【企業例付き】コングロマリットとは?手法やメリット・デメリットを解説

著者
M&Aベストパートナーズ MABPマガジン編集部

コングロマリット経営の理解を深めることは、企業戦略や経営手法の選択肢を広げるうえで重要です。

本記事では、コングロマリットの基本的な意味から、他の経営手法との違い、成功事例、さらにはそのメリットとデメリットについて詳しく解説します。

また、コングロマリット型M&Aを成功させるためのコツや、リスク管理の重要性についても取り上げていますので、この記事を読むことで、コングロマリット経営の全貌を理解し、より効果的な経営戦略を構築するための知識を得ることができるでしょう。

この記事でわかること

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コングロマリットとは

コングロマリット(conglomerate)とは、異なる業種や産業に属する複数の企業が経営統合し、一つの大きな企業グループを形成することを指します。

この経営手法は、各企業が持つ異なる事業分野に展開することでリスクを分散し、収益の安定化を図ることができることが特長です。

また、異なる業種や産業の企業が一つのグループとなることで技術やノウハウの共有が進み、シナジー効果が生まれます。これによって各企業の競争力が高まり、新たなビジネスチャンスを追求することも可能です。

コングロマリットの課題

異なる業種や産業の企業を一つにまとめることにより、経営の複雑化は避けることができません。

そのため、各事業が持つ特有の課題や市場環境に対応するためには、高度な経営管理能力が求められます。

また、企業文化や業務プロセスの違いから、統合(PMI)がスムーズに進まないケースも多いです。

このため、経営統合の際には緻密な計画と強力なリーダーシップが必要となるでしょう。

コングロマリット・ディスカウントが起きる可能性も

コングロマリット・ディスカウントとは、コングロマリットを実施した企業の株価が下がる現象のことです。

統合後の企業価値が、「各事業単体の価値を合計した数値よりも低い」状態のときに、このように呼ばれます。

多くの証券アナリストは保守的な評価を行う傾向があることから、革新的な統合を行うとこの現象が起こりやすく、現在ではコングロマリット・ディスカウントになることが一般的ともいわれています。

この現象を回避するためには、いくつかの対策が考えられます。

例えば、シナジー効果が生まれていない場合は、その障壁となっているものを改善するとよいでしょう。

また、企業全体のリソース配分を最適化したり、投資家や市場からの評価を上げるために、各事業の情報をより詳細に開示したりすることも有効です。

その他に、過度なコングロマリット・ディスカウントが起きている場合は、株価が見直されるきっかけがあったり、事業分割によってそれぞれの事業が同業種のPER・PBRと比較されたりすることで、株価が上昇することがあります。

コングロマリットとコンツェルンの違い

コングロマリットとコンツェルンは、企業の集合体という点で共通していますが、その目的や構造に違いがあります。

コングロマリットは、異なる業種や産業に属する複数の企業が経営統合し、リスクを分散しつつ収益の安定化を図るための企業グループであり、多角的な事業展開によって相乗効果を生み出し、競争力を高めることを目指しています。

一方のコンツェルン(Konzern)は、主に市場の支配・独占を目的とした企業体であり、市場における競争を減少させ、支配力を強化することを目的としています。

そのため、コンツェルンに属する企業は同じ業種や関連業種に集中しているのが特徴です。

日本では、1997年にの法改正によって持ち株会社の設立が解禁され、現在では日本企業もコンツェルン型の経営が可能となっています。

コングロマリットとコンツェルンは企業の成長と発展において異なるアプローチをとりますが、いずれも市場における競争力の向上を目指しているという点では同じといえるでしょう。

コングロマリット型の経営を行って成功した企業の例

日本でコングロマリット型の経営を行って成功した代表的な企業を、事例とともにご紹介します。

株式会社日立製作所

株式会社日立製作所は日本最大の総合電機メーカーとして連結子会社573社を傘下に持ち、日立グループの中核企業として多岐にわたる事業を展開しています。

電機メーカー全体が困難な経営状況に直面している時代のなか、日立製作所はコングロマリット型経営で状況を打開しています。

総合電機メーカーとしてのメイン事業以外に、鉄道事業、ヘルスケア事業、エネルギー事業などを展開しており、2020年にスイスの大手重電企業を買収したことは、ニュースなどで話題となりました。

