M&Aストーリー M & A Story
株式会社ファルマシア

病院との良好な関係性を維持しながらの薬局継承が成就

会社名
株式会社ファルマシア
業種
調剤薬局の運営
M&Aで達成した内容
事業の継続・従業員の継続雇用
M&Aアドバイザー
更家 豪

M&Aに至る背景2つの調剤薬局を経営することに。一度目のM&Aも経験。

M&Aに至る背景
もともと石油化学系企業の営業マンだった古林俊二氏が、医療業界に入ったきっかけは、偶然の事故からだった。当時29歳だった古林氏は、営業の外回りの運転中に交通事故に遭い、重度のむちうちに。静養後、身体面から当時の職を断念することになったが、ご縁にも恵まれて、病院の事務職に就き、31歳で事務長となった。やがて高齢の両親の看病のために退職したが、落ち着いた後に古林氏が以前よりやりたかったという調剤薬局経営の話を知人より受け、49歳で宮崎の地で独立した。
薬局経営が軌道に乗った7年後、古林氏に新たなチャンスが訪れる。かつて知り合った福岡県久留米市にある病院の院長夫妻から調剤薬局を開業してほしいとの強い要請を受けたのだ。それが、今回、事業譲渡した株式会社ファルマシアが運営する調剤薬局だ。「最初はそれほどやる気はなかった。宮崎の薬局だけで十分、飯は食えるし、もし失敗したら病院に迷惑かけるので、おじけづいた。」と古林氏は当時を振り返る。その迷いは院長の一言で断ち切られた。「私は、他の人の申し出をすべて断ってきた。よほどの人でないと薬局は任せられない。古林さんにやってほしい。」古林氏は、いよいよ薬局開業を決意した。
M&Aに至る背景
調剤薬局を運営しながら、着実に処方元の病院との信頼関係を深めていった。院長は、よく薬局を訪れ、コーヒーを飲みながら語らった。従業員もよく働く気前のいい人ばかりが集まり、腰の悪い古林氏を支えた。やがて周囲から、病院と薬局がここほどうまくやっているところはないと言われるほどになった。

ところで2つの薬局を経営していた古林氏は、当初、宮崎と久留米を行き来していた。働きづめで徐々に体調の不安が出てきたことから、67歳で宮崎の薬局のM&Aを決めた。手放すのに宮崎のほうを選んだ理由は、4時間以上かかる移動距離と体調にあった。対して久留米の薬局は自宅から車で20~30分だったのだ。

しかし、久留米の薬局についても、事業譲渡を考えるようになる。70歳を目前にしていよいよ体調がかんばしくなくなった。「自分でも、生命力が落ちていると感じました。もう5年も生きれないのではないかと。」と古林氏は当時を振り返る。さらに「処方元の院長先生は、一番脂の乗った時期。うちのスタッフも含めて、自分がついていけなくなるのはよくないと思いました。」と付け加える。M&Aを考えるのには十分な状況だった。

M&Aの決断「この人なら信用できる。」と譲渡を決断。

M&Aの決断
多数のM&A仲介業者の案内や営業を受けるなか、MABPを知り、担当の更家と電話で話す機会があった。そのとき、古林氏は直感したと振り返る。「更家さんはセールストークがない。信用できると思った。M&A仲介は人柄と信用で成り立つ商売。カンペを読んでいるだけのような人もいるが、この人は、会話の間の置き方や距離の取り方などから、可能なかぎり、私の希望を聞きたいという姿勢が伝わってきた。」と古林氏。

2021年12月10日に更家の初訪問を受けた折も、手っ取り早く商売をまとめようとする雰囲気はまったく感じなかったという。古林氏は更家を薬局へ案内し、経営方針を話したうえで、最適な譲渡相手を探してもらうよう依頼した。
条件について、古林氏は「最も心配だったのは、処方元の院長先生とこれまで大事に築き上げてきた良好な関係を継続できるかということでした。」と話す。「医療は起承転結で、病院が起承転を担い、結の部分を受けるのが調剤薬局。譲渡先には、その経営方針だけは理解してほしいという思いがありました。」と続けた。また「うちのスタッフをこれまでと同じように大事にしてほしい。いい人が集まってくれたせいか、皆、私の考えを忠実に実践してくれた。」と従業員の雇用を守ることも条件だった。さらに、地域の商売の特徴をわかっている必要性もあった。そこで更家は選定に選定を重ね、特にこの地域に強い、複数の調剤薬局を運営する一つの会社を推薦した。

結果として、初めに紹介された一社で、話がトントン拍子に進んだ。古林氏は、推薦や説明を受けた時点で、とても好印象に感じていたという。すぐにその会社の社長に会いに行った。第一印象は良好。若さがありながら、一国一城の主として、柔軟さと謙虚さも持ち合わせている。自身の経営の基本の線は崩さないかも知れないが、これまで古林氏が大切に実践してきた経営の真髄を尊重してくれると直感した。「この人だったら院長先生の医療を尊重してくれる。」と感じた。また久留米地域の商売をよく知っていることもプラス要素となった。この一回目の2022年2月10日の訪問直後に、すでに古林氏はある程度、決心していたという。

最後の一押しは、奥さんからの言葉だった。「あなた、死相が出ているわよ。生命力がなくなってきている。」と。12月からスタートして、2022年3月31日に最終契約。4ヶ月ほどの短期間での成約となった。様々な希望条件も良いところにおさまった。

M&Aの振り返りと展望M&Aは早期に動くことが成功のカギに

M&Aの振り返りと展望
譲渡契約後、古林氏は院長先生に直接、報告へ赴いた。なんとなく勘づいていたようで、古林氏の体調面をずっと心配していた様子だった。これまでに培った病院と薬局の関係性が続けられるか不安だが、「薬局の状況を考えると、最適な相手だと思っています。」と告げたところ、院長先生は「古林さんがこの会社がいいというのなら、私たちは何にも言うことはありません。それより十年間、ここで薬局をしてくれたおかげで、いろんなことで助けられた。感謝しています。」と温かい言葉を返してくれた。従業員たちも古林氏の身体を気遣い、M&Aを受け入れてくれた。譲渡後、トラブルが起こるような様子はないという。処方元の病院ともこれまで同様、うまく回っている。

日本の調剤薬局は、変革期にある。今後、国の方針からして、ある程度の規模のある事業体でなければ様々な業務に対応できなくなり、調剤薬局のM&Aは増えるのではないかと古林氏。後継者がいたとしても安心はできない。M&Aを2回経験して得た成功の秘訣として「早期に動くこと」と「良いアドバイザーを見つけること」の2点を挙げる。経営がかんばしくないときや、トラブルが起きてからでは遅い。急いで動いても良い結果は出ない。しっかりと準備することが重要だという。そして、妥協せず、信頼できる良きアドバイザーを見つけることも成否を大きく分ける。

古林氏自身は今後、体調を見てゆっくりとやりたいことを見つけていくという。プライベートでは、十割そばや日本各地の和牛などのグルメを楽しみ中だ。たっぷりと休養した後は、自ずと、やりたいことが見つかるだろう。

M&Aストーリー

M&Aを実施する目的や背景は多岐にわたって存在するため、
ひとつとして同じ案件や事例は存在しません。

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