ホールディングスの定義|種類やメリット・デメリットを詳しく解説

著者
M&Aベストパートナーズ MABPマガジン編集部

近年では、ホールディングス化をする企業が増え、「自社もホールディングス化したい」と検討されている経営者の方は少なくありません。

しかし、ホールディングス化をするためには種類やメリット・デメリットを理解しておかなければ不利益につながる可能性があり注意が必要です。

そこで本記事では、ホールディングスの定義とその種類、メリット・デメリットについて解説するので、ホールディングス化を検討されるときの参考にしてください。

関連記事:持株会社とは?設立するメリットやホールディングスとの違いを解説

ホールディングスの定義

ホールディングスの定義、そしてその主な種類を解説します。

ホールディングスとは

「ホールディングス」とは、親企業が複数の事業子会社を統括する体制へ移行することを指します。

グループ会社化と混同されやすいですが、本質的に違いがあります。

ホールディングス・企業グループの支配、統括を行う

・統括する企業の株式を保有し、経営権を持つ

グループ会社・子会社は親会社と資本関係でつながる

・経営の独自性や事業内容は企業ごとに異なる

ホールディングスの主な種類

ホールディングスには、主に3つの種類があり、それぞれの概要は以下のとおりです。

  • 純粋持株会社:
    統治や支配を目的として、対象企業の株式保有のみを行う。
    収益は、子会社からの配当金のみとなる。
  • 事業持株会社:
    株式の保有だけでなく、自ら事業を営むため配当金以外の収入源もある。
  • 金融持株会社:
    金融業界の企業が設立する持株会社。
    純粋持株会社に近い特徴を持つ。

ホールディングスとするための目的など経営方針に応じて最適な種類が選ばれます。

ホールディングス化をするメリット・デメリット

ホールディングス化を目指す場合、そのメリット・デメリットを把握しておかなければ目的とする効果を最大限に引き出すことはできません。

ホールディングス化することで得られるメリット、そして生じるデメリットを解説します。

ホールディングス化をするメリット

ホールディングス化することで得られる主なメリットは以下のとおりです。

  • 経営の効率化と迅速な意思決定
  • リスク分散による事業の多角化
  • M&Aや事業承継対策の強化
  • 人事制度や経営資源の最適化

ホールディングス化は主に経営効率の向上やリスク分散、経営資源の最適化などを目的として行われますが、M&Aの事前準備や事業承継対策としても活用されます。

例えば、ホールディングス化をすることで事業ごとに子会社へ分割することで企業価値を可視化することができ、企業価値の算出がしやすくなります。
その結果、事業の一部を担う子会社を売却しやすくなるといったメリットがあります。

また、複数の子会社を持つことで自社株の移転や管理がしやすくなり、相続対策につなげることも可能です。

ホールディングス化のデメリット

さまざまなメリットを持つホールディングスですが、デメリットも把握しておかなければメリットの効果を最大限伸ばすことはできません。

  • 管理コストの負担増と組織の複雑化
  • トップダウン経営が困難になる
  • 子会社間の連携や意思の疎通が複雑化する

複数の子会社を管理するホールディングスでは、管理コストが増えるだけでなく、組織が複雑化することで連携や意思疎通が難しくなります。

また、トップダウンによる経営方針の決定が難しくなることも、ホールディングス化においては大きなデメリットとなります。

ホールディングス化する手順

デメリットを理解したうえでメリットの方が大きいと感じ、ホールディングス化を目指す場合の手順を解説します。

事前準備と現状分析

はじめに子会社を含め全体的な財務条項や組織体制、事業内容などを可視化し、詳細な分析を行います。

この事前準備により、事業ごとの役割分担や子会社を統制する仕組みづくりがしやすくなります。

あわせて、ホールディングス化をする目的についても改めて確認しましょう。

事前準備と目的の再確認により、ステークホルダーへの経営戦略やビジョンの説明をする際の裏付けとなる資料になります。

スキームの検討と選定

入念な事前準備ができたら、ホールディングス化するためのスキームを検討、選定します。

ホールディングス化で主に活用されるスキームは以下のとおりです。

スキーム概要・特徴用いられる場面
株式移転方式・複数の既存会社を親会社の傘下に置く
・親会社を新設し、各会社の株式を移転させて傘下に収める
・既存の事業会社を傘下へ再編するとき
・複数の事業会社をグループ化し、新設会社を100%親会社とするとき
株式交換方式・既存の会社を親会社にして他社を取り込む
・一方が他方の株式をすべて取得して完全子会社化
・M&Aで完全子会社化したいとき

