2023年8月23日

事業売却すると従業員はどうなる?トラブルを避けるためのポイントを理解しよう

MABPマガジン編集部

M&Aベストパートナーズ

Twitter Facebook
事業売却すると従業員はどうなる?トラブルを避けるためのポイントを理解しよう

企業体制の見直しや経営のスリム化といった目的で、「事業売却(事業譲渡)」を検討している経営者は多くいます。

しかし、事業を他社へ売却することによって従業員はどうなるのか、不安に感じているのではないでしょうか。

本記事では、事業売却において従業員がどうなるのか、基本からわかりやすく解説します。

トラブルを避けるためのポイントもお伝えするため、ぜひ参考にしてください。

そもそも事業売却とは何かを詳しく知りたい人には、以下の記事も参考になるでしょう。

事業売却が行われると従業員はどうなる?

事業売却が行われると従業員はどうなる?

まずは、事業売却によって従業員へ与える影響について解説します。

従業員とのトラブルを避けるうえでは、以下の内容について正確に把握することが大切です。

 

買い手企業の労働契約に移行する

売却された事業に所属する従業員の働き方も、買い手企業の経営方針に従うことになります

就業規則が変わるため、始業時間や終業時間、休暇のルールなどが変更になる可能性があるでしょう。

また、買い手企業の経営者が体制変更や配置転換を行う場合は、別の仕事内容に変わることも考えられます。場合によっては、勤務地も変わるでしょう。

一方で、買収した事業を独立的に扱う経営方針の場合、それほど大きな変更点はないと考えられます。

 

退職金や厚生年金の扱いは契約によって異なる

退職金や厚生年金も、基本的には買い手企業に移行します。

しかし、事業売却される前に働いていた従業員には、これまで積み上げてきた退職金や厚生年金があるでしょう。

これまで積み上げてきた退職金や厚生年金の取り扱いは、事業売却の際に締結した契約内容によって異なります。買い手企業に引き継がれる場合は、持ち越すことが可能です。

また、事業売却が行われる際に積み上げ分を清算し、改めて積み上げ始めるケースもあります。

 

従業員は買い手企業への雇用移行を拒否できる

原則として、事業売却によって買い手企業へ従業員の労働契約を移行する場合、本人の合意が必要です。

一般的に、事業売却前には経営者から従業員へ雇用契約の移行について説明を行いますが、納得できない従業員は拒否できます

勤務地が遠くなったり、望まない仕事内容の変更が行われたりすると、従業員の理解が得られない可能性があるでしょう。

この場合、売り手企業の経営者は、自社で雇用を継続できないか模索するか、別事業への異動を検討する必要があります。

従業員から見た事業売却のメリット

事業売却を行えば、従業員は大きな影響を受けるでしょう。しかし、従業員にとって悪いことばかりではありません。

以下では、従業員の視点で事業売却のメリットを紹介します。

 

職を失わずに済む

事業売却が行われる場合、基本的に買い手企業の基で雇用が継続されます。そのため、売却された事業の従業員が失職するケースは少ないといえるでしょう。

事業売却によくある目的として、採算が取れない事業を切り離すことによる経営のスリム化があります。

この目的を掲げる企業は、経営状況は思わしくないケースが大半です。仮に事業売却を行わなかった場合、経営がますます苦しくなり企業全体が存続できなくなるケースも考えられます。

事業売却を行えば、従業員の失業を回避できるため、結果として従業員を守ることができます。

 

雇用条件や労働環境が改善する可能性がある

前述の通り、雇用条件や働き方は買い手企業の方針に従うことになります。

買い手企業の雇用条件や労働環境が良好であれば、以前よりも好条件で働ける可能性があるでしょう。

例えば、給与やボーナスが上がったり、福利厚生が充実したりすることが考えられます。

 

新しいキャリアに出会える可能性がある

買い手企業の経営方針で配置転換が行われる場合、従業員は未経験の仕事を任されることもあります。

一見すると、デメリットのように感じますが、新しいキャリアに出会えるという捉え方も可能です。

また、買い手企業の人事が優れていれば、各従業員の能力を引き出せる配置が行われる可能性もあります。

 

