【事例付き】薬局業界におけるM&Aの動向は?メリット・デメリットとともに解説

著者
M&Aベストパートナーズ MABPマガジン編集部

少子高齢化や地域医療との連携が求められる近年、薬局業界でも業界再編の動きが活発化しています。

なかでも、抱えているさまざまな課題を解決するため、M&Aという手法をとる薬局が増加傾向にあります。

そこで本記事では、薬局業界においてM&Aが注目されている理由について、M&Aの専門家が詳しく解説します。

あわせて薬局がM&Aを行う際のメリット・デメリット、そして私たちM&Aベストパートナーズがご支援させていただいた薬局のM&A事例もご紹介するので、今後の経営をどうしていくか悩まれている薬局経営者の方はぜひ参考にしてください。

薬局業界でM&Aが注目される理由

薬局業界においてM&Aが注目される理由として、主に以下の3点が挙げられます。

  • 後継者不足と事業承継に向けたニーズの高まり
  • 業界再編・競争激化への対応
  • 地域医療・サービス拡充の必要性

それぞれ詳しく解説します。

関連記事:M&Aとは?M&Aの概要やメリット・デメリットなどを詳しく解説

後継者不足と事業承継に向けたニーズの高まり

今や社会問題ともいえる後継者不足は、薬局業界でも深刻な課題です。

帝国データバンクによる「全国企業『後継者不在率』動向調査(2024年)」を紐解くと、日本の中小企業における後継者不在率は全体の52.1%と半数以上に及びます。

なかでも、調剤薬局も含む病院・医療業の後継者不在率は約62%と、全業種の平均値よりも高い結果となっています。

こうした背景から、M&Aをすることで事業を他社(者)へ承継するケースが増加していることが考えられます。

参考:帝国データバンク|全国企業『後継者不在率』動向調査(2024年)

業界再編・競争激化への対応

近年ではさまざまな業種において業界再編が活発化していますが、薬局業界でもその動きは同様です。

薬局業界における業界再編の理由として、医療制度の変更や薬価改定・地域のかかりつけ薬局の推進などが挙げられます。

また、大手ドラッグストアの台頭による業界ないの競争も激化しています。

その結果、大手チェーンの傘下に入ったり、他の薬局と合併をしたりして生き残りを目指す薬局が増加しています。

地域医療・サービス拡充の必要性

地域包括ケアシステムが進む日本において、薬局は「ただ薬を受け取るだけの場所」ではなく、「地域住民の健康を支える場」という役割が求められています。

また、多様化するニーズへ対応するためにDX化の推進や在宅支援・OTC医薬品の拡充といったことも必要です。

上記のように、薬局として求められる役割・ニーズへの柔軟な対応をすることもM&Aが盛んに行われている要因の一つといえるでしょう。

薬局がM&Aを行うメリット・デメリット

薬局業界におけるM&Aは、売り手側と買い手側のそれぞれにメリット・デメリットが存在し、事前に把握せずにM&Aを行うと求めている効果が期待できないケースは少なくありません。

そこで、薬局がM&Aをすることで発生するメリット・デメリットを解説します。

売り手側のメリット・デメリット

売り手側となる薬局のメリット・デメリットは以下のとおりです。

メリットデメリット
・後継者不足の解消
・従業員の雇用確保
・経営効率の向上
・創業者利益の獲得
・離職者が出る可能性がある
・適切な売却先が見つからない可能性がある

