
物流業界は近年、ドライバー不足や長時間労働、コスト増などさまざまな課題に直面しています。
特に中小の物流企業は大企業に比べて影響を受けやすく、自社の将来に不安を抱いている経営者も少なくありません。
本記事では、物流業界が抱える主な課題と解決策の一例をご紹介します。
目次
物流業界が抱える問題

物流業界は社会インフラとして重要な役割を果たしている一方で、業界全体でさまざまな問題にも直面しています。
労働力不足と高齢化
物流業界において特に深刻化しているのが労働力不足と従業員の高齢化です。
少子高齢化の影響で若年層の人材確保が困難となっており、中高年層の従業員によって現場が支えられているケースも少なくありません。
この背景には低賃金と過酷な労働環境が主な要因として挙げられ、地方・都市部を問わず人手不足の傾向が見られます。
長時間労働と荷待ち時間の発生
慢性的な人手不足が続く物流業界では、従業員一人あたりの業務負荷が増大し長時間労働を強いられるケースも少なくありません。
また、ドライバーは荷主側の都合による待機時間が長くなったり、非効率な荷物の積み込み・荷下ろし作業によって負担を強いられることも大きな問題となっています。
運送コストの増加
近年の物価高の影響によって燃料費の負担は増大しているほか、物流システムの維持費や人件費も高騰し運送コストは年々増加しています。
また、コロナ禍を機にECサイトの利用者が増え、小口配送が多くなったこともコスト増加の一因となっています。
デジタル化の遅れ
物流業界では手書き伝票やFAXによる受発注が依然として多く、他業種に比べてデジタル化やDXが遅れている傾向が見られます。
このようなアナログ的な業務フローではミスが発生しやすく、作業効率化の足かせとなる原因になります。
また、中小の物流企業は資金力がなく、IT投資を行いたくても導入が進まないという現状もあります。
環境問題
日本国内の物流業界はトラックによる輸送が大半を占めており、企業にとってはCO2排出量の削減も重要な経営課題として認識されています。
しかし、現状はEVをはじめとした次世代の車両の導入例が少なく、企業にとっては大きな負担増となる懸念もあります。
顧客ニーズの多様化
ECサイトやフリマアプリのユーザーが爆発的に増えたことで、近年では個人宅向けの小口配送の需要が増加しています。
同時に、即日配送や時間指定といった顧客ニーズも多様化しており、これらに対応するために物流現場の負担も増大しています。
物流業界は今後どう変わる?
さまざま課題が山積する中で、物流業界は将来的にどのように変わっていくのでしょうか。
考えられる4つのポイントをご紹介します。
自動化とデジタル化の進展
現在の物流業界は、ピッキングや仕分け、配送など多くの作業を人の手に頼っています。
しかし、将来的にはAIやロボット、自動運転といった技術が発展し、多くの作業が自動化されていくと期待されています。
すでに一部の物流現場ではロボットによるピッキングを行うフルオートメーション倉庫が実現しています。
また、ドライバーの負担が大きいラストワンマイルの配送についても、自動運転車やドローンによる配送が実現できれば大幅な省人化につながるでしょう。
サステナビリティの重視
地球温暖化による気候変動が懸念される中で、環境負荷の低減は世界共通の目標であり、今後ますます企業の責任は大きくなっていきます。
物流業界は特にCO2排出量が多い業種であることから、脱炭素化やエネルギー効率化が求められるようになるでしょう。
EVや再生可能エネルギーの活用はもちろんのこと、共同配送の拡大や配送ルートの最適化、梱包資材の再利用・リサイクルなどに取り組む企業も増えていくと考えられます。
グローバル化とローカライゼーション
物流のグローバル化と同時に、地域密着型のローカル物流の重要性も増していくと考えられます。
国内消費が冷え込む中で、販路拡大のために越境ECへ進出する企業も増えており、海外との物流ネットワークを構築するノウハウが求められます。
また、顧客ニーズの多様化に対応するために、地域密着型の小規模な物流センターや店舗受け取りサービスの拡大、置き配サービスの定着化などもローカル物流の有効な対策として考えられます。
労働力不足への対応
