IT業界でM&Aをするメリットは?M&Aの現状や成功のポイントも詳しく解説

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M&Aベストパートナーズ MABPマガジン編集部
IT業界のM&A動向とは?基礎知識や成功ポイントについて理解しよう

常に技術の進歩を続けるIT業界では、M&Aを行う企業が増えています。
しかし、M&Aがどのようなものか詳しく理解していない方もいるのではないでしょうか。

この記事では、IT業界におけるM&Aの現状と動向について、M&Aの専門家が詳しく解説します。

併せて、M&Aによって得られるメリットや成功させるためのポイントも解説します。M&Aによって資金調達をしたり、事業拡大を目指したりしている経営者の方は、参考にしてみてはいかがでしょうか。

日本のIT業界におけるM&Aの現状と動向

近年、IT業界でのM&Aは増加傾向にあります。
IT業界で行われているM&Aの現状と動向について、詳しく解説します。

M&Aの案件数は大きく伸びている

IT業界のM&A件数は、近年大幅に伸びています。

経済産業省が主体となって調査した「コーポレートガバナンス改革を踏まえた 価値創造に資する合併と買収に関する実態調査」によると、株式を上場しているIT系企業のM&A案件数は、2010年時点では約75件でした。しかし、2019年には約215件と、約3倍近くにまで増加しています。

また、上場企業全体のM&A案件数に占めるIT業界の割合は、2019年時点で14%となっています。全業種の中でも4番目に多く、IT業界ではM&Aが盛んに行われていることがわかります。

M&Aの投資金額は比較的低い

IT業界のM&A案件数は他業種と比べても多い一方で、投資金額は低いです。

コーポレートガバナンス改革を踏まえた 価値創造に資する合併と買収に関する実態調査」によると、2010~2019年度に行われたM&Aのうち、IT系上場企業1社あたりの投資金額は約9,000万ドルでした。 最高額の通信サービス(約6.9億ドル)と比較したとき、大きな開きがあります。

M&Aの割合が多いにもかかわらず投資金額が少ないことから、IT業界では小規模なM&Aが多いことが考えられます。

IT業界がM&Aによって得られるメリット

M&Aは、目標達成メリットを求めて行われます。M&Aによって得られるメリットは以下のとおりです。

  • 優秀な人材や技術を取り込める
  • 後継者を見つけやすい
  • 組織再編を図れる
  • 成長戦略を実現しやすい

それぞれのメリットについて、詳しく解説します。

優秀な人材や技術を取り込める

M&Aでは、両社の人材や技術・設備といった経営資源を統合します。そのため、同業他社とM&Aを行うことで、相手企業が持つ優れた人材や技術を取り込むことが可能です。

特に、人材確保が容易に行えるメリットは大きいです。専門的な知識が必要なIT業界では、需要に対する人材が足りておらず、人手不足に悩みを抱える企業は少なくありません。

IT企業同士によるM&Aを行うことで、すでに知識や経験を身につけている優秀な人材を確保することができるでしょう。

後継者を見つけやすい

社会問題にもなっている後継者問題は、IT業界でも課題となっています。そのため、後継者問題を解決し、事業を継続させることを目的としたM&Aも多く行われています。

事業の後継者を社内や親族のなかから選ぶ場合、選択肢が狭くなります。

しかし、M&Aによって経営スキルの高い優秀な人材を確保できれば、後継者選びの選択肢の幅が広がります。
また、事業を他社へ引き継ぐ方法を選べることも、M&Aのメリットです。

後継者問題が解決できなかった場合、廃業という選択肢も視野に入れなければなりません。
M&Aによって後継者問題が解決できれば、廃業のリスクを回避し、従業員の雇用も守ることができます。。

M&Aによって後継者問題を解決した事例:街の不動産を長きに渡り守ってきた賃貸仲介会社。M&Aで後継者問題を解決する。

 

組織再編が図れる

M&Aは、組織の再編をはかることも可能です。

M&Aには、「合併」や「会社分割(事業の切り離し)」など、組織再編に使えるスキーム(手法)があります。

例えば、不採算事業を切り離すことで経営のスリム化をすることができます。
また、大手企業の傘下に入ったり合併することができれば、資金調達がしやすくなるでしょう。

組織の再編は、多重下請けからの脱却が期待できます。
IT業界では多重下請け構造の傾向が強く、課題を感じているIT企業も少なくありません。M&Aによって人材や経営基盤の強化をすることで、多重下請けの構造から脱却し、企業価値を高められる可能性があります。

関連記事:M&Aの種類とは?スキーム(手法)の選び方や注意点を初心者向けに解説

成長戦略を実現しやすい

M&Aの相手に、成長戦略の共感がしあえる相手企業を選ぶことで、目標の達成がしやすくなります。同じ目標に向かって協力し合い、相手企業の経営資源を活用することで、短期間で事業拡大多角化を図ることができるでしょう。

例えば、同業他社と統合すれば、拠点や開発プロジェクトを獲得し、事業拡大が図れます。異業種からIT業界へ参入する場合、IT企業と統合することで、短期間でIT業界に参入することができます。

新たな市場の開拓や事業の拡大は、多くの時間とコストが必要です。しかし、目的に適した相手企業とのM&Aを行うことで時間やコストを削減し、効率よく成長戦略の実現ができるでしょう。

