近年、後継者不在に悩む診療所やクリニックにとって、第三者への事業承継(M&A)が有効な選択肢となっています。
かつて、親族承継が主流だった診療所やクリニックが、なぜM&Aを選ぶようになったのでしょうか。
本記事では、なぜ診療所やクリニックの後継者が不在となっているのか、そしてM&Aによってどのようなメリットを得ることができるのかを詳しく解説します。
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目次
診療所・クリニックが抱える承継問題
帝国データバンクによる2024年の調査によると、全産業約27万社の後継者不在率は52.1%でした。
このなかでも、医療業の後継者不在率は61.3%、全業種の中でも3番目という高い水準となっており、今後の地域医療が危ぶまれる状態となっています。
参考:帝国データバンク|全国「後継者不在率」動向調査(2024年)
診療所・クリニックの後継者が不在となっている背景
なぜ、診療所やクリニックでは前述したような承継問題が起こっているのでしょうか。
診療所・クリニックの後継者が不在となっている背景を解説します。
親族による承継への意識の変化
かつての診療所やクリニックでは、子供や親戚の中から後継者を選ぶケースが一般的でした。
しかし、時代の変化とともに親族の承継への意識も変化し、経営リスクへの配慮や負債の継承に対する懸念などから、経営者が親族への承継に抵抗を感じるケースが増えています。
また、親族側としても、特に若い方が「経営よりも専門医としてのキャリアを積みたい」といった家業とは異なる将来像を持っていたり、経営リスクを嫌がったりして承継を拒否するケースも増加しています。
厳しい経営環境
医療業界の経営環境は、国内人口の減少や医療費の圧縮推進などを背景に、非常に厳しい状況となっています。
また、地域医療体制の再編やリハビリ・回復期病床ニーズの増加など、医療環境は変革期を迎えています。
さらに、労働人口減少による人手不足なども深刻な問題となっており、親族はもちろん、既存スタッフも経営の引き継ぎに躊躇するケースが増加しています。
こちらの記事では、医療業界が人手不足に落ちいている原因、またM&Aによって人手不足が解消できた事例をご紹介しておりますので、せひあわせてお読みください。
診療所・クリニックがM&Aを行うメリット
さまざまな理由を背景に、診療所やクリニックでは後継者問題が深刻な状況となっており、解決する方法としてM&Aを選択する経営者が増加しています。
診療所やクリニックがなぜM&Aを選択するのか、得られるメリットを解説します。
スムーズな承継が可能
後継者不在のなかでは、自身の周りから後継者となりうる人材を探すことは非常に困難で、時間もかかります。
一方で、M&Aの場合は第三者への承継となるため、契約が成立すればスムーズに承継することが可能です。
地域医療の維持
診療所やクリニックは、地域のかかりつけ医として頼りになる存在です。
しかし、後継者が見つからないせいで廃業となった場合、地域の住民はかかりつけ医を新たに探し、一から信頼関係を築いていかなければなりません。
M&Aによって承継できれば患者様のかかりついがいなくなることへの不安の解消や、引き続き地域医療へ貢献できるといった医療従事者としての責務を全うすることができます。
スタッフの雇用維持
診療所・クリニックが廃業となると、これまで一緒に多くの患者様の健康をサポートしてくれたスタッフも解雇することになります。
しかし、M&Aは事業だけでなくスタッフも同時に引き継ぐことができるため、スタッフは安心して働き続けることができます。
充実したセカンドライフが期待できる
M&Aによって診療所やクリニックを売却した場合、売却益を得ることができます。
この売却益により、セカンドライフの選択肢を増やしたうえで、実現できる可能性も高めることができます。
M&Aは買手側にもメリットがある
