企業の資産運用戦略においてキャピタルゲインは重要な役割を担っており、事業収益とは異なる「もう一つの収入源」として注目を集めています。
そこで本記事ではキャピタルゲインの概念・得られる投資方法について詳しく解説します。
併せてインカムゲインとの違いや関連する税金についても解説するので、投資による新たな経営資源の獲得やM&Aによる法人売却を検討されている経営者の方はぜひ参考にしてください。
目次
キャピタルゲインとは?
キャピタルゲインとは、主に株式や不動産・貴金属など保有資産を売却することによって得た差益を指します。
具体的には、100万円で購入し保有していた資産を150万円で売却した場合、差額の50万円※1がキャピタルゲインとなります。
一方で、100万円で購入した資産について80万円で売却した場合は20万円の損失となり、これをキャピタルロスと呼びます。
※1:売却手数料や税金を除く
キャピタルゲインを得られる投資方法と具体例
キャピタルゲインを得ようとする場合、主に以下の5つが代表的な方法です。
- 株式投資
- 不動産投資
- FX(外国為替証拠金取引)
- 暗号資産(仮想通貨)
- 債券・その他資産
それぞれの方法からキャピタルゲインを得る方法について、詳しく解説します。
株式投資のキャピタルゲイン
株式投資のキャピタルゲインとは、購入時の株価よりも高い値段で売却した際の差益を指します。
株式投資でキャピタルゲインを得ようとした場合、短期間での売買を繰り返して収益化を目指す「デイトレード」と、企業の成長や企業価値の向上を期待して長期的に株式を保有する「バイ&ホールド」という手法があります。
どちらがよいかは投資の目的やスタンスによって異なりますが、株価は日々変動するためキャピタルロスとなる可能性もあることを理解しておくことが必要です。
不動産投資のキャピタルゲイン
不動産投資は、主に保有している土地や建物などの不動産について、価格上昇後に売却することで得る投資方法です。
不動産価値は、取得後に短期間で上昇することは少ないため、長期的な視点が求められる手法といえるでしょう。
例えば、再開発やインフラ整備が予測されているエリアの不動産を購入し、価格が上昇したタイミングで売却することが挙げられます。
また、保有している物件のリフォームを行い、自社(または個人)で不動産価値を高めて売却するといった方法でもキャピタルゲインを得ることが可能です。
FX(外国為替証拠金取引)のキャピタルゲイン
FXは、外国為替市場において異なる通貨の価値変動を予測し、売買時の差益を得る方法です。
考え方は株式投資と似ていますが、為替市場は短期的な変動が激しいケースが多いため、キャピタルロスのリスクがより高くなるため注意が必要です。
暗号資産(仮想通貨)のキャピタルゲイン
近年では、暗号資産(ビットコインやイーサリアムなど)の取引も一般的な手法となっています。
ハイリターンを望める方法ですが、値動きが激しくリスクも高いため、FX同様に行うときは理解したうえで行う必要があります。
債権・その他資産のキャピタルゲイン
キャピタルゲインは対象がさまざまで、株式や不動産・通貨のほかに債券・その他の保有資産でも得ることができます。
例えば、金利水準が下がった段階で保有している債券を売却した場合、購入時よりも高い金額で売却することが可能です。
また、貴金属など市場価値が変動する資産を保有している場合も、価値の上昇に合わせて売却することでキャピタルゲインを得ることができます。
キャピタルゲインとインカムゲインの違い
キャピタルゲインと合わせて使われる言葉に「インカムゲイン」というものがあります。
売却益によって得た利益を指すキャピタルゲインとは異なり、インカムゲインでは資産を保有することで発生する配当金や利息・家賃収入などを指します。
インカムゲインの概要とキャピタルゲインの違いは以下のとおりです。
【インカムゲインの概要】
- 資産を保有している間に継続的に得られる利益を指す
- 株式の配当金、預金の利息、不動産の家賃収入などが該当する
- ローリスク・ローリターン型の利益が特徴で長期保有に向いている
【キャピタルゲインとインカムゲインの相違点】
項目 | キャピタルゲイン | インカムゲイン |
---|---|---|
利益の発生 | 資産の売却時 | 資産の保有中 |
代表例 | 株式や不動産の売却益 | 配当金・利息・家賃収入 |
リターン | ハイリターンを狙える | 安定的なローリターン |
リスク | ハイリスク(損失の可能性大) | ローリスク(利益を得にくい) |
投資スタイル | 短期~中期向き | 長期保有向き |
発生タイミング | 売却時 | 定期的・継続的 |
キャピタルゲインにかかる税金
キャピタルゲインでは、利益を得るために行った方法によって税金の計算が異なります。
税金の仕組みを理解しておかない場合、申告漏れによる追徴課税が生じる可能性があるため注意が必要です。
関連記事:【分離課税と総合課税の違い】確定申告での取り扱いやメリット・デメリットを解説
株式・投資信託の場合
株式や投資信託の売買で得たキャピタルゲインにかかる税金は、以下のとおりです。
- 一律20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)
不動産の場合
不動産の売買によるキャピタルゲインの場合、不動産の保有期間によって税率が異なります。
- 所有期間5年以下(短期譲渡所得):39.63%(所得税+復興特別所得税30.630%、住民税9%)
- 所有期間5年超(長期譲渡所得):20.315%(所得税+復興特別所得税15.315%、住民税5%)
上記のように、保有年数が長いほど税率は下がるため、不動産によるキャピタルゲインを得ようとする場合は予測される利益とかかる税金を比較検討したうえで売却するとよいでしょう。
FX(外国為替証拠金取引)の場合
FX(外国為替証拠金取引)によるキャピタルゲインへの課税は以下のとおりです。
- 税率は20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)
暗号資産(仮想通貨)の場合
暗号資産によるキャピタルゲインの場合、累進課税が適用されるため総所得金額によって所得税が5%〜45%と大きな幅があります。
- 最大税率は55.95%(所得税45%、住民税10%、復興特別所得税0.95%)
法人の場合
近年では、後継者不足や弱体化した経営基盤の強化を目的としてM&Aによる法人売却をするケースが増えています。
しかし、法人の売却時もさまざまな税金がかかるため、事前の確認が必要です。
- 売却益に対して法人税、地方法人税、法人住民税、法人事業税が課される
法人売却の場合、ほかの手法とは異なり売却までに複雑な手続きも必要になります。
売却を検討する際は、M&A仲介会社など専門家に相談するとスムーズに行えるでしょう。
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まとめ
事業収益とは異なる方法で新たな収入源を見出すキャピタルゲインには、経営資源の拡張などさまざまなメリットがあります。
一方で、保有資産によっては市場の変動が激しく、キャピタルロス(損失)となるリスクもあります。
また、方法ごとにかかる税金に違いがあり、キャピタルゲインによる収益拡大を目指すときはリスクと税金に関する事前の確認・理解が必要です。
なかでも、法人売却の場合は税金に関する知識だけでなく、売却先の選定や複雑な手続きなど専門的な知識やノウハウが求められます。
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