債務超過がある場合、事業継承は難しいと考える人は多いかもしれません。
結論からいうと、債務超過状態の会社でも事業継承は可能です。
しかし、事業継承時に影響する要素があります。債務超過の影響を最小限に抑えるためにも、早めの対策が必要です。
そこで、この記事では債務超過状態の会社における事業承継について詳しく解説します。
目次
債務あり・債務超過でも事業継承(事業承継)は可能
まずは、債務がある状態で事業継承する際の重要事項について解説します。
事業継承の手法や契約内容によって事情は変わる
事業継承には、手法や契約内容によって異なる事情が存在します。
例えば、包括的な継承手法では、事業の全体が引き継がれるでしょう。これにより、債務も引き継がれます。
一方、個別の継承手法では、特定の資産や部門のみが継承されるでしょう。この場合、債務の継承が制約されます。
また、手法や契約内容によっては、債務の継承が行われないケースもあります。特定の条件や合意事項が設けられている場合には、新たな所有者が債務を負担する必要はありません。これは、継承に関する契約や法的手続きの内容によって異なります。
債務がある状態での事業継承においては、まずは詳細な調査と専門家の助言を通じて、手法や契約内容に関する理解を深めることが大切です。それによって、債務の状況や継承の範囲を正確に把握し、適切な戦略が立てられます。
事業継承できる条件
債務超過の状態で事業継承を実現するには、債務を好んで継承したい経営者はいないことを理解することが重要です。通常、新たな事業継承者は債務を負担することを望みません。
さらに、事業継承は相手企業に何らかのメリットをもたらすことが大前提です。相手企業が欲しい技術や人材などを継承し、双方にとって利益が得られることを求められます。
また、債務超過であっても、継承先企業が「のれん」と呼ばれる事業評価額の差額を有している場合は、事業継承が可能です。
のれんは、企業のブランド価値や顧客基盤など、実際の資産価値には含まれていない部分を指します。
事業継承の実現には、経営者の意思や相手企業のメリット、債務超過時ののれん評価など、複数の要素が絡み合います。
そのため、具体的な事例や専門家の助言を通じて、事業継承の条件を適切に評価することが重要です。
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事業継承の代表的な手法における債務の継承方法
事業継承の代表的な手法に株式譲渡と事業譲渡があります。
ここからは、それぞれの手法における、債務の継承方法を解説します。
株式譲渡
株式譲渡による経営権の移転では、資産や債務も引き継がれます。
株式を取得することにより、企業の経営権が移転するため、その企業の資産(不動産、設備、在庫など)や債務(負債、借金など)も譲渡先に引き継がれるのが一般的です。
これは、企業の経営権の移転によって、事業の全体が新たな所有者に移り、経営上の責任や権利、義務も移転するためです。
ただし、具体的な契約内容や法的手続きによって異なるケースもあります。そのため、株式譲渡を検討する際は、詳細な調査と専門家の助言を受けるようにしましょう。
特に、債務の引き継ぎに関しては、契約上の条件や債権者との合意が必要な場合もあります。事業の引き継ぎに伴う資産と債務の扱いについては、慎重に対応することが大切です。
事業譲渡
事業譲渡では、許認可を含めて個別の継承手続きが必要です。
なお、負債は自動的には承継されません。債務を移転する場合でも、債権者の合意が必要です。
つまり、買い手と債権者が合意しなければ、債務の移転は実現しません。
ただし、買い手が望まない場合、負債の継承を回避することも可能です。この場合、買い手は負債を負担せず、譲渡元企業が債務を解決しなければなりません。
債務を抱える企業が事業継承(事業承継)する前に理解すべきこと
先述した通り、債務を抱えている状態でも事業継承は可能ですが、債務がない企業に比べると不利な点が存在します。
ここからは、債務を抱える企業が事業継承する前に理解すべき、3つのポイントについて解説します。
相手企業探しのハードルは上がる
事業継承において、債務は相手企業探しの足かせとなりやすい要素です。
多額の債務が存在する場合、相手企業は引き継ぎに慎重な姿勢を示すでしょう。これは、債務を引き継ぐことで財務的な負担やリスクが発生する可能性があると判断されるためです。
事業継承を検討する際には、債務の状況を詳細に把握し、それに応じた戦略を立てるようにしましょう。
債務がある場合は、買い手企業に「債務があっても買いたい」と思わせることが大切です。
具体的には、債務の管理や削減策、引き継ぎ先に対するメリットの明確化などが求められます。
債務があっても隠蔽しない
債務を隠蔽して事業継承を行うことは避けるべきです。