従業員から見た事業売却のデメリット

事業売却されることで、従業員はメリットを得られますが、デメリットも存在します。

以下では、従業員の視点で事業売却のデメリットについて解説します。

 

経営統合に伴う負担・ストレスが大きい

従業員にとっては、売り手企業の経営方針から、買い手企業の経営方針に変わるため、負担・ストレスが大きくなりやすいといえます。

業務のフローや仕事内容、チーム体制など、さまざま変化に対応しなければなりません。

そのため、売り手企業の働き方に慣れていた従業員は、大きなストレスになると考えられます。

また、勤務地が変われば親しい従業員と分断されるケースもあるでしょう。経営統合に伴う負担やストレスに耐え切れず、離職につながる可能性も考えられます。

 

雇用条件や労働環境が悪化するリスクもある

少なからず、雇用条件や労働環境が悪化するリスクもあります。

例えば、人手不足の部署に配属された場合、残業や休日出勤が急増するケースもあるでしょう。また、評価制度が変更されたことで、これまで高い評価を受けていた従業員の査定に悪影響が生じる可能性もあります。

雇用条件や労働環境の変化は、事業売却時の契約次第で大きく異なるため、従業員によって感じ方は異なるでしょう。ただし、意図的に労働条件を下げることは相応の理由が必要となるため、それほど多くないといえます。

 

整理解雇のリスクもゼロではない

珍しいケースではあるものの、従業員が整理解雇されるリスクもあります。

整理解雇とは、事業を継続するうえで人員を限定化することです。従業員が買い手企業への移行を拒否した場合、売り手企業の経営者には継続雇用のプランを考えることが求められます。

しかし、経営者が雇用の余地なしと判断した場合、会社都合で退職せざるを得ないでしょう。ただし、法的に正当な解雇と認められるには条件が厳しいため、安易に整理解雇はできません。

事業売却で従業員を引き継ぐ大まかな流れ

事業売却で従業員を引き継ぐ大まかな流れ

売り手企業は、買い手企業や従業員に迷惑をかけないためにも、事業売却で従業員を引き継ぐ流れについて、把握しておくべきといえます。

 

従業員への周知・意思確認

前述の通り、従業員を買い手企業へ引き継ぐうえでは本人の同意が必要です。まずは、事業売却のプランについて対象の従業員へ周知し、各人の意思確認を行いましょう。

雇用条件や勤務地、想定される仕事内容など、伝えられる情報はできる限り伝えます。ただし、一般的には買い手企業と秘密保持契約を交わすため、伝える内容には注意が必要です。

説明したうえで一定の期間を設けて、合意・拒否の意志を確認しましょう。

合意有無によって、その後の対応が変わるため、従業員への周知・意思確認はできる限り早めに行ってください。

事業売却の契約を確定させる前には、従業員の意思をひと通り再確認する必要があります。

 

【合意あり】労働契約の移行に向けた調整

従業員から合意を得られた場合は、労働契約を買い手企業へ移行するための調整を行いましょう。

労働契約を移行する前に、従業員と労働組合を交えての事前協議が必要です。未払い給与や退職金への対応も含めて、細かい条件を明確にしておきましょう。

協議を進めていくなかで、納得できない労働条件が判明した場合は、従業員の意思が変わる可能性も考えられます。そうなれば、今まで従事してくれた従業員が離職することになってしまいます。

そのため、売り手企業の経営者は、労働条件をできる限りよい方向に改善するように努め、従業員の不満を減らすことが大切です。

 

【合意なし】別プランの検討・調整

従業員が買い手企業への雇用移行に納得せず、合意が得られない場合は別プランの検討が必要です。

基本的に、整理解雇は最終手段と考えましょう。正当な理由なしに解雇を通告した場合、訴訟に発展するリスクもあります。

売り手企業の経営者は、自社で引き続き雇用を継続できないか買い手企業の労働条件を調整できないか、など別プランを検討しましょう。

 

従業員の承継

売却する事業における全従業員への対応が確定した後は、従業員の承継を実施しましょう。

雇用移行に合意した従業員に対しては、労働契約の移行手続きにより買い手企業へ承継します。合意を得られなかった従業員に対しては、配置換えといった個別の手続きが必要です。