診療所・クリニックをスタッフごと引き継ぐことにより、深刻な人手不足を回避することが可能です。
また、新たに開業する場合は建物や設備、スタッフの雇用など多くの開業資金を必要としますが、M&Aであればこれらがすでに揃っているため、開業資金を抑えることもできます。
さらに、すでに患者様がいて地域にも根付いているため、承継後すぐに利益を見込めることもメリットの一つです。
診療所・クリニックがM&Aを行う際のポイント
M&Aは、後継者不在という難題を解決するために非常に有効な選択肢ですが、成功しなければ存続させることができません。
診療所・クリニックがM&Aを行う際に抑えておきたいポイントをご紹介します。
適切なM&Aスキームの選定
M&Aには、さまざまなスキームがあり、目的に応じて適切な選択をする必要があります。

ただし、医療法人の場合は株式を発行しないため、上記のうち株式譲渡や株式分割など、株式が関係するスキームを選択することはできず、主に以下のスキームが用いられるケースが多いです。
- 出資持分譲渡
- 基金の譲渡
- 事業譲渡
- 吸収合併・吸収分割
- 吸収分割・新設分割
こちらの記事では、一般的なM&Aスキームの概要、医療法人のM&Aスキームについて詳しく解説しておりますので、ぜひあわせてお読みください。
許認可の引き継ぎ
診療所やクリニックの承継は、個人事業主と医療法人、どちらが運営しているかによって引き継ぎの届出が異なるため注意が必要です。
| 申請先 | 申請の内容 | 必要な書類 | |
| 個人事業主 | 厚生局 | ・前院長:保険医療機関廃止届 ・新院長:保険医療機関指定申請書 | ・保険医登録票の写し ・引継書※1 |
| 保健所 | ・前院長:廃止届 ・新院長:開設届 | ・医師免許証 ・経歴書 ・建物周辺見取り図 ・建物平面図 ・譲渡契約書 ・その他必要書類 | |
| ・前院長:レントゲン廃止届 ・新院長:レントゲン設置届 | ・レントゲン漏洩検査報告書 | ||
| 医療法人 | 厚生局 | ・保険医療機関届出事項変更届 | ・保険医療機関指定通知書(原本) ・保険医登録票の写し ・役員変更届の写し |
| 法務局 | ・医療法人変更登記申請書 (理事長変更登記) | ・印鑑証明書 ・旧理事長の辞任届 ・新理事長の就任承諾書 ・社員総会議事録 ・理事会議事録 ・新理事長の医師免許証の写し | |
| 都道府県 | ・登記事項変更完了届 | ・履歴事項全部証明書 | |
| ・役員変更届 | ・理事会議事録 ・社員総会議事録 ・旧理事長の辞任届 ・新理事長の就任承諾書 ・新理事長の経歴書 ・新理事長の印鑑証明 ・新理事長の医師免許証 |
地域・患者・スタッフとの関係に配慮する
せっかく事業を引き継ぐことができても、十分な説明なく経営者が変わるとかかりつけ医として頼ってくれた患者様や、ともに地域医療へ貢献し続けてくれたスタッフが不信感を抱き、病院離れにつながる恐れがあります。
M&Aを行うことが決まったら、できるだけ早い段階でM&Aを行う理由、どのような相手に引き継ぐのか、今後の運営はどのように変化するのかなどを丁寧に説明し、信頼を損なわないようにしましょう。
まとめ
近年では、多くの業種で後継者不在が深刻な問題となっており、中でも医療機関の後継者不在率は全業種のうち第三位と、多くの割合を占めています。
そこで注目を集めているのが、M&Aを活用した第三者への事業承継です。
しかし、M&Aのプロセスは専門的知識を必要とするだけでなく、特に診療所やクリニックの場合は関係各所への届出も複雑になっています。
私たちM&Aパートナーズはこれまで数多くのM&Aを成功に導いてきた実績があり、医療業界に精通した専任アドバイザーも在籍しております。
後継者不在による廃業を回避し、今後も地域の方々の健康をサポートしたいとお悩みの方は、まずはお気軽にM&Aベストパートナーズへご相談ください。
解決すべき課題を明確にし、地域医療に貢献し続けるための方法をご提案させていただきます。