2024年1月15日

化粧品業界ではM&Aが増えている?スキーム別の事例を紹介

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化粧品業界ではM&Aが増えている?スキーム別の事例を紹介

化粧品の開発や製造、販売を行う化粧品業界では、さまざまな経営課題に直面する企業が多く存在します。こうしたなかで、近年「M&A」を実施するケースが増えている状況です。

この記事では、化粧品業界におけるM&Aの動向や事例を紹介します。

M&Aを買い手・売り手それぞれが行うメリットや成功のポイントも紹介するため、ぜひ参考にしてください。

化粧品業界におけるM&Aの動向

化粧品業界におけるM&Aの動向

M&Aは業界を問わず増えていますが、各業界の構造や状況により傾向が変わってきます。

それでは、化粧品業界ならではの動向にはどのようなものがあるのでしょうか。

最初に、化粧品業界におけるM&Aの動向について紹介します。

 

M&Aによる他業種からの参入が増えている

M&Aには買い手・売り手の関係性が生じますが、両社の業界は異なっても構いません。

化粧品業界のM&Aでは、相手企業が他業種のケースが増えています。

2018年3月までの28年ほどで約110社の企業が他業種から化粧品業界へ参入しました。昨今ではOEM(他社への製造委託)によって、自社で製造設備を持たずとも化粧品を製造できます。また、ネットショップの普及により販売も容易となりました。

このように、化粧品業界への参入ハードルが下がったことが、参入増加の大きな要因といえるでしょう。

そして、M&Aも化粧品業界への参入を実現する手段として注目されています。既存の化粧品会社とM&Aにより統合すれば、製造設備やノウハウなどを含めて取り込むことが可能です。そのため、今後もM&Aによる化粧品業界への参入は増えると予測できるでしょう。

 

海外企業とのM&Aも多くなっている

化粧品のインバウンド需要は好調である一方、国内需要は頭打ちとなっているのが現状です。

コロナウイルス流行の全盛期からは回復傾向にあるものの、そもそも日本の人口減少が進んでいることを考えると、国内需要は中長期的な減少が懸念されます。

こうしたなかで、海外企業とM&Aを実施する日本の化粧品会社も増えてきました。M&Aにより海外の化粧品会社と統合すれば、相手企業の商圏や拠点などを取り込めます。つまり、自社の事業活動の範囲を海外に広げることで、新たな需要の獲得が可能です。

日本の化粧品は海外でも評価が高く、世界の売上ランキング でも「資生堂」「コーセー」など複数の日本企業が上位に入っています。海外M&Aの増加により、「メイドインジャパン」の信頼性ある化粧品が今後も世界へ広がっていくでしょう。

 

OEMメーカー絡みのM&Aも盛んに実施されている

他社から依頼を受けて化粧品を製造する「OEMメーカー」は、化粧品業界にも他業種の企業にも魅力的です。

OEMメーカーを自社の傘下に入れることで、化粧品の自社製造が可能となるメリットは大きいでしょう。そのため、OEMメーカー絡みのM&Aも積極的に行われています。

OEMを採用する化粧品会社は多いものの、自社の製造技術アップにつながらない、品質や納期の面でリスクがある、などのデメリットもあります。

化粧品を自社製造できる体制を構築するために、M&AによりOEMメーカーを買収することは有力な選択肢となるでしょう。

M&Aで化粧品事業を売却する主なメリット

M&Aで化粧品事業を売却する主なメリット

M&Aは買い手・売り手の双方にメリットがある経営戦略です。

まずは、売り手M&Aで化粧品事業を売却する主な4つのメリットを知っておきましょう。

 

ブランド力の強化を図れる

自社よりもブランド力のある企業とM&Aを実施すれば、ブランド力の強化を図ることが可能です。この場合、事業単位ではなく化粧品会社そのものを買い手に売却し、傘下に入ります。

ブランド力のある買い手の一部となることで、そのネームバリューによる恩恵を受けられるでしょう。

例えば、自社ブランドの化粧品に対する消費者の知名度やイメージが向上し、販売数アップにつながる可能性があります。また、投資家や金融機関からの評価も上がり、資金調達のハードルが下がることも期待できるでしょう。

 

事業承継を実現し廃業を防げる

M&Aは、自社の事業を後継者へ委ねる「事業承継」の手段としても有効です。

化粧品業界に限らず、事業承継を考える企業は数多く存在します。しかし、親族や従業員、その他関係者のなかから適した後継者を見つけることは、容易ではありません。

その点、M&Aであれば社外のさまざまな業界・企業の人が後継者候補となります。

豊富な選択肢のなかから後継者を探せるため、適任者が見つかる可能性が高まるでしょう。M&Aによって買い手の経営者に事業承継すれば、自社を廃業せずに存続できます。

 

