M&Aで後継者問題を解決|成約事例を紹介

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中小企業の中には、経営を引き継ぐ後継者不足に頭を悩ませているケースも少なくありません。

後継者候補の採用やヘッドハンティングといった方法もありますが、昨今注目されているのがM&Aです。

本記事では、後継者不足の現状や背景、M&Aによってこれらの問題を解決した企業の事例なども合わせてご紹介します。

企業における後継者問題の実情

企業が倒産に至る理由はさまざまですが、近年増加傾向にあるのが後継者不在を理由とした「後継者難倒産」です。

帝国データバンクが2023年11月に行った調査によると、同年1月から11月までの後継者難倒産の数は509件にのぼっており、初めて500件を突破しました。

過去の数字を振り返ってみると、2014年から2017年頃までは300件台で推移してきましたが、2019年からは400件台後半に増加。コロナ禍が明けても後継者問題は改善することなく、倒産の数は増加傾向にあります。

ただし、「後継者難倒産」の全てのケースにおいて後継者が不在ということはなく、半数以上を占めるのが経営状況の悪化によって会社を引き継ぐことをためらい、倒産に至る「販売不振」です。

また、後継者が会社を引き継いだものの事業継続が困難になり倒産に至ったというケースも少なくありません。

それを裏付けるように、後継者不在率は2018年が66.4%を記録していたものの、2023年には53.9%にまで改善しています。

関連記事:M&Aで中小企業が解決できる課題とは?実施に向けた課題やPMIの課題と併せて解説

後継者問題が起こる背景

後継者不在率は改善傾向にあるものの、後継者難倒産の数が増えているのはなぜなのでしょうか。

考えられる理由や背景をいくつかご紹介します。

経営者の高齢化と準備不足

第一の理由として考えられるのが、経営者の高齢化です。

人生100年時代ともいわれる昨今、70代、80代になっても仕事を継続する経営者は珍しくありません。

しかし、年齢を重ねると身体の不調を引き起こしやすくなり、ある日突然倒れたり長期の入院を強いられるケースもあります。

その結果、後継者候補がいたとしても会社の引き継ぎや後継者としての育成ができておらず、準備不足によって倒産に至ることがあるのです。

実際に、帝国データバンクの調査においても「経営者の病気、死亡」は210件にのぼっており、高い割合を示しています。

後継者候補の不在

相対的に見れば後継者不在率は改善傾向にあるものの、それでも半数以上の企業は後継者が不在の状況にあることは間違いありません。

特に地方の中小企業においては、そもそも人口が少ないことや、優秀な人材に限って都市部へ出ていってしまう傾向があることから、後継者候補が不在になるケースが非常に多いです。

前経営者のカリスマ性で成り立っていた

会社経営を円滑に引き継ぐためには、経営者が代わったとしても安定的な経営体制を維持できる仕組みを構築しておくことが求められます。

しかし、あまりにも優秀でカリスマ性の高い経営者の場合、経営者個人の人柄やスキルによって会社が成り立っているケースが少なくありません。

その結果、後継者に会社を引き継いだとしても前経営者ほどの手腕を発揮することができず、業績が悪化し最悪の場合倒産に至る可能性もあります。

そもそも継ぐ意思がない

経営者としての才能を見込んで後継者候補として育てていても、期待を寄せられている本人が事業承継への不安や事業自体の先行きの不安を抱えている場合もあります。

また、会社を引き継ぐ以外にやりたいことがあるなどの理由で、事業承継そのものを断られてしまうケースもあるでしょう。

後継者の年齢問題

会社を安定的に引き継いでいくためには、後継者あるいは現経営者の年齢を考慮しながら育成や引き継ぎを行っていくことも大切です。

経営者の平均年齢

少子高齢化や健康寿命の伸びなどさまざまな理由によって、経営者の平均年齢が高齢化しています。

それに伴い、後継者が事業を引き継ぐのも40代後半から50代頃になることも珍しくありません。

経営者の高齢化が進めば引退のサイクルが早くなると考えられるため、現時点では後継者不在率の水準が低くても将来的に再び後継者不足となる可能性は否定できません。

若年後継者の問題

若い後継者に会社を引き継ぎたくても、深刻な少子化に伴い30代以下の若い世代が見つからず、後継者不足に悩む経営者は少なくありません。

若い世代が事業を承継し成功しているケースも稀に存在しますが、その一方で十分な教育や育成をしないまま会社を引き継いだ結果、経営者としての経験や人脈が不足し経営が立ち行かなくなることもあります。

世代交代のタイミング

会社を安定的に引き継ぐためには、どのようなタイミングで後継者を育成し経営のバトンを渡していけば良いのでしょうか。

会社の経営状態や後継者のスキルなどによっても理想的なタイミングはさまざまですが、一般的には後継者候補が30代頃から育成をスタートし、遅くとも40代半ばまでくらいを目処に事業を引き継ぐサイクルが望ましいといわれています。

