

規格化による差別化が困難

コンクリートJIS規格により品質が保たれています。建築物は人の命にかかわるもののため、規格の決定は不可欠です。

しかし、品質の均一性が求められるからこそ各企業は差別化に課題を抱えます

特に官公庁関連の仕事になると差別化が困難になるため、それ以外の分野で独自性を高めるために異業種と連携し、新たな事業展開を行う動きも見られます。

コンクリート製造業界でM&Aが行われている背景

ここではコンクリート製造業界でM&Aが盛んに行われる3つの要素を解説します。

 

競争激化

1つ目に背景として挙げられるのが競争の激化です。

コンクリート製造業界では今後需要が緩やかに低下すると予想されており、顧客獲得が激化しています。企業間競争が顕著になると価格での差別化や納期での差別化などが起こります。

しかし、競争を生き抜くには現状の人員配置やコストのコントロールでの解決が難しくなるため、自社だけでなく他社や異業種の知恵を借りる必要が出てくるでしょう。

 

建築・インフラ需要増加

コンクリート製造業界全体での需要低下が見込まれる反面、一時的な需要が高まることもあります。

先の東京オリンピックや今後の大阪万博高速道路や新幹線の整備などで需要が高まります

その際、受注量が増えても人材不足で仕事を請け負えない企業もあるでしょう。

一時的な建築家インフラ需要もまたM&Aを加速させる要因です。

 

技術革新と持続可能な企業活動への着手

近年は業界を問わずDX(デジタル・トランスフォーメーション)が推進されています。

デジタル技術の活用を行い、従来の業務の効率化だけでなく事業の在り方に革新をもたらし時代の流れやニーズに適応します。DXの推進は企業理念やビジョン、事業計画にまで着手する大掛かりな取り組みのため、専門性が不可欠です。

そのため、同業種だけでなく全くの異業種と連携して最新技術の導入や持続可能な企業への変化を行うことの重要性もまた、M&Aの重要性を高めています。

建築現場

 

コンクリート製造業界のM&Aの目的とメリット

ここではコンクリート製造業界においてM&Aを実施するメリットを紹介します。

M&Aは譲渡企業買収企業双方に複数のメリットをもたらします。

譲渡企業が得られるメリット買収企業が得られるメリット
・財政状況の改善が期待できる
・自社のノウハウ継承が期待できる
・従業員の雇用を継続できる
・新規事業や市場開拓ができる
・売却益を得られる
・市場占有率の拡大
・新規事業展開
・差別化への着手

 

譲渡企業

譲渡企業としては下記のメリットを享受できます。

・財政状況の改善が期待できる

・自社のノウハウ継承が期待できる

・従業員の雇用を継続できる

・新規事業や市場開拓ができる

・売却益を得られる

M&Aを検討する場合、多くの企業が財政状況や将来性に不安を抱えています。

勢いのある企業とM&A契約を進めることで、財政状況の改善や自社のノウハウ継承が可能になるでしょう。また、財政難から人材の削減を検討している場合においてもM&Aを進めると雇用を継続でき、従業員の生活を守れます。さらに、買収先の販路やノウハウとのシナジーによっては新規事業への着手も叶うでしょう。

 

買収企業

M&Aのメリットは買収企業にもあります。具体的には下記の通りです。

・市場占有率の拡大

・新規事業展開

・差別化への着手

コンクリート製造業界においてはJIS規格が設けられていることから商品の差別化が難しいデメリットを抱えています。そのため、価格競争が目立ちコスト削減の動きが高まっています。

特に中小企業の場合は大手と比較して立場が弱く、資金力も限られることから市場占有率を拡大するためにM&Aは効果的です。また、異業種や独自性を持つ企業を買収すると、新たな事業展開や差別化のきっかけにもなり得ます。

 

コンクリート製造業界のM&Aをする際のポイント

M&A実施においては下記3つに注意が必要です。

・方向性の一致

・従業員への理解

・情報管理

M&Aを行う大きな目的としては「事業の維持や発展」があります。

企業を上向きにするには2社間で認識の齟齬を無くす必要があります。「どのような層を獲得するか」「どのようなビジョンを描いて統合を進めるか」とゴールを統一し、納得した上で契約を進めましょう。また、既存従業員に理解を求めることも欠かせません。

従業員が納得できる説明を行わなければ退職が頻発する可能性もあるでしょう。さらに、M&A実施においてはセンシティブな情報を多く扱うため情報漏洩を防ぐ管理も大切です。M&Aは様々な段取りを踏み進めるもののため、第三者である専門家のサポートを受けながら実施がおすすめです。

