電気工事会社におけるM&Aの動向とは?買い手側・売り手側のメリットについて

電気工事会社におけるM&Aの動向とは?買い手側・売り手側のメリットについて

多くの電気工事会社は、人手不足や後継者不足の課題を抱えています。

このような課題を解決するために、M&Aを検討している人もいるでしょう。

また、M&Aを実施することでどのようなメリットがあるのか気になる人もいるかもしれません。

この記事では、電気工事会社におけるM&Aの動向や買い手・売り手のメリットについて解説します。

また、電気工事がM&Aを実施する際の注意点や事例についても解説するため、電気工事会社におけるM&Aを検討している人は参考にしてください。

電気工事会社の特徴

電気工事会社の特徴

ここでは、電気工事会社の特徴について解説していきます。

電気工事会社の買収考えている場合は、電気工事業界の特徴について理解しておくことが大切です。

 

電気工事会社はサブコンに分類される

電気工事会社を含めた建設業界の企業は、ゼネコンサブコンの2つに分けられます。

ゼネコンとは、主に施工全体の管理を行う元請け会社のことです。具体的には、設計・施工・研究の3つを自社内で行っており、売り上げが数千億円~数兆円ある会社のことを指します。

一方、サブコンとは、施工のなかでも特定の工程だけを行う専門業者のことです。電気工事会社はサブコンに分類されます。ほかにも、空調工事会社や排給水工事会社などもサブコンです。

サブコンは、ゼネコンの下請けとして働くケースが多く、専門的な業務を受け持ちます。ただし、なかには顧客から直接受注されるケースもあります。

 

電気工事会社は今後も安定する

電気は生活に不可欠な存在です。

電気工事は、電気を中心とするインフラ設備を整える役割があります。そのため電気工事は需要があり、安定した業界といえるでしょう。

一方で電気工事会社の多くは、少子化高齢化により人手不足や後継者不足という課題を抱えています。

また、従業員の高齢化が進んでいるため、これらの課題を早急に解消する必要があるでしょう。

電気工事会社のM&Aの動向

近年、電気工事業界におけるM&Aは増加傾向にあります。

そのため、M&Aの動向が気になる人もいるでしょう。

ここでは、電気工事会社のM&Aの動向について解説していきます。

 

リニューアル工事が増加傾向

近年、建物や施設のリニューアル工事の需要が増加傾向にあります。

リニューアル工事の需要が増加している背景には、建物の老朽化省エネ化などが挙げられるでしょう。

また、リニューアル工事の需要は、今後も伸びると予想されています。

電気工事会社をはじめとするサブコンは、ゼネコンから工事を受注する場合が多いですが、リニューアル工事では、サブコンが顧客から直接受注するケースも少なくありません。

そのため、サブコンでは、リニューアル工事に対応できる技術を身につけて利益を高めようとする動きがあります。例えば、電気工事と空調工事の両方を自社で対応できるようになれば、利益率をさらに高められるでしょう。

しかし、このような取り組みは自社のみでは困難です。そこで、さまざまなリフォーム工事に対応するために、サブコンの企業同士でのM&Aが増加しています。

 

慢性的な人手不足を解消するためのM&Aが増加

現在、電気工事を含めた建設業界では慢性的な人手不足が課題です。

その原因として、若手離れ離職率の高さなどが挙げられます。

また、少子高齢化により若い人材が不足している一方で、従業員の高齢化は進んでいるのが現状です。

このような課題を解決するためにM&Aを実施する電気工事会社が増えています。

 

後継者問題を解消するためのM&Aが増加

電気工事会社では、人手不足や高齢化などの影響で後継者問題が深刻化しています。

特に中小企業においては、親族や社内に後継者が見つからず、廃業を選択するケースもあるでしょう。

そのため、後継者問題を解消する目的で、M&Aを行う電気工事会社が増えています。

また、このような事態を問題視した国や自治体は、M&Aを活用した第三者への事業継承を促進しています。こういった背景もあり、今後課題解消のためのM&Aがさらに増加するでしょう。

 

