「多重下請け」からの脱却|SIer業界での生き残りをかけたM&A戦略

著者
M&Aベストパートナーズ MABPマガジン編集部

SIer(システムインテグレーター)業界は市場規模拡大が続いており、今後の将来性が高い分野です。

しかし、業界特有の課題を抱えており、生き残るためには早急に課題を解決する必要があります。

本記事では、SIer業界において企業が抱える課題について解説します。

あわせて、生き残りをかけたM&A戦略の動向とM&Aを成功させるためのポイントも解説するので、成長率の鈍化に悩み、解決策を模索している方はぜひ参考にしてください。

この記事でわかること

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SIer業界が抱える構造的な課題

DX化推進などが追い風となって成長を続けているSIer業界ですが、業界ならではの構造的な課題によって成長率が鈍化している企業が少なくありません。

SIer業界が抱える課題を解説します。

レガシーシステム問題

SIer業界が抱える課題の一つに、古い技術や複雑な構造で構築され使い続けられてるシステム(レガシーシステム)問題があります。

レガシーシステムによって生じる可能性がある問題は以下のとおりです。

  • 経済損失リスク:
    システムの保守・維持費の増加や技術負債として残ることによる将来的な回収コストの発生や運用リスクが高まる
  • 競争力低下:
    デジタル競争からの遅れや事業拡大スピードの鈍化、顧客満足度の低下につながる恐れがある
  • 人材不足・セキュリティリスク:
    入社敬遠によって古いシステムに対応できる人材が減少したり、最新のOS・ミドルウェアに対応できないために起こるセキュリティリスクがある

多重下請け構造による利益率低下

システム開発に関する業務が発注下から始まり、複数の企業を経由して断層的に下請け企業と委託されていく多重下請け構造も深刻な課題です。

この多重下請け構造が原因となって利益率は低下し、エンジニアのモチベーション低下や給与水準の低下などさまざまな悪影響を及ぼします。

この状態が続くと、最終的に優秀なエンジニアの離職につながる恐れもあります。

エンジニア不足

大きな社会問題となっている少子高齢化に伴う労働人口の減少は、SIer業界でも重要な課題です。

新たな人材雇用が難しいだけでなく、定年退職者の増加によって人材育成にも支障をきたし、さらに悪循環へと陥ってしまう可能性があります。

クラウド化・SaaS化の発展によるビジネスモデルの変化

IT業界全般は、新しい技術が日々成長・誕生しており、近年ではクラウド化やSaaS化の発展に伴ってビジネスモデルが変化しています。

しかし、従来のスクラッチ開発からクラウドサービス(SaaS/PaaS)へと移行すると工数が削減され、結果として「労働力(工数)に基づく請求金額」が減少するリスクがあります。

収益の減少は、企業を存続するうえで非常に重要な課題です。

SIer業界のM&A動向

SIer業界では、DX化の加速や深刻な人材不足、後継者問題などさまざまな要因によってM&Aが活発化しています。

  • DX化に対するニーズの増加:
    多くの企業でDX化が推進されており、クラウド移行やAIなどを活用した新たなシステム開発需要に対応するためのM&Aが増加。
  • 深刻な人材不足:
    優秀なエンジニアや特定技術を持つエンジニアの獲得競争が激化し、人材確保に向けたM&Aが増加。
  • 後継者問題:
    経営者の高齢化など、後継者問題を解決するために事業を買収するケースも多い。
  • 多重下請け構造からの脱却:
    大手企業の傘下に入り、安定した経営基盤とプロジェクト獲得によって多重下請け構造からの脱却を目指す企業が増加。

SIer業界が抱える課題解決の切り札としての「M&A戦略」

市場競争が激化する​​SIer業界において、M&Aは有効な手段といえます。

SIer業界において、生き残りをかけたM&A戦略がどのようなものかを解説するので、生き残る方法を探している方は参考にしてください。

自社サービス開発転換に向けたM&A

自社サービスを保有する企業を買収し参加とすることでプロジェクトの受注を内部でやり取りできるようになります。

その結果、下請け体質から脱却し、高収益なビジネスモデルへの転換を目指すことができます。

専門領域強化に向けたM&A

すでにある既存の技術に加え、不足している最新技術(AIやクラウドインフラ、セキュリティなど)を保有する企業を買収することにより、提供するサービスの価値を向上させることができます。

専門領域を増やしつつ強化することにより、利益率の向上や顧客基盤の拡大などを目指すことが可能です。

経営基盤強化に向けた異業種とのM&A

近年では、これまで顧客という立場だった企業がDX化推進のためにSIer業界の企業を買収し、グループ内で内製化する動きが活発化しています。

これにより、買収企業が開発コストを抑えられるだけでなく、SIer企業側も安定した経営基盤をもたらすという大きなメリットが得られます。

SIer業界におけるM&Aを成功させるために必要なこと

SIer業界においてM&Aを成功させるためには、入念な事前準備とポイントをおさえて交渉を進めることが重要です。

人的資産・無形資産を正当に評価する

SIer事業において、「人」と「技術」は主軸ともいえる重要な資産です。

そのため、専門性の高い人材の価値や技術という無形資産の価値を正当に評価することで企業価値を高め、売却価格に上乗せできる可能性が高まります。

統合プロセスをあらかじめ検討しておく

M&Aの契約締結後は、双方の企業文化や業務プロセス、人事評価の仕組みなどさまざまなものを統合(PMI)する必要があります。

この統合後のイメージを明確にしておくことにより、統合失敗が原因による現場の混乱や不満による従業員のリスクといったさまざまなリスクを回避することが可能です。

秘密保持契約(NDA)を締結する

SIer業界に限らず、IT関連企業には多くの機密情報があります。

M&Aの交渉においてはこれらの情報を開示する必要がありますが、万が一情報が漏洩してしまった場合は交渉が決裂するだけでなく、企業としての信用が失墜し、場合によっては損害賠償のリスクも伴います。

そのため、M&Aの交渉においては必ず秘密保持契約(NDA)を締結し、双方が保有する重要な機密情報はもちろん、M&Aの交渉が進んでいるといった情報も漏れないようにすることが重要です。

M&Aの専門家によるサポートを受ける

M&Aは、相手企業とのマッチングに始まり交渉、各種書面の締結など、多くの専門的知識とノウハウを必要とするため、自社だけで全てのプロセスを完結することは難しいです。

そのため、M&A仲介会社など専門家によるサポートを受けることが成功させるためには重要です。

M&A仲介会社はさまざまなM&Aの成功によって蓄積された多くの知識と経験を元に、企業ごとに適切なM&Aのスキームの提案もしてくれるので、M&Aを検討している企業にとって大きな力となるでしょう。

まとめ

市場の拡大を続けるSIer(システムインテグレーター)業界では、業界特有の課題解決や激化する市場競争に打ち勝つ目的でM&Aが活発となっています。

しかし、M&Aを自社だけで行うことは難しく、M&A仲介会社など専門家によるさおpーとが不可欠です。

私たちM&Aベストパートナーズは、M&A仲介会社としてこれまで多くのM&Aを成功に導いてきた豊富な実績がございます。

M&Aを成功させ、「SIer業界でさらなる成長を遂げたい」「市場競争で生き残りたい」とお考えの方は、ぜひお気軽にM&Aベストパートナーズへご相談ください。

業界に精通した専任アドバイザーがお話を丁寧にヒアリングさせていただき、最適な方法をご提案させていただきます。

著者

MABPマガジン編集部

M&Aベストパートナーズ

石橋 秀紀

ADVISOR

各業界に精通したアドバイザーが
多数在籍しております。

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