M&Aストーリー M & A Story
株式会社翠豊

第三者割増増資のM&Aで家族経営の未来が開けた

会社名
株式会社翠豊
業種
大断面集製材加工・建設業、山林および丸太の売買、植林・育林・除伐・間伐・伐採業務、太陽光発電設備工事および太陽光発電事業
M&Aで達成した内容
事業拡大・同族経営からの離脱
M&Aアドバイザー
前田 泰一

M&Aに至る背景父と2人で始めた会社、大断面集製材加工で大成

M&Aに至る背景
当時17歳だった今井 潔志氏は、祖父の代より引き継いだ林業をもとに、父と2人で事業を始めた。それが岐阜県加茂郡白川町の株式会社翠豊(すいほう)の事実上の始まりだった。

工業高校に進み建築を学んでいた今井氏だったが、集製材の工場を立ち上げた父親に誘われ、高校卒業と同時に参画。大木を切り出し、柱などの建築製材を作り、家を建てる。徐々に売り上げも社員も増えるにつれて、有限会社を立ち上げた。さらに社員が12~13人になり、株式会社に。父の引退に当たって、今井氏が35歳で社長に就任し、最終的に社員は30人近くまで増えた。

住宅建築は受注に波があることから、需要はあるが供給の少ない大断面集製材の製造にシフトした。丸太を伐採し、板を張り合わせてつなぎ集製材をつくる。小断面、中断面、大断面のうち、1.8m角ほどの大きい大断面集製材は、主に橋や建物の柱に使う。30年ほど前、まだ世界中でどこも導入していなかった工作機械を当時、最も進んでいた工作機械メーカーに製作依頼して導入。その機械は今も動いているという。
近年は東急・表参道の「サニーヒルズ南青山」の案件をはじめとして、同業他社では対応がむずかしいものも請け負っている。またソーラーパネルも手掛るなど幅広く対応するようになった。

事業は順調だったが、今井氏の心に徐々に不安が高まってきていたのが会社継承のことだった。父が65歳で完全に引退したため、自分もその年齢に近づいたこともあり、考えるようになった。
息子や社員への継承に思いを巡らすこともあったが、息子は大学卒で、学んできたことと今井氏が歩んできた道とは大きく異なる。またプロのレベルに到達するのにはまだまだ経験が必要だ。社員は大工出身が多く、経営などつらい仕事は避けたい雰囲気がある。

そこで検討し始めたのがM&Aであった。

付き合いのある設計事務所が会社ごとすべて譲渡するのを目の当たりにした経験もあり、M&Aという選択肢があることは知っていた。数社、M&A仲介会社を当たり、話を聞いてみることにした。同社の専務と共にホームページや新聞などから問い合わせを行った一つがMABPだった。今井氏自ら電話をかけたのだった。
しかしM&Aは「最後まで面倒を見てくれない」に契約せず途中で終わった際にも請求される」など良からぬ噂も聞くことがあったため、少なからず不安はあった。

M&Aの決断M&Aのスキーム変更にも納得の上、決断

M&Aの決断
担当になったMABPの前田泰一に初対面したのは2021年1月25日のこと。がっちりした体格で頼もしい印象を受けた。前田の発言やMABP公式ホームページの記載内容を他社ホームページの内容と比較した結果、MABPに任せることを決めた。
前田からは、さまざまな選択肢があることを提案された。今井氏が将来の悩みについて相談すると、前田はM&Aという手法があると説明。今井氏は当初、あまりピンとこなかった。会社譲渡は果たして安いのか高いのか、社員、息子も含め、譲渡後に会社はどうなっていくのか。何年か後に今井氏自身が引退する必要があるため、守りに入る気持ちもあった。
そうした中、前田から木造耐震設計等を手掛ける企業を紹介され、2021年7月にトップ面談に進むことを決めた。
当初は100%株式譲渡を検討していたが、結局、最後の条件提示の際にスキーム変更となった。先方の申し出はこうだった。翠豊のキーマンである社長がいないと困る。社長の経験や技術は社長自身に蓄積されているため、社長が急にいなくなってしまうと、うまく継承されないことを懸念してのことだった。結果、「第三者割当増資」という株式の一部を出資してもらう契約形態となった。
株式は50%が先方からの出資となるため、完全子会社になる。例えるならば、協力できるパートナーから資本を入れてもらったような形だ。大きく何かが変わるというのものではない。今井氏は当初、第三者割当増資によってどのような影響が出るのかわからなかったが、前田から一つ一つ丁寧に説明されるにつれて、納得していった。
M&Aの決断
トップ面談では会長とも対面した。実は今井氏は会長のことをよく知っており、創業の地を同じくし、場所も近い。相手もよくこちらのことを知っている。今回、先方の話の窓口になった人も、知っている人だった。こうした理由もあり、交渉はスムーズに進み、細かいところまで詰めた上で契約に至った。結果、何年か後に株式を手放すか、譲渡するかして、息子に継承する形になった。
最終契約日は2022年10月1日。今井氏は最近、会社に利益が出てきたこともあり、少し迷いもあったが先方の誠意が伝わってきたため、「自分も頑張ってその思いがつなげられるように」と印を押した。

M&Aの振り返りと展望M&Aで未来が開けた。「今後も自分たちらしく泥臭くやっていきたい」

M&Aの振り返りと展望
契約後、「気分は晴れ晴れとしており、新車に乗り換えた感じに近い」と今井氏は語る。「M&Aをする前は、未来が狭まってしまう感じがあったが、未来が開けた。今後は社会情勢に合わせて会社をうまくつくっていきたい」と語る。

少子高齢化と人口減少で住宅事業が縮小していく中、木材関係の事業者たちが新しい事業を探していたが、令和3年に木材利用促進に関する法の対象が公共建築物から建築物一般に拡大したことで活性化し、異業種からの参入も多く見られた。この波に乗りつつも、同社としては「自分たちのやり方で、泥臭くやっていきたい」と今井氏は話す。

親会社からの協力を受けられるようになったこともあり、常に仕事が途絶えていない。設備投資についても順調に投入予定だ。人員更新の予定もある。高齢者が辞めれば新たに採用しなければならない。今井氏としては人を増やすつもりはないというが、人員増加は親会社の望むところであり、方向性としては増えていく見込みにある。



今回、初めてM&Aを経験したことを受けた今井氏。同様にM&Aを検討している中小企業へのアドバイスとして「まず話を聞いてみること。そして一人だけで相談すると周りの協力を得られないので避けること。自分は妻や専務と一緒に話を聞いてよかった。役職関係なく相談できる人と一緒に話を進めていったほうがいい。経営に携わってない人のほうが本質が見えやすいところもある。最後の踏ん切りも楽につけられる。幸い、私の場合は3人の意見が同じ方向だったため、家族を説得する必要がなかった」と実感を込めて語った。

引退した後は、「妻と共に百姓でもやりたい」と今井氏。「原点である材料を作っていくほうが性に合っている。それが自分の楽しみ」と、そんな余生を展望しながら、引退まで駆け抜ける。

M&Aストーリー

M&Aを実施する目的や背景は多岐にわたって存在するため、
ひとつとして同じ案件や事例は存在しません。

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