M&Aストーリー
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M&Aストーリー
株式会社HOUSE BUILDホールディングス
M&A成約事例
譲渡企業
株式会社HOUSE BUILDホールディングス
代表取締役 宇都 孝志氏 インタビュー
東京23区のエリア内で新築の戸建てやデザインハウスの分譲を手掛ける、株式会社HOUSE BUILDホールディングス(以下ハウスビルド)。
中目黒に本社ビルとショールームを構え、事業の核である建築条件付き土地販売の他、不動産仲介やオリジナルのデザインハウス建築も手がけている。
建築では「都心にあるが、どこかリラックスできるクラフト感のある家」をデザインコンセプトに、木のテイストをふんだんに盛り込み、顧客がゆったりとオフを過ごせる家造りを目指す。
本社の内観も「不動産らしくないオフィス」に仕上げており、この雰囲気を気に入って志願する求職者も多い。
建築条件付き売地と建売の両方を手がけ、建物のグレードをはじめ、キッチンやワークスペースといった間取りやカラー、そして家具までも顧客の要望に沿って自由に選べる方式だ。
販売エリアも広く、都心の城南エリアのみならず文京区、豊島区、練馬区、杉並区などの城東エリアまで対応できるのも、他社とは一線を画すハウスビルドの強みとなっている。
土地の仕入れから家の建築、エンドユーザーへの販売に至るまでをグループ内で完結できるハウスビルドだが、もともとは平成13年、代表取締役の宇都孝志氏がマンションデベロッパーを経て1人で立ち上げた会社だ。
「学生のころはプロ野球選手を目指していたが、最終的には挫折してしまった。彼らのような高い給料をもらうには、自分で会社を作るしかないなと。事業は一番利益が出そうな不動産しかないだろうと思って……そんな単純な理由で起業したんですよ」と、宇都氏は懐かしそうに話す。
戸建ての仲介から事業をスタートさせた宇都氏だったが、4〜5年後には早くも物足りなくなり、自社物件も手がけ始める。
そこからさらに5〜7年後、今度は自社での建築にまで事業を広げ、起業から20数年経った今では、売上高60億円、社員数50〜60名の規模となるまでに成長した。
ところが、毎年のように成長を続けてきた事業は、ここ2〜3年で成長の鈍化がみられるようになった。
このタイミングで売上や利益、社員数も停滞したことで、宇都氏は疑問を感じるようになる。
M&Aのきっかけとして、宇都氏は「独力での成長に限界を感じていたこと、一度リセットして新しいことをしてみたいと思ったこと」の2つを挙げる。
「会社は止まっていられない、常に成長に向かっていなければダメだ」と考えた宇都氏は、伸び悩む会社に外部コンサルを入れるなどしたが効果は薄く、さらに選択肢を模索していく中でビジネスパートナーを迎えるべきだと判断。
また、宇都氏も50歳を迎えたことから「起業してから20数年経ったこのタイミングで、区切りをつけて再スタートしよう」と考えるようになる。
宇都氏は自身を「好奇心が強く、やりたいことが多い人間」と分析しており、現に事業でも未経験だった建築を手がけるなど常にチャレンジを続けてきた。
しかしここにきて、部下に権限を移譲し、新しいことをしたいという気持ちが強くなったのだ。
これらを解決する手段として、宇都氏は最終的にM&Aにたどり着く。
今回のM&Aにあたり、弊社M&Aベストパートナーズ(以下MABP)の担当アドバイザーとして代表取締役社長の齋藤達雄が直接対応させていただくことになった。
宇都氏にとっては初のM&A交渉となり、チャレンジ精神が沸き上がっていた半面、やはり不安も感じていたようだ。
「M&Aの仲介業者は、売る側にも買う側にも曖昧な条件で話を進めて基本合意を取り、独占交渉権を得た後は最終局面でやり込められてしまうようなイメージがあった」と宇都氏は話す。
齋藤も「交渉中は話がきちんと進むのか、クローズできるのかといったことを気にされておられた。また、監査でいろいろ指摘され、それを理由に条件を下げられるのではないかと心配されていたため、でき得る限り配慮させていただいた」と回想する。
そんな宇都氏に齋藤は、農林中央金庫の子会社で、プライベート・エクイティ(以下PE)ファンドを運営する農林中金キャピタル株式会社(以下NCCAP)を株式の売却先として紹介した。
農林中央金庫とは、「JAバンク」や「JFマリンバンク」などのブランド名で農協や漁協、森林組合といった一次産業を支える協同組合らと一体となって金融事業を営み、そこで得た資金を運用して収益を上げ、各組合に配当還元することをミッションとしている金融機関だ。
グループ全体で100兆円を超えるという巨大な資金力を活かし、債権やクレジットなどの事業を軸に、多種多様な商品に投融資を続けている。
PE領域については、1998年よりファンドへの運用原資を提供するLP出資からビジネスをスタート。
2000年ごろからはファンドと共同で事業会社への出資も始めたが、2019年からはファンドを介さず直接出資する形で多くの企業を支援してきた。
近年、銀行法の規制緩和で投資専門子会社を設立すれば柔軟に運用できるようになったことで、2021年に設立されビジネスを引き継いだのが、今回ハウスビルドの株式を取得したNCCAPである。
M&Aを担当したのは、同社の企業投資部でディレクターを務める中條直樹氏。
株式会社日本政策金融公庫に新卒で入社したという経歴を持ち、2015年に農林中央金庫へ転職した後は、北海道で農林水産漁業者向け不良債権の最終整理に従事していた。
現在は子会社化されたNCCAPに移り、企業の株式をすべて取得する、いわゆるバイアウトの案件責任者として東京のオフィスに勤務している。
