M&Aストーリー
M&Aを実施する目的や背景は多岐にわたって存在するため、
ひとつとして同じ案件や事例は存在しません。
近年、調剤薬局業界はますます厳しい経営環境に直面しています。
医療費削減の圧力、薬価改定による収益減少、インターネット薬局の台頭など、様々な要因が複雑に絡み合い、経営者たちは生き残りのための新たな戦略を模索し続けなければなりません。
また、人口減少や高齢化といった社会的変化も、地域密着型の薬局にとっては大きな課題といえるでしょう。
これらの問題に立ち向かうためには、伝統的な業務の枠を超えた革新的なアプローチが求められています。
本記事では、調剤薬局経営が直面する厳しい現状を分析し、今後の生き残りをかけた戦略について考察していきます。
目次
薬価の改定や医療費の削減など、近年の調剤薬局経営には向かい風が吹いています。
高齢者の数が増加し、ニーズが広がっていることは良いニュースかもしれませんが、インターネット薬局や大手ドラッグストアチェーンなどの台頭により、競争は激化しているといえるでしょう。
こうした背景がありながらも薬剤師をはじめとして人材不足を抱えており、効率的な運営ができない調剤薬局は次々に淘汰されているのが現状です。
調剤薬局業界は高齢化が進むにつれて需要の拡大が見込まれる業界ですが、いくつかの課題を抱えているのが現状です。
調剤薬局業界が抱える課題として、調剤報酬や薬価の引き下げにより利益が減少していることが挙げられます。この背景には、国による「医療費削減」の取り組みがあります。
医療費は年々増加しており、国は医療費を削減するためにさまざまな政策を打っています。このなかのひとつが調剤報酬や薬価の引き下げです。特に、複数の店舗を持っている大手調剤薬局や門前薬局などは、この取り組みにより利益が減少しています。
慢性的な薬剤師不足が起こる原因として、薬剤師が必要な薬局やドラッグストアなどが増加していることが考えられます。
薬剤師自体の数は増加傾向にあるものの、薬局やドラッグストアなどの数も増えているため、調剤薬局一軒あたりの薬剤師が不足してしまうというロジックです。
ここでは調剤薬局業界の今後について予想していきましょう。
2022年度のデータですが、調剤医療費は約7兆8,332億円、薬局の数は約6万1,791件となっており、調剤併設型のドラッグストアと合わせるとコンビニの店舗数と同等かそれ以上になります。
つまり調剤薬局市場は飽和状態であり、安定したニーズは見込めるものの、今後爆発的に市場規模が大きくなるということは現実的ではないでしょう。
先述のとおり調剤薬局の市場規模は既に飽和状態であり、さらに少子高齢化や医療費削減の圧力に直面しており経営環境は厳しさを増しています。
中小企業は特にDX化への投資が課題であり資金繰りが困難な場合も多いでしょう。そのため、資産規模に余裕のある大企業による寡占化が進む可能性があります。
ここでは調剤薬局経営が儲かるのか見ていきましょう。
調剤薬局経営者の年収は、薬局の規模や経営状況によって大きく異なります。以下はあくまで目安として参考にしてみてください。
新規独立薬局の企業初年度の年収は400万円を下回る場合も。地域でそれなりに名の知れた小規模の調剤薬局では800万円弱となっています。
また、大手チェーン薬局のフランチャイズオーナーは700万円前後とされています。
年収を左右する要素としては、薬局の規模が大きいほど年収が安定するのはもちろんですが、小規模であっても地域密着型の経営方針で安定した集客が見込める場合には、大手チェーンの薬局より儲かることもあるでしょう。
調剤薬局の収益は処方箋の取り扱いによる調剤報酬から得られます。処方箋1枚あたりの調剤報酬には、基本料金や薬剤費、指導料などが含まれます。
薬局が受け取る収益は処方箋枚数の増加に伴い直接的に増加します。月間の処方箋枚数が多ければ、調剤報酬もそれに応じて増えます。
処方箋枚数を自発的に増やすということはきわめて困難であるため、オンライン診療などの別の収益モデルを考えるか、DX化などで作業効率を向上させることで人件費を削減し、利益率を高める必要があるでしょう。
ここでは、競争が激化する調剤薬局業界での生き残り戦略について解説します。
電子薬歴システムの導入することで、薬剤師が患者の情報を効率的に管理し、迅速な対応が可能となります。
また、オンライン予約システムによって患者が事前に予約することで、待ち時間を減少させサービスの質や顧客満足度の向上が期待できるでしょう。
