M&Aストーリー M & A Story
株式会社横浜システック

「コンクリート事業」つながりで抜群の相性、双方満足のM&Aを実現。

会社名
株式会社横浜システック
業種
コンクリート構造物工事に関わるコンサルタント業、コンクリート構造物の補修・補強工事業、土木工事業
M&Aで達成した内容
更なる事業拡大
M&Aアドバイザー
永沢 渉

M&Aに至る背景コンクリ-ト補修事業へ純粋に取り組み20年、さらなる事業拡大を狙うも人材不足に直面。

M&Aに至る背景
今回のM&Aにおいて、株式を100%譲渡したのは横浜と名古屋で名を馳せるコンクリ-ト補修会社の株式会社横浜システックだ。既存のコンクリート構造物を延命させるために、補修をさまざまな工法で行っている。

同社の代表取締役社長 菅一仁氏は会社の創業から成功までを次のように語る。

「老舗の補修大手の系列の建設会社にいた3人が独立し、2002年8月に会社を設立しました。最初の3年ほどは、以前勤めていた顧客に関係している東海道新幹線の補修工事から始めました。
昭和39年の東京オリンピックに間に合うように作られた東海道新幹線の完成を皮切りに、東名高速道路をはじめとした巨大なコンクリート構造物が増えました。それから50年から60年が経ち、構造物が傷み始めたところで補修工事が当時、さかんに出始めました。やがてリピーターも増えてきて、徐々に成長。2008年4月、横浜市に自社社屋を建て、人員も増やしました」

安定した経営のさなか、2009年頃より、西への進出を始めることになる。名古屋で一般道路、高速道路を対象とした道路中心に補修工事を請け負い、売上は右肩上がりとなり、横浜本社に追いついていった。さらに、新しい工法をひっさげて、静岡で国道の仕事を受注し、同社は順調に成長していった。

そうした中、設立から20年ほどが経過した時点で同社はM&Aによる株式譲渡を検討しはじめた。大きな課題は、人材不足による売上の停滞。さらに現顧問(M&A前は代表取締役会長)が60代を目前としていたことから、次世代への継承や人材面のサポート、金銭面のバックアップの必要性を感じていた。

MABPのアドバイザーの一人、永沢は、同社の顧問と初めて会って打ち合わせをした2022年1月下旬、M&Aに対する要望を聞いた。それは「現在の横浜システックの良さを活かしながら、さらなる上積みを目指せる会社を紹介してほしい」というものだった。

そこで永沢は、M&A後に良いところを伸ばしながら、シナジーが生まれる会社を探して提案した。横浜システックは、客観的に見ても人材さえ確保できれば売上は簡単に上げられる状況だったため、課題の要因である人材面を全面的に解決できそうな相手を優先的に提案した。

M&Aの経緯三本目の柱としてコンクリート補修事業を選択、一目で刺さった運命の出逢い。

2022年6月、横浜システックは譲受け候補企業4社と2日間に渡り、面談を行った。

菅氏は、当時をこう振り返る。「通常、買い手は2名などで来られることが多いと思いますが、横山産業さんだけ、社外の方も含めて5〜6人で来られました。そこは熱意が違うと感じました」

横山産業は、このほど横浜システックの譲受企業となった生コンクリート事業、不動産事業を行う会社だ。

「三本目の柱となるコンクリート補修事業会社を探していたんです」そう話すのは、横山産業の取締役 総務部長 門田誠一氏である。

同社は1964年(昭和39年)10月に設立。横山靖之現会長が自動車整備工場を立ち上げたのが始まりだった。当時の横山現会長は、東京オリンピックを契機にさまざまな構造物が作られていったのを見て、「生コンクリートを作ったら売れる」とひらめいた。そこで一本目の柱である、生コンクリートを製造するプラントを建設。当時からM&Aを積極的に行い、近隣のコンクリート会社や工場を買収して規模を拡大していった。この生コンクリート事業だけで現在は売上高約50億円。駅やスタジアム、物流、マンションの現場などに納めている。

二本目の柱として、投資用マンション販売を始めたところ成功し、不動産事業部を立ち上げたのが1995年のこと。現在は年商50億円ほどの事業に成長した。

生コンクリート事業と不動産事業の二本柱によって、売上高は約100億円。さらなる事業拡大を展望し、三本目の柱を検討していたが、なかなか定着しなかった。そうしたなか、横山現会長より声がかかったのが門田氏だった。

「現会長から三本目の柱を考えろと言われ、探していたところ、生コンクリートと親和性のある補修事業があることを知りました。20年以内に南海トラフ地震が高い確率で起こるのではといわれていますが、阪神・淡路大震災の二の舞になると不安になりました。傷んでいるコンクリートを早急に補修したいと考えたのです。
そこで、このような決裁書を作りました。『3年でコンクリート補修事業社を5〜6社買って売上を50億にする』。現会長はすんなり承認してくれたため、新事業に向けて舵を切りました」

やがて、MABP永沢と面会した際、門田氏の心に唯一、刺さったのが、横浜システックだった。

「我々がどこかの生コン会社に運んで固めた構造物を丁寧に補修していただいている、コンクリートを大事にしてくれている会社があると知り、本当にありがたく、嬉しく、つながりを感じました」

