
住宅業界で生き残るためには、さまざまな課題を解消することが必要です。課題を放置し続けた場合、経営悪化や廃業に追い込まれる可能性もあるでしょう。
この記事では、住宅業界がかかえる課題や今後の予測、課題の解決方法について詳しく解説します。
また、課題解決に向けた効果的な方法もご紹介します。住宅関連の企業を経営されている方や、新たに住宅業界への参入を検討されている方は、参考にしていただければ幸いです。
目次
住宅業界の市場規模と業界動向
近年の住宅業界では、市場の変化によってさまざまな課題を抱えている企業が少なくありません。
少子高齢化や人口の減少などが原因で、新築住宅の建設は減少傾向にあります。一方で、住宅リフォームの市場では増加傾向にあり、2013年の住宅リフォーム市場は約6.3兆円に達しました。
住宅業界における市場の現状について、詳しく解説します。
新築住宅市場
2000年代初頭は、新築住宅市場の動きは活発でした。しかし、少子高齢化の影響により、2010年以降は徐々に減少しています。
なかでも、地方の新築棟数は減少傾向が強くなっています。原因として、地方の人口減少が原因と考えられます。
住宅金融支援策や税制改正により、一時的な需要喚起が行われた時期もありましたが、縮小傾向は現在も続いています。
リフォーム市場
新築住宅市場が減少する一方で、2010年代に入ってからは既存住宅の価値を維持・向上させる意識が高まり、リフォームに対する需要が高まりました。
リフォームのなかでも、耐震補強や断熱改修・省エネ対策を目的とした工事が増加し、住宅の長寿命化が進んでいます。
省エネや災害対策の意識の高まりによって、リフォーム市場は今後も成長が期待されています。
住宅市場が変化した原因
国土交通省がまとめた「住宅関連産業について」によると、人口動態の変化やエネルギー効率の向上に関する規制強化、働き方改革やテレワークの普及などが市場に影響を与えています。
特に、省エネ住宅やZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)への関心が高まり、新たな市場として注目されています。
また、労働力不足や建設資材の高騰も、住宅業界に影響を与えています。
新築住宅の建設からリフォーム市場の拡大へと移行するなかで、新たな環境規制や労働市場の変化が生じた場合、さらなる変革が求められるでしょう。
住宅業界の将来性
どのような業種でも長期的な予測を立てることは難しいです。「10年後の住宅業界はさらに衰退する」とは明言できませんが、企業単体で考えた場合、厳しい判断を求められる可能性はあるでしょう。
少子高齢化がさらに進むことで住宅需要が減少したり、関連企業が飽和状態になることで競争が激化したりすることで、中小企業の経営に影響が出る可能性は否定できません。
また、環境規制や技術革新への対応が求められる昨今、適応できないために廃業を選択する企業も出てくるでしょう。
しかし、早い段階で住宅業界のニーズ変化に対応することができれば、成長の可能性もあります。
少子高齢化や人口減少によって新築住宅の需要が減少する一方で、リフォームやリノベーションの需要は高まっています。なかでも、省エネや耐震補強、スマートホームの需要はさらに高まるでしょう。
時代やニーズの変化に柔軟に対応できたとき、中小企業でも新たな可能性を見出せることが期待できます。
多様化したニーズを把握し、市場の変化に柔軟な対応ができる企業は、厳しい競争のなかでも持続的な成長をすることができるでしょう。
住宅業界が抱える課題
住宅業界では、ニーズや時代の変化により、さまざまな課題を抱えています。
住宅業界が抱える課題をご紹介します。経営状況の悪化などの悩みを抱えている方は、原因を探る参考にしてみてはいかがでしょうか。
新築着工数の減少
国土交通省による「新設住宅着工数の推移」調査によると、2006年には128万戸あった新築住宅着工数が、2021年には約86万戸まで減少しました。
新築住宅着工数が減少した主な原因として、人口の減少が考えられます。日本の総人口は、2022年まで12年連続で減少しています。少子高齢化が進んでいることを踏まえると、今後も人口の減少が続くことが予想できます。
また、未婚の30代・40代が増えていることも、新築住宅の着工数減少の原因として挙げられるでしょう。
少子高齢化による労働力不足
住宅業界のみならず、どの業界でも人材不足は深刻な社会問題です。
この背景には、少子高齢化が大きく影響しています。人材不足を解消できず、廃業した企業もゼロではありません。