他社との差別化を図るためのM&Aが増加

電気工事業界の需要は増加傾向にあり、今後は他社との競争が激化すると予測されています。

そのため、電気工事会社は他社との差別化を図り競争力を強化しなければなりません。

このような他社との競争に勝ち抜くためにM&Aは効果的です。例えば、電気工事会社同士でM&Aを実施すれば、事業規模を拡大することができます。

また、双方の技術やノウハウを融合すれば競合他社よりも圧倒的に有利になるでしょう。そのため、他社との差別化を図る目的のM&Aが増加傾向にあります。

 

海外へ展開する会社が増加

将来的な日本での需要の低下を見越して、海外企業とM&Aを実施し、海外市場へ展開しようとする動きがみられています。

特に、インドや東南アジアでは人口や経済が拡大しているため、電気工事会社をはじめとする建設業界の需要が伸びると期待されるエリアです。そのため、日本の企業が現地にある企業を買収する動きがみられます。

これにより、現地のネットワークや顧客基盤を獲得し、現地での事業展開をスムーズに進めることが可能です。こうした理由から、海外市場へ展開する目的のM&Aが増加傾向にあります。

電気工事会社のM&Aにおける買い手側のメリット

M&Aにおける買い手側のメリットとして、人材の確保、事業やシェアの拡大といった点が挙げられます。

以下では、買い手側のメリットをそれぞれ詳しく解説します。

 

人材が確保できる

前述のとおり、多くの電気工事会社は慢性的な人手不足という課題を抱えています。

また、電気工事には資格や技術などが必要なため、新規採用だけでは人材の確保が難しいのが現状です。

M&Aを実施することで、資格や技術を持った優秀な人材を確保することができます。新たな人材の経験や専門知識を生かし、業務の幅や品質を向上させることが可能です。

 

事業を拡大できる

M&Aはシナジー効果を目的として行われることが多く、自社の既存事業と買収した会社の事業を組み合わせることで事業を拡大できます。

買収した企業が持つ技術や製品・サービスを導入することで、自社が行っている事業の範囲を広げることが可能です。

こうしたシナジー効果を十分に発揮できれば、さらなる利益を生むことができるでしょう。

 

シェアが拡大できる

M&Aにより買収した会社のシェアを引継ぐことができるため、自社のシェアが拡大します。

これにより、市場での存在感や競争力が向上し、業界内での地位を強化することが可能です。

自社のシェアが広がり認知度が上がれば、信頼性も高まるでしょう。そのため、新規の仕事が増えたり、新規人材の確保がしやすくなったりすることにつながります。

シェアの拡大は自社の認知度を高め、企業の成長と発展につながるでしょう。

 

電気工事会社のM&Aにおける売り手側のメリット

電気工事会社のM&Aにおける売り手側のメリット

売り手側のM&Aのメリットとしては、安定した工事受注、従業員の雇用維持、後継者問題の解消、創業者利益の受け取りなどが挙げられます。

以下で、電気工事会社のM&Aにおける売り手側のメリットをそれぞれ詳しく解説していきます。

 

工事受注が安定する

M&Aにより中堅企業や大手企業の傘下に入った場合、安定した工事の受注が見込めます。

また、工事の受注が安定するだけでなく、自社のみでは困難であったワンストップサービス体制を実現できる可能性があります。

ワンストップサービス体制とは、工事に必要な作業をすべて自社内で行うことを指します。ワンストップサービス体制が実現できることで、リニューアル工事の受注といったさまざまな工事において他社よりも有利になるでしょう。

経営難に陥っている企業にとって、工事受注が安定することは大きなメリットといえます。

 

従業員の雇用を守れる

後継者問題や人手不足などにより廃業した場合、既存の従業員の職は失われます。これまで、ともに働いてきた従業員を守りたいと考えている経営者は多いでしょう。

しかし、M&Aによって会社を売却すれば、従業員の雇用契約をそのまま引継げるため、従業員の雇用を守ることができます。

 

後継者問題を解消できる

中小企業をはじめとする電気工事会社のなかには、親族や社内に後継者が見つからず、廃業を選択する企業もあります。

M&Aは事業継承の手段として活用できます。そのため、M&Aにより第三者に事業継承すれば、後継者問題を解消することが可能です。

売り手側の経営者が引退や事業の縮小を検討している場合、M&Aによって後継者問題を解消できるのは大きなメリットでしょう。

 

