ビルメンテナンスのM&A事例や譲渡のメリットとは?|譲渡を検討する際のガイド

著者
M&Aベストパートナーズ MABPマガジン編集部

オフィスビルやマンションの清掃、電気設備の点検などを行うビルメンテナンスは、入居者や利用者の安全性・快適性を保つために欠かせない業務です。

ビルメンテナンスを専門に行う企業の中には、さまざまな経営課題を抱えているケースが多く、課題解決をする手段としてM&Aが注目されています。

本記事では、ビルメンテナンス会社がM&Aを行うことでどのようなメリットがあるのか、またM&Aによって成功した事例も併せてご紹介します。

ビルメンテナンス業界の課題と今後の展望

ビルメンテナンス業界ではどのような課題を抱えているのか、また今後どのように変化していくと考えられるのか、詳しく解説します。

国内市場における人手不足

ビルの清掃や警備、各種設備の点検・メンテナンスなどを担うビルメンテナンスは、人の手による作業に頼ることの多い業種です。

そのため、経験豊富な熟練の作業員による診断が不可欠です。

しかし、ビルメンテナンス業界では慢性的な人材不足に陥っており、特に若年層の採用に頭を悩ませる企業が多い傾向があります。

人手不足に対応するための手段として、近年になってビルメンテナンスを担う清掃ロボットや警備ロボットの導入も増えつつあります。

しかし、ロボットによる作業へ完全移行するには、技術やコストなどの課題があります。

海外展開の加速

海外では、東南アジアを中心に今後ビルやマンションなどの建設需要が増えてくると期待されています。

しかし、海外ではビルメンテナンスのノウハウや技術が不足していることによって、海外市場へ活路を見いだし、進出を図る企業も増えてくるでしょう。

また、海外では日本と比較して多くの労働者を確保しやすいことも、海外進出を後押しする要因として考えられます。

関連記事:ビルメンテナンス業界の今後は安定している?現状と課題・対策を解説

ビルメンテナンス業界におけるM&Aの動向

さまざまな課題が山積するビルメンテナンス業界では、課題解決に向けた手段のひとつとしてM&Aを検討する企業が増加傾向にあります。

M&Aを検討する背景やM&A後の事業展開の動向について解説します。

M&Aが注目される背景

ビルメンテナンス業界においてM&Aが注目されている要因の一つに、人手不足が大きく影響しています。

労働集約型であるビルメンテナンス業は、他社との差別化を図るために価格を抑えようとした結果、従業員の給与へ影響を与えます。

中小のビルメンテナンス会社が価格競争に巻き込まれると収益は低下し、さらなる人手不足に陥るといった悪循環につながるでしょう。

そこで、会社を存続させ経営の安定化を図るための手段としてM&Aが注目されています。

M&Aによるビルメンテナンス会社の買収が人気な理由

ビルや住宅の建設は景気の動向に左右されやすく、景気が落ち込むと建設需要も低下する傾向があります。

しかし、ビルメンテナンスはビルを維持・管理していくためには不可欠な事業なため、継続的に安定した売上を見込めます。

そのため、安定した収益の獲得を目的としてビルメンテナンスの買収を検討する企業が増えています。

近年見られる事業展開

ビルメンテナンス会社を買収する場合、従来のビルメンテナンス事業をそのまま引き継ぐのではなく、ファシリティマネジメントサービス※1として事業を拡大していくケースがあります。

価格競争が激化すると、単純なビルメンテナンス事業だけでは収益が低下していきます。
そのため、多角的な事業を展開することは、企業が生き残っていくために有効な手段といえるでしょう。

