M&Aストーリー
M&Aを実施する目的や背景は多岐にわたって存在するため、
ひとつとして同じ案件や事例は存在しません。
後継者問題や人手不足の解決策として、「M&A」が注目されています。
M&Aについて調べているなかで、「エグゼキューション」という言葉を見かけた人もいるでしょう。
M&Aにおいてエグゼキューションは重要な意味を持つ言葉であり、正しい理解が欠かせません。
そこで本記事では、M&Aにおけるエグゼキューションとは何か、基本からわかりやすく解説します。
目次
エグゼキューション(Execution)は「実行」といった意味を持ちます。
M&Aで実行するものといえば、「企業と企業の統合」です。つまり、M&Aにおけるエグゼキューションとは、複数企業の統合を実行する一連のプロセスを指します。
具体的には、M&Aの戦略や計画に沿って相手企業との交渉を進め、2社の統合を実施するまでがエグゼキューションです。「統合を実施」には、買い手・売り手間における資産や権利の移転、対価の支払いなどが含まれます。
なお、M&Aの戦略や計画を策定したり、相手企業を選定したりするプロセスは、エグゼキューションには含まれません。これらのプロセスは「オリジネーション(Origination)」と呼ばれます。オリジネーションには「起こす」「始める」といった意味があり、M&Aの案件を創出するというニュアンスであると認識しておきましょう。
「案件」という言葉からわかるように、エグゼキューションやオリジネーションはM&Aにおける業界用語の一種といえます。
M&Aのエグゼキューションには、多くのプロセスが含まれます。
M&Aの最終的な成否を左右する部分のため、エグゼキューションの流れを正確に把握しておきましょう。
以下では、M&Aのエグゼキューションを進める際の大まかな流れについて解説します。
まずは、M&Aの具体的な手法である「スキーム」を決めます。
例えば、売り手の株式とともに買い手に経営権を譲渡する「株式譲渡」、事業の一部または全部を買い手に譲渡する「事業譲渡」などが代表的です。
一般的にはオリジネーションの段階で、大まかにM&Aのスキームを決めます。しかし、魅力的な相手企業が見つかった際に、当初のスキームが適さない可能性あります。そのため、M&Aの相手企業が決まったうえで、スキームの調整が必要です。
相手企業と本格的な交渉を始める前に、企業価値の算定が欠かせません。つまり、企業の価値を金額として見積もっておき、交渉の材料として活用します。
買い手企業は売り手企業の価値を算定し、それを基に買収価格を提示します。一方で、売り手企業も、自社の企業価値を算定しておくことが大切です。自社の企業価値を正しく算定できていない場合、買い手企業に低い取引金額で押し切られてしまうでしょう。
なお、企業価値を算定することを「バリュエーション」と呼びます。バリュエーションには「インカムアプローチ」「マーケットアプローチ」「コストアプローチ」の3つの手法があり、自社の規模に合わせた使い分けが必要です。詳しくは、次の記事をご一読ください。
M&Aにおけるバリュエーションとは?種類や実施するタイミングについて
企業価値の算定を済ませたうえで、買い手・売り手間で交渉を進めます。
このステップでは、M&Aスキームや取引金額、対象とする資産や対価の種類、統合後の体制や処遇など、さまざまな内容の話し合いが必要です。
両社の希望が最初からすべて合致しているケースはほとんどありません。お互いに、ある程度の妥協は必要となるでしょう。話し合いを通して、自社と相手企業の希望条件を近づけ、折り合いをつけることが交渉成功のポイントです。両社の希望がかみ合わない場合、交渉決裂となります。
大筋で両社の合意が得られた場合は、「基本合意書」を締結します。
基本合意書とは、M&Aにおける基本的な契約条件をまとめた書面のことです。基本合意書は必須ではないものの、締結することでお互いの認識を合わせつつ以降のプロセスへ進めます。
基本合意書に記載されている項目は、取引金額やM&Aスキーム、スケジュールなどさまざまです。また、「独占交渉権」について記載することも多々あります。独占交渉権とは、別の買い手と交渉することを売り手企業に禁止し、買い手企業が独占的に交渉を進められる権利のことです。
基本合意書の締結後、買い手企業は「DD(デューデリジェンス)」を実施します。
M&AにおけるDDとは、売り手企業のリスクを買い手企業が調査・分析することです。