従来の役割である薬の販売にとどまらず、定期的な健康チェックや栄養相談などを行い、地域の健康増進に寄与することでサービスの幅を広げつつ認知を拡大できます。
また、在宅での薬剤管理や訪問サービスの提供は、特に高齢者が増えている地域では喜ばれるでしょう。
地域の医療機関や介護施設と連携することで医療情報を共有すれば、シームレスなケアを提供できるようになるでしょう。
健康食品を販売している店舗やフィットネス施設といった他業種と提携し、総合的な健康サポートを提供します。
協業相手に紹介してもらうことで、認知の拡大につながるというメリットも得られます。
実店舗を持っている調剤薬局は地域密着型のマーケティングを行い、近隣住民からの支持を集めることがきわめて重要です。
今や主流であるSNSやWEBサイトを活用したオンラインマーケティングで広範囲の患者へのアプローチも行いつつ、地域のイベントに積極的に参加したり地域誌に広告を出したりすることで、地域とのつながりを強化していきましょう。
調剤薬局業界ではM&A(企業の合併・買収)が活発に行われています。
M&Aにはいくつかの種類があり、経営基盤の安定した企業の傘下へ入るという方法をとることで、事業を継続させていくことができます。
税制の優遇を受けられる可能性もあるため、自力では立て直しが難しいと判断した場合には、M&Aという選択肢も検討してみましょう。
近年、調剤薬局業界ではM&Aを実施する企業が増えています。
ここでは、調剤薬局業界におけるM&Aの動向について見ていきましょう。
先述のとおり、調剤報酬や薬価の引き下げは複数店舗を持つ大手調剤薬局に大きな影響を与えています。
このような状況を受け、大手調剤薬局ではM&Aにより事業を拡大し、スケールメリットを得ようとしている企業が増加しています。
また、経営難に陥ってしまった小規模の調剤薬局が、M&Aにより大手調剤薬局の傘下に入ろうとする動きも活発化しています。
近年では、かかりつけ薬局に移行するためにM&Aを実施する企業も増えています。
厚生労働省は、地域の医療を強化するためにかかりつけ薬局への移行を推進し、2025年には全ての調剤薬局をかかりつけ薬局に移行するとの方針を打ち出しました。
かかりつけ薬局に移行するには、ICTの導入や24時間体制で対応するための薬剤師の確保など多くの準備が必要です。
こうした準備を自社のみで行うのが難しい企業も多く、M&Aにより資金や薬剤師を確保しようとする動きが活発化しています。
調剤薬局業界では、後継者不足を解消するためにM&Aを実施する企業が増加しています。
後継者不足の課題はさまざまな業界で深刻化しており、これは調剤薬局業界においても同様です。特に中小規模の調剤薬局では、後継者不足の課題を解消できず廃業を余儀なくされる企業もあります。
また、厚生労働省が2020年に調査した「医師・歯科医師・薬剤師統計の概況 」によると、薬局の開設者もしくは法人の代表者の平均年齢が59.9%という結果が出ました。
この結果から、今後も後継者不足の課題は続くと予測され、M&Aにより第三者に事業承継する企業が増えると考えられるでしょう。
(引用元:厚生労働省│医師・歯科医師・薬剤師統計の概要)
調剤薬局業界におけるM&Aでは、どのようなメリットがあるのかイメージが湧かないという方もいらっしゃるでしょう。
ここでは、調剤薬局におけるM&Aのメリットを売り手側・買い手側に分けて解説します。
売り手側となる調剤薬局のメリットとして以下が挙げられます。
先述の通り、中小規模の調剤薬局は後継者不足の課題が深刻化しています。そのため、M&Aにより後継者不足を解消し、会社を存続できることは大きなメリットといえるでしょう。
また、会社を存続させることで従業員の雇用を継続させることも可能です。
また、資金力のある大手調剤薬局とM&Aを実施した場合、その資金力を活用して安定した経営ができることもメリットといえます。
資金だけでなく薬剤師の補充や設備の導入など、さまざまなメリットを得られるでしょう。
自社を売ることで創業者利益を得られる点もメリットのひとつです。調剤薬局は需要が高く、条件によっては高額で売却できる可能性があります。
調剤薬局業界におけるM&Aでは、買い手側に対しても多くメリットをもたらします。
具体的には以下のようなメリットが挙げられます。
慢性的な薬剤師不足の課題を抱える調剤薬局業界において、優秀な人材を確保できることは大きなメリットといえるでしょう。
