M&Aストーリー
M&Aを実施する目的や背景は多岐にわたって存在するため、
ひとつとして同じ案件や事例は存在しません。
「ホテルの経営者になるにはどうすればよいか」と疑問を抱えている人もいるでしょう。
ホテルの経営者になる手段として近年注目されているのが、既存ホテルの経営者から事業を受け継ぐ「事業承継」です。
ホテル事業を承継して経営者になるうえでは、まず基本事項の理解が欠かせません。
本記事では、ホテルの経営者になるために知っておくべき仕事内容や必要な資格について解説します。
ホテル経営をするうえで注意すべきことも紹介するため、ぜひ参考にしてください。
目次
新型コロナウイルスの影響で一時的に減少した旅行需要は、ワクチン接種の進展や政府の観光支援策(例: Go To トラベルキャンペーンなど)により、国内旅行需要が回復しています。
地方の観光地や温泉地における宿泊需要が再び高まり、特に「ワーケーション」などの新しい旅行スタイルが人気です。
海外からの観光客の数は、新型コロナウイルスの収束により徐々に回復していますが、依然として完全な復調には至っていません。
特にアジア圏からの旅行者が増加傾向にあります。
OTA(オンライン旅行代理店)やホテル直販のウェブサイトを通じた予約がますます主流になっています。
顧客はより簡単にホテルの価格を比較できるようになり、競争が激化しています。
また、チェックインやコンシェルジュサービスにAIやロボットを導入するホテルが増えています。
これは、顧客のニーズに迅速に対応できるだけでなく、人件費の削減にも寄与しています。
ラグジュアリーホテル市場は、富裕層やビジネス客をターゲットにして成長を続けています。
特に都市部での高級ホテルの建設が進んでいます。
一方で、カプセルホテルやホステル、ビジネスホテルのような低価格帯の宿泊施設の需要も高まっています。
特に、バックパッカーやビジネス客向けにシンプルなサービスを提供する施設が人気です。
顧客は単なる宿泊だけでなく、特別な体験を求める傾向が強まっています。
ホテル自体が観光資源となるようなデザインやコンセプトを持つ「ライフスタイルホテル」が増加し、特に若年層やミレニアル世代に人気があります。
ホテル業界では慢性的な人手不足が課題となっており、特に地方の宿泊施設ではこの傾向が顕著です。
そのため、働き方改革やリモートワークの導入、外国人労働者の雇用促進が進められています。
これらの動向を踏まえ、ホテル業界は柔軟な経営戦略とテクノロジーの活用、サステナビリティへの取り組みを進めることで、今後も競争力を維持していくことが重要です。
ホテルといっても、その規模はさまざまです。
経営者になる場合、ホテルの規模によって仕事内容や役割が異なります。
まずは、規模ごとの仕事内容について把握しましょう。
大規模なホテルの場合、経営者が現場を含めたすべてを取り仕切ることは簡単ではありません。
そのため、こうしたホテルの運営(実務)は「総支配人」に一任することが一般的です。
大規模なホテルの経営者は、文字どおり「経営」に専念するケースが多いでしょう。
具体的には、レストランや宿泊といった部門ごとの売り上げを管理したり、利益拡大につながる経営戦略を立案・実行したりします。運営を取り仕切る総支配人とのコミュニケーションも欠かせません。
個人経営などの小規模なホテルだと、経営者がホテルの「所有者」であり、「運営者」でもあるケースが多いです。こ
うしたホテルの経営者には、経営と運営を共に指揮する立ち回りが求められます。
つまり、ホテルの現場が適切に運営されるようにマネジメントしながら、ホテル全体の経営も考えなければなりません。経営・運営の両方のスキルが要求されるため、難度が高いといえるでしょう。
ホテルの所有者が自ら運営も行う形態では、オーナーが運営戦略やサービス内容に直接関与できるため、自由度が高い一方で、すべてのリスクをオーナーが負うことになります。
この形式は、独自のブランドやコンセプトを持ち、規模の小さいホテルに多く見られます。
オーナーのビジョンを反映させやすく、柔軟な経営方針を取れる点が利点ですが、資金繰りや運営ノウハウが不足すると、経営リスクが増大する課題も抱えています。