IT業界でM&Aを成功させるポイント

M&Aの契約締結までには多くのプロセスがあり、ポイントを抑えて実行しないと失敗するケースも少なくありません。

M&Aを成功させる3つのポイントをご紹介します。

【買い手側】売り手企業のリスクを入念に調査する

M&Aの買い手側となった場合、売り手企業のリスクを入念に調査しましょう。

M&Aのスキームによっては、資産や権利だけでなく債務を引き継ぐリスクが生じます。また、売り手企業が都合の悪い情報を隠蔽する可能性もあります。

十分な調査を行えなかった場合、売り手企業の債務に気づかなかったり、契約締結後に不利益な情報が発覚することも少なくありません。

M&Aによって他社を買い取る場合、最終契約前にデューデリジェンス(リスク調査)を入念に行うことが重要です。

【売り手側】買い手企業が得られるメリットを増やしておく

事業を売却する場合、買い手企業が得られるメリットや自社の魅力を増やしましょう。

M&Aは、お互いにメリットがなければ成立しません。相手企業に納得できるメリットを提供できない場合、買い手企業を見つけることは難しいです。

そのため、買い手が敬遠する可能性のあるデメリットをできる限り減らし、魅力あるメリットを増やす努力を行いましょう。

例えば、債務を整理したり、需要の高い許認可を取得したりすることなどが挙げられます。買いたいと思ってもらえる企業を目指すことで、M&Aの契約が成功しやすくなります。

【買い手側・売り手側】信頼できるM&Aの専門家に依頼する

M&Aの買い手・売り手にかかわらず、信頼できるM&Aの専門家に依頼することが大切です。

M&Aには多くのプロセスがあり、さまざまな専門知識が求められます。M&Aの知識がない場合、独力で契約を成功おさせることは難しいでしょう。

M&Aを確実に成功させるなら、専門家への依頼がおすすめです。

M&A専門の仲介会社や金融機関などの支援機関を利用すれば、アドバイスだけでなく、交渉や事務手続きのサポートも受けることができます。その結果、M&Aが成功する可能性は高まるでしょう。

関連記事:M&Aとは?M&Aの概要やメリット・デメリットなどを詳しく解説
関連記事:M&Aにおけるデューデリジェンスとは?費用や期間についてわかりやすく解説
関連記事:M&A仲介会社とは?利用するメリットや仲介業者の選び方

IT業界におけるM&Aの事例【スキーム別】

M&Aの内容は知っていても、具体的なイメージが湧いていない人も多いのではないでしょうか。
IT業界のM&A事例を4つ、M&Aのスキームも含めてご紹介します。

建設業A社とPCソフト開発B社のM&A【株式譲渡】

A社は、土木建設の調査や分析などを含む、建設コンサルタント事業を手掛ける企業です。

A社は自社サービスにITを取り入れるべく、IT企業のB社をM&Aにより子会社化しました。このとき採用したM&Aスキームは、「株式譲渡」と呼ばれるものです。

株式譲渡では、売り手経営者が保有する株式を買収することで、買い手が経営権を取得します。A社は、B社の株式を全て取得することで、完全子会社化しました。

これにより、B社の熱流体解析ソフトを自社サービスに組み込むことが可能となり、事業拡大につながっています。

モバイルアプリ開発C社と新聞社D社へのM&A【事業譲渡】

C社は、モバイルアプリやWebサービスを開発・提供するIT企業です。

あるSNSアプリを開発したものの、経営資源を投入する余裕がありませんでした。そこで、同SNSアプリを新規事業として、他社へ譲渡するためにM&Aを実施しています。

このとき採用したスキームは「事業譲渡」です。事業譲渡は、売り手の対象事業にまつわる資産や権利などを、全て買い手へ承継します。C社は、同SNSアプリを成長させる土壌が整っている新聞社D社へ事業を委ねました。

これにより、同SNSアプリの成長につながっただけでなく、経営資源の集中投入も可能になりました。

Web事業E社と同業F社のM&A【新設分割+株式譲渡】

E社は、交通関係のWebサービスを開発・提供するIT企業です。

E社は事業の多角化を図るべく、広告関係のシステムを開発するIT企業のF社から広告事業を買収しました。このとき採用したM&Aスキームは「新設分割」、そして前述の株式譲渡です。

新設分割では、売り手の事業を切り離して、新設した企業へ承継します。まずF社は広告事業を切り離して、新設したF’社として独立させました。次にE社が株式譲渡により、F’社が保有する株式を取得することで広告事業を獲得しています。

これにより、E社は自社サービスの収益性アップにつなげることができました。

Web事業G社と同業H社のM&A【株式交換】

G社は、フリーマーケット関連のWebサービスを開発・提供するIT企業です。

G社は事業拡大を図るべく、自動車関連のWebサービスを開発・提供するH社を子会社化しました。このとき採用したM&Aスキームは、「株式交換」と呼ばれるものです。

株式交換では買い手と売り手の株式を交換し、お互いが株式を保有し合うことで親子関係を構築します。買い手のG社が親会社、売り手のH社が子会社です。

これにより、G社はH社のWeb基盤を取り込むことに成功し、自動車分野への事業拡大を果たしました。

関連記事:M&Aとは?M&Aの概要やメリット・デメリットなどを詳しく解説

まとめ

IT業界でのM&Aは、近年増加しています。

人材や技術の獲得、後継者問題の解決など、M&Aがもたらすメリットは大きいです。

しかし、M&Aを成功に導くためには、豊富な専門知識と経験が不可欠です。社内でM&Aに精通した人材がいないときは、M&Aに特化した専門家への依頼がおすすめです。

M&Aベストパートナーズは、さまざまな業種のM&Aをサポートしてきた豊富な実績があります。
これまで培ってきた知識と経験を活かし、安定した経営基盤や新たな市場の獲得など、目的に適したご提案をさせていただきます。

「M&Aを考えているけどやり方がわからない」「どの手法が適しているかわからない」などM&Aに関するお悩みを抱える経営者の方は、お気軽に「M&Aベストパートナーズ」へご相談ください。

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M&Aベストパートナーズ

石橋 秀紀

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