近年、医療機器業界は大きな転換期を迎えています。
少子高齢化に伴う需要の拡大が続く一方で、相次ぐ診療報酬の改定や物流コストの高騰、さらには加速するDX化など、経営を取り巻く環境は厳しさを増しています。
こうした激しい変化の中、生き残りとさらなる成長をかけた戦略として、いま注目されているのが「M&A」です。
かつては大手企業中心だった再編の波は、現在、地域密着型の卸売業者や独自の技術を持つ中小メーカーにまで広がっています。
本記事では、医療機器業界の最新動向を整理したうえで、なぜ今これほどまでにM&Aが活発化しているのか、その背景をわかりやすく解説します。
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目次
医療機器卸業界の動向
はじめに、医療機器卸業界の市場動向を解説します。
市場規模の推移と再編の加速
国内の医療機器市場は2023年に約4.5兆円に達し、中期的にも年率1.8%程度の緩やかな拡大が見込まれています。
しかし、償還価格(公定価格)の引き下げや医療機関の経営効率化により、卸売業者の利益率は低下傾向にあります。
これにより、大手による地域卸の買収やグループ化といった業界再編が加速しています。
参考:経済産業省|みずほ銀行 産業調査部「医療機器業界動向」
参考:日本医療機器産業連合会|公的統計データに基づく日本の医療機器産業の概況
「物流2024年問題」への対応
ドライバーの労働時間規制により、これまで医療機器卸が強みとしてきた「緊急配送」や「多頻度小口配送」の維持が困難になっています。
厚生労働省の検討会資料では、対応を行わない場合、2024年度には輸送能力が約14%不足する可能性が指摘されており、物流コスト増への対策として共同配送や拠点統合を目的としたM&Aが注目されています。
参考:厚生労働省|物流2024年問題の医療機器業界への影響と考えられる対応について
参考:厚生労働省|物流2024年問題にあたっての医療機器流通における課題と対応
医療機器メーカー業界の動向
続いて、医療機器メーカーの業界動向を解説します。
研究開発コストの増大と規制(MDR等)への対応
欧州医療機器規則(MDR)の施行など、国際的な規制の厳格化により、承認維持のためのコストが大幅に上昇しています。
特に中小メーカーにとっては、製品の安全性を証明するための臨床データ収集や審査対応が経営の重荷となっており、資金力のある大手メーカーの傘下に入ることで製品開発を継続する事例が増えています。
参考:日本貿易振興機構|欧州医療機器規則 Medical Device Regulation(MDR)概要
参考:経済産業省|医療機器産業ビジョン
デジタル化(MedTech)と異業種連携
AIを活用した診断支援や、遠隔モニタリング機器などの「MedTech」領域が拡大しています。
既存のハードウェアメーカーが、IT技術やソフトウェア開発力を持つ企業を買収することで、従来の「機器販売」から「定額制サービス(サブスクリプション)」や「データ活用」へのビジネスモデル転換を急いでいます。
参考:厚生労働省|医療機器基本計画に関する調査研究事業(医療機器産業実態)
参考:矢野経済研究所|病院設備機器市場に関する調査を実施(2025年)
医療機器卸・メーカー業界でM&Aが活発な背景
厳しい経営環境での生き残りをかけて、近年の医療機器卸・メーカーではM&Aが活発化しています。
なぜM&Aが活発になっているのか、その背景を解説します。
不足する人材の囲い込み
労働人口の減少に伴い、「人手不足倒産」という言葉が誕生するほど深刻な人手不足が続いており、新規雇用が難しい状況となっています。
この人手不足を解消するために同業他社を買収し、即戦力となる人材を囲い込むためのM&Aが増加しています。
後継者問題の解消
近年では、後継者不足も大きな課題となっています。
以前は、親族もしくは自社従業員から新たな経営者を選出するケースが多かったですが、最近では親族に事業を引き継ぐ意思がなかったり、経営者となりうる従業員がいなかったりするなどの理由から、廃業を選択する企業が増加しています。
このような状況を打破するために第三者へと事業を承継し、会社を、そしてこれまで働いてくれた従業員の雇用を守ろうとするM&Aが増加しています。
事業エリアの拡大
通常、事業エリアの拡大などを目指すためには多くの時間、そしてエリア参入のためのコストを必要とします。
そこで、新たに狙うエリアですでに地盤を固めている企業を買収し、スムーズに事業エリアの拡大を果たそうとするM&Aも増加傾向にあります。
大手企業のリソース活用
特に中小企業の場合、経営基盤を強化するためには営業利益の向上などに向けて、新たな施策の策定や営業力強化、新製品開発などが必要ですが、多額のコストがかかり自社だけでは実行できないケースが少なくありません。
そこで、大手企業の参加となり、親会社の資本力や人的リソースを活用することを目的にM&Aを選択する企業が増えています。
医療機器卸・メーカー業界で実際に行われたM&A事例
医療機器卸・メーカーで実際に行われたM&A事例をご紹介します。
メディアスホールディングスによるM&A
2024年、消耗品から高度医療機器などの取り扱いのほか、介護福祉機器の販売・レンタルを行う医療機器卸大手のメディアスホールディングス株式会社は、山梨県を地盤として医療機器販売事業を展開する医療機器メーカーのマコト医科精器株式会社を子会社化しました。
このM&Aによって、グループとして一体的な戦略のもとで事業を展開し、山梨県でのシェア拡大や商品調達力強化を図るとしています。
参考:メディアスホールディングス株式会社|(開示事項の経過)マコト医科精機株式会社の簡易株式交換による 完全子会社化完了に関するお知らせ
カネカによるM&A
化成品や機能性樹脂、発泡樹脂製品、医療機器など多角的な経営を行っている株式会社カネカは、医療機器の開発メーカーである株式会社日本医療機器技研の全株式を取得、子会社化しました。
カネカは、冠動脈疾患の治療に用いるステント治療の領域での事業拡大を目指しており、一方の日本医療機器技研は冠動脈ステントの技術開発で高い技術力を保有しています。
このM&Aによって両社の技術力を融合させ、生体吸収性ステントの開発研究をスピードアップさせるとしています。
参考:株式会社カネカ|カネカ 株式会社日本医療機器技研を完全子会社化
メニコンによるM&A
コンタクトレンズやケア用品事業などを展開する株式会社メニコンは、医療用機械器具の販売及び輸出入・コンサルティング業務や治験・臨床試験の受託、農水産物の販売・輸出入後有無を展開する板橋貿易株式会社の全株式を取得、子会社化しました。
このM&Aにより、メニコンはオルソケラトロジーレンズ事業分野のさらなる強化を図るとともに、中国市場への本格参入によってコンタクトレンズ及び関連製品等のさらなる事業拡大を目指し、海外事業の拡大を加速させるとしています。
参考:株式会社メニコン|板橋貿易株式会社の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ
まとめ
少子高齢化に伴う需要の拡大が続く一方で、相次ぐ診療報酬の改定や物流コストの高騰、さらには加速するDX化などを背景に医療機器界は大きな転換期を迎えています。
しかし、激しい状況を打破するためには多くの課題を抱えており、課題を解決して市場で生き残るためのM&Aが活発化しています。
しかし、M&Aのプロセスは複雑かつ専門的で、M&A仲介会社など専門家によるサポートが必要不可欠です。
激しい市場競争に打ち勝ち、医療関連企業として今後も人々の健康をサポートしたいとお考えの方は、まずはお気軽にM&Aベストパートナーズまでご相談ください。
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