半導体メーカーがM&Aで失敗しないためには?メリットや成功事例をご紹介

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M&Aベストパートナーズ MABPマガジン編集部

成長産業として注目されている半導体業界では市場の競争も激化しており、企業が生き残っていくためにM&Aを行うケースも少なくありません。

しかし、M&Aは入念な準備を行っておかないと契約が成立した後にトラブルに発展したり、経営がさらに悪化していくリスクもあります。

このような失敗を防ぐために、半導体メーカーにとってのM&Aのメリットや主な手法、参考にしていただきたい成功事例などを詳しくご紹介します。

半導体業界の現状とM&Aが活発に行われている理由

半導体業界では国内・国外を問わずさまざまなメーカーのM&Aが活発に行われています。

考えられる理由を2つ、解説します。

市場の競争激化と技術革新

数ある業界の中でも、半導体業界は特に成長が期待される産業のひとつです。

昨今ではAIや5G、IoTといった先端テクノロジーが次々と実用化されたことで半導体の需要は爆発的に増加しました。

実際にWSTS(世界半導体市場統計)※1が発表した調査結果では、2025年の半導体の市場規模は前年比11.2%増の6,971億ドルにまで達すると予想され、過去最高を更新する見込みです。

しかし、同時にメーカー同士の競争も激しさを増しており、ニーズに対応できる高品質な半導体を大量に製造するためには経営規模の拡大や技術革新も求められます。

資本力に乏しい小規模なメーカーは生き残っていくことが難しくなり、経営環境の改善や競争力向上のためにM&Aを選択する企業も少なくありません。

※1:WSTS(世界半導体市場統計)「2024年秋季半導体市場予測について」

政府の政策支援

日本は、かつて世界の半導体市場において約半数のシェアを誇っていましたが、現在では1割以下まで落ち込み、海外メーカーが高い競争力をもつようになりました。

そこで、政府は成長産業である半導体業界を後押しし国内の経済成長につなげるためにさまざまな政策支援を行っています。

近年では、台湾の半導体メーカー大手であるTSMCや国内半導体メーカー大手のキオクシアなどが日本国内に工場を次々と建設し、地域の雇用創出にも大きく貢献しています。

半導体メーカーがM&Aを行う際の主な手法

M&Aにはさまざまな手法があり、求める結果に応じて選択することが大切です。

M&Aには具体的にどのような手法があるのか、それぞれの特徴と合わせて解説します。

株式譲渡

株式譲渡とは、売り手企業の株式を買い手企業に売却する方法です。

株式をそのまま譲渡するため経営権が買い手企業に移行するほか、半導体メーカーがもつ特許や権利なども一括で引き継ぎます。

株式譲渡はM&Aの手法の中でも比較的シンプルで分かりやすい方法といえますが、買い手企業側が本来必要としていない設備や技術も含めて引き継ぐ必要があります。

事業譲渡

事業譲渡は、会社そのものではなく一部の事業のみを切り離して引き継ぐ方法です。

株式譲渡では引き継ぐ内容に無駄が多く経営リスクになると判断した場合や、個別の事業のみを承継したい場合には、事業譲渡が合理的な方法といえるでしょう。

合理的な方法である一方で、株式譲渡と比較すると権利の引き継ぎや手続きが複雑なため、時間がかかるといったデメリットもあります。

合併

合併は、吸収合併と新設合併の2パターンがあり、複数の会社を1つに統合する方法です。

吸収合併は既存の会社がもう一方の会社を吸収する方法で、株式譲渡と同様に特許や権利、設備などを全て引き継ぎます。

新設合併では、合併後の会社を新たに設立するため吸収合併よりも手続きが煩雑で、許認可なども新たに取得する手間がかかるため、吸収合併を選択するケースが多いです。

資本業務提携

資本業務提携とは、業務提携先の企業に対して資本金を注入し、資本金を提供した企業が議決権を得る方法です。

企業規模によっても資本業務提携の形はさまざまで、お互いに半分ずつを出資し株式を持ち合ったり、新会社を設立したりするといった方法もあります。

