PMIとは、M&Aによる統合効果を最大限発揮させるために用いられるプロセスを指します。
M&A後のリスクを回避したり、従業員同士のトラブルを防いだりするために、必要となる作業です。
重要性やメリットについて正しく理解・実施することで、M&Aで大きな効果を得られる可能性が高まるでしょう。
今回は、PMIの概要や具体的な進め方、成功させるポイントについて詳しく紹介します。
PMIについて理解できていない人は、ぜひ参考にしてください。
目次
PMIとは?
PMIとは「Post Merger Integration」の略称であり、M&Aによる統合効果の最大化を目的とした作業のことです。
大きく分類すると、経営・業務・意識という3つの段階で進めていきます。
具体的に、どのように実施するのかは会社によって異なりますが、主な統合対象は以下の通りです。
- 経営理念
- 組織体制
- 業務
- システム
- 人事
- 会計
どの部分を優先するべきか慎重に検討したうえで、実行に移すことが求められます。PMIを適切に推進したかによって、統合後の相乗効果が大きく変化するため、M&Aを成功させるための重要なプロセスといえるでしょう。
なお、PMIは数日~数週間で実行できるものではありません。PMIを適切に進めなかった場合、統合による相乗効果が十分に発揮されず、M&A実行後の経営に悪影響を与える可能性も考えられます。
相乗効果を最大化させるには、M&A実行前から準備を始め、具体的なスケジュールを策定するようにしましょう。
PMIの重要性について
先述した通り、M&Aを行った後の相乗効果を最大化させる手段として、PMIは必要なプロセスです。
PMIの推進が、M&Aの成功の鍵を握る要素ともいえます。
M&Aによって統合が実行された後は、他の会社の従業員と連携を取る必要があります。しかし、元々あった社内システムを統一することは難しいでしょう。
そのため、社内が入り乱れやすく、致命的な失敗やシステムの不具合を引き起こす可能性が高まります。
また、会社同士の文化に対する配慮が不足していると、社内の争いにつながるでしょう。なお、売り手側と買い手側の方針のすり合わせが足りていない場合、従業員の負担が大きくなり、離職率が上昇するリスクが高まります。
M&Aによる統合後は、経営悪化や従業員の流出などを防ぐための対策が必要です。PMIを進めると、M&Aの序盤で統合の足枷となる原因を探るプロセスが発生します。
その結果を考慮したうえで、統合後の組織管理を進めることが大切です。
PMIを実施するメリットとは?
PMIを実施することは、M&A後のリスク回避や業務の効率化につながるなど、さまざまなメリットを得られるでしょう。
以下では、PMIを実施するメリットを4つ解説します。
M&A後に発生するリスクを未然に防ぐ
PMIを適切に実施することで、M&Aによる統合後に起こりうるリスクを未然に防げます。
PMIの取り組みのなかには、M&A実施後に想定される問題を洗い出し、対策を練るプロセスがあります。ここのフェーズで万全な対策を練ることで、何らかの問題が発生した際も柔軟に対応しやすくなるでしょう。
その結果、統合後の社内の混乱を防いだり、顧客との関係悪化を回避できたりなど、あらゆるリスクを最小限に抑えられます。
事業の効率化を図れる
M&Aによって会社を統合することで、事業の重複が発生するケースがあります。
このようなケースが発生すると、作業効率が悪くなるうえに、人件費やコストの負担が大きくなるでしょう。
作業効率を低下しないためにも、統合後は重複する事業を1つにまとめ、円滑に業務を進められる体制を整えることが大切です。
あるいは部署異動の実施も1つの手段といえます。従業員に自身のスキルを活かせる事業に取り組んでもらうことで、事業の効率化が期待できるでしょう。
従業員のワークエンゲージメントを高められる
PMIを進める過程で、売り手側と買い手側の経営層が持つビジョンやM&Aの重要性を明確化させることで、従業員のワークエンゲージメントを高められます。
たとえ、初めから経営層同士の考えが一致しているとしても、従業員の意識が変わらない場合、M&Aを円滑に進めることは難しいでしょう。
PMIを通じて、M&Aに対する従業員からの理解を得られれば、モチベーション低下や離職の防止につながります。
また、別の会社と比べることで、自社の優れている点や弱みを把握できるため、今後のビジネスの幅を広げられる可能性があるでしょう。
相乗効果を最大化できる
統合による相乗効果の最大化が期待できる点も、PMIを実施するメリットといえます。
相乗効果を最大化するには、どのような狙いでM&Aを行うのか、目的・ゴールについて正しく把握しながら進めることが大切です。
利益や売上だけでなく付加価値も得られるように、多角的な視点から計画を練る必要があります。M&Aに取り組む前から、短期的あるいは中長期的な目標を持つことで、より大きな相乗効果を得られるでしょう。
PMIの主な進め方・流れ
PMIを実施するにあたり、大まかな流れを把握することが大切です。
円滑に進められるよう、必要となるステップを1つずつチェックしていきましょう。
以下では、PMIの主な進め方と流れを解説していきます。
M&Aの方針を明確にする