国土交通省の「最近の建設業を巡る状況について【報告】 」によると、住宅業界を含めた建設業就業者は、55歳以上が約36%という結果が出ています。一方で、29歳以下は約12%と、建設業就業者の高齢化が進んでいることが伺えます。
環境問題への配慮
SDGsの影響もあり、さまざまな業界で環境に対する配慮が課題となっています。
住宅業界でも環境への配慮が求められるようになり、持続可能な建築資材や再生可能エネルギーの導入、省エネ住宅の普及が進んでいます。
住宅のエネルギー効率の向上だけでなく、居住者の光熱費削減、シックハウス症候群などの健康面への配慮も求められます。
環境規制の強化や消費者の意識の高まりを受け、環境負荷の低い住宅の開発が課題として挙げられます。
リフォーム需要の増加とコストのバランス悪化
住宅の老朽化や価値の向上を理由として、リフォーム市場の需要は高まっています。
リフォームの需要が増える一方で、建材費の高騰や人件費の増加が影響し、得られる利益とコストのバランスが合わないケースが増えています。
利益とコストのバランスを調整し、顧客ニーズに効率よく対応することが求められます。
空き家問題
人口減少や都市部への人口集中が進んでいる影響により、地方の空き家が増加する現象が起きています。
空き家の増加は地域の治安や景観の悪化につながるため、管理や解体することが求められます。しかし、コストが行政や所有者の負担になるため、放置されていることが現状です。
空き家の有効活用や再生への取り組みが進められていますが、新たな活用が難しい物件も多く、効果的な解決策の模索が続けられています。
人口の都市集中化と地方の需要減少
都市部への人口流入と、それに伴う地方の空き家問題も、住宅業界が抱える課題です。
都市部では、新たな人口流入によって住宅需要が高まり、土地や住宅価格の上昇・住宅供給不足が問題となっています。
一方で、人口が流出した地方では空き家が増え、住宅需要も減少しています。
地域ごとの住宅需要の偏りは都市と地方の不均衡をさらに広げ、地方の住宅市場活性化を妨げる原因です。
そのため、人口の都市集中抑制や地方の住宅再生など、地域格差を抑えるための施策が求められています。
関連サイト:47都道府県別【高齢化率ランキング&マップ】日本編 2020年|リノビズム
住宅業界で生き残るための戦略
新築住宅市場の縮小や人材不足、木材価格の高騰などさまざまな課題を抱える住宅業界で生き残るためには、どのような行動が必要でしょうか。
難しい課題を抱える住宅業界で生き残るための戦略は、以下の4つの方法が挙げられます。
- DX化を推進させる
- 事業を拡大する
- Web集客に力を入れる
- M&Aを検討する
DX化を推進する
住宅業界で生き残るために、DX化を推進させるという方法があります。
DX化とは、「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略で、デジタル技術を活用して業務プロセスやビジネスモデルの変革を目指すことです。
具体的には、顧客管理や経営戦略・社内環境の整備などをデジタル化することで、業務の効率化やコスト削減につなげることができます。
DX化は政府が推進している重要な施策です。住宅業界でも積極的にDX化へ取り組み、時代の流れに合わせた経営が必要です。
事業を拡大する
事業の幅を広げることも、企業を存続させるためには有効な方法です。
縮小傾向にある新築住宅市場のみで事業を続けることは、経営が悪化する可能性があります。しかし、需要が高まりつつあるリフォーム市場に業務の幅を広げれば、生き残れる可能性が高まります。
一つの事業に固執せず事業を多角化することは、企業の存続だけでなく収益の向上にもつながるでしょう。
Web集客に力を入れる
住宅業界で生き残るためには、Web集客にも力を入れることが必要です。
以前は、住宅の購入を検討した人は住宅総合展示場に出向いたり、地元の工務店へ問い合わせをしたりすることが一般的でした。
しかし、インターネットの普及により、住宅業界でもWebサイトやSNSなどから情報収集する方が増加しています。
このような背景により、従来のような現場見学会や相談会のような集客方法だけでは、生き残りは厳しいです。そのため、WebサイトやSNSなど、インターネットを活用した集客へ力を入れる必要があります。
M&Aを検討する
住宅業界で生き残るための戦略として、M&A(合併・買収)の検討も有効な選択肢の一つです。
他社との連携や経営資源の統合を図ることで、市場環境の変化や激化する競争に対応し、経営悪化の予防や事業拡大をすることが実現できます。
また、M&Aでは新たな技術やノウハウを取り入れることができます。その結果、建築技術やサービスの質を向上させ、市場での差別化を図ることも期待できます。