そんな両者が齋藤の手引きで顔を合わせたのは、まだ冬の寒さが残る2023年3月初旬だった。
ハウスビルド社のオフィスで実現した面談では、両社のTOP同士が顔を合わせた。
当日の様子を、NCCAPの中條氏は「オーナーの宇都氏とお会いした第一印象は、失礼ながら不動産業で芸能事務所の社長のような雰囲気に金融機関としてやや構えてしまった」と振り返る。
しかし、丁寧な物腰と1つ1つの質問にロジカルに応答していく宇都氏の姿勢から、常日頃からさまざまな考えを持って経営していることを感じたようだ。
「オフィスの雰囲気や宇都氏のキャラクター、顧客から広く支持されているブランドの良さを感じ取ったので、ぜひお話を進めさせていただきたいと強く思った」と中條氏は続ける。
一方、宇都氏は「人生で農林中央金庫という金融機関を見聞きしたことがなく、相手のことは何も知らなかった。ファンドというものもよく分かっていなかった」と打ち明ける。
また「なぜ一次産業の投資会社が不動産事業の買収を?」と今ひとつピンとこず、宇都氏も慎重な姿勢を取っていたが、NCCAP側の社長を含めた人柄のよさやオープンマインドを感じとり、次第に本音で応じていく。
そして「初めてお会いしたが、売却先はここがいい」と強く感じたそうだ。
さらに宇都氏は、仲介にあたったMABPについてこう語る。
「MABPさんでは当社に合うであろう候補先を数社に絞って提示されたので、取り組み方が違うと思った。
数社TOP面談を行い、どの会社も良い会社であると思ったが、中でも特にNCCAPさんとは、ピンポイントでウマも合った。職人技だと思った。
他の仲介会社ともお会いしたことはあるが、自社の事業や文化への理解が薄く、数多くの候補先から決めてねというスタイルが多く、企業同士の親和性などはあまり考えていないようだった」
担当した齋藤の印象についても「私自身がM&Aの経験がなく、どこまで真実を言っているのかが判断できない中で、齋藤さんからは誠実さやまっすぐさが伝わり、いい加減なことは言っていないなと直感的に感じたため、お任せすることにした」と述懐する。
TOP面談の後、両社の交渉は3ヶ月間に及んだ。
中條氏は、ハウスビルドへの出資について「中途半端な不動産は売れない時代だが、しっかりとした世界観と誠実な仕事によって強い事業基盤があると見受けられた。宇都氏にも誠実にご対応いただけたので不安なかった」と話す。
少子高齢化であっても人口増加が続く東京にあり、マンション価格が高騰し供給が少ない中で、ハウスビルドの事業は社会的なニーズの受け皿として今後も成り立つと判断。
資金面以外の支援策としても、グループの森林組合が持つ国産材を使ったブランディングなど、再成長へ向けて提供できるものがあると感じたようだ。
担当した齋藤も、初面談の様子から「これはいいご縁になる」と手応えを感じていた。
交渉はスムーズに進み、宇都氏が持つ株式をNCCAPに譲渡するという形で、両社は2023年6月に最終的な契約を結ぶ。
株式を譲渡した宇都氏は、ハウスビルドの再成長に向けてNCCAPに期待を寄せる。
「やはり資金力だ。中小企業は資金面での不安が多く、なかなかアクセルを踏み込めない。
例えば、全ての物件を建売できないのは資金的な理由だ。売れずに残ると回収ができず、リーマンショックのような事態が起きた時に回収が困難になってしまう。
それを考えると、先に土地だけを販売して、建物は完成後に回収するというビジネスモデルにならざるを得なかったが、実際は完成してからの方が売りやすい。
資金力を活かして付加価値のある物件を安定供給すれば、再成長できるのでは」と話す。
一方の中條氏は「ハウスビルドの事業には社会的なニーズがある。宇都氏のネットワークや目利きがあれば、さらにアクセルを踏んでいけるだろう」と今後の展望を語る。
「NCCAPが提供できるものと、宇都氏が思い描くビジョンが上手くハマれば、ハウスビルドはこれからも2倍3倍に成長できるだろう。会社や従業員にとっていい成長ができるよう、最大限サポートしたい」と意気込む。
中條氏はさらに、担当した齋藤について「M&A仲介会社の経営者ということで、どれだけゴリ押しの方がこられるのだろうと思っていたが、非常に物腰が柔らかく丁寧な方だった」と話す。
その上で「大企業や上場企業の子会社に投資する場合の多くは、経済的な面で条件が合うかが主題で、情報が多く精査に時間がかかるものの、譲り受ける側としてはあまり心配がない。
しかし、中小企業の場合は良くも悪くもオーナーのリーダーシップにかかっており、数字よりも相手とどれだけコミュニケーションが取れるのかがカギだ。
それぞれ立場が異なる譲渡企業のオーナーと譲受企業の間に立ってくれる人がいないと、数字では見えない箇所のクリアな情報が入ってこない。
企業のフェアバリューを見誤ると、オーナーにも享受すべき対価を提示できなくなる。
そんな中で、齋藤さんはこちらが曖昧な質問を投げても、的確な答えを丁寧に返してくれた。
おかげで、社内でしっかり吟味した上で、宇都氏に納得いただける金額を提示できた」とMABPの仲介を振り返った。
最後に宇都氏は、自身の今後について「前々から旅が好きということもあって、九州をメインに全国で宿泊事業を展開したい。コンセプトは、忙しくて連休が取れない方々に向けて、1泊だけ非現実的な空間でリフレッシュしてもらえる、ロケーションレンタルだ。
また、グループで持つ音楽事業や、新たにファッション事業にもチャレンジしたい」と嬉しそうに語っていた。
M&Aを実施する目的や背景は多岐にわたって存在するため、
ひとつとして同じ案件や事例は存在しません。
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