・既に持株会社体制がある 、または新設不要な場合

会社分割方式・自社の中の事業部門を切り出し、ホールディングス体制へ移行
・親会社(本体)をそのまま持株会社にできる
・事業ごとに分社しやすくしたい場合

・株主構成・商号を維持したい場合

関連記事:分割型分割と分社型分割の違いと覚え方をわかりやすく解説

ステークホルダーへの説明と調整

続いて、従業員はもちろん、株主や金融機関などのステークホルダーに向けて、ホールディングス化する目的とその背景、目指すビジョンなどを具体的に説明します。

ホールディングス化することは、組織の構造が大きく変化します。

そのため、事前準備で用意した資料も活用しつつ透明性のある説明を行い、説明責任を果たして信頼を得ることが重要です。

なお、代表的なスキームである株式移転・株式交換・会社分割方式では株主総会による特別決議が必要です。

手続の具体的な実行

企業としての説明責任を果たしたら、ホールディングス化に向けて具体的な実行に移ります。

手続きの主な内容は以下のとおりです。

  • (必要に応じて)定款の変更
  • 登記変更手続き(子会社の移行も含む)
  • 税務署など関係機関への届出
  • 官報公告や株主への通知

ホールディングス体制の運用開始

必要な手続きが完了したら、本格的にホールディングスの運用が始まります。

事前準備で設定した役割ごとに子会社がスムーズに業務を始められているか注視しつつ、子会社の管理・監督会社としての責任を果たしましょう。

【Q&A】ホールディングスについてよくある質問

私たちM&Aベストパートナーズは、これまで多くの企業様からさまざまなお問い合わせをいただいてきました。

そのなかでもホールディングスに間してよくいただくご質問をご紹介します。

中小企業でもホールディングス化はできますか?

もちろん可能です。

成長戦略の実現や後継者問題の解決など、中小企業でもホールディングス化することができます。

税務や会計上の注意点はありますか?

税法上の適格要件を満たしていない状態で資産譲渡益が発生する場合は法人税が発生します。
また、会社分割や資産移転などにより有償取引扱いとなった場合は消費税の課税対象となります。

また、のれん代の償却も必要になるケースもあります。

適格要件についてはスキームごとに異なるため、ホールディングス化の検討段階で早めに確認をしておくとよいでしょう。

関連記事:M&Aの「のれん代」とは?基礎知識や会計処理・今後の動向を詳しく解説

株主や従業員へどのような影響がありますか?

スキームごとに、以下のような影響が考えられます。

スキーム株主への影響従業員への影響
株式移転方式元の会社の株式を新設する持株会社の株式と交換するため、株式の発行会社が変わる管理方針や人事制度の見直しが行われる可能性がある
株式分割方式
(特に買収される場合)
親会社の株式を交付され、旧会社の株主ではなくなる経営権移転に伴い、人事制度や企業文化が変わる
会社分割方式新設分割の場合、新会社の株式が発行される。大きな影響は少ないが、雇用条件が見直される可能性がある

上記のような影響が出る可能性があるため、株主には事前の説明を十分に行いましょう。

また、従業員へ影響が出る場合、状況によっては人材流出のリスクを伴います。特に企業文化や人事制度に大きな変化がある場合は、徹底したPMIの実施が重要です。

関連記事:【PMIの重要性】M&Aを成功させるためのポイントを解説

まとめ

企業のホールディングス化は、経営効率向上や迅速な意思決定、事業の多角化などさまざまなメリットがあります。

一方で、組織が複雑化し、連携が取りにくくなるといったデメリットもあるため、ホールディングス化を検討する際はメリット・デメリットを比較したうえでの十分な検討が必要です。

また、複雑な手続きや税務上の問題もあるため、専門的な知識やノウハウも求められます。

私たちM&Aベストパートナーズは、これまで多くの企業様の課題解決をお手伝いしてきた豊富な実績がございます。

ホールディングス化を目指し、経営効率の向上やM&Aの事前準備をしたいとお考えの方は、ぜひM&Aベストパートナーズへご相談ください。

著者

MABPマガジン編集部

M&Aベストパートナーズ

石橋 秀紀

ADVISOR

各業界に精通したアドバイザーが
多数在籍しております。

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