M&Aという手法を選ぶことで、業界の変動に柔軟に対応し、持続的な成長を目指すことができるでしょう。
関連記事:M&Aとは?M&Aの概要やメリット・デメリットなどを詳しく解説
住宅業界におけるM&Aのメリット
住宅業界で生き残るためには、DX化や新たな事業への参入などを行うことが重要です。しかし、すべての方法を自社で行った場合、多くの時間やコストが必要になります。
生き残りに向けた方法を効率よく実行するために、M&Aはとても有効な方法です。住宅業界でM&Aを行うメリットを、買い手側と売り手側それぞれの視点で解説します。
買い手側のメリット
M&Aを行うことで買い手側が得られる主なメリットは、次の2つです。
・優秀な人材の確保
・新規事業への参入
人材不足が深刻化している住宅業界において、採用活動することなく優秀な人材が確保できることは、M&Aで得られる大きなメリットです。すでに住宅業界の仕事に必要な技術や経験を身につけた人材の確保ができるため、人材育成に必要な時間やコストの削減もできます。
また、新規事業への参入がしやすくなることも、メリットの一つです。
「新築だけ」「リフォームだけ」では、将来的に生き残ることは難しいです。しかし、新たな事業へ参入するためには知識やノウハウの習得が必要です。
参入したい事業を行っている企業をM&Aによって買収すれば、必要な設備や技術・人材の確保をまとめてすることができます。その結果、参入のために必要な準備にかかる時間とコスを大幅に削減することができるでしょう。
売り手側のメリット
M&Aを行うことで売り手側が得られるメリットは、次の3つです。
・後継者不足解消と廃業防止
・従業員の雇用維持
・安定した経営
住宅業界に限らず、後継者不足は深刻な問題です。後継者が見つからず、廃業を選択するケースも少なくありません。
M&Aによって第三者へ事業承継すれば、育ててきた会社を廃業せずに済みます。また、長年働いてくれた従業員の雇用の維持も可能です。
大手企業の傘下に参入すれば、親会社のバックアップを受け、安定した経営の持続ができる可能性もあるでしょう。
住宅業界のM&A事例を紹介
住宅業界でM&Aに成功した企業の事例をご紹介します。
自社の現状と類似した事例がないか、探してみてはいかがでしょうか。
伸び悩む会社を再成長させる手段として、M&Aを選択。|株式会社HOUSE BUILDホールディングス
東京23区のエリア内で新築の戸建てやデザインハウスの分譲を手掛ける「株式会社HOUSE BUILDホールディングス」が、投資ファンド会社に株式を売却して傘下に入ることで経済面での不安を解消し、継続的な事業拡大への足掛かりを掴んだ事例です。
M&A成約事例:株式会社HOUSE BUILDホールディングス
100年企業を目指す中で、組織変革の必要性を感じる。|株式会社MIMA
大阪府八尾市の地域密着を掲げていた住宅リフォーム会社「株式会社MIMA」が、同じくリフォームを本業とする、西日本エリアでのM&Aを積極的に進めていた会社と「友好的・共存共栄型M&A」を成功させた事例です。
他社に先駆けてDXを導入し、次のステージへと進む。|株式会社Liv-up
主に東京都の資産性の高いエリアで不動産や開発分譲、リノベーション事業などを手掛けていた「株式会社Liv-up」が、アドバイザリー、投資、不動産テックを三本柱とする企業へ株式の譲渡を行い、DXによる業務の効率化と従業員の雇用確保という2つの大きな目標を果たした事例です。
事業を拡大するなかで、成長の壁を感じる。|株式会社JYU-KEN
不動産仲介、建設、不動産管理、飲食、ヘルスケア、コンサルティング、スポーツ、介護といったさまざまな事業を展開する「株式会社JYU-KEN」。事業を拡大していく中で会社の市場価値を測る機会を持ったことで、競合性の高さを感じていたヘルスケア事業を医薬品や化粧品、医療機器の製造販売を行う資本金3億円の企業へ譲渡した事例です。
まとめ
住宅業界では、新築住宅の市場規模の縮小や人材不足など、さまざまな課題を抱えています。
住宅業界で生き残るためには、抱えている課題を解消し、企業価値の成長が必要です。しかし、新たな事業への参入や事業拡大を自社のみで行った場合、多くの時間とコストが必要です。
時間とコストの問題を解決し、企業を存続させるために効果的なのがM&Aです。
M&Aを実施することで優秀な人材が確保でき、新規事業への参入もスムーズに行えます。また、後継者不足の解消にもつながります。
住宅業界でM&Aを実施する場合は、業界の市場を熟知した専門家への依頼がおすすめです。
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