有名ホテルブランドのフランチャイズ権を取得し、ブランドのロゴやノウハウを活用して運営する形態では、フランチャイジーはブランドの規定に従って運営を行います。
フランチャイズ契約を通じて、一定の経営指導やマーケティング支援を受けられる一方、ロイヤリティ(使用料)を支払う必要があります。
ブランドの知名度を活用することで集客力を高めやすく、運営ノウハウの提供を受けられる点が利点です。
しかし、ブランドの規定に従わなければならないため、独自性や運営の自由度が制限される場合があります。
ホテルの所有者が、運営に特化した専門会社に経営を委託する形態では、所有者は施設の保有に集中し、日常的な運営はプロフェッショナルに任せます。
この形式では、運営ノウハウや人的リソースを持つ運営会社による安定した運営が期待できます。
運営の効率化が図れるため、所有者の経営リスクを軽減できるのが利点です。
しかし、所有者の関与が制限され、運営内容に対する影響力が低くなる可能性があります。また、運営委託料が発生することも課題となります。
ホテルの建物や設備を所有者から賃借して運営する形態では、運営会社が賃借料を支払いながら、営業やサービス提供を自ら行います。
リース契約によって施設の維持管理や資本的投資の負担を軽減できるため、比較的少ない資本で運営が可能です。
施設を所有せずに経営でき、契約期間中の経営柔軟性を維持しやすい点が利点です。
しかし、リース料が大きな負担となることや、契約内容により長期的な施設改善が制約される場合があることが課題です。
複数のホテルが特定のコンソーシアムに加盟し、共同でマーケティングや予約システムを利用する形態では、各ホテルが独立して経営を行いつつ、連携して運営します。
大手ブランドに属するわけではないものの、コンソーシアムのネットワークを活用して集客支援や運営サポートを受けられるのが特徴です。
共同のマーケティング活動により、コスト削減や集客の増加が期待できる一方、独自の経営スタイルを維持できる点が利点です。
しかし、コンソーシアムの方針に従うため、経営の自由度が制限されることも課題となります。
宿泊料金は、ホテルの主要な収益源です。客室の稼働率と客単価が収益に直結します。
ホテルは、繁忙期や閑散期によって料金を変動させることが一般的です。
公式ウェブサイトからの直接予約(直販予約)は、手数料がかからないため利益率が高くなります。
一方、オンライン旅行代理店(OTA)を通じた予約は集客効果が大きいですが、手数料(通常10-30%)が発生するため、利益率が低くなります。
ホテル内のレストランやバーからの売り上げは、宿泊客だけでなく、外部の来客からも収益を得られる重要な収入源です。
高級ホテルでは、レストランやバーのブランド力が強みとなり、宿泊とは別に高い収益を上げることがあります。
ルームサービスの提供も宿泊収入の補完的な役割を果たし、手軽に利用できることから利益率が比較的高いです。
結婚式や企業のイベントなどでの宴会サービスやケータリングも、収益源のひとつとなります。特に宴会場の規模や設備が充実しているホテルでは、大きな利益を上げることが可能です。
会議室の貸出し
ビジネス向けのホテルでは、企業向けに会議室やホールを貸し出すことで収益を得ます。
会議、セミナー、展示会、コンベンションなどのイベント収入は、特にビジネスホテルや都市型ホテルにとって重要な収益源です。
結婚式、記念日、企業パーティーなどのイベントを開催することで、大きな収益を得ることができます。
特に結婚式のプランやパッケージは、宿泊、飲食、サービスを総合的に提供するため高い収益性を持ちます。
高級ホテルやリゾートホテルでは、スパ、マッサージ、フィットネスジムなどのリラクゼーション施設の利用料も収益源となります。
宿泊客だけでなく、外部の顧客も利用できるようにすることで、さらなる収益を見込めます。
定期的に利用できる会員制サービスを導入し、安定した収入を得ることが可能です。
ホテルの経営者になるには、必ず資格が必要というわけではありません。しかし、資格があると経営者になるうえで役立つことが多いため、積極的な取得をおすすめします。
