クラウドインフラサービス事業のM&A戦略|売却・買収で成長を加速させる方法を解説

著者
M&Aベストパートナーズ MABPマガジン編集部

サーバーやストレージ、ネットワークといったITインフラを「必要なときに必要な分だけ」利用できるサービスを提供するクラウドインフラサービス市場は、多くの企業のクライド以降に伴い成長し続けています。

しかし、ニーズが高まっているからこその課題も抱えており、多くのクラウドインフラサービス事業者には生き残りをかけた経営戦略が求められています。

本記事では、生き残り戦略のなかでも特に増加傾向にあるM&Aに焦点をあてて、M&AのプロフェッショナルであるM&Aベストパートナーズが詳しく解説します。

あわせて、M&Aの主な流れや成功させるためのポイントもご紹介するので、生き残りに向けてM&Aを検討されている方はぜひ参考にしてください。

クラウドインフラサービス市場の現状とM&Aが増加している背景

はじめに、クラウドインフラサービス市場の現状とともに、M&Aが増加している背景を解説します。

成長を続けるIaaS/PaaS市場での生き残り

クラウドインフラ市場、特にIaaS(Infrastructure as a Service)とPaaS(Platform as a Service)を合算した市場は、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進と生成AIなどの新技術の普及を背景に、極めて高い成長を続けています。

矢野経済研究所の調査によると、2024年のlaas/PaaSの市場売上高は前年比118.1%増の2兆2,800億円でした。

そして、今後も売上高は伸びることが予測されており、2028年には4兆4,900億円にまで成長するといわれています。

このように成長が著しい市場で生き残るためには事業拡大や新技術の導入などさまざまな施策が必要となりますが、自社だけでは難しいという企業も多いです。

そのような背景から、M&Aを活用して他企業のノウハウを取り入れたり企業基盤を強化するといった企業が増加しています。

参考:株式会社矢野経済研究所クラウド基盤(IaaS/PaaS)サービス市場に関する調査を実施(2025年)

競争激化と技術革新への対応

クラウドインフラ市場は、高成長を続ける一方で、巨大な資本を持つグローバルプレイヤーがシェアを握っており、競争環境は非常に激しくなっています。

このような市場において生き残るためには企業として成長を続ける必要があることから、大手企業の傘下に入って資本や技術の提供を受けたり、自社にない技術を持つ企業を買収して技術力を高めたりといった目的のM&Aも増加しています。

慢性的な人材不足の解消

クラウドインフラサービス業界に限らず、日本では深刻な労働人口不足が社会問題となっています。

特にクラウドインフラサービスなどIT業界全般ではエンジニアが慢性的に不足しており、多くの企業が人材雇用に力を注いでいます。

しかし、新たな人材を雇用した場合、人材育成には多くの時間とコストがかかり、すぐに慢性的な人手不足を解消することはできません。

そこで、M&Aを実施することで対象企業の知識や経験が豊富な人材を取り込み、人手不足を解消する企業が増えています。

クラウドインフラサービス事業に求められるM&A戦略

M&Aは、クラウドインフラサービス業界で生き残るために有効な手段ですが、成功させるためには以下のようなM&A戦略を用意してから行うことが必要です。

サービスラインナップの拡充と技術の垂直統合

IaaSからPaaS/SaaSへの事業展開、セキュリティ・運用サービス(MSP)の獲得など、サービスラインナップをM&Aによって拡充し、さらに対象企業と技術を垂直統合をすることにより、市場での競争優位性を高め、顧客満足度の向上も実現可能です。

顧客基盤の拡大と特定の業界・地域への市場参入

M&Aをすることにより、対象企業が保有する顧客や市場の獲得が可能となります。

また、獲得した顧客・市場に向けてクロスセル(既存サービスの販売)ができるだけでなく、シナジー効果によって付加価値を高めたサービスの販売(アップセル)機会の創出が期待できます。

ワンストップサービスの実現と顧客単価の向上

M&Aによって不足する部分を補い、構築からシステム運用保守(MSP)までをワンストップで提供できるようになると、満足度向上による顧客の維持、そして顧客単価のアップを目指すことができます。

【売手側】クラウドインフラサービス事業のM&Aによって得られるシナジー効果

クラウドインフラサービス事業において、M&Aは抱える課題を解決できるだけでなくシナジー創出によりさらなる成長を目指すことも可能です。

はじめに、売手側が得られる代表的なシナジー効果をご紹介します。

資本・リソースの活用

買い手となる企業の大規模な資金力や販売チャネル、ブランド力などを活用することにより、単独では成し遂げることが難しかった大規模案件や海外進出を目指すことが可能です。