PMIを進めるにあたり、まずは会社の理念や将来像を明確にしましょう。
また、従業員がスムーズに行動できるように、M&Aの具体的な進め方や費やす期間などを検討する必要があります。
あらかじめM&Aの方針を明確に定めておくことで、社内が混乱するリスクを回避できるでしょう。
社内全体に方針を浸透させて実行に移すには、プロジェクトチームを作る必要があります。プロジェクトチームのメンバーは、売り手側・買い手側の双方の会社から、業務システムや組織体制に詳しい人材を選ぶことが大切です。
M&A後に想定される課題や問題を洗い出す
プロジェクトチームで、M&Aのクロージング(経営権の移転を完了させるための手続き)後に想定される課題や問題点を洗い出すステップに移ります。
各部署の実務担当者を対象にヒアリングを行い、自社の現状を把握・分析しましょう。
課題のリストアップを行う際は、業務内容や制度だけにとどまらず、従業員の意識面にも注目します。従業員との個別面談を行い、一人ひとりの不安に耳を傾けることが大切です。
なお、M&Aにおけるクロージングについて、以下記事で詳しく解説しています。気になる人はぜひご一読ください。
課題や問題に対する対策を練る
課題や問題点を洗い出した後は、解決につなげるための対策を練りましょう。
この段階で具体的なプランを策定しなければ、トラブルが発生した際にうまく対処できず、M&Aを円滑に進められなくなってしまいます。
また、デューデリジェンス(買い手側による、売り手側の実態を把握するための調査)で明確になった課題についても対処法を考える必要があります。解決すべき課題が多い場合、優先順位をつけながら進めていきましょう。
なお、デューデリジェンスについて、以下記事で詳しく解説しています。気になる人はぜひご一読ください。
統合計画を作成後「100日プラン」を作成する
問題点を洗い出して対策を練った後は、統合計画(M&Aのクロージング後、6ヶ月以内を目安に実施する計画)を作成します。
相乗効果を最大化できるように、社内のルールやマニュアルを整えましょう。そのほか、運営システム・組織体制・財務などあらゆる面の見直しが必要です。統合計画をまとめた後は、M&Aの方針を考慮しながら「100日プラン」を作成します。
100日プランとは、M&Aのクロージングから100日間を目安に策定する中期事業計画のことです。
優先的に実施すべき事項の具体的な計画であるため、M&Aの進め方や期限、実行の中心となる人物など、細かな部分まで策定しましょう。
100日プランを基にM&Aを実施する
作成した100日プランを基に、M&Aを推進する段階に入ります。
定期的にモニタリングを実施し、「計画通り進められているか」「統合によって相乗効果は発生しているか」などについて検証しましょう。
計画通りに推進できていない場合は、方針を変更する必要があります。問題が発生した際は、解決につながる施策を考えることが大切です。
必要に応じて計画の改善・方針の変更を行うことで、より高い相乗効果を期待できるでしょう。
PMIを成功に近づけるポイント
PMIを進めるにあたって、事前に理解しておきたい項目があります。
以下では、M&Aの失敗を防ぐためにも、PMIで注意すべきポイントについて紹介します。
なるべく早めに実行する
PMIは、統合から日数が経つほどスムーズに実行することが難しくなります。
問題点やリスクに対応できるように、可能な限り早いタイミングでPMIを実行するとよいでしょう。
早めにPMIを実行することは、売り手側企業の従業員をサポートしやすくなる点がメリットです。会社の統合直後は、従業員のやる気が低下する傾向にあります。
M&Aの必要性や経営方針を早期に従業員へ共有することで、モチベーションを維持できるでしょう。従業員へ共有する際は「従業員にとって働きやすい環境にしたい」という気持ちを伝えることが大切です。
現場の声に耳を傾ける
PMIの実行にあたって、複数のやるべき項目があります。作成した100日プラン通りに実行できているか確認するだけでなく、従業員にM&Aの重要性を教えることも大切です。
従業員のやる気を持続させるために、現場の意見にしっかりと耳を傾けながら、定期的に情報共有を実施する必要があります。
M&Aの目的や経営戦略を正しく理解してもらい、業務へのモチベーションを保つことで、より高い相乗効果を得られるでしょう。
多くの時間を費やす
PMIでは、これまでは1社で完結させていた事業を統合するため、スムーズに運営できるまでには多くの日数を要するでしょう。
M&Aを進めるなかで、想定外のトラブルが発生するケースもあります。
そのため、長い時間がかかる点を考慮したうえで、長期的な視点でPMIを実施することが大切です。
まとめ
PMIは、M&Aによる相乗効果を最大化させるために欠かせないプロセスです。
適切にPMIを進めることで、業務の効率化や従業員のエンゲージメント向上につなげられるでしょう。
PMIは専門性が求められる場面が多いため、計画通りに進められなくなるケースも多くあります。
出来る限り失敗を避けるには、専門家からアドバイスをもらいながら実施することが大切です。
PMIについて不安がある場合は、M&A・事業継承のプロフェッショナルである「M&Aベストパートナーズ」へお気軽にご相談ください。