ここからはホテルの経営者に関する資格を、種類別に紹介していきます。まずは、ホテルの「経営」において役に立つ資格を把握しましょう。
経理に役立つ資格は、主に次の4つです。
【税理士】
税理士は、税務処理に関する専門的な知識を証明する国家資格です。
ホテル経営にも税務処理は欠かせないため、税理士の資格があれば適切な納税を行えるでしょう。
【公認会計士】
公認会計士は、財務諸表をはじめとする財務書類の監査に欠かせない国家資格です。
上場している大規模なホテルで経営者を務める場合、経営成績を適切に報告するうえで役立ちます。
【日商簿記検定】
日商簿記検定は、お金の流れを正しく管理するための簿記に関する資格です。
決算書や帳簿などからホテルの経営状況を把握しやすくなるでしょう。
【IFRS検定(国際会計基準検定)】
IFRS検定(国際会計基準検定)は、会計に関する専門的な知識を証明する国際的な資格です。
グローバルな会計知識を経営に活かせるため、ホテルの海外進出を図りやすくなります。
ホテル経営に役立つ資格は、主に次の4つです。
【中小企業診断士】
中小企業診断士は、企業の経営診断や戦略立案を行うための知識を証明する国家資格です。
ホテル経営で困難に直面した際に、自ら有効な戦略を立てやすくなるでしょう。
【社会保険労務士(社労士)】
社会保険労務士(社労士)は、人事労務管理に関する専門的な知識を証明する国家資格です。
労働問題の解決・防止に活かせる資格で、従業員との距離が近い小規模なホテルの経営において役に立つでしょう。
【経営士】
経営士は、経営管理の専門的な知識を証明する資格です。
経営管理の実務経験が求められますが、経営の高度な知識を活かしてホテルの利益拡大を図りやすくなるでしょう。
【MBA(経営学修士)】
MBA(経営学修士)は資格ではなく、経営学の経験・知識を証明する学位です。
経営学の大学院修士課程を修了する必要がありますが、経営学の体系的な知識をホテル経営にも活かせます。
経営者に求められるのは、ホテル経営だけではありません。ホテルの経営者としては、次のような資格も取得することをおすすめします。
【ホテルビジネス実務検定】
ホテルビジネス実務検定は、ホテルの実務からマネジメントまで幅広い知識を証明する資格です。
ホテル経営者に必要な知識が詰め込まれているため、取得して損はありません。
【食品衛生責任者】
食品衛生責任者は、食品を提供する事業・店舗などに欠かせない資格です。
レストランやルームサービスがあるホテルでは、最低1人以上の食品衛生責任者が欠かせません。小規模なホテルの場合、経営者が取得していると融通が利きやすいでしょう。
次に、ホテルの「施設管理」において役立つ資格を4つ紹介します。
施設管理とは、ホテルの設備を管理し、快適に利用できる施設をつくる業務のことです。
【消防設備士】
消防設備士は、消火器やスプリンクラー、火災警報器といった消防設備を扱うための国家資格です。
ホテルでの火災に備えて消防設備を配置する場合、点検や整備の際に役立ちます。ホテルの規模が大きくなると消防設備が必須となり、消防設備士の有資格者が欠かせません。
【危険物取扱者(乙種4類)】
危険物取扱者は文字通り、危険物を取り扱うための国家資格です。
種類が多くありますが、ホテル経営者は引火性液体を取り扱う「乙種4類」を取得するとよいでしょう。ホテルでボイラーの燃料に重油を用いる場合、貯蔵タンクの点検に従事するスタッフが最低1人は必要となります。
【ボイラー技士(二級)】
ボイラー技士は、高温を伴うボイラーの取り扱いに欠かせない国家資格です。
サウナや浴場などのためにボイラーを用いる場合、操作や点検に従事するスタッフが最低1人は欠かせません。小規模なボイラーであれば、経営者としては二級でも十分でしょう。
大規模なボイラーの作業主任者(現場リーダー)を務める場合は、一級や特級レベルの資格が必要です。
【防火管理者】
防火管理者は、火事を防ぐための管理業務を行うための国家資格です。