上場企業と非上場企業が資本業務提携をする場合、上場企業が非上場企業に資本を注入し、グループ会社として資本業務提携を結ぶことも少なくありません。

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半導体メーカーがM&Aを行うメリット

M&Aは、買い手と売り手それぞれの企業にとってメリットがあって初めて成立します。

両社の立場から見たメリットを解説します。

売り手側のメリット

成長が期待される半導体業界であっても、メーカーの中には経営状況が悪化していたり、人手不足や資金不足によって事業の継続が困難になっているケースもあります。

しかし、このような場合にM&Aを実施し事業を引き継ぐことができれば、取引先との関係維持や従業員の雇用確保が実現できます。

また、M&Aによって大手の傘下に入ることで、自社の市場拡大や競争力の強化を目指せることも大きなメリットです。

買い手側のメリット

半導体メーカーの中には、優れた技術があるにも関わらず苦しい経営を強いられている企業は少なくありません。

一方で、経営基盤は安定しているものの技術力やノウハウなどが少なく、将来に不安を抱えている企業もあります。

このような企業がM&Aによって優れた技術をもつ半導体メーカーを買収することができれば、自社にはない技術やノウハウだけでなく、優秀な人材も獲得でき、競争力を高められる可能性があるでしょう。

また、自社が蓄積してきた技術と他社の知見を融合することでシナジー効果が生まれ、新たなビジネスチャンスを発見できるかもしれません。

関連記事:M&Aのメリット・デメリットとは?買い手・売り手側からわかりやすく解説

半導体メーカーのM&Aの成功事例

半導体メーカーの中でM&Aに成功した事例をご紹介します。

京西テクノス

京西テクノス株式会社は、主に医療機器や情報通信機器などのメンテナンス事業を手掛ける企業であり、近年ではIoTによるリモートメンテナンスのサービスも提供し始めました。

先端技術を活用したメンテナンス事業では、半導体をはじめとしたハードウェアの高い知見が求められます。

そこで、M&A仲介会社の紹介で福岡の半導体メーカーである株式会社TCKとのM&Aを模索しはじめました。

TCKも医療業界向けの精密装置の開発や理化学機器の設計・製造を得意としていたことから、両社は親和性が高く交渉開始からわずか3ヶ月というスピードで株式譲渡によるM&Aが正式に成立しました。

従来、京西テクノスではIoT機器の調達や開発など外部の企業に委託していた業務も多かったといいますが、TCKがもつ優れた技術を活かしながら内製化を目指していくとしています。

半導体業界におけるM&Aの今後

AIやIoTといった先進テクノロジーの進化、自動運転技術の実用化などが見込まれているなど、半導体の需要はこれまで以上に高まっていくと予想されます。

このような動きを考慮した場合、これまで半導体とは無縁と思われてきた企業が半導体メーカーをM&Aによって買収するケースも増えてくるでしょう。

成功事例でご紹介した京西テクノスのように、実際に異業種の企業による半導体メーカーの買収は増加傾向にあります。

しかし、企業にとってM&Aは経営課題を解決するための手段に過ぎず、どのような課題を解決したいのかを明確にしておくことが何よりも重要です。

解決すべき経営課題が明確になれば、対象とする企業の選定や方法、交渉の仕方なども見えてくるでしょう。

まとめ

AIやIoTといった先端テクノロジーが拡大しつつある近年、半導体の需要はさらに高まっています。

市場の競争が激化するなかで自社が生き残っていくためには、M&Aは有効な選択肢となるでしょう。

「大切に育ててきた自身の会社を存続させて従業員の雇用を守りたい」「手間とコストを抑えて新規市場への参入を果たしたい」と検討している経営者の方は、まずはお気軽にM&Aベストパートナーズへご相談ください。

M&Aに関する知識と経験が豊富な専任スタッフが、目的にあった最適な方法をご提案いたします。

著者

MABPマガジン編集部

M&Aベストパートナーズ

石橋 秀紀

ADVISOR

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