また、厚労省が発表しているとおり、かかりつけ薬局に移行するためには、さらに薬剤師を確保する必要があります。M&Aにより薬剤師を確保できれば、かかりつけ薬局への移行もスムーズに行えるでしょう。
また、事業規模が拡大できることもM&Aのメリットです。調剤薬局業界は調剤報酬や薬価の引き下げによって収益が減っているのが現状ですが、M&Aを実施すれば、事業規模の拡大をスムーズに行え、スケールメリットを得られるでしょう。
事業規模の拡大により、製薬会社や卸売業者からの仕入れ額を抑えられるというメリットもあります。1回で多くの医薬品を仕入れることができれば、流通にかかる費用を抑えられるでしょう。
調剤薬局業界におけるM&Aには多くのメリットがある一方でリスクもあります。
ここでは、調剤薬局業界におけるM&Aのリスクについて買い手側・売り手側に分けて解説します。
調剤薬局業界におけるM&Aの買い手側のリスクとして以下が挙げられます。
上記はM&A成立後のPMIが計画通りに進まないことで発生しやすいリスクです。PMIとは、M&A成立後の統合プロセスのことです。
PMIではリスクを最小限にして統合の効果を最大化させるために、新経営体制の構築や経営ビジョン実現の計画などを行います。
PMIは、統合後のリスクを想定して慎重に進めることが大切です。
調剤薬局業界におけるM&Aの売り手側のリスクとして以下が挙げられます。
上記のリスクは、相手企業の選定に失敗したときに起こりやすい傾向にあります。売り手側にとって、相手企業の選定は重要な項目です。しかし、自社のみで希望にあう相手企業を見つけるのは難しいでしょう。
そのためM&Aを実施する場合は、検討段階でM&Aの専門家に相談することが大切です。M&Aの専門家に依頼すれば、独自のネットワークから自社の希望に合う相手企業を紹介してくれます。
ここからは、M&Aベストパートナーが担当した調剤薬局業界におけるM&Aの成功事例について解説します。
有限会社アトムメディカル様は、2001年に神奈川県鎌倉市に調剤薬局を開業しました。さらに、JR「大船駅」「北鎌倉駅」のそれぞれの駅前で、2つの店舗を運営しています。有限会社アトムメディカル様の調剤薬局は、家族経営しており、従業員も10名足らずでした。
M&Aを検討するようになる背景には、厚生労働省が推進しているかかりつけ薬局への移行がありました。かかりつけ薬局では24時間営業が求められ、家族経営の調剤薬局では生き残りが厳しいと考えM&Aの実施を考えます。さらに、ジェネリック医薬品の普及による収益の減少や、薬剤師の人材確保が難しくなったことなども要因です。
その後、店舗数が100店舗以上あり、売り上げ規模が200億を誇る株式会社エスシーグループ様とのM&Aを行うことになります。
株式会社ファルマシア様の古林氏は、49歳のときに宮崎県で調剤薬局の経営をしていました。その後、福岡県久留米市にある病院の院長から「調剤薬局を開業してほしい」との強い要望を受け、福岡県久留米市でも調剤薬局を始めます。
宮崎県と福岡県久留米市で2つの調剤薬局を経営していた古林氏は、体調に不安をかかえ、67歳のときに宮崎県の調剤薬局をM&Aにより手放しました。しかし、70歳を目前に福岡県久留米市の調剤薬局もM&Aにより事業承継しようと検討し始めました。
古川氏は、これまで通り病院とのよい関係を保て、従業員の雇用を守れる相手企業を条件として提示し、同じ地域で複数の調剤薬局を経営している会社を紹介されます。
その後、株式会社ファルマシア様は、M&Aにより事業承継を実現しました。
調剤薬局業界では厚生労働省によるかかりつけ薬局の推進や、調剤報酬・薬価の引き下げなどに対応するためにM&Aを実施する企業が増えています。
また、中小規模の調剤薬局では、後継者不足を解消するためのM&Aが活発化しているという状況です。
調剤薬局業界におけるM&Aでは、薬剤師の確保や事業の拡大などさまざまなメリットがありますがリスクも存在します。リスクを最小限に抑えるためには専門家への依頼が不可欠でしょう。
「M&Aベストパートナーズ」では、調剤薬局業界におけるM&Aの事例を多数持っています。
調剤薬局業界におけるM&Aを検討している方は、ぜひM&Aベストパートナーズにご相談ください。
M&Aを実施する目的や背景は多岐にわたって存在するため、
ひとつとして同じ案件や事例は存在しません。
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