ホテル経営者に限らず一定規模の施設の責任者は、防火管理者を選任・配置しなければなりません。ホテル経営者が取得していれば、自ら防火管理を行ったり、担当者をサポートしたりできます。
続いて、ホテルの「接客」において役立つ資格を5つ紹介します。
サービス接遇検定は、接客に関する幅広い知識を証明する資格です。言葉づかいや立ち振る舞い、心構えなど、お客様を心地よくさせるための知識が幅広く身につきます。自身の接客だけでなく、従業員の教育にも役立つでしょう。
ホテル実務技能認定は、ホテル業界の実務に関する幅広い知識を証明する資格です。ホテルの宿泊や飲食に関する知識だけでなく、ホテル経営の知識も問われます。
ユニバーサルマナー検定は、さまざまな人と関わるうえでのマナーに関する資格です。インバウンドが重要となるホテルにおいては、外国人観光客への接客に役立つでしょう。また、障害を持つお客様に対しての接客サービス向上にもつながります。
レストランサービス技能検定(HRS検定)は、レストランにおける料理や飲料の提供に関する技能を証明する国家資格です。「レストランサービス技能士」とも呼ばれます。食品衛生から料理・食材、接客まで幅広い知識をホテルのレストランに生かせるでしょう。
接客サービスマナー検定は、業種を問わず接客力の高さを証明する資格です。経営者自身の接客品質向上や、従業員の教育にも役立つでしょう。1~3級の区分に分かれており、上級の資格だと実技試験もあります。
ここからは、ホテル経営を始める前に把握しておきたい注意点について紹介します。
ホテル業界は、時勢に影響を受けやすいことが不安要素といえます。
ホテルの売り上げは常連客だけでなく、インバウンドや一見の国内旅行客にも支えられています。こういったお客様のホテル利用は流動的であるため、時勢によっては大幅な客数・売り上げの減少につながることもあるでしょう。
例えば、2020年以降には新型コロナウイルス感染症が世界的に流行し、国内外の旅行者が減少しています。それによってホテルの利用者も大幅に減少し、休業に追い込まれるホテルも多くありました。ホテルの経営は、こうした時勢の影響により立ち行かなくなるリスクもあることを理解しておきましょう。
ホテル経営では、こうした不測の事態にも集客できるような対策を考えなければなりません。
ホテル経営の成否は、人員の配置やデータの分析に大きく左右されます。これらが正しく行われないと、経営に失敗する可能性があるため注意が必要です。
レストランや宿泊など多くの部門があるホテル経営者は、さまざまな従業員を雇用・配置することになります。ポジションに合った人員配置ができないと、生産性が上がらず人件費だけが増加する可能性もあるでしょう。
また、勘や経験に頼った経営判断は不確実であり、時勢に対応できず失敗するリスクを高めます。そのため、市場や宿泊客などの数値から現状把握・分析し、データに基づいた経営判断を行うことが大切です。
ホテルの稼働率を上げるために、空き部屋の宿泊料金を下げるケースもあるでしょう。
しかし、安易な値下げは売り上げが伸びない要因につながるため、おすすめできません。値下げ料金で宿泊したお客様は、元の値段では宿泊しない可能性が高いためです。
リピーターを増やしたいのであれば、安易な値上げを行うよりも品質向上に注力しましょう。
お客様のニーズをつかみ、また予約したくなるようなホテルを目指すことが大切です。
ホテル経営者になるには、仕事内容や資格について知ることが大切です。
税理士や中小企業診断士、ホテルビジネス実務検定など、ホテル経営者に役立つ資格は多く存在します。必ずしも資格が必要とは限りませんが、今回の内容を参考に取得を検討してみてはいかがでしょうか。
また、ホテル経営者になるうえでは事業承継が有力な選択肢です。しかし事業承継の経験がないと、正しい進め方がわからず不安も多いでしょう。
ホテル業界の事業承継に興味がある方は、事業承継のエキスパートである「M&Aベストパートナーズ」へぜひご相談ください。
M&Aを実施する目的や背景は多岐にわたって存在するため、
ひとつとして同じ案件や事例は存在しません。
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