物流業界は他業種に比べて人手不足が深刻化しており、少子高齢化が進む日本においては今後もこのような傾向が続いていくと考えられます。
十分な労働力を確保するために、企業には働き方改革の推進や最新技術を活用した物流業務の自動化・省人化が求められるでしょう。
物流業界の問題解決に向けた最新ソリューション

物流業界のさまざまな課題を解決するために、どういったアプローチが有効なのでしょうか。課題解決のヒントとなる最新のソリューションをいくつかご紹介します。
中継輸送の導入
人手不足に伴い、ドライバーの負担が増大し長時間の運転を強いられるケースが少なくありません。
そこで、中継拠点を設定することで複数のドライバーによって運転を交代でき、長時間労働の削減につなげられます。
また、運転時間や長距離輸送を短縮することで、ドライバーの疲労による事故のリスク低減にもつながり安全な労働環境を実現できます。
モーダルシフトの推進
環境負荷の低減に向けて注目されているのがモーダルシフトです。
モーダルシフトとは、鉄道や船といった環境負荷の少ない輸送手段に切り替えることを指します。
トラックに比べて多くの荷物を一度に輸送できるため、CO2排出量の削減に貢献できるほか、慢性的な渋滞の緩和やドライバー不足にも対応できます。
共同配送の拡大
複数の企業が物流リソースを共有する共同配送も注目されています。
従来は自前の物流センターや配送手段を確保するのが当たり前でしたが、複数の事業者が連携することでトラックへの積載率を最適化し、効率的な物流を実現できます。
また、企業にとっては自前で物流インフラを構築するよりもコストが抑えられるメリットもあります。
労働条件の改善
優秀な人材を確保するためには、企業の労働条件を見直すことも重要な取り組みです。
長時間労働の是正はもちろんのこと、賃金や福利厚生といった条件も適正な内容に見直すことで、多くの労働力を確保しやすくなるでしょう。
物流拠点の強化
効率的な配送を実現するために物流拠点の整備・強化も検討してみましょう。
たとえば、在庫管理を効率化するためのシステムや、小規模物流拠点の設置なども有効な対策として考えられます。
物流拠点を強化することでラストワンマイルの配送が最適化され、配送リードタイムの短縮にもつながります。
自動化技術の推進
物流業務において特に人手を要する作業は、自動化に向けたソリューションの導入も検討してみましょう。
たとえば、ピッキング作業を自動化するロボットを導入しスマート倉庫を実現したり、AIによる効率的な配送ルートの割り出しなどが代表的です。
また、将来的には自動運転トラックやドローンによる配送も視野に入れながら自動化に取り組む必要があります。
物流DXの推進
バックオフィス業務の効率化に向けては、物流DXの推進も重要なテーマとなります。
たとえば、物流業務は季節によって需要が変動することも多いため、AIを活用することで精緻な需要予測が可能になります。
また、クラウド型物流管理システムを導入することで、集荷から配送までの一連の工程と荷物の状況を正確に管理できます。
M&Aの検討
人手不足や物流単価の減少、コスト増などにより経営状態が悪化し、自社だけでは改善が難しいというケースも多いでしょう。
そのような場合には、M&Aも選択肢のひとつとして考えられます。同業他社との経営統合を図ることで経営基盤の強化につながるほか、異業種とのM&Aでは他社のノウハウを活かし物流DXの推進にもつながります。
物流業界のM&Aについて

物流業界におけるM&Aはどのような目的で行われるのか、企業にとってのメリットも解説しましょう。
M&Aの主な目的
企業によってもM&Aの目的はさまざまですが、主に以下の3点が挙げられます。
事業規模の拡大
物流業界では、市場シェアの拡大や新規顧客の獲得を目的としてM&Aを活用するケースが増えています。
たとえば、地方で展開している中小の物流企業との統合を図ることで、そのエリアの物流拠点とすることができ、より広範囲のエリアをカバーできるようになります。
人手不足の解消
物流企業を買収することで、そこに在籍している従業員の雇用も引き継ぎ即戦力人材を確保しやすくなります。
一から人材を育成する時間とコストを節約できるため、M&Aは人手不足を解消するための有効な手段にもなり得るでしょう。