財務や法務といった複数の観点で売り手企業を分析し、M&Aの実施可否を判断します。買い手企業から情報提供を求められた場合、売り手企業はできる限りの協力が必要です。
売り手企業の簿外債務を引き継いでしまうケースもあるため、買い手企業には慎重なDDが求められます。DDには多くの人件費を要するため、無駄に終わることは避けたいでしょう。その点、基本合意書の段階で独占交渉権を取得しておけば、DD実施中に売り手企業が他社に奪われる事態を防げます。
DDの結果に問題がなく、M&A実施の意向が両社ともに変わらなければ「最終契約書」を締結します。
最終契約書とは、M&Aにおける契約条件の確定事項をまとめた書面のことです。
最終契約書の締結は、M&Aの取引が両社間で最終確定したことを意味します。
ただし、DDで重大なリスクが判明した場合は、最終契約書の締結前に減額交渉を行うことが一般的です。この段階で折り合いがつかない場合、M&Aの契約は破談となります。
最終契約書の締結後には「クロージング」を実施します。
クロージングとは、M&Aの取引を実行し、完了へ向かうことです。
資産や権利の移転、対価の支払いなどを実際に行い、クロージングを終わらせることでエグゼキューションも完了となります。
クロージングにおける取引の内容(取引金額や実行日時など)は、最終契約書の内容に従います。資産の引き渡しや金銭の振込み、各種書類の確認など、さまざまな手続きを漏れなく行わなければなりません。そのため、1ヶ月以上の期間を要することもあります。
なお、M&Aにおけるクロージングについて詳しくは、次の記事をご覧ください。
M&Aにおけるクロージングとは?手続きや流れ、書類をわかりやすく紹介
M&Aのエグゼキューションには、契約や交渉といった重要なプロセスが多く含まれます。
エグゼキューションを適切に進められないと、M&Aが失敗に陥ってしまうでしょう。
以下では、M&Aのエグゼキューションで失敗しないためのポイントについて解説します。
エグゼキューションの前段階にあるオリジネーションを確実に実施することが大切です。
オリジネーションでM&Aの目的や戦略を的確に定めなければ、エグゼキューションの方向性も煩雑になってしまいます。
また、オリジネーションの段階でM&Aの相手企業選びを間違えると、エグゼキューションで交渉決裂となりかねません。そのため、オリジネーションでは、成功につながる目的や戦略、相手企業を固めましょう。
エグゼキューションを実施するにあたって、通常業務との兼ね合いも重要です。
エグゼキューションには、企業価値の算定や契約書の作成、DDといった時間を要する作業が多く含まれます。
エグゼキューションには多くの時間を奪われるため、通常業務に支障をきたす可能性もあるでしょう。
エグゼキューションを開始する際には、通常業務への影響を考慮して無理のない人員選定や計画策定を行うことが大切です。
自社だけでエグゼキューションを進められるか不安であれば、M&Aの専門家からのサポートを依頼しましょう。
相手企業との契約を伴うM&Aのエグゼキューションは、特に慎重さが求められるプロセスです。財務や法務に関する専門知識がなければ、M&Aの成功につながらないだけでなく、コンプライアンス違反を引き起こすリスクもあります。
しかし、M&Aの知識や経験が豊富な専門家に相談すれば、成功につながる適切なアドバイスを受けることが可能です。エグゼキューションにおけるリスクを抑えてM&Aを成功させたいのであれば、専門家への依頼を積極的に検討しましょう。
M&Aにおけるエグゼキューションとは、複数企業の統合を実行する一連のプロセスです。
買い手・売り手を統合し、資産や権利の移転、対価の支払いまで行います。契約や交渉といった重要なプロセスが多く含まれるため、慎重に実施しなければなりません。
M&Aのエグゼキューションには、財務や法務といった豊富な専門知識が求められます。適した人材を確保できないままエグゼキューションを進めると、M&Aの失敗どころか通常業務への支障やコンプライアンス違反のリスクもあります。
エグゼキューションを自社だけで進められるか不安であれば、M&Aの専門家から力を借りるのが賢明です。
M&Aの成功を目指す企業は、M&A・事業承継の実績が豊富な「M&Aベストパートナーズ」へお気軽にご相談ください。
M&Aを実施する目的や背景は多岐にわたって存在するため、
ひとつとして同じ案件や事例は存在しません。
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