近年、クラウドサービスの普及とともにSaaS市場は急速に拡大しており、多くの企業がM&Aを通じた事業拡大や新規参入を検討しています。
しかし、自社の企業価値を見誤ってしまうと、本来得るはずだった対価が得られず、M&Aの目的を果たせない可能性があります。
そこで本記事では、SaaSプロダクト開発企業をM&Aによって売却する際の企業価値評価のポイントを解説します。
あわせてM&Aを成功させるためのポイントもご紹介するので、自社の企業価値を高め、適切な対価でM&A取引を実行したいとお考えの方はぜひ参考にしてください。
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目次
SaaSプロダクト開発企業に待ち受ける「壁」
DX化の加速やリモートワークの定着、業界特化型SaaSの対応などを背景に急成長するSaaSプロダクト開発業界では、成長の裏で中小SaaS企業の特有の悩みを抱えています。
開発自体は成功したものの、「スケールアップの資金不足」「優秀なエンジニアの流出」「後継者問題」といった新たな課題に直面し、成長スピードが鈍化するケースが増えてきており、市場を生き残るためにどうやってこの高い壁を乗り越えるかが、中小SaaS企業にとって大きな課題となっています。
SaaSプロダクト開発企業にM&Aが選ばれる背景
成長著しいSaaSプロダクト開発業界では、前述した越えるべき壁やその他の課題解決を目的としてM&Aが活発化しています。
なぜ課題解決のためにM&Aが選ばれるのか、その背景を解説します。
創業者利益の確保とリスクからの解放
個人保証の解除によるリスクからの解放、創業者利益を獲得して新規事業立ち上げやセカンドキャリアへの移行といった目的を果たすために、M&Aは有効な手段となります。
大手企業との提携によるプロダクトの成長
M&Aによって大手企業と提携することで、さまざまなメリットを譲受することができます。
自社だけでは難しかった開発の資金、人員、販売チャネルの確保といったメリットを得るためにM&Aを選択するケースも少なくありません。
経営リスクの分散と安定した事業承継の実現
近年では、多くの業種で後継者不足に悩む企業が増加しています。しかし、M&Aを成功させることで後継者となりうる人材を確保し、事業を存続できる可能性が高まります。
また、SaaSプロダクト開発を含むIT業界全体は日々進化しており、市場ニーズも大きく変動します。
そのため、急激な市場変化へ対応できず利益が減少するといった経営リスクを回避することを目的に、大手企業の傘下に加わるケースも増加しています。
M&Aに向けてSaaSプロダクト開発企業の企業価値評価のポイント
SaaSプロダクト開発事業をM&Aによって売却する場合、収益の安定性、知的財産の価値などさまざまな要素が絡み合っています。
SaaSプロダクト開発企業の企業価値評価のポイントを解説します。
ARRとMRRの安定性
SaaSプロダクト開発企業の企業価値評価は、ARR(年間経常収益)とMRR(月間経常収益)が企業価値のベースになります。
特に、SaaSプロダクト開発ではサブスクリプションモデルを前提としていることから、「解約率の低さ(安定性)」が安定性を高めるためには重要な要素です。
健全なユニットエコノミクス
ユニットエコノミクスとは、「1顧客(ユニット)あたりの経済性・採算性」のことで、顧客を1人獲得するためにかかった費用(コスト)に対して、その顧客から生涯にわたって得られる収益(リターン)がどれだけ大きいかを測ります。
ユニットエコノミクスはLTV (顧客生涯価値)をCAC (顧客獲得コスト)で割って算出するため、LTV ・CAC・チャーンレート(解約率)といったKPI(重要業績評価指標)の健全性とバランスのよさが高額売却につながります。
知的財産と開発チームの組織的価値のバリュエーション
SaaS開発企業の企業価値評価では企業の収益性のほか、ソースコードや特許といった知的財産、プロダクト開発に携わるエンジニアチームの組織的な価値も評価に含まれます。
SaaSプロダクト開発企業のM&Aを成功させるためのポイント
M&Aを成功させるためには多くのすべきことがありますが、なかでも以下のポイントはSaaSプロダクト企業のM&Aを成功させるうえで非常に重要です。
知的財産のリスト化と透明性のある情報提供
ご紹介したように、SaaSプロダクト開発企業の評価では知的財産も多く含まれますが、自社にどのような知的財産があり、どのような強みがあるのか全てを把握できているケースはあまりありません。
そのため、まずは資産をリスト化し、それぞれどのような強みがあるのかを整理しておきましょう。
また、帳簿に記載されていない簿外債務や訴訟リスクの有無など評価に関わるあらゆるリスクを再確認し、透明性の高い情報を提供して買い手となりうる企業から信頼を得られるように準備することも大切です。
NDA(秘密保持契約)締結による資産の保護
M&Aの交渉を進める際に相手企業へ提供する情報には、知的資産や顧客情報など、自社にとって重要なものが多く含まれています。
これらの情報がもし漏洩してしまった場合、M&Aが失敗に終わるだけでなく、多くのステークホルダーからの信頼も失い、最悪の場合は訴訟に発展するリスクもあります。
大切な情報を守り、起こりうる可能性のあるリスクを回避するためにも必ずNDA(秘密保持契約)を締結し、自社情報を徹底して守るようにしましょう。
PMI成功に向けた入念な話し合い
M&Aの契約締結が終わると、条件に沿って事業の統合(経営理念や業務プロセス、人事評価制度など)が行われます。
しかし、この統合がうまくいかなかったりスムーズに完了しなかったりした場合、現場に大きな混乱をもたらすリスクがあります。
また、統合内容に不安や不満を感じ、従業員が連鎖的に離職する可能性も考えられます。
そのため、まずはM&Aの検討段階で統合に関する希望を明確にしたうえで交渉へと進むようにしてください。
その他にも、従業員への十分な事前説明や統合後のアフターフォローも大切です。
まとめ
IT業界は常に成長し続けており、なかでもSaaSプロダクト開発業界はDX化の加速やリモートワークの定着、業界特化型SaaSの対応などを背景に急成長を遂げています。
しかし、急速な成長とともに市場競争が激化し、行く手を遮る高い壁をどのように越えようかと頭を抱える企業が少なくありません。
こうした課題を解決し、市場競争で生き残る方法として近年増加しているものがM&Aです。
私たちM&Aベストパートナーズは、これまでさまざまな業種におけるM&Aをお手伝いし、成功に導いてきだ豊富な実績がございます。
市場競争に勝ち残り、SaaSプロダクト開発事業をさらに成長させるためにM&Aを検討されている方はぜひお気軽にM&Aベストパートナーズへご相談ください。
業界に精通した専任アドバイザーがM&Aの目的や解決すべき課題を丁寧にヒアリングさせていただき、成長し続けるためのお手伝いをさせていただきます。