事業売却において従業員とのトラブルを避けるためのポイント

事業売却において従業員とのトラブルを避けるためのポイント

事業売却の手続きを進めるうえで、従業員とのトラブルが発生する可能性もあります。

従業員とのトラブルを避けるには、以下で紹介するポイントを押さえておきましょう。

 

合意の強要・虚偽は厳禁

事業売却に伴う雇用移行に合意が得られないからといって、強要や虚偽を行うことは厳禁です。

原則として従業員の合意には、確実に本人の意思が反映されなければなりません。民法第九十六条では、「詐欺や脅迫による意思表示は取り消せる」とされています。

(出典:民法 第九十六条(詐欺又は脅迫)

従業員の合意が取り消された場合、事業売却の取引に大きく影響するでしょう。先述した通り、従業員の合意が得られない場合は、別プランを検討する必要があります。

 

リストラ目的の事業売却は厳禁

特定の従業員をリストラ(整理解雇)する目的で事業売却を行うことは厳禁です。

リストラは相応の理由が求められるものであり、余程のケースでなければ行えません。事業売却をリストラの手段として利用することは避けましょう。

なかには、リストラしたい従業員を売却予定の事業に異動させ、事業売却によって自社から切り離すケースもあります。これは事実上のリストラであり、従業員から訴訟を起こされるリスクがあるため注意しましょう。

 

労働組合を交えて十分な事前協議を行う

労働組合を交えて、十分な事前協議を行うことが大切です。

厚生労働省の告示でも、労働組合との協議により従業員から事業売却への理解を得ることが推奨されています。

事前協議では、事業売却の背景や理由、事業売却の対象範囲などについて説明しましょう。

また、労働組合から団体交渉の申し入れがあった場合も、応じる必要があります。

 

未払い賃金や退職金について確認する

お金まわりは、トラブルになりやすい要素です。

特に未払い賃金や退職金は、売り手企業だけでなく買い手企業との調整も必要になるでしょう。

事業売却後に認識違いが生じないように、売り手・買い手・従業員・労働組合で認識を合わせておきましょう。また、有給休暇の扱いについても議論しておく必要があります。

 

不安があれば事業売却の専門家に相談する

事業売却におけるトラブルを避けるには、専門家に相談することがおすすめです。

自社が考える事業売却の戦略に問題があると、買い手企業との交渉が難航しやすいといえます。また、事業売却の実施については、従業員だけでなく株主や取引先からの理解も得なければなりません。

そのため、さまざまなステークホルダーの理解を得られるような理想の事業売却は、未経験であれば実現は難しいでしょう。

事業売却やM&Aを熟知した専門家であれば、適切な戦略の立案や交渉に関するアドバイスなど、幅広いサポートを受けられます。

経営者だけで悩まずに、プロにサポートを求めることが事業売却を成功させるための最大のポイントです。

まとめ

まとめ

事業売却が行われると、対象事業は買い手企業へと承継されます。従業員の労働契約も買い手企業へと移行するため、雇用条件や労働環境が変わる可能性もあるでしょう。

売却される事業の従業員にとっては、基本的に職を失わずに済む、新しいキャリアに出会える可能性がある、といったメリットもあります。

しかし、経営統合に伴う負担・ストレスは増大しやすいです。

事業売却にあたって従業員とのトラブルを避けるには、合意の強要や虚偽、リストラ目的の事業売却などは行わないことが大切です。

「M&Aベストパートナーズ」では、事業売却を含むM&A・事業継承の豊富な実績があります。

「事業売却で従業員とトラブルにならないか不安」といったお悩みがあれば、お気軽にご相談ください。

著者

MABPマガジン編集部

M&Aベストパートナーズ

M&Aベストパートナーズのマガジン編集部です。

M&Aストーリー

M&Aを実施する目的や背景は多岐にわたって存在するため、
ひとつとして同じ案件や事例は存在しません。

Preview

Next

製造、建設、不動産、
医療・ヘルスケア、物流、ITのM&Aは
経験豊富な私たちがサポートします。