M&Aストーリー M & A Story
株式会社日乃出エヤコン

「地元企業で地域経済を循環させたい」という願いを叶えてくれるお相手が見つかった

会社名
株式会社日乃出エヤコン
業種
管工事、機械器具設置工事、電気工事、建築物環境衛生管理
M&Aで達成した内容
後継者問題の解決、人材の確保・育成、事業の成長・拡大
M&Aアドバイザー
前田 泰一

M&Aに至る背景後継ぎへの不安と深刻な人手不足からM&Aを検討

M&Aに至る背景
三重県松阪市で空気調和設備工事をコア事業に、給排水衛生設備、電気設備などの建築設備業を営む株式会社日乃出エヤコンは1969年5月創業。

創業以来“人と技術と信頼”を礎に設備工事に従事。管工事業だけでなく様々な建築業許可の取得や、お客様のニーズを通じて“空気・水・熱”に関する建築設備を提供し、対応業務範囲を拡大してきた。
岩出巧氏の学卒後の就職先は名古屋の大手電機メーカーだったが、海外赴任中に“日本の素晴らしさと危うさ”を実感し、地元三重県に帰って事業を始めたいと思うようになる。

学生時代の友人であった妻とは二十歳より交際を始め、親交を深める過程で先代とも次第に関係を育んでいった。帰国を機に妻と結婚、先代の後を継ぐことを前提に婿養子として日乃出エヤコンに入社したのは1990年(24歳)、代表取締役に就任したのが2002年(36歳)の折であった。

入社当時は冷暖房・冷凍冷蔵・空気調和設備の設計・施工・修理・保守が主な業務で、岩出氏は保守・修理、施工・管理、設計・営業の順に経験を積んでいった。常務取締役に就任後は、経営の勉強も始めた。会社経営は決して順風満帆ではなく、建設大不況による不渡りにも遭ったが、“誠意・熱意・創意”を信条に、遮二無二に仕事に取組み乗りきった。

岩出氏が最も思い入れのある案件として、“松阪市立小中学校空調設備整備DBO事業”がある。2018年設計・落札、2019年施工・引渡、以降2032年まで維持管理を担う。地元に人一倍愛着のある岩出氏は「この事業は地元企業で成し遂げる使命がある」と思い立ち、同社を代表とする6社の構成企業で、小中学校45校683教室の空調設備設置をすべて手がける大役を担った。「地元企業の社長は皆先輩『お前がやると言うのなら一緒にやってやる』と言ってくれたのが本当に嬉しかった」と当時を感慨深く振り返る。

創業50周年を迎える頃、岩出氏はM&Aを検討し始めるようになる。その背景には大きく“事業承継の課題”と“深刻な技術者不足”の2つがあった。娘たちに結婚の話が挙がったため、その婿が継いでくれる可能性はあったが、確実な話ではなかった。結論を迎えてから進み出したのでは遅いと感じていた。同時に技術者不足の問題も深刻化してきた。新卒採用はここ十数年できておらず、三年前に迎え入れた若い二人の技術職中途採用者も、結果的にはミスマッチに終わり大いに落胆した。

事業環境の先行き不安が増していく中、たとえ事業承継が成功してもそれだけでは会社の成長・発展は継続できないし、ましてや自社だけ存続できても、協力会社さんや地域社会も共に持続・繁栄しなければ意味がない。「50年後も空調設備を通じて地域の産業と人々の暮らしを支え、お客様と地球環境のお役に立てる最適空間を提供し続けたい・・・」

そうした想いの中で、岩出氏は2020年頃からM&Aを検討し始め、勉強も兼ねて講習会に参加していた。当初は「何もかも自身で理解しなければならない」と思っていたが、やがて「信頼できるプロが近くにいれば良いのではないか」と考えが変わっていった。

M&Aの決断建設業に詳しいアドバイザーとの出会いから感動のトップ面談へ

M&Aの決断
数社のM&A仲介会社の話を聞いた内の一つがMABPであった。担当の前田泰一と初面会をした際、岩出氏は「前田さんには目ヂカラがあったし、他社と比べると圧倒的に建設業のことに詳しかった。会社の将来を描く経営判断に、空調設備の“く”の字も知らない人とは話をしたくないしできない。この人になら託せる。」と感じ、MABPを選んだ。

妻と三人の娘たちが集まった株主総会で、事業承継などについて協議し、M&Aを決断した。MABPとは2021年3月に契約し、本格的な活動に入っていった。前田からは様々な選択肢と提案がされる中、同年12月に今回100%株式譲渡を行ったガス・熱・電気供給事業などを営む会社紹介を受けた。岩出氏は当時を次のように振り返る。「松阪地域は自身を公私ともに成長させてくれた大切な地元。域内循環型経済を目指し、愛する地元を維持発展させたい。紹介された会社さんは東海地方に根付いた会社。ここだと思いました」
M&Aの決断
株式譲渡先候補企業とのトップ面談は、2022年2月に行われた。お相手は創業100年の大会社。下に見られて辛い思いをする場面もあると思っていたが、まったくの予想違いであった。カーボンニュートラルを戦略事業と計画立て、未来に向けての目指す姿として、ビジョンをちょうど発表した時期だった。その計画に基づき、直轄の子会社にしたいという申し出と共に、社長にもそのまま続投して欲しいと、上から目線ではなく、仲間になって欲しい旨を告げられたのだった。岩出氏は当日、M&Aにかける想いをしたためた文章を読み上げた。それに対し相手方のマネジャーは涙ぐむまで感極まり、喜んでくれたという。この面談を通じて、すでに岩出氏の心の中は決まっていた。

その後契約を進めることになったが、コロナ禍や相手の役員会開催のタイミングの事情もあり、2022年6月末に契約するはずが、延びて同年10月になった。「契約の印を押す瞬間、不安や迷いがないと思ったら嘘になる」と岩出氏。しかし「先代も『よくぞその道を歩むと決断した』と喜んでくれていると信じています」と述べた。

M&Aの振り返りと展望将来、地元に還元できることが一番の幸せ

M&Aの振り返りと展望
譲渡後も日乃出エヤコンの屋号はしばらく残るが、完全子会社としてスタートを切った。2022年12月からは譲渡先会社の社員が日乃出エヤコンに役員として就任。岩出氏はその役員に引き継ぎを行うという。「私の持つノウハウ・スキル・ナレッジ・テクニックは、すべて伝えていこうと思っています。私自身も更に成長し、それが社員・取引先・地元に還元できれば、それほど幸せな人生はない。」と語る。採用についても、新しい入職者を迎えるために譲渡先会社の力を借りて、連携しながら進めていくという。

「この先徐々に譲渡先会社仕様の組織が芽生えていくだろう。5年~10年後にこの地域は安心して任せられると言われる状況にできればいい」と岩出氏は言う。また「個人的には、夫婦共通の趣味が見つかれば、今よりもっと豊かな人生になるだろう」と結んだ。

M&Aを検討されている社長へのアドバイスとして岩出氏は
・人生のワーク・ライフスケジュールを立てておく
・自社の価値と将来像、M&Aの本質を見定める
・経営・財務状況は徹底的にクリアにしておく
・感性を信じ、相性の良いアドバイザーを見つける
・自分にない見識を相談できる専門家を持っておく
の5つを挙げた。

M&Aストーリー

M&Aを実施する目的や背景は多岐にわたって存在するため、
ひとつとして同じ案件や事例は存在しません。

Preview

Next

製造、建設、不動産、
医療・ヘルスケア、物流、ITのM&Aは
経験豊富な私たちがサポートします。