従業員の確保を図れる

後継者問題だけでなく、従業員不足に陥っている企業も多く存在します。

M&Aを実施すれば、従業員の確保を図ることも可能です。M&Aでは人材も相手企業と統合されるため、新規に人材を雇い入れるよりも大口の人材確保がしやすいでしょう。

M&Aによって人的リソースに余力のある化粧品会社の傘下に入れば、相手企業の従業員を自社事業に融通してもらう選択肢もあります。

それによって従業員の不足をカバーでき、人手不足の解消につながるでしょう。

 

経営者が利益獲得できる可能性がある

M&Aには多くのスキーム(手法)が存在します。経営者が主体となって取引するM&Aスキームを採用すれば、場合によっては利益を獲得することが可能です。

例えば、株式の譲渡を通じて経営権を承継する「株式譲渡」では、売り手経営者の株式を買い手に売却します。このとき、株式の取得時にかかった費用以上の金額で売却できれば、差額分が経営者の利益となるでしょう。

ただし、こうした売却益には税金が生じるケースがあるため、正確に理解しておくことが大切です。

M&Aで化粧品事業を買収する主なメリット

M&Aで化粧品事業を買収する主なメリット

次に、買い手M&Aで化粧品事業を買収する主な3つのメリットについて解説します。

M&Aの売り手になる場合でも、買い手のメリットは把握しておきましょう。

 

短期間で化粧品事業を開始できる

化粧品事業を1から立ち上げる場合、拠点の設立や人材の確保、許認可の取得といった多くのプロセスが生じます。OEMを採用して製造を委託するとしても、企画や設計、販売といったプロセスは自社で確立しなければなりません。こうした手続きには多くの時間や手間を要するだけでなく、ノウハウがなければ失敗のリスクも高まります。

M&Aで化粧品事業を買収すれば、既存の経営資源をそのまま取り込むことが可能です。

M&Aのプロセスさえ完了できれば、その後は短期間で化粧品事業を開始できます。設備や人材などを自社で新しく確保せずに済む分、期間短縮を図ることが可能です。

また、相手企業のブランド自体を引き継げる場合は、すぐに化粧品の販売も開始できるでしょう。

 

参入コストを抑えやすい

化粧品業界への参入にあたって事業をゼロから立ち上げる場合、設備や人材の確保などに多大なコストがかかります。OEMで製造を委託する場合でも、販路開拓やOEMメーカーとの連携、ブランドの確立などでは人的・物的なコストの増大が避けられません。

その点、既存の化粧品事業をM&Aにより引き継げば、多くのプロセスを省略・簡素化できます。

M&Aにおける必要コストの大部分は、売り手の買収金額や専門家への依頼費用に限られるでしょう。そのため期間だけでなく、参入コストも抑えやすいといえます。

 

サプライチェーンの安定化を図れる

化粧品会社が別の化粧品事業をM&Aにより買収すれば、サプライチェーンの安定化を図れます。

M&Aによって売り手を自社の傘下に入れると、相手企業の拠点や調達ルート、販売ルートを取り込むことが可能です。その結果、原料の調達や製造品の供給が安定的に行いやすくなるでしょう。

また、OEMメーカーを買収すれば、企画から販売までのサプライチェーンを自社内に集約できます。社外のOEMメーカーと連携するよりも、スムーズに化粧品を供給できるでしょう。

化粧品業界のM&A事例5選【主なM&Aスキーム別】

化粧品業界のM&A事例5選【主なM&Aスキーム別】

化粧品業界では、事業規模を問わずM&Aを実施するケースが増えています。

とはいえ、M&Aについて具体的なイメージが湧かない人も多いでしょう。

ここでは、化粧品業界のM&A事例を5つピックアップし、主なM&Aスキームの説明を交えて紹介します。

 

総合商社A社による海外化粧品事業B社の買収(株式譲渡)

A社は、化粧品の素材をさまざまな化粧品メーカーへ供給する総合商社です。

A社は海外へのさらなる事業展開を図るべく、欧州で同様に化粧品素材を供給しているB社を買収しました。このとき採用したM&Aスキームは、「株式譲渡」と呼ばれるものです。

株式譲渡では、売り手の株式を買い手が譲り受けることで、売り手の経営権を取得します。A社は、B社株式の90%を取得することで経営権を取得しました。これにより、A社は欧州で地域に合わせた化粧品素材の供給が可能となり、海外での事業基盤を強化したのです。

 