債務を隠蔽する行為は、後に訴訟に発展するリスクを引き起こす可能性があります。隠蔽行為は信頼関係を損ない、関係者間のトラストを崩すことにもつながるでしょう。
事業継承においては、誠実さと情報の公正な開示が必要です。
債務がある場合は、正確な情報共有と交渉を行いましょう。相手企業や関係者とのコミュニケーションを通じて、債務の状況や解決策について誠実に話し合うことが大切です。
透明性を保ちながら債務の扱いを適切に取り組むことで、事業継承の成功と信頼関係が構築できます。
前経営者が責任を負い続けるケースも多い
事業継承においては、前経営者が債務に対して責任を負い続ける場合があります。
連帯保証は必ず継承できるとは限らず、前経営者が連帯保証人の責任から抜けられないケースもあるでしょう。連帯保証人としての責任を放棄するには、債権者との合意が必要です。
連帯保証人は、主債務者が債務を履行しない場合に、債権者から直接的に支払いを求められる立場にあります。事業継承においては、連帯保証人との合意や解除手続きなど、債務に関する法的な事項に注意しましょう。
債務を抱える企業の事業継承(事業承継)で有力な選択肢
次に、債務を抱える企業が事業継承を検討する際の、有力な3つの選択肢について解説します。
分社化により有望な事業だけを継承する
分社化は、有望な事業のみを継承するための手法です。
主な手段としては、会社分割や前述の事業譲渡があります。
会社分割では、親会社が子会社を設立し、特定の事業部門や資産を分割譲渡する方法です。
一方、事業譲渡では、特定の事業を別の会社に譲渡することで引き継がれます。
分社化のメリットは、後継者の債務負担を軽減しつつ、有望な事業が存続できることです。
債務を含む全ての事業を継承する必要がなくなるため、万が一のリスクを分散できます。
分社化においては、詳細な計画と適切な法的手続きが必要です。各事業の評価や資産・債務の整理、契約書の作成などが重要な要素となります。また、税務や労務などの側面も考慮する必要があります。
事業継承を検討する際には、分社化が適切な選択肢であるかを検討し、専門家のサポートを受けながら戦略を策定しましょう。
債務免除を適用する
債務免除は、経営者自身が企業に融資している場合に、債務超過を回避するための手段として検討されます。経営者が企業に対して融資を行っている場合、その債務を免除することで、企業の債務超過状態を改善できます。
債務免除を適用すれば、相手企業探しのハードルが下がるでしょう。なぜなら、債務が免除されることで負債の問題が解消され、引き継ぎ先のリスクを軽減できるためです。
また、経営者にとっても節税効果が生まれます。債務免除により、個人としての所得や資産評価を調整することで、税負担が軽減できるでしょう。
ただし、債務免除は税務や法的な側面が関わるため、慎重な検討と適切な手続きが必要です。税務当局のガイドラインや専門家の助言を参考にしながら、債務免除の適用条件を確認しましょう。
再生型M&Aを実施する
再生型M&Aは、企業再生を目的としたM&Aの手法です。この手法により、債務からの脱却が図れます。
再生型M&Aは、財務・経営の健全化や事業の再編などを通じて、経営状態の改善と債務負担の軽減を目指します。
M&Aには専門知識と経験が必要です。
複雑なプロセスや法的・財務的な要素を理解し、最適な戦略を策定するには、専門家のサポートを受けながら進めることをおすすめします。
専門家は、評価・デューデリジェンス、交渉、契約の策定など、M&Aの成功に必要な情報・スキルを提供可能です。
債務超過に陥っている企業が事業継承を行うポイント
資産よりも債務額が多い状態で事業継承を行うことは、引き継ぐ側にとってリスクが高いです。債務超過状態では、引き継ぐ企業が負債を背負うことになり、財務的な負担やリスクが高まる可能性があります。
債務超過を解消するには、債務の削減や再調整が有力な方法といえるでしょう。
交渉や再融資などを通じて、債務額を減らしたり、返済条件を見直したりすることで負債を軽減できます。
また、資金調達や投資を通じて、企業価値の向上を図ることも有力な方法でしょう。新たな資金を調達し、事業拡大や収益増加を図れば、債務超過状態が克服できます。
債務超過での事業継承はハードルが高いといえるでしょう。そのため、専門家と相談しながら進めるのが効果的です。
まとめ
負債が膨らんで債務超過に陥ると、会社の財務状況は大きく変化します。
そのまま負債を放置して事業を継承すると、後継者の選択肢が制限され、事業の成功に向けた課題が増大する可能性があるでしょう。
会社の価値が評価されている状態で引き継ぐには、今回紹介した、条件や注意点、選択肢を正しく理解しておくことが大切です。
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