M&Aストーリー
M&Aを実施する目的や背景は多岐にわたって存在するため、
ひとつとして同じ案件や事例は存在しません。
林業は私たちが生活する上で欠かせない役割を担っていますが、時流の煽りを受け、さまざまな課題に直面する業界でもあります。
なかでも人手不足や高齢化といった、人材に関する課題は特に深刻な事態を迎えているといえるでしょう。
本記事では、林業が抱える課題について説明し、それらの解決に向けた取り組みを紹介します。
林業のこれからを見据えた内容になっているので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
まずは林業がどのような課題を抱えているのかについて見ていきましょう。
冒頭でも述べたとおり、最も深刻なのは林業に従事する人の減少と平均年齢の高齢化です。
林野庁が発表しているデータによると、昭和55年には14.6万人が林業に従事していたものの、令和2年には1/3未満の4.4万人まで減っているのがわかります。
若年者で林業に就く人が減っており、引退したくてもできない人が多いことから、このような現象が起きています。
(引用:林野庁「林業労働力の動向」)
日本の林業の特徴として急な斜面での作業が多いことから、他国と比較して生産性が低いことが指摘されています。
昔と比べて道具の性能は向上していますが、先ほど述べた林業従事者の減少や高齢化も生産性を低くしている要因といえるでしょう。
こうした理由から収益性が低くなっており、いわゆる“稼げる仕事”ではないことによって、若年者から敬遠されてしまっていると考えられます。
木材の価格がピーク時と比べて大幅に下がっており、経営の採算が取れない状況に陥っています。
農林水産省の調査によると、昭和50年代にはヒノキの中丸太は1㎡あたり76,400円を記録した時期もありますが、平成30年ごろにはその1/4未満にまで落ち込みました。
再造林にはコストがかかり、伐採後の管理費用も重くのしかかってくることから、経営が厳しい状況といえるでしょう。
(引用:林野庁「第1部 第3章 第1節 木材需給の動向(3)」)
林業の衰退とともに多くの森林が放置され、適切な管理が行き届いていない状況です。
所有者の高齢化や不在により所有者の特定が困難な森林も増え、これがさらなる問題を引き起こすケースもあります。
林業は私たちの生活を支えている産業であり、いくら課題が山積みであるとはいっても、ストップさせることはできません。
こうした林業の課題に対して政府や各自治体が打ち出している対策について紹介します。
政府や自治体は、木材の需要を増やすために木造建築を推進しています。例えば、都市部でも木造の非住宅建築物を増やす法律が制定され、学校やオフィスビルの木造化が進んでいるのです。
木材を利用することによって林業の活性化に寄与するだけでなく、環境負荷の軽減も期待されています。流行りのSDGsの考え方にもマッチした施策といえるでしょう。
繰り返しになりますが、日本の林業は生産性が低いことが課題とされています。
これを改善するため、新型の重機による伐採や搬出作業の効率化が図られています。急斜面でも安全に作業できる重機の開発が進められ、近年ではドローン技術の発達により、空路で苗木を運ぶ現場も出てきました。
また、林道の整備にも着手し、より機械での作業を行いやすくする取り組みもなされています。
伐採するだけでは資源が枯渇するため、森林を再生するために新しい木を植えたりと、適切な管理を続ける必要があります。
しかし再造林にはコストがかかるため、多くの林業経営者にとって負担であることは言うまでもありません。
これに対し、政府は再造林を支援するための補助金制度を設け、長期的に森林を管理する仕組みを提供しています。
J-クレジット制度とは、省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの利用、そして適切な森林管理によって削減・吸収したCO2を「クレジット」として売買できる仕組みです。
この制度により、森林所有者は新たな収益源を得られる可能性があり、林業経営の安定につながることが期待されます。
(引用:J-クレジット制度公式サイト)
林業はさまざまな課題を抱えているとお伝えしましたが、特に深刻なのは人手不足です。
その実態について見ておきましょう。
林業従事者はピーク時だった昭和後期から減少の一途を辿り、当時の1/3未満となっていることについては記事前半でも触れました。