太陽光発電事業C社による化粧品事業D社からの事業譲渡

C社は、太陽光発電所の建設や運営といった太陽光発電事業を軸とする企業です。

C社は事業の多角化を図るべく、幅広い商品を製造・販売するD社から化粧品事業を譲り受けました。このとき採用したM&Aスキームは、「事業譲渡」と呼ばれるものです。

事業譲渡では、売り手の一部またはすべての事業に関わる資産や権利を、買い手に譲渡します。C社は、D社が展開する化粧品や美容機器、医療機器などの販売事業を譲り受けました。これにより、C社は短期間で化粧品事業への参入を実現したのです。

 

化粧品事業E社と子会社F社の合併

E社は、化粧品や健康食品などの製造・販売を手掛ける90年以上の歴史を持つ企業です。

E社は化粧品事業に特化した子会社F社を持っていましたが、事業拡大を見据えて合併を行いました。このとき採用したM&Aスキームは、「吸収合併」と呼ばれるものです。

吸収合併では、売り手の法人格を消滅させるとともに、買い手へ資産や権利を統合します。吸収合併によってF社はE社の一部事業となり、経営資源も統合されました。これにより、E社は化粧品事業の経営資源を効率的に活用することが可能となったのです。

 

医薬品事業G社から化粧品事業H社への会社分割

ある化粧品メーカーは、医薬品事業G社化粧品事業H社を完全子会社とする親会社です。同社は経営の合理化を図るべく、G社の会社分割(事業を切り離しての承継)を決定しました。このとき採用したM&Aスキームは、「吸収分割」と呼ばれるものです。

吸収分割では、売り手企業が持つ事業を切り離し、既存の買い手企業へ承継します。同社の場合、G社が軸とする医薬品事業を包括的に切り離し、H社へ統合する予定です(2023年11月時点では未実施)。

これにより同社は組織再編を行い、さらなる成長戦略の実現を目指します。

 

小売事業I社と化粧品事業J社の株式移転

ファッション雑貨の販売を手掛けるI社は、化粧品や雑貨などを販売するJ社と協業関係にありました。I社は業績の悪化に伴い、J社との経営統合による再建を図ったのです。このとき採用したM&Aスキームは「株式移転」と呼ばれます。

株式移転では、新設した親会社に株式を移転することで経営権を持たせ、親子関係を構築可能です。I社とJ社の場合は、新設した持株会社(ホールディングカンパニー)に両社の株式を移転し、ともに持株会社の子会社となりました。

これにより、I社はJ社が持つノウハウや商品供給ネットワークといった経営資源の活用を容易にしたのです。

化粧品業界のM&Aを成功につなげるポイント

化粧品業界のM&Aを成功につなげるポイント

M&Aはメリットの多い経営戦略ですが、成功させるためにはポイントを押さえることが大切です。

化粧品業界のM&Aを成功につなげる2つのポイントを見ていきましょう。

 

M&Aの目的に合わせた戦略・スキームを選ぶ

M&Aを行うにあたっては、目的に合わせた戦略・スキームを選びましょう。

事例で紹介したように、M&Aにはさまざまなスキームがあります。それぞれ達成できる目的は変わってくるため、選び間違えると経営課題の解決は難しくなるでしょう。

まずはM&Aの目的を明確にし、そのうえで適切な戦略・スキームを選ぶことが大切です。

M&Aスキームだけでなく、どのような業界や企業と統合を図るか、といった戦略も策定しましょう。M&Aの初期段階で適切な戦略を立てられるかが、その後の成否に大きく関わってきます。

 

M&Aの専門家からアドバイスを受ける

経験がない企業がM&Aを成功させることは容易ではありません。M&Aには税務や法務といった幅広い専門知識が求められます。多くのプロセスを適切に進めていかなければならず、M&A未経験の経営者が独力で進めるのは困難です。

そのため、M&Aで失敗しないか不安な場合は、専門家からアドバイスを受けましょう。M&Aに特化した仲介会社やアドバイザリーであれば、専門家による適切なアドバイスを受けることが可能です。相談することで、未経験の経営者でもM&Aの成功につなげられるでしょう。

まとめ

化粧品業界では、他業種からの参入や海外への進出などでM&Aが盛んに行われています。

実際、本記事で紹介したように多くのM&A事例があります。M&Aは買い手・売り手の双方にとって多くのメリットがあるため、これからも実施する企業は増えていくと予測できるでしょう。

ただし、M&Aの実施は経営課題を解決するうえで有力ですが、未経験の経営者が成功させることは容易ではありません。

化粧品業界のM&Aを自社だけで進められるか不安であれば、M&A・事業承継の実績が豊富な「M&Aベストパートナーズ」へお気軽にご相談ください。

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