少子高齢化が進む日本において、昨今ではさまざまな問題が顕在化しています。
なかでもここ数年の間にニュースなどでも取り上げられるようになったのが「2025年問題」です。
本記事では、2025年問題によってどういった影響が考えられるのか、企業が備えるべきことや対策を詳しく解説します。
目次
2025年問題とは?
2025年問題とは、少子高齢化が深刻となり医療や社会福祉、ビジネス業界などあらゆる分野に対して影響が及び、社会構造が大きく変わるのではないかと予想されている問題です。
真っ先に連想するのが年金や介護といった問題ですが、それ以外の分野においても間接的に影響が懸念されている問題は数多く存在します。
しかし、日本ではこれまでも少子高齢化が叫び続けられてきたにもかかわらず、なぜ2025年という具体的な数字が出てくるのか疑問に感じた方も多いでしょう。
実は、2025年は団塊の世代が後期高齢者に差し掛かるタイミングでもあります。
団塊の世代とは戦後のベビーブームに誕生した世代を指し、その数は800万人にものぼります。
総人口に占める割合は各世代の中でもっとも多く、この世代の人々が一斉に後期高齢者となることで、社会的にも大きな混乱や影響が生じると懸念されているのです。
2025年問題によりもたらされる影響
2025年問題によってどういった影響が出ると予想されているのか、代表的な5つのポイントに分けて解説しましょう。
労働力不足
ビジネス業界において懸念されているのが労働力不足の問題です。
定年退職後も再雇用やパートなどで働き続ける高齢者は多いですが、後期高齢者に差し掛かると体力的な問題もあり退職を余儀なくされることも多いでしょう。
また、通院や入院、介護などが必要になると家族に頼らざるを得ないことも多く、現役世代の中にも親の介護のために退職を余儀なくされるケースが増えてくると考えられます。
その結果、今以上に人手不足が深刻化する懸念があります。
医療・介護体制の維持困難
医療や福祉の現場では人手不足が深刻化しており、事業の拡大や新たな利用者・患者の受け入れが難しいところも少なくありません。
後期高齢者がさらに増加すると、医療や介護サービスを受けられないケースも出てくるでしょう。
社会保障費の増大
社会構造に与える影響として懸念されているのが社会保障費の増大です。
日本では国民皆保険制度によって安価な費用で医療サービスを受けられますが、800万人もの団塊の世代が後期高齢者となると国民健康保険料はさらに高額となり、保険料の支払いが困難になるケースも出てきます。
また、賦課方式で運用されている年金制度においても、現役世代の負担はさらに高くなり、将来は安定的な運用が難しくなる可能性もあるでしょう。
経営者の高齢化
中小企業を中心に経営者の高齢化が進んでおり、後継者不足は深刻な課題となっています。
会社を引き継ぐ人がいなければ廃業を余儀なくされ、それまで培ってきた高度な技術やノウハウが継承できなくなるほか、雇用環境や地域経済もさらに悪化していくでしょう。
地域社会の衰退
日本では古くから自治会の活動によって地域住民の親睦をはかったり、防災・防犯などの役割も果たしてきました。
現在では自治会に入る世帯そのものが減少傾向にあり、高齢者が中心となっているところも少なくありません。
高齢化が深刻となれば自治会を含めた活動が困難となり、地域社会の衰退を招く可能性もあるでしょう。
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2025年問題で特に影響を受けそうな業界
2025年問題をビジネスの観点から考えたとき、特に大きな影響が予想されるのはどの業界なのでしょうか。
医療・介護業界
先述した通り、医療・介護業界では人手不足が深刻化しており、医師や看護師、介護福祉士などの負担が増大しています。
2025年問題によってさらに現場が逼迫すると、過重労働によって肉体的・精神的な負担が限界に達し退職を余儀なくされるスタッフも出てくるでしょう。
建設業
建設業界で働く労働者は年々高齢化しており、数ある業種の中でも特に若手人材が減少傾向にあります。
建設業では高度な技術とノウハウが求められ、従来はベテランの職人から若手へと技術が継承されてきましたが、2025年問題によって技術力が失われる可能性が指摘されています。
製造業
日本のものづくり産業を支えている製造業においても、2025年問題によって技術力の低下が懸念されています。
特に大手メーカーなどに部品を納入しているのは中小の製造メーカーであり、その多くが後継者不足や人手不足に頭を悩ませています。
現在会社を支えている経営者の引退と同時に廃業を選択する企業も多いと予想され、その結果大手メーカーは部品を調達できなくなるなど、影響は製造業界全体に拡大する可能性があるのです。
小売業
コロナ禍の影響もあり、小売業界は従来のような実店舗での買い物だけでなく、ECの需要が急激に拡大しました。
しかし、2025年以降は後期高齢者が増え、体力的な問題などによって実店舗へ買い物に行けないユーザーも増加するでしょう。