当時の社長だった小島氏は「ITとOT(制御技術)の二刀流」を掲げ、情報技術と制御技術、そしてプロダクトを組み合わせたサービスを展開しています。

参考:株式会社日立製作所|日立がABB社のパワーグリッド事業を買収し、エネルギーソリューション事業を強化

ソニー株式会社

ソニー株式会社は日本の総合電機メーカーで、かつては『ウォークマン』を世界的にヒットさせた音楽機器の製造会社として知られていました。

リスク分散を図るためにコングロマリット化をすすめ、現在では主力事業としてゲーム機の販売および、そのネットワークサービスを展開しています。

また、その他にも、映画や音楽などのエンタメ事業、生命保険などの金融事業、学校法人設置などの教育事業も行っているのが特徴です。

特に金融部門の成長は著しく、主力のゲーム事業に次ぐ勢いで伸びています。

楽天グループ株式会社

楽天グループ株式会社は、インターネット関連サービスを中心に展開する日本の企業です。

かつて主要事業としていたECモールの楽天市場から、コングロマリット化による幅広い事業展開を目指し、成功しました。

現在、楽天グループは、EC事業の他に生命保険などの保険事業、楽天銀行や楽天証券などの金融事業を展開しています。

特にフィンテック事業、楽天カードの成長は著しく、グループの大きな収入源です。

楽天グループのコングロマリット化は非常に短期間ですすめられ、その結果、設立からわずか20年ほどで誰もが知る大企業へと成長しました。

DMM.com グループ

DMM.comグループは、ECサイトの運営をメイン事業とする日本の企業です。

もともと動画配信事業を主力としていましたが、他の大手企業と同様にコングロマリット化をすすめ、現在では多岐にわたる事業を展開しています。

メイン事業以外の主要な事業には、DMM FXなどの金融事業、ゲームコンテンツ制作などのエンタメ事業、社会人向け私塾などの人材育成事業があります。

近年では、欧州サッカークラブの買収を行い、スポーツ分野への進出も果たし、さらなる多角化を実現しています。

コングロマリット型M&A成功のコツ

コングロマリット型M&Aを成功させるためには、次に挙げるポイントをおさえることが重要です。

  • 目的を明確にする
  • インテグレーションプランを策定する
  • リスク管理を徹底する
  • 常にパフォーマンスを評価する

目的を明確にする

目的を明確に定めましょう。

どのようなシナジー効果を追求するのか、あるいはどのような価値を生み出したいのか、それらを具体的に設定したうえで、経営者や関係者間で共有します。

明確な目的があれば各段階での意思決定がスムーズに進み、統合プロセスにおける方向性も一致するでしょう。

インテグレーションプランを策定する

「インテグレーション」とは複数の要素を一つにまとめることを意味し、ビジネスシーンでは「提携」や「合併」を指します。

コングロマリット型M&Aにおいては、組織の統合、業務の統合、人材の配置などを具体的な手順やスケジュールに落とし込んだうえで実行に移すことが重要です。

明確なインテグレーションプランがあれば統合プロセスがスムーズに進行し、新たなシナジー効果を最大化することもできるでしょう。

リスク管理を徹底する

コングロマリットにおけるリスク管理の徹底は必要不可欠であり、問題が発生した場合は迅速かつ適切に対応することが重要です。

そのためにもコミュニケーションを密にとり、リスクの早期発見と対応を図るようにしましょう。

常にパフォーマンスを評価する

コングロマリット化後も企業のパフォーマンスを常に評価し、必要に応じて修正や改善を行うことが成功の鍵となります。

定期的なパフォーマンス評価により、統合プロセスの効果を最大化することが可能です。

まとめ

コングロマリットとは、異なる業種や産業に属する複数の企業が経営統合して、一つの大きな企業グループを形成する手法です。

この経営手法により、リスク分散や収益の安定化を図りつつ、相乗効果による競争力強化が期待できます。

一方で、経営の複雑化や、統合の難しさといった課題は避けられません。

コングロマリット型M&Aを成功させる最大のコツは、信頼できるパートナーの存在です。

M&Aベストパートナーズは、企業の成長と成功をサポートするための最適なアドバイザーとして、皆様のニーズに応じた最適なソリューションを提供します。

コングトマリット型M&Aを成功させ、事業のさらなる発展を目指したいとお考えの方は、ぜひお気軽にM&Aベストパートナーズへご相談ください。

著者

MABPマガジン編集部

M&Aベストパートナーズ

石橋 秀紀

ADVISOR

各業界に精通したアドバイザーが
多数在籍しております。

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