コンクリート製造業界のM&Aの売却価格相場

M&A実施に際し、多くの企業が不安を抱える点に価格があります。

「これまで力を入れて伸ばしてきた自社が買い叩かれたらどうしよう」と、明るい見通しを持てないこともあるでしょう。一般的にM&Aの売却価格は下記の要素を加味して決定します。

・純資産

・M&A後の利益

・市場価値

・ノウハウや既存顧客などの無形資産

価格の代表的な算出方法としては2つあります。1つ目は帳簿情報を元に純資産から負債を差し引き、将来性や無形資産を加味した上で価格を決定する方法です。2つ目は株価や市場の動向から譲渡する会社の価値を決定する方法です。企業の性質や扱う商品によって有利な方法が異なるため、専門家のアドバイスを受けながら進めることが必要でしょう。

特に、希少価値が高いノウハウを保有している場合は正しく価値を見積もってもらうことで、納得の行く契約が行えます。

 

コンクリート製造業界のM&Aの事例

ここからはMABPが実際にサポートを行った事例を紹介します。

事例からM&Aの注意すべき課題や明るい未来が見えてくるでしょう。

【コンクリート製造業】株式会社横浜システック様

株式100%譲渡を実施した株式会社横浜システック様は横浜と名古屋を中心に事業展開を行う企業です。コンクリートを使った建造物の補修や延命を広く行い、地元から首都圏まで広く事業展開を行っていました。

元々は老舗の建設会社にて働いていた3人で設立した、というチームワーク抜群の会社。設立から3年程は東海道新幹線の補修工事がメイン事業でした。そこから少しずつ取引先を増やし、2008年には横浜に自社社屋を構え、人員を増加して本格的に事業を発展させていきます。そして、売上は右肩上がりで横浜から静岡、名古屋と西へエリア展開を広げていきます。

しかし、事業が安定する反面で課題となるのが人材不足や後継者問題でした。売上の上昇を目指すには優秀な人材と後継者の育成が不可欠です。そこに不安を感じたことから横浜システック様はM&Aを検討。「自社の良さを活かしながらさらに上積みを目指せる会社を紹介してほしい」との熱い思いを受け、MABPは動き出しました。

そこからは候補先4社と2日にわたり面談を実施。複数の候補先から選ばれたのはコンクリート事業と不動産事業を展開する横山産業様でした。横浜システックの菅社長は、面談時に横山産業様が5〜6人と多くの社員で来られたことを受けて「他の企業とは熱量が違う」と感じ、M&Aを決意。実際に面談では横浜システック様の高い技術力と、横田産業様の将来性がマッチし、契約に至りました。

じっくりと面談を進めることで社内において大きな混乱が見られず、M&Aの影響で退社した社員はゼロという結果も出ています。

横山産業様が横浜システック社員の前で「資本の論理だけで経営を行っていない」と話して下さったことも2つの会社が1つになるために重要な要素であったと考えられます。実際に契約後に意見が覆るといったトラブルもありませんでした。M&Aにおいて、利益重視でなく内部体制に配慮した上で進めることが大切だと分かります。

また、M&Aにおいてはしばしばバックオフィス業務の統合が要になると言われていますが、この事例では「自社の課題やお客さまの要望、社会的ニーズに合致した結果としてM&Aに至った」というものが見られます。

管理体制だけでなく「企業が社会やお客さま、従業員などステークホルダー全体に対してどうあるべきか」を意識すると高いシナジーに結びつく契約ができるでしょう。

コンクリート製造業界のM&Aの動向やメリットを理解する。

コンクリート製造業界未曾有の災害や、社会の発展など社会基盤を担う存在です。

そのため、今後も需要が期待されるでしょう。しかし、従業員の高齢化や技術伝承が遅れているといった新たな課題も抱えることから、多職種間で手を組み課題解決や企業の発展を目指す必要があります。同業種はもちろん、DX推進やノウハウ伝承に強みを持つ業界との連携も検討しましょう。

その具体的な方法としては自社に不足する課題をM&Aで補い、かつ自社の強みを買収先に提供することが挙げられます。双方がメリットを享受し、変化に富んだ現代社会で企業発展を目指せます。

著者

MABPマガジン編集部

M&Aベストパートナーズ

M&Aベストパートナーズのマガジン編集部です。

M&Aストーリー

M&Aを実施する目的や背景は多岐にわたって存在するため、
ひとつとして同じ案件や事例は存在しません。

Preview

Next

製造、建設、不動産、
医療・ヘルスケア、物流、ITのM&Aは
経験豊富な私たちがサポートします。