介護業界のM&Aの現状や動向は?M&Aを行うメリットも解説

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M&Aベストパートナーズ MABPマガジン編集部

介護業界では、日本の高齢化による需要の高まりと介護人材の不足を背景に、M&Aを行う事業者が増加しています。

しかし、M&Aを実行に移すとなると不安を感じる人も多いのではないでしょうか。

本記事では、介護業界の現状と課題を踏まえて介護業界のM&Aの動向、買い手側と売り手側から見たメリットを解説します。

介護業界の現状と課題

高齢者を主な顧客とする介護業界は、日本の高齢化の進行に比例して需要が高まる成長産業といわれていますが、さまざまな課題を抱えているのが現状です。

介護業界が抱える課題と現状について、介護市場の拡大現場での人材不足の2つの観点から解説します。

介護業界の市場拡大

総務省統計局の調査によると、2023年9月時点での、日本の65歳以上の高齢者数は3,623万人と、過去最高を記録した2022年度の3,624万人と比較して1万人減となりました。

一方で、65歳以上のなかでも70歳以上の人口は2,889万人、75歳以上は2,005万人、80歳以上は1,259万人と、全ての世代が2022年よりも増えていり、「団塊の世代」が2022年から75歳を迎え始めていることがうかがえます。

65歳以上 人口 推移

参考:国勢調査|年齢(5歳階級)男女別人口及び人口性比ー全国
参考:統計局|高齢者の人口

また、グラフには含まれていませんが2024年9月時点での65歳以上は3,625万人と過去最高を記録しており、今後さらに高齢化が進むでしょう。

そのため、介護業界のなかでも特に在宅介護では、2040年には2020年時点の実績値から32%の増加が見込まれています。

居住系サービスは39%、介護施設は30%の増加が予測されており、介護サービスの需要に応じてさらなる市場拡大が見込まれています。

介護人材の不足

介護を必要とする高齢者の人口は増加していく一方で、介護職員の雇用が追いついていません。

高齢化に伴う要介護認定者の増加とともに介護職に携わる職員数も増加はしていますが人数が足りておらず、介護人材確保に向けた取り組みが急務となっています。

参考:厚生労働省|介護職員数の推移

人材不足の原因の一つとして、人と直接触れ合う仕事ゆえの体力面・精神面共にハードな職務内容である点が挙げられるでしょう。

また、施設勤務の場合には長時間の夜勤が必要なことやシフト勤務で変則的な生活になりやすいこと、休日を取得しづらいことも離職率増加に伴う人員不足として考えられます。

既存事業の中には人手不足を理由に事業継続を断念する事業所も増加傾向にあり、東京商工リサーチの調査によれば、2022年の老人福祉・介護事業の休廃業・解散・倒産の総計は過去最多の600件台を超えました。

このような要因を背景に、政府は人材不足解消のために、高齢の就労希望者や外国人労働者の介護業界への受け入れ、ICTやロボットなどテクノロジーの活用によるサービスの効率化による対策も打ち出しています。

関連サイト:しんぶろぐ〜介護ノート〜

関連記事:2025年問題とは?人材不足で日本はどうなる?