これは当時10人で回していた作業を今では3人で行っているのと同義です。いくら技術が進歩したとはいえ、作業員自体が高齢化していることも加味すると生産性は落ちていると言わざるを得ません。
林業従事者の平均年齢は50代を超えており、若年者で林業に就く人が減っていることから、この傾向は今後も続いていくと考えられます。
(引用:林野庁「第1部 第2章 第1節 林業の動向(3)」)
林野庁より公開されている「林業労働力の確保の促進に関する基本方針の変更について」によると、林業の有効求人倍率は令和2年時点で約2.21倍となっています。
同年における全産業平均が1.01倍であることを考えれば、 林業の有効求人倍率は高水準といえます。
そもそも有効求人倍率とは、求職者1人あたりの求人数のことです。有効求人倍率が高ければ高いほど求職者にとっての求人の選択肢は多くなります。言い換えれば、求職者よりも労働力を求める企業のほうが多い状況であるといえるでしょう。
林業の有効求人倍率に置き換えると、求職者1人あたりに約2.21件の求人が存在することになります。つまり、人材の需要(求人)に対して供給(求職者)は半分にも満たず、多くの林業会社は人手が足りていない状況が窺えます。
(引用:林野庁「林業労働力の確保の促進に関する基本方針の変更について」)
多くの林業者が人材を求めている一方で、林業従事者数は減少し続けているのが実態です。
なぜ、このように林業で人手不足が深刻化しているのでしょうか。
ここでは、林業で人手不足が深刻化している4つの原因について解説します。
林野庁で公開されている「一目でわかる林業労働」によると、林業従事者全体に占める高齢者(65歳以上)の割合は、令和2年時点で約25%です。
全産業の平均を10%近く上回っているため、高齢者率がきわめて高いことがわかります。
昨今では専用の林業機械を使用することが一般的であるものの、デスクワークと比べて体力的な負担が大きいことは間違いありません。
また、既存人材の高齢化が進めば、体力面の不安からリタイアを検討する人が増えることは避けられないでしょう。
経験の豊富なベテラン人材が抜けることは業界にとっての大きなロスといえます。
林業は新規雇用のハードルが高い業界とされています。
林業は「危険」「力仕事」といったイメージを持たれやすい業界です。そのため敬遠されやすい業種であることはいうまでもないでしょう。昨今ではキャリアの選択肢が多様化しているため、わざわざ林業を選ぶ人は少ないというのが実情です。
実際、先述した林野庁より公開されている情報によると、林業の災害発生率は他産業の10倍を超えるとされています。
チェーンソーのような機械を用いる伐採作業は災害発生数が多く、求職者から「危険」とイメージされているのも無理はありません。
また同資料によると、林業従事者の平均年収は約340万円です。 大変にも関わらず全産業平均と比べて100万円近く低い平均年収も、求職者が林業を敬遠する要因といえるでしょう。
若手人材が定着しづらいことも林業の人手不足の一因と考えられます。
若手人材を雇用できたとしても、数年で辞めてしまうケースが多いようです。これは、前述したような作業の危険性だけではなく、ワークライフバランスの維持が難しい面も関係しているでしょう。
人々の生活に欠かせない林業は、公共事業から大口の発注を受けることもあります。繁忙期には私生活との両立が難しいケースも考えられるでしょう。
そのため、この原因を解決するには労働環境や福利厚生などの改善が求められます。
木材の需要と供給のギャップが拡大していることも、相対的に人手不足を助長させています。
人材が増えない林業では、供給できる木材の量に限界があります。一方で、国内の木材需要は安定して高く、供給とのギャップが大きい状況です。
林野庁より公開されている「木材需給表」によると、国内の木材需要は令和3年までの10年で約7,000万~8,000万㎥と安定しています。
一方で、同年までの国内における木材供給は2,000万~3,000万㎥ほどです。つまり、国内供給だけでは国内需要をまかなえておらず、過半数を輸入に頼っているということ。
昨今では円安の影響で輸入木材が高騰しており、国産木材の需要が高まっています。しかし、需要に合わせて供給を増やそうとすれば、既存人材に対する業務負荷は増えます。つまり、相対的に人手不足につながっているということなのです。
(引用:林野庁「木材需給表」)