上記のなかでも「後継者不足を解消できる」という点は、長年大切にしてきた薬局を廃業することなく次世代へとつなげられる大きなメリットです。

その結果として、地域社会の健康維持にも貢献し続けることが可能です。

一方で、M&Aの相手先を誤った場合、統合がうまくいかずに離職者が出る可能性があります。

離職者が出た場合、M&Aによって地域に残れても十分な人員確保ができず、店舗がなくなるリスクが生じます。

そのため、M&A専門の仲介会社などのサポートを受け、適切な売却先を選定することが重要です。

買い手側のメリット・デメリット

薬局を買収する側となる企業の業種はさまざまで、大手チェーンの薬局だけでなく異業種からの参入を目指して薬局を買収するケースもあります。

主なメリット・デメリットは以下のとおりです。

メリットデメリット
・事業規模の拡大
・人員確保
・薬局事業への新規参入
・人材が流出する可能性がある
・従業員からの反発
・簿外債務などのリスク

薬局をM&Aによって獲得する場合、その多くは新たな市場へ参入し、事業規模の拡大を目的としています。

すでに地域に根付いた薬局を買収することができれば、新たな販路の開拓をすることなく市場シェアの拡大が目指せます。

また、近年では少子高齢化の影響もあり、薬剤師不足が懸念されています。
M&Aでは、こうした専門分野の人材不足の解消を目的として用いられることは少なくありません。

一方で、売り手側と同様に買い手側も、M&A後の統合がスムーズにいかなかったり、従業員から不満や反発が出たりすることで人材が流出する可能性があります。

その他に、事前のデューデリジェンスが十分でなかった場合は、M&A締結後に簿外債務が発覚するなど財務面でのリスクも生じます。

これらのデメリットを回避し、スムーズなM&Aをするためにはデューデリジェンスの徹底や計画的な統合プロセス(PMI)の検討・実施が不可欠です。

関連記事:M&Aのデューデリジェンスとは?費用や期間・種類などを詳しく解説

薬局業界のM&Aでよく使われるスキーム

M&Aのスキームは、下図のようにさまざまなものがあります。

M&A スキーム

これらのなかでも、特に薬局業界で使われることの多いスキームをご紹介します。

株式譲渡によるオーナー交代

株式譲渡とは、株式と経営権を他社(者)へ譲渡する方法で、特に後継者問題の悩みを抱える場合によく使われるスキームです。

株式譲渡の場合、営業許可や保険調剤の指定なども承継できるため、事業運営における混乱も生じにくく、従業員の雇用維持や顧客との関係維持もすることができます。

事業譲渡

事業譲渡は、組織全体を譲渡するのではなく、一部の事業に限定して「事業単位で譲渡」するスキームです。

特に複数の店舗を抱えていたり多角化経営をしたりしている薬局で使われるケースが多いです。

合併(吸収・新設)

合併には吸収合併と新設合併がありますが、いずれも会社そのものが統合されるため、スケールメリットや経営の効率化・地域内での競争力強化を目的として使用されることが多いスキームです。

M&Aベストパートナーズによる薬局のM&A事例

私たちM&Aベストパートナーズは、これまで多くの薬局様のM&Aをサポートしてきた豊富な実績がございます。

実際に私たちがお手伝いをさせていただき、M&Aが成功した事例をご紹介します。

株式会社FiNE様

株式会社FiNE様は、東京都内・千葉県・埼玉県内に1店舗ずつ在宅訪問をメインとする「りおん薬局」を運営しています。

開業してからわずか8年で、「在宅医療に困ったらりおん薬局」と地域で頼りにされるほどまで成長させました。

しかし、事業を運営するうちに「在宅事業により専念したい」という気持ちが強くなり一部の事業のみを手放す事業譲渡を決意。

東京都板橋区にある本店を、大手チェーンである株式会社アインホールディングス傘下の株式会社アインファーマシーズへと譲渡しました。

この譲渡によって得た資金を元に、株式会社FiNEの代表取締役である平井氏は在宅医療特化型の新店舗を立ち上げ、さらなる飛躍を目指しています。

関連記事:創業者の熱い想いで作り上げられた調剤薬局。スピードM&Aで念願の在宅特化型薬局を新規開設へ!

株式会社松栄堂薬局様

元代表の松波氏が3代目となる株式会社松栄堂薬局様は、開業当時から地域に根付き、在宅医療に特化した経営を行ってきた薬局です。

また、直近では漢方薬を中心としたお灸や入浴剤などの物販にも力を注いできました。

しかし、現状のままでは「本当に患者様のケアに重点を当てたときに人材が不足している」「人材が確保できても教育していくところまでリソースを割くことが難しい」といった課題にぶつかりました。

松波氏の希望条件は「譲渡後も、会社を成長させるために自身が残れること」、そして何よりも「従業員の雇用の維持ができること」でした。

そこで当社は株式会社ミライシアホールディングをご紹介させていただき、トップ面談を実施。

松波氏の希望であった「譲渡後も、会社を成長させるために自身が残れること」について、株式会社ミライシアホールディングの代表取締役である神山氏は「東海エリアにおけるミライシアホールディングの事業拡大・成長の先頭に立ち引っ張ってほしい」という言葉によって叶えることができました。