業務効率化とコスト削減
M&Aの対象となる企業が構築した物流ネットワークや物流拠点を統合することで、配送エリアの拡大はもちろんのこと、効率的な配送ルートの構築も実現できます。
また、事業規模が大きくなることでスケールメリットも生まれ、コストの圧縮にもつながります。
関連記事:M&Aの目的を4つに分類|売り手と買い手に分けて詳しく解説
M&Aのメリット
企業がM&Aに踏み切る主なメリットは以下の3点です。
受注機会の増加
EC市場の成長により、物流の需要は拡大傾向にあります。
M&Aによって事業規模を拡大できれば、ECをはじめとした大口のクライアントが獲得でき受注機会の増加につながるでしょう。
人材確保
上記でも説明した通り、M&Aは即戦力人材を確保するための手段にもなり得ます。
また、物流企業の中には経営者が高齢化し、次世代を担う後継者不足に頭を悩ませていることも少なくありません。
売り手企業にとっては、M&Aによって他社の傘下に入ることで後継者問題を解決できる可能性もあります。
経営基盤の強化
物流業界は重要な社会インフラのひとつであり、景気変動の影響を受けにくい安定した業種といえます。
M&Aを通じて経営資源を強化し会社の規模が拡大していけば、より盤石な経営基盤を手に入れられるでしょう。
関連記事:運送業におけるM&Aが活発化している理由とは?実施するメリットや成功事例
物流業界のM&A成約事例
ここでは、当社M&Aベストパートナーズが仲介した物流業のM&A成約事例をご紹介します。
極東機械株式会社|「この人に売れば間違いない」金額より大事なのは相手の買いたい理由
極東機械株式会社は、1978年に北海道札幌市で創業し、建設機械や車両のリース・レンタル事業を展開してきました。
代表取締役会長の荒木靖彦氏は、業界の競争激化や将来の公共工事減少を見据え、会社の存続と従業員の将来を考慮し、M&Aを検討しました。
当社アドバイザリーの黒田が支援し、複数の候補企業との交渉を経て、2023年に譲渡契約を締結。
荒木氏は、買収企業の社長の人柄や事業への熱意に信頼を寄せ、従業員の雇用継続と会社の発展を期待しています。
株式会社LIGUNA|Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)という理念が高次元で一致した。
株式会社LIGUNAは、2003年に南沢典子氏が創業し、スキンケア商品や雑貨、食品の企画開発・通信販売を手掛けてきた企業です。
同社は、持続可能な経営スタイルを模索し、2019年に新社屋「LIGUNA/0」を建築するなど、SDGsを主軸に事業展開を進めてきました。
しかし、南沢氏は自身の健康上の不安や事業継続のリスクを考慮し、M&Aを検討しました。当社アドバイザリーの山口が支援し、株式会社ユーグレナとの交渉を進め、2021年3月に資本提携を実現。
両社は「Sustainability First」という理念で一致し、今後もサステナブルな事業展開を目指しています。
物流業界のM&A案件一覧
下記は当社がご紹介できる物量業のM&A案件です。
【関西一円】長距離運送業
関西地方を拠点とする長距離運送業で、売上高11.0億円、営業利益0.1億円を計上しています。従業員数は101~200名で、事業の選択と集中が譲渡理由となっています。
基本情報
- 業種:物流業
- 地域:関西地方
- 従業員数:101~200名
- 譲渡理由:選択と集中
財務情報
売上高 | 11.0億円 |
---|---|
営業利益 | 0.1億円 |
譲渡希望価格 | 応相談 |
実態営業利益(EBITDA) | 0.8億円 |
時価純資産 | 1.2億円 |
まとめ
物流業界は社会を支える重要な役割を果たしていますが、高騰する物流コストや人手不足などによって深刻な経営課題を抱える企業も少なくありません。
モーダルシフトや共同配送、最新技術の導入など、経営課題を解決するソリューションは数多くあるため、まずはこれらを検討してみましょう。
また、人手不足や経営基盤の強化といった課題に対しては、M&Aも有効な選択肢となります。M&Aに関する不安や悩みがある場合には、お気軽にMABPへご相談ください。