後継者問題を解決する方法

後継者問題を解決するためには、企業としてどういった方法を選択すれば良いのでしょうか。

早期からの後継者育成

特に重要なのは、後継者の育成を早い段階からスタートさせることです。

これにより、経営者として必要なスキルや知識を習得するための十分な時間を確保でき、さまざまな業務を経験させ実務を通じて学ばせることが可能です。

また、現経営者が引退する前に後継者と共に経営を行い、実際の経営判断をサポートすることでスムーズな引き継ぎを実現できるでしょう。

オープンな後継者選定を検討

後継者選定においては、必ずしも親族や自社の社員に限定する必要はありません。

オープンな選定プロセスを採用することで、自社の将来を担うにふさわしい人材を広く募集することができます。

具体的には、後継者候補として求人を募集したり、他社で活躍している優秀な人材をヘッドハンティングによって獲得するといった方法があります。

M&A

あらゆる手段を使っても後継者候補が見つからない場合には、M&Aという方法も有効です。

合併または買収によって、相手先企業の経営者に自社の経営を引き継ぐことができます。

M&Aはもともと事業規模の拡大や経営資源の獲得、経営の立て直しなどを目的に行われることが多いですが、後継者不足が深刻化する昨今では安定的な事業承継の手段として用いられるケースも増えました。

ただし、M&Aにあたっては企業文化の相違などさまざまなリスクも伴うため、慎重な計画と十分な準備が必要です。

関連記事:M&Aによる人材確保について|成約事例を紹介

M&Aは後継者問題の解決以外にもメリットがある

M&Aは後継者問題の解決以外にもさまざまなメリットが期待できます。

売却による利益

M&Aを通じて会社を売却することにより、株式を所有している経営者は売却益を得ることができます。

中小企業の場合、経営者の個人保証によって融資を受けているケースも多く、倒産や廃業となれば経営者に多額の借金が残ってしまいます。

売却益を手にすることができれば、負債の返還に充てられることはもちろん、新たな事業への投資や老後に備えた個人資産など、さまざまな形で活用できます。

事業が継続される

後継者が見つからず廃業に至ってしまうと、それまで良好な関係を築いてきた取引先に迷惑をかけたり、地域住民やユーザーに対してサービスを提供できなくなります。

M&Aによって事業を引き継ぐことができれば、経営者が代わったとしても会社そのものは存続されることになります。

これにより、長年培ってきた事業が途絶えることなく、引き続き社会に貢献し続けることができます。

社員の雇用が維持される

会社の倒産や廃業では社員が失業するため、会社として再就職先を探さなければならないことも多いですが、M&Aでは社員の雇用が維持されるケースが多いため社員にとっても大きなメリットがあります。

また、M&Aを機に業績が向上すれば社員の待遇も改善される可能性があるでしょう。

培ってきた資産や経営リソースを活用してもらえる

M&Aによって会社を売却した場合、売り手企業が長年にわたって培ってきた資産や経営リソースを買い手企業が有効に活用することもできます。

たとえば、生産設備や人材、顧客基盤などはもちろんのこと、優れた技術や特許、ノウハウなども含まれます。

資産や経営リソースが引き継がれることで、より大きな相乗効果を生み出すことも期待できるでしょう。

M&Aによって後継者問題を解決した事例

M&Aを活用し後継者問題を解決した企業の事例をいくつかご紹介しましょう。

株式会社リアルパートナー

東京都内で26年にわたって不動産業を営んできた株式会社リアルパートナーでは、経営者の年齢や体力的な問題、そして後継者不足に頭を悩ませていました。

廃業も頭をよぎる中で、仲介会社からM&Aの提案を受けたことをきっかけに交渉をスタート。

社員の継続雇用を第一条件に正式に契約がまとまり、信頼できる経営者に会社を引き継ぐことができました。

株式会社山建重機

株式会社山建重機は、創業から30年以上にわたって土木工事を営んできた会社です。

社長の山本氏は60歳で経営者を引退することを考えていましたが、会社のより良い発展のためにM&Aによる事業承継を検討し始めます。

M&A仲介会社では自社の資産価値を公正に評価してくれたこともあり、社員の長期雇用を前提に買い手企業の選定・交渉が進められ正式契約に至りました。

有限会社スージーパーカー

衣装製作を中心にさまざまなアパレル製品の開発を担う有限会社スージーパーカーは、経営者の高齢化に伴い廃業を検討していた最中、M&A仲介会社から届いたDMをきっかけに会社の売却を考えるようになりました。