そうして永沢は、横山産業から横浜システックのトップと打ち合わせをさせてほしいと依頼を受け、面談をセッティングした。

M&Aの決断「コンクリート」という共通のキーワードとちょうどいい距離感でマッチング

M&Aの決断
初面談を終えた後の当時について、横浜システック代表 菅氏は次のように振り返る。

「横山産業さんはコンクリートという共通のキーワードがありました。また、ちょうどいい距離感でした。コンクリートに関係しているけれど、建設業ではない。とはいえ、まったく知らない世界ではない。並列しているというか、ぶつからず、ちょうどいいバランスだと感じました」

また同社の専務取締役 五十嵐勉氏は、次のように述べた。

「我々の意見を聞いてくれたのも好印象でした。当社は20年経って信用もできましたが、世代交代を迎え、人材不足で八方ふさがりになっていました。何かしらバックアップしてくれる存在が必要という事情について、横山産業さんは理解を示していただきました」

その後、双方が決断し、最終契約に至ったのは2022年11月9日のことだった。特に大きなトラブルもなく順調に進んだ。

M&Aの振り返りと展望親会社の強力なバックアップを確保、人材確保によりさらなる事業拡大を目指す。

M&Aの振り返りと展望
契約後、2社は、確実に新しい未来へ向けて動き出している。

横浜システック 菅氏は、次のように展望を述べる。

「本業である建設業の仕事はこれまで通り、我々のやり方で継続してやらせていただいているので、それをこなしていきます。そこに人材とシステムを横山さんにサポートしていただきながら肉付けして、会社規模を2倍、3倍にしていきたいと思っています。
戸惑いはゼロといえば嘘になります。ただ、これからの10年先を見据えて、会社の方向性を考えていただいているので、ありがたいです」

また横浜システック 五十嵐氏は、社員の待遇面について次のように話す。

「社員には、今回の譲渡についてぎりぎりまで知らせていませんでした。ただ、今回のことで皆、役職が上がり、それぞれの管理職に抜擢された社員は、皆、給料が上がっています。さらに休日は20日程度増えています。社員にとってはプラスになることしかないので、彼らの不安を払拭できました。
M&Aを機に辞めた社員もいません。横山会長が横浜システック社員の前で語っていただいた際に、『この人は資本の論理だけで会社経営を行ってはいない』ということが、社員にも伝わったのではないでしょうか。門田さんも契約通りに進めていただき、後から意見を覆すこともありませんでした」

こうした意見を受け、横山産業 門田氏は次のように返した。

「会長ともども、横浜システックさんも当社も含めて、皆、家族のように思っています。
また、私自身は常々、ナンバーワンの会社になりたいと思っています。規模だけではなく、クオリティについても『あの会社を除いては語れない』という会社にしたいのです。そのような会社になるためにどうするか?という判断基準で動いているので、意見を覆すといったことはしません。ナンバーワンになるには、一人ひとりを大事にするしかないからです。皆で同じ船に乗ってそこへ向かいましょう、と。3年後くらいには、きっと有名になっているはずです」

また横浜システック 菅氏には描いていた夢があった。

「名古屋にいた際に、自分が現役を去るまでのストーリーをずっと考えていたんです。名古屋からさらにエリアを広げて、大阪、広島と進んで、最終ゴールは九州まで制覇したいと。人材不足等で一時はあきらめていましたが、横山産業さんのおかげで、一回、眠りかけた夢がまた動きました」

これに対して門田氏は「菅社長の目標を達成すべく、具体的な手を打ち始めています。おそらく、1年以内には九州に到達してしまうのでは」と返した。


これからM&Aを行う企業へM&A成功の秘訣は技術と信頼を高めていくことだけ

今回の事例は、相性抜群で双方が納得の上で成立したM&Aの成功事例といえる。これからM&Aを行う企業に対して、うまく進めるためのアドバイスをもらった。

今回、横浜システックの取締役会長に就任した、横山産業 取締役の重松伸也氏は、次のように語った。

「M&Aは、法務や労務、会計などがコアだと言われますが、実際は違うと考えます。横浜システックの菅社長や五十嵐専務がしっかりと行われている仕事の受注と技術、いわゆる「事業」が最も大事ではないでしょうか。お客さんが信頼して、技術があって、社員がいる。これ一本だと思います。法務や労務、会計などはどの会社も法令通り、税理士がついて行っているものです。
もし譲渡企業にアドバイスをさせていただくのであれば、人と技術を高め、他社より競争力のあるものをつくることが、M&Aを成功させるために最も大事なことだと思います」

この意見を受け、横浜システック 菅氏は、次のように述べた。

「我々は、自分の会社を譲渡する前提で商売をやっていません。たまたま今回、お譲りすることになりました。そもそも譲渡するためによく見せるために何かをやろうとしたことは一度もないですし、本業だけをぶれずにやろうというのは、創業当時から今も変わっていません。そして本業に集中してきた結果、今、高評価をいただきました。我々はただお客様に要望されたステップに応え、満足させてきただけです」

M&Aストーリー

M&Aを実施する目的や背景は多岐にわたって存在するため、
ひとつとして同じ案件や事例は存在しません。

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