ここからは、林業の人手不足に対策するために企業が取り組めることを紹介します。
林野庁が推進している「スマート林業」は、人手不足の解決策として期待されています。スマート林業とは、デジタル技術を活用して林業を効率化・自動化する取り組みのことです。
例えば、ドローンを用いて森林の状況を把握したり、センサーから取り込んだデータを分析したりが該当します。森林の管理業務をドローンでカバーできれば、既存人材はほかの業務に注力できるようになるでしょう。
また、危険を伴う作業をデジタル技術で代替することで、安全性の確保による人材定着率の向上が期待されます。
(引用:林野庁「森林情報のデジタル化/オープンデータ化」)
関連記事:ChatGPTが林業の雇用に及ぼす変化と対応策とは?|TechSuite AI Blog
林業における人手不足の解決策として、M&Aを実施する会社も増えています。
M&Aとは、合併や買収などにより企業と企業を統合する経営戦略のことです。M&Aは次のような理由から人手不足の解決につながります。
M&Aによって、人材を含む経営資源を相手企業と統合できます。人的な余力のある企業と統合することで、新規雇用よりも手軽に人材を取り込めるでしょう。
M&Aでは、人事制度や福利厚生などを含めた経営の統合が行われます。労働環境の整った買い手企業の傘下に入れば、自社の労働環境を抜本的に改革することも可能です。
ブランド力の高い買い手企業の傘下に入れば、自社のブランド力の向上も期待できるでしょう。結果として、自社の新規雇用において人材が集まりやすくなる可能性があります。
M&Aによって林業における人手不足の解決につながるとお伝えしましたが、それ以外にもメリットがあります。
林業経営者が親族や従業員のなかから後継者を探しても、候補が少ないために適任者が見つからないケースもあるでしょう。しかし、M&Aであれば社外のさまざまな人材から後継者を探すことが可能です。
幅広い候補者のなかからから適任者を探せるため、後継者問題に悩む企業には特におすすめの方法といえます。
M&Aを実施する相手企業の選び方次第で、事業の拡大・多角化につながることがあります。例えば、同業種で地域が異なる会社と統合することで商圏の拡大を図れます。
また、自社とはまったく異なる業種の会社と統合すれば、新しい分野への参入も視野に入るでしょう。つまり、ゼロから何かを立ち上げるためのコストや手間を削減できるということです。
さらに相手企業の人材だけでなく、ノウハウや取引先など多くの要素を取り込めるため、企業自体のレベルをジャンプアップさせることにもつながります。
M&Aによって経営資源を統合することで、無駄を減らすことも可能です。
例えば木材の生産業者と加工業者がM&Aを実施すれば、物流ネットワークが1社に統合されて円滑になる可能性があります。
また、経理や人事などの重複する部門・業務を統合することで、既存人材の業務負担の軽減につながります。
M&Aによる人員整理で余剰人員が出た場合は新しい事業に活かすことも可能です。
経営者が主体となって相手企業と取引するM&A手法の場合、経営者が利益を得られる可能性があります。
代表例は、株式を譲渡することで売り手企業の経営権を承継する「株式譲渡」です。株式譲渡では、株式の取得に要した金額よりも高額で株式を売却できた場合、差額が経営者の売却益となります。
また、M&Aの内容によっては、経営者が債務の個人保証から解放される可能性があるのもメリットといえるでしょう。
人材を求めている林業会社は多いものの、林業従事者数は減少し続けているのが実態です。
林業では、既存人材の高齢化や若手人材の定着しづらさなどによって人手不足が深刻化していますが、対策としてスマート林業の推進やM&Aの実施といった取り組みが行われています。
特にM&Aを実施するメリットは多く、林業界でも実施されるケースが増えています。ただし、M&Aには多くの専門知識が求められるうえに、さまざまなプロセスを長期にわたり進めていかなければなりません。
法的な問題も絡むため、M&Aを成功させるには専門家からのサポートを受けることが確実です。
「M&Aベストパートナーズ」では、M&A・事業継承の豊富な実績があります。ぜひお気軽にご相談ください。
M&Aを実施する目的や背景は多岐にわたって存在するため、
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