アドバイザーからの紹介を受けた1社とトップ面談を行った結果、信頼できる経営者にめぐり逢い正式に契約が成立。

社員の雇用も維持しながら安定的な事業承継に成功しています。

株式会社マルタニ工業

北海道にある株式会社マルタニ工業は、土木工事や解体工事、除雪作業などを担う建設会社です。

過去に経営規模の大きな会社の傘下に入ったものの、さまざまな事情によって再び独立。

それがきっかけで多くの受注につながったものの、社長の谷口氏は年齢的・体力的な問題から将来に不安を覚えるようになりました。

社員の雇用を第一条件に相手先企業の交渉がまとまり、M&Aによる事業承継が成立し正式契約に至りました。

株式会社東光ホールディングス

創業85年の歴史をもち、製造からITまで幅広い事業を手掛ける株式会社東光ホールディングスは、後継者候補であった家族が医師になったことを機にM&Aによる事業承継を検討しはじめました。

トップ面談を経てM&Aの交渉がまとまり、さらなる成長に向けて次のステージへと進化し続けています。

株式会社双葉製作所

株式会社双葉製作所はアルミ鋳造技術のノウハウをもつ老舗製造会社です。

14年前、父でもある先代社長の急死によって会社を引き継いだ松岡氏ですが、会社経営の大変さを痛感していたこともあり、無理やり身内に会社を継がせることに抵抗があったといいます。

そのような中でM&Aを検討するようになり、複数の会社との面談を経てわずか半年というスピードで成立。スムーズな事業承継を実現しました。

株式会社ケア・オフィス優

訪問介護サービス事業を手掛ける株式会社ケア・オフィス優では、深刻な人手不足と後継者不在、さらには社長自身の健康問題もあり廃業を検討していました。

そのような中でM&Aという方法があることを知り、調剤薬局や介護事業所などを運営する大手企業とのトップ面談を経て交渉が成立。

わずか1か月半というスピードでM&Aが決着しスムーズに会社を引き継ぐことができました。

医療法人清水桜が丘病院

北海道釧路市にある精神科クリニックを運営する医療法人清水桜が丘病院では、先代の院長が病気によって倒れたことなどをきっかけに後継者不足に頭を悩ませていました。

将来的に経営者一族だけで運営していくのは困難であると感じM&Aを検討するようになります。

北海道・東北エリアを中心に薬局や保育所を展開する大手企業との交渉がまとまり、スムーズな事業承継に至りました。

株式会社HOUSE BUILDホールディングス

株式会社HOUSE BUILDホールディングスは、東京都内を中心に新築戸建て住宅の分譲を手掛ける会社です。

創業から20年以上が経過した同社ですが、ここ数年は売上や利益の伸びが鈍化したこともあり、独力での成長に限界を感じていました。

また、社長自身も経営を第三者に引き継ぎ、新たなことに挑戦してみたいという希望もありM&Aに着手。

その結果、投資会社との交渉がまとまり最終的な契約が成立しました。

極東機械株式会社

建設機械や車両のリース・レンタルを主軸として展開する極東機械株式会社では、創業から45年を迎え後継者不足に頭を悩ませていました。

また、会社の長期的な発展のためにも新たな事業の方向性を模索しており、そのための手段としてM&Aを検討するようになります。

M&A仲介会社から信頼できる企業を紹介され、トップ面談を経て正式に契約が成立。

安心して会社を任せられる経営者に引き継ぐことができ、社員からも安堵の声が上がったといいます。

株式会社日乃出エヤコン

設備工事を手掛ける株式会社日乃出エヤコンでは、後継者不足による事業承継の課題を抱えていました。

M&A仲介会社からは創業100年の大きな会社が紹介されましたが、「自分の会社が下に見られてしまうのではないか」という不安がありました。

しかし、実際のトップ面談では相手先企業から誠意のある対応が感じられ、あくまでも対等な立場でのM&Aが提案されたこともあり無事交渉が成立しました。

株式会社翠豊

株式会社翠豊は、岐阜県にある社員数30名ほどの建設会社です。

優れた建築技術によって安定した経営を行ってきましたが、社長の高齢化や後継者不在の問題に不安を抱えるようになります。

そのような中でM&Aを検討し始めるようになり、仲介会社からの提案によって第三者割当増資というスキームを選択。

将来的な不安が解消され、未来が開けたような晴れ晴れとした気持ちを感じているといいます。

関連記事:M&A戦略とは?必要性や基本的な流れについて詳しく解説します

まとめ

会社を安定的に引き継いでいくためには後継者の選定や育成が不可欠ですが、少子高齢化などによって後継者不足は深刻化しています。

後継者候補を探しても有力な人材が見つからない場合には、M&Aも選択肢のひとつとして検討してみるのもおすすめです。

M&A仲介会社ではさまざまな会社の中から条件にマッチする候補を探しご提案することもできるため、まずはお気軽にお問い合わせください。

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