創業者利益を受け取れる

売却側の経営者はM&Aにより会社を売却することで創業者利益を受け取れます。

創業者利益は、「資本+株式資本」とM&Aにより得た「売却額」との差額が該当します。

創業者利益を受け取ることで、経営者は個人の経済的な安定や将来の計画に活用することが可能です。また、新たなビジネスに挑戦する資金源としても利用できるでしょう。

そのため、M&Aにより創業者利益を受け取れることは、経営者にとって大きなメリットといえます。

 

電気工事会社がM&Aを行う際の注意点

電気工事会社がM&Aを行う際の注意点

電気工事会社におけるM&A後の運営を安定させるためには、いくつかの注意点を抑える必要があります。

ここでは、電気工事会社がM&Aを行う際の注意点について詳しく解説します。

 

許認可の引継ぎを確実に行う

一定の規模以上の電気工事を行う場合は、許認可を取得する必要があります。

許認可を取得するためには、「経営管理責任者」と「専任技術者」の2名が必要です。また、経営管理責任者は、5年以上の経営経験が必要であるといった条件があるため、引継ぐ際にはこれらを確認しましょう。

また、グループ会社が増えると、それぞれの事業所でこのような有資格者を配置しなくてはなりません。M&Aによる組織の拡大や変更がある場合は、許認可の引継ぎを確実に行うことが大切です。

 

会計面を見直し、細かい記録をつける体制を整える

電気工事業界は、業界全体としてどんぶり勘定であるといわれています。

この点は、M&Aを検討する際に購入会社側にとっての懸念材料となり得るため注意が必要です。

したがって、事前に会計面を見直す必要があります。適切な会計処理と細かい記録をつける体制を整え、財務面での透明性を高めることが大切です。

電気工事会社におけるM&Aの事例

電気工事会社におけるM&Aのメリットや注意点などについては解説しましたが、具体的にどのような事例があるのか気になる人もいるでしょう。

ここでは、M&Aベストパートナーズの電気工事会社におけるM&Aの事例を紹介します。

 

後継者問題と技術者不足を解消するためのM&A

株式会社日乃出エヤコン様は、管工事、機械器具設置工事、電気工事、建築物環境衛生管理などを行う会社です。

日乃出エヤコン様は、後継者問題と深刻な技術者不足に悩んでおり、創業50周年を迎える頃にM&Aを検討しました。建設業界に詳しい当社のアドバイザーと出会えたことをきっかけにM&Aを決断します。

譲渡先候補企業であるガス・熱・電気供給事業などを営む会社とM&Aを通じたトップ面談を経て、その会社の子会社になります。

これにより、後継者問題や技術者不足が解消され、事業の継続と成長を実現しました。

 

事業エリアの拡大とシナジー効果が目的のM&A

株式会社ひかりシステム様は、電気設備設計施工等、電気工事全般を行う会社です。

これまでひかりシステム様は親族間での継承を行っていましたが、自身の息子にはやりたい仕事をしてほしいという考えが強くありました。また、現場の職人は仕事に没頭しているため、経営には不向きだと感じました。

そこで、社内ではなく社外で経営に適した人材を探すことを決断しM&Aを検討し始めます。

いくつかの候補のなかから、株式会社望月工業所とのM&Aがシナジー効果を生み出せるのではないかと感じ、M&Aを進めました。

その後、株式会社ひかりシステムは、株式会社望月工業所とのM&Aを実現しました。現在は、事業エリアの拡大とシナジー効果を最大限に活用し、業界内での地位を強化することを目指しています。

まとめ

まとめ

今回は、電気工事会社におけるM&Aの動向や買い手・売り手のメリット、事例などについて解説しました。

近年では、リニューアル工事の増加に対応するため、人手不足や後継者不足を解消するためのM&Aなどが増えています。

M&Aは人材確保や事業拡大など、両者にとってさまざまなメリットがあります。電気工事業界特有の注意点に気をつけながらM&Aを活用すれば、業界の発展と企業の成長を促進することが可能です。

電気工事会社におけるM&Aを検討中の人は、「M&Aベストパートナーズ」へご相談ください。

M&Aベストパートナーズでは、電気工事業界に精通したアドバイザーが在籍しております。無料相談も可能ですので、お気軽にお問い合わせください。

著者

MABPマガジン編集部

M&Aベストパートナーズ

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