また、これまで会社を支え続けてくれた従業員についても、譲渡後も雇用を継続すると約束してもらうことができました。

このトップ面談ののちに株式会社松栄堂薬局様は株式会社ミライシアホールディングとのM&A契約を締結、今後ますますの活躍が期待できるM&Aとなりました。

関連記事:新しい事業領域への挑戦を見据えた成長型M&Aを実現。

有限会社ティー・エス・メディカル様

有限会社ティー・エス・メディカルを率いる外崎氏は、会社経営以外にも青年会議所での講演活動やボランティア活動にも力を注ぎ、多くの方々から信頼されてきました。

かねてより従業員に対して積極的に権限委譲を行い、「自身がいなくても会社が運営できる」状態を構築してきました。

しかし、新型コロナウイルス感染症を皮切りに業績は悪化。

患者様の健康や従業員の雇用維持のために個人資産を投入して延命を続けましたが、より長く薬局という地域の健康を守る場を存続させるためにM&Aを決意しました。

外崎氏の熱い想いを受け取った当社は、全国にチェーン展開している調剤薬局との戦略的提携を進めている企業を譲渡先としてご紹介させていただきました。

その結果、外崎氏の貸付金の放棄だけでなく会社の負債も含めた譲渡ができ、従業員の雇用も確保することができました。

トップ面談から4ヶ月が経過した2022年3月、株式譲渡によるM&A契約が締結されましたが、外崎氏は今後も顧問として新生ティー・エス・メディカルの成長に関わるとのことです。

関連記事:来局する患者の健康と従業員の雇用を守るために。

株式会社たんぽぽ薬局様

西武新宿線の野方駅からわずか1分という場所にあるたんぽぽ薬局様は、2013年に代表取締役である丸内氏が他社が運営していた店舗の1つを譲り受ける形でスタートしました。

駅からわずか一分という好立地にも関わらず、周辺の競合となる調剤薬局との競争激化を目の当たりにし、丸内氏は日曜日は定休日としつつも祝日は午前中営業を行い、アプリを活用した処方箋の事前受付サービスを展開するなど、さまざまな施策を行ってきました。

また、医師や訪問看護師・ケアマネージャーと連携した訪問による服薬管理や指導にも力を注いできました。

しかし、その努力の結果として家族と過ごす時間は激減し、「このままでよいのだろうか」と思考を巡らせるようになります。

丸内氏の経営への直向きな姿勢や家族を大切にしたいという願いを叶えるため、当社は100店舗ほどの調剤薬局を運営する企業をご紹介させていただき、丸内氏は規模の違いに緊張しつつもトップ面談へと臨みます。

大切にしてきたたんぽぽ薬局を存続させ、信頼して通ってくれる患者様からの期待に応える、日々頑張ってくれている従業員の雇用を維持するといった想いを胸に、丸内氏は株式譲渡を決意。

初回のトップ面談からわずか1ヶ月半という異例のスピードで株式譲渡契約が締結されました。

丸内氏は、確保した創業者利益を活用しつつセミリタイアを目指し、また働き始めるまでの期間はお子さんの少年野球チームのコーチをするなど、「これまで自分を一生懸命支えてくれた家族のために時間を使いたい」とのことです。

関連記事:狭いエリアで競合がひしめくなか、 事業継続のためのM&Aを選択。

まとめ

薬局業界は、他の業種と同様に市場競争が激化し、業界での生き残りをかけた綿密な経営戦略が求められています。

そして、その経営戦略の一つとして、M&Aが広く活用されています。

私たちM&Aベストパートナーズは、ご紹介した事例のように「地域に根付いた薬局を無くしたくない」「医療の場で新たな事業を展開して患者様の手助けがしたい」といった想いを実現するためのお手伝いをこれまで数多くさせていただきました。

薬局を存続させ、地域医療へ貢献できる場所を残したいといったお悩みのある方は、まずはM&Aベストパートナーズへお気軽にご相談ください。

薬局業界におけるM&Aの豊富な経験を持つ専任アドバイザーが、課題を解決するためのお手伝いをさせていただきます。

著者

MABPマガジン編集部

M&Aベストパートナーズ

石橋 秀紀

ADVISOR

各業界に精通したアドバイザーが
多数在籍しております。

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