※1:企業や団体が、保有する施設や関連する環境を管理・運営して最適な活用をする経営管理活動

関連記事:M&Aとは?概要や流れ、メリットなどについて徹底解説

ビルメンテナンス業界でM&Aを行うメリット

ビルメンテナンス業界でM&Aをする場合、売り手側と買い手側の両社にさまざまなメリットをもたらす効果が期待できます。

売り手企業のメリット

会社を売却する売り手側企業のメリットは、主に以下の2点が挙げられます。

  • 受注の安定確保
  • 業務の効率化

受注の安定確保

M&Aの買い手となる企業は、資金力に余裕があり経営規模の大きな企業の場合が多いです。

大手企業の傘下となった場合、買い手企業が持つ顧客網を活用し、安定した受注の確保が見込めるでしょう。

また、買い手企業の顧客網は新規顧客を開拓するための営業活動にも活用ができるため、経営状況の安定化が図れる可能性が高まります。

業務の効率化

ビルメンテナンス業務を効率化するために、ロボットをはじめとしたさまざまなツールが登場しています。

また、顧客リストの管理などバックオフィス業務のDX化も求められていますが、導入・実現するためには多額の設備投資と時間が必要です。

しかし、M&Aによって買い手企業が保有している最先端設備やツールを活用することができれば、業務効率を大幅に向上できる可能性があります。

買い手企業のメリット

続いて、ビルメンテナンス会社を買収する側の企業が得られるメリットをご紹介します。

ビルメンテナンス業務に関するノウハウの獲得

ビルメンテナンスに関する知見のない企業にビルメンテナンス業務のノウハウがない場合、M&Aによって専門的な技術力やノウハウを手に入れられることができます。

そのため、ビルメンテナンスに関する知見のない企業がビルメンテナンス会社を傘下にすることで、スムーズに事業拡大ができる可能性が高まります。

そして、両社のシナジーを活かしたファシリティマネジメントサービスの展開につなげることもできるでしょう。

新規参入にかかるコストの削減

新たにビルメンテナンス事業に参入しようとする場合、人材の確保と教育、ビルメンテナンスに必要な設備の導入など、さまざまなコストがかかります。

しかし、M&Aによってビルメンテナンス会社を買収できれば、即戦力となる人材をそのまま受け入れることができます。

ビルメンテナンス会社には専門的な資格をもった人材も多く、有資格者を育成する手間もかかりません。

また、人材だけでなく売り手企業の設備も引き継げることは、M&Aの大きなメリットといえるでしょう。

シェアの拡大

ビルメンテナンス事業への新規参入後に事業を安定化させ、市場でのシェアを拡大するためには多くの時間と労力を必要とします。

しかし、ビルメンテナンス会社を取得することで顧客基盤をそのまま引き継げるため、シェアの拡大がしやすくなるでしょう。

関連記事:M&Aの目的を買い手・売り手の両視点から解説!課題やポイントも紹介

ビルメンテナンス業界のM&Aの成功事例

ビルメンテナンス業界でM&Aを成功させた企業の事例をご紹介します。

中央ビルメインのM&A

東京都武蔵野市を拠点にビルやマンション清掃を行なってきた中央ビルメインは、顧客からの厚い信頼のもとで経営をしてきましたが、後継者問題を抱えていました。

事業の継続を模索するなかで、岡山県の三洋環境というビルメンテナンス会社が受け入れ企業として名乗りをあげ、M&Aによる事業の引き継ぎを行いました。

その結果、中央ビルメインは従業員や取引先に迷惑をかけずに事業を引き継ぐことができ、首都圏への進出を目指していた三洋環境も目的を達成することができました。

参考:東京商工会議所|M&Aに関する取材先企業のご紹介

イノウエテクニカのM&A

静岡県東部を中心にビル面テンス事業を展開していたイノウエテクニカは、公共施設や民間企業の工場、病院などの管財業務を行なってきた実績のある企業です。

しかし、2020年11月にエネルギー事業や情報通信サービス事業、住宅事業など多方面に展開しているTOKAIホールディングスの完全子会社となりました。

TOKAIホールディングスはイノウエテクニカの持つ市場や技術力を活用することで既存事業の強化を図る一方で、イノウエテクニカはTOKAIホールディングスの販売網を活かした事業の拡大を目指しています。

参考:株式会社TOKAIホールディングス|株式会社イノウエテクニカの株式取得に関するお知らせ

メイセイのM&A

給排水関連設備や制御機器の保守・点検などを手掛けるメイセイは、不動産管理事業や営繕管理事業などを展開する日本ハウズイングによって完全子会社化されました。

もともと取引関係にあったメイセイが参加に入ることで、日本ハウズイングは優秀な人材の確保や技術力の向上、顧客満足度の向上を目標としています。

参考:日本ハウズイング|株式の取得(子会社化)に関するお知らせ

ふきのとうのM&A

2020年3月、北陸地方を中心にビルメンテナンス業や通信システム事業、商社事業を展開するホクタテが、富山県内でビルの管理・清掃を行う「ふきのとう」を完全子会社化しました。

M&Aを行った結果、ホクタテは「ふきのとう」でノウハウを蓄積した人材を活かして人材不足を解消。
事業基盤の強化・拡大や付加価値の高いサービスの提供を目指しています。

参考:株式会社ホクタテ|有限会社ふきのとうの株式取得のお知らせ

ビルメンテナンス業界のM&Aについてのまとめ

ビルメンテナンスは、受注が決まれば安定した売上が期待できる業界です。

しかし、業むは人手に頼るケースが多いため、慢性的な人手不足が課題となっています。

また、ビルメンテナンス業界へ新たに参入する企業にとっては、一からノウハウを積み上げたり取引先を開拓していくための時間とコストが課題として挙げられます。

このような売り手企業と買い手企業の経営課題を解決するために、M&Aは有効な手段のひとつといえます。

M&Aによって人手不足の解消や新規事業への参入を検討されている経営者の方は、ぜひM&Aベストパートナーズへお気軽にご相談ください。

各業界に精通した専任アドバイザーが、課題解決に向けた最適な方法をご提案させていただきます。

著者

MABPマガジン編集部

M&Aベストパートナーズ

石橋 秀紀

ADVISOR

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