その結果ECの需要はますます高まり、これまで実店舗を中心に展開してきた小売事業者は大きな影響を受ける可能性があります。
中小企業全般
特定の業種にかかわらず、中小企業全般において2025年問題は大きな影響を及ぼすと予想されています。
少子高齢化に伴う人手不足や次世代の経営を担う後継者不足はもちろんですが、増大する社会保障費によって企業の負担も増え、安定的な経営が難しくなり廃業や倒産に至るケースも出てくるでしょう。
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2025年問題に備えるために
企業にとってさまざまな影響が懸念されている2025年問題ですが、具体的にどういった対策が求められるのでしょうか。
多様な働き方の推進
2025年問題では、親の介護と仕事を両立するビジネスケアラーが爆発的に増加すると考えられており、中には退職を余儀なくされる労働者も出てくるでしょう。
企業が十分な労働力を確保するためには、従来のような画一的な雇用形態ではなく、時短勤務やフレックスタイム制度、テレワークなども含めた多様な働き方の推進が求められます。
早期の事業承継の検討
中小企業を中心に後継者不足に悩む企業の場合には、早い段階から事業継承の準備を進めていきましょう。
自社で働く従業員の中から後継者候補を選んだり、親族に会社を引き継ぐことを相談したりするのもひとつの手ですが、それ以外にもM&Aによって外部の企業と手を組む方法もあります。
ただし、M&Aの場合には会社の業績悪化などにより経営環境が悪くなりすぎると、買い手がつかない可能性もあることから、できるだけ早い段階から検討しておくことが重要です。
人材育成とスキルアップ
人手不足が進むと従業員のモチベーションが低下し、業務効率や生産性が低下するといった悪循環に陥ることもあります。
そのため、限られた人員でも安定した業務を遂行するために、人材育成やスキルアップに取り組むことも重要といえるでしょう。
DXの推進
人的リソースが限られる中では業務効率化にも限界があります。
そこで多くの企業ではDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでおり、デジタル技術を活用することで生産性の向上だけではなくビジネスモデルの変革にもつなげられる可能性があります。
労働環境の改善
2025年問題では、医療・介護の現場を中心にさらなる過重労働を強いられる可能性があり、労働環境を改善できないままだと離職者が増える懸念もあります。
そのため、上記でご紹介した多様な働き方の推進なども含め、労働環境の改善に取り組む必要があるでしょう。
外部リソースの活用
デジタル技術だけではあらゆる問題が解決できるとは限らず、人の手に頼らざるを得ない仕事も多いでしょう。
自社のスタッフだけで対応しきれない場合には、業務委託などを含めた外部リソースの活用もひとつの手といえます。
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2025年の崖とは?
2025年はさまざまな問題が顕在化する重要な年と位置づけられており、2025年問題だけではなく「2025の崖」という言葉もあります。
これは経済産業省が2018年に公開した資料「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」の中で用いられた言葉で、DXが実現できない場合、2025年以降毎年12兆円もの経済損失が生じる可能性があるというものです。
この背景には多くの企業のシステムがブラックボックス化しており、業務に必要なデータ活用が進まなかったりメンテナンスに莫大なコストがかかるという要因があるためです。
そのため、DXは単に不足した人手を補うという目的だけでなく、経営環境を根本的に改善するためにも不可欠な取り組みといえるのです。
2040年問題も起こる?
直近の大きな課題として認識されている2025年問題ですが、その先の将来に懸念されているのが「2040年問題」です。
2040年は団塊の世代の子ども(団塊のジュニア世代)が65歳に差し掛かるタイミングであり、日本における高齢者の割合が約35%に達すると予測されています。
また、人生100年時代ともよばれる昨今、団塊の世代の医療費や介護費もさらに増大すると考えられ、社会保障制度そのものが維持できなくなる可能性も指摘されているのです。
今後少子化が劇的に改善する見込みは極めて低く、2025年や2040年といったタイミングで深刻な労働力不足に陥る可能性が高いことから、企業においては早い段階で具体的な対策が求められています。
まとめ
2025年問題は日本のあらゆるところに影響が及ぶと考えられており、将来的には従来の社会保障制度やビジネス環境が根幹から変わっていく可能性もあります。
企業が今後も生き残っていくためには、多様な働き方の推進やDXの推進などが求められており、特に後継者不足に悩む中小企業では早期の事業承継も検討しておく必要があるでしょう。