介護業界のM&Aの動向

介護業界では、市場競争激化人材不足の解消に向けたM&Aが増加傾向にあります。

介護業界におけるM&Aの動向を解説します。

介護人材の不足解消

介護業界におけるM&Aの目的の多くは、人材不足の解消です。

M&Aによって介護事業を買収することで、買取側はすでに介護スキルやノウハウのある従業員をそのまま雇い入れることができ、人材不足を効率的に解消することができます。

また、事業の規模や種類が拡大することで、従業員の働き方にも幅が広がり、スキル向上やキャリアアップにつながるというメリットもあります。

M&Aによって、専門性の高い介護人材の継続的育成を後押しできるともいえるでしょう。

異業種からの新規参入

介護業界では、異業種による新規参入を目的としたM&Aも盛んに行われています。

需要拡大が確実な成長産業とはいえ、新たに事業を始めるにあたってのリスクを下げるために、既存の介護事業を買収する企業は少なくありません。

異業種の中でも、建設業界や警備会社、保険会社、医療機関などの介護業界との結びつきの強い業界によるM&Aが特に目立っています。

事業継承

介護業界では、事業継承を目的としたM&Aも行われています。

2000年の介護保険制度創設から20年以上が経った現在、当時事業を始めた経営者の多くが高齢化し、事業承継を考え始めるタイミングを迎えています。

しかし、少子化の影響で後継者が不足しているため、従業員継承や親族内継承が難しい事業者がいるのが現状です。

そのため、事業の継続や従業員の雇用確保、地域の介護環境維持を目的に事業継承を行う企業が増加しています。

関連記事:介護のM&A事例や譲渡で注意すべき点|譲渡を検討する際のガイド
関連記事:M&Aとは?M&Aの概要やメリット・デメリットなどを詳しく解説

M&Aで買収側が得られるメリット

介護業界を買収することによるメリットは、主に以下の2点です。

  • 有資格者やスキルを持ったスタッフを確保できる
  • 事業参入の負担を軽減できる

買収側のメリットについて詳しく解説します。

有資格者やスキルを持ったスタッフの確保

介護業界は、慢性的な人手不足の状況となっています。

厚生労働省の調査によれば、2021年での一般職業の有効求人倍率1.03倍に対し、介護サービス職種では3.65倍となっています。

介護職 有効求人倍率 推移

参考:厚生労働省|図表1-2-39 有効求人倍率(介護関係職種)の推移(暦年別)

この結果から、人手を求める事業所が多いなかで介護職員の不足は顕著となっています。

そのため、M&Aを実施することで、求人を出さずに有資格者・スキルを持った人材を事業と共に引き継ぐことができることは大きなメリットです。

事業参入の負担軽減

異業種から介護事業に参入する場合、新たな施設の用意や従業員の確保などで多くのコストと労力が必要です。

しかし、M&Aによって施設や設備をそのまま引き継ぐことができれば、本来必要となる資金を節約し準備期間を短縮できます。

また、同業種であっても、新規エリアへの参入のために土地や建物をまとめて取得できることは、大きなコストダウンにつながります。

M&Aで売却側が得られるメリット

介護業界におけるM&Aは、買収側だけではなく売却側にとってもメリットがあります。

  • 事業承継問題を解消できる
  • 現職員の雇用先を確保できる

M&A事業を譲渡する売却側にとってのメリットを詳しく解説します。 

事業承継問題の解消

後継者不足や経営状況の悪化による廃業を回避できることは、M&Aの大きなメリットといえるでしょう。

3年ごとの介護報酬の改定の影響を避けられない介護業界では、介護報酬改定のタイミングで経営が悪化しやすいといった特徴があります。

大手企業に事業譲渡し、安定した経営基盤の構築ができれば、利用者に対して安定したサービス提供と質の向上を目指せるでしょう。

既存職員の雇用先確保

不安定な経営状況が続いてしまった場合、さらなる経営悪化によって従業員が仕事を失うリスクが高まります。

しかし、M&Aによって安定した事業経営を維持できれば、従業員を継続雇用できるだけでなく、従業員の待遇改善も期待できるでしょう。

また、大規模な事業所とのM&Aを実施することで人手を増やすことができれば、従業員の働き方が柔軟になる可能性もあります。

まとめ

日本社会の高齢化に伴って需要が高まり続けている介護業界では、M&Aが増加傾向にあります。

しかし、M&Aにはさまざまな手法があり、適切な選択ができなければM&Aによるシナジー効果を最大限引き出すことは難しく、実施する場合はM&Aの専門家によるサポートが不可欠です。

介護業界でのM&Aをご検討中の方は、まずはお気軽にM&Aベストパートナーズへご相談ください。

介護業界に精通した専任アドバイザーが、M&Aの成功に向けた最適な方法をご提案させていただきます。

著者

MABPマガジン編集部

M&Aベストパートナーズ

石橋 秀紀

ADVISOR

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