顧客基盤の拡大とクロスセル

買い手となる企業が保有する既存顧客基盤へ自社の他サービス(例:SaaS、セキュリティサービス)を販売することにより、収益力を高めることができます。

後継者・事業承継問題の解決

近年では、後継者不在が原因で廃業となるケースが増加傾向にあります。

しかし、M&Aを行えば買い手となる企業から優秀な後継者候補を紹介してもらえる可能性が高く、事業だけでなくこれまでともに頑張ってくれた従業員の雇用も守ることが可能です。

創業者利益の獲得

M&Aの決定権者が創業者だった場合、頑張って成功させた事業を現金化し、創業者利益を得ることができます。

近年では、創業者利益を活用して新たな事業を始めたり、早期リタイアするケースも増加しています。

【買手側】クラウドインフラサービス事業のM&Aによって得られるシナジー効果

M&Aによって買い手となる企業が期待できるシナジー効果として、以下のようなものが挙げられます。

ラインナップの拡充と垂直統合

自社にないサービスを展開する企業の参加となることで、不足していた特定クラウド技術(例:AWS特化、DevOps)や運用保守(MSP)能力を迅速に獲得でき、ワンストップサービスが提供できるようになります。

技術投資の加速と開発環境の改善

買収企業がもつ開発リソースや技術(AI、R&D)を取り入れることにより、自社サービスの品質向上や開発スピードを加速させ、企業のさらなる成長を目指すことができます。

エンジニア・専門チームの即時獲得

M&Aによって買手企業の人的リソースを活用できるようになれば、慢性的なクラウドエンジニア不足を解消し、プロジェクトの遂行能力を即座に高めることができます。

インフラ・リソースの効率化

両社が保有するデータセンターの活用、ツールやバックオフィス業務などを統合・共通化することで、大規模なコスト削減を実現することが可能です。

ただし、このシナジー効果を最大化させるためにはPMIの綿密な計画・実行が必要です。

クラウドインフラサービス事業のM&Aの流れと成功のポイント

M&Aを行うためには、ポイントを把握したうえでさまざまなプロセスを一つずつ慎重に行うことが重要です。

M&Aの一般的な流れと成功のポイントをご紹介します。

M&Aの主な流れ

M&Aの一般的な流れは以下のとおりです。

M&A 流れ

NDA(秘密保持契約)の締結

クラウドインフラサービス事業には、自社情報だけでなく技術やノウハウなど重要な機密情報が多くあります。

そのため、交渉を進めるなかで機密情報が漏洩することを防ぐために徹底した情報漏洩対策が求められ、万が一漏洩した場合は交渉が決裂するだけでなく、損害賠償といったリスクを伴う可能性もあります。

M&Aを行う際は必ずNDA(秘密保持契約)を締結し、重要な情報資産が漏洩しないよう徹底しましょう。

徹底したデューデリジェンスの実施

M&Aの最終契約締結後に帳簿には記載さsれていない簿外債務が発覚するケースは少なくありません。

簿外債務を引き継いでしまうと負の財産となってしまうため、デューデリジェンスを徹底してリスクをできる限り回避することが重要です。

入念なPMI計画の策定と実行

M&Aは、最終契約書の締結によって終わるのではなく、業務プロセスや経営理念などの統合プロセスが完結して初めて完了となります。

もしシステム関連などの統合がうまくいかなかった場合、統合後の業務トラブルによる現場の混乱や離職による人材流出といったリスクが高くなります。

M&Aの検討を始めた段階で統合後のイメージをもち、早い段階で計画を準備・スタートするようにしましょう。

クラウドインフラサービス事業に精通したM&A仲介会社との契約

M&Aを成功させるためには、M&Aに関する専門的知識が蓄積されているM&A仲介会社によるサポートが不可欠といえます。

また、クラウドインフラサービス事業には、業界ならではの事情があります。そのため、業界に関する知見のないM&A仲介会社に依頼した場合、意図が伝わらずM&Aが失敗に終わるリスクがあります。

M&A仲介会社を探す際は、IT業界のM&A実績があるか、クラウドインフラサービスに関する知識のあるアドバイザーが在籍しているかを必ず確認するようにしましょう。

まとめ

成長が加速するクラウドインフラサービス業界では市場競争が激化しており、多くの企業が生き残りをかけた戦略をどうするかといった悩みを抱えています。

そこで、市場競争で生き残り、企業のさらなる発展を目指すために有効な方法がM&Aです。

私たちM&Aベストパートナーズは、これまでさまざまな課題を解決するためのM&Aをサポートしてきた豊富な実績がございます。

また、クラウドインフラサービスに精通したアドバイザーも在籍しており、業界ならではのお悩みを解決するためのM&Aをご提案させていただきます。

M&Aを成功させ、クラウドインフラサービス業界でさらなる飛躍を目指したいとお考えの方は、ぜひお気軽にM&Aベストパートナーズまでご相談ください。

著者

MABPマガジン編集部

M&Aベストパートナーズ

石橋 秀紀

ADVISOR

各業界に精通したアドバイザーが
多数在籍しております。

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