土木は、道路や水道などのインフラ整備を行うため、人々の生活において重要な業界といえるでしょう。
しかし、後継者問題や人材不足などの多くの課題を抱えています。
このような課題を解決するためにM&Aを検討している人もいるでしょう。
この記事では、土木業界の現状や土木業界におけるM&Aの動向について解説していきます。
また、M&Aにより土木業界の企業を買収するメリットや事例についても解説しているため、土木会社とのM&Aを検討中の人は参考にしてください。
土木業界の現状
土木業界へ参入し、事業をスムーズに進めるには、土木業界の現状について正しく把握しておくことが大切です。
参入後に後悔しないためにも、以下で紹介する内容を事前に確認しておきましょう。
安定して需要のある業界
土木業界は、需要が堅調であることから、今後も維持していく見通しです。
これまで、東日本大震災をはじめ度重なる自然災害で損壊した建物の復旧工事や、東京オリンピックに向けた公共工事など、多くの需要がありました。
台風や地震などの自然災害が頻発する日本では、復旧工事の需要は今後も安定していくでしょう。
また、高度成長期に整備された道路や橋、上下水道などのインフラ設備の老朽化が社会問題となっており、政府から重大な事故につながるのではないかと懸念されています。このような問題の解消は早急に求められるため、土木業界は今後も安定した需要が見込めると考えられるでしょう。
ICTやAIシステムの導入が増加中
土木業界が抱える課題として、慢性的な人手不足が挙げられます。また、土木業界の仕事には、大きな負担がかかる作業が多いです。これらの課題を解決するためにICTやAIシステムを導入する企業が増加しています。
ICT(情報通信技術)とは、「Information and Communication Technology」の略称で、インターネットのような通信技術を活用した産業やサービスなどの総称です。土木業界においては、測量や施工、検査などの作業に導入することで、作業の効率化が期待できます。
具体的には、ドローンでの3次元測量や建設機械運転の自動化などが該当します。
土木業界におけるM&Aの動向
今後も安定した需要が期待できる土木業界ですが、さまざまな課題も抱えています。
ここでは、土木業界におけるM&Aの動向について解説します。
売却を検討する経営者が増加
近年、土木業界では、会社の売却を検討する経営者が増加傾向にあります。
その理由は、従業員の高齢化や後継者問題、人材不足などを解消し、会社を存続させたいと考えているためです。
特に地方の中小企業では、高い業績は上げていますが、若い人材が入社しないので、人材不足に悩まされています。
このような状況を解消するために、大手の傘下に入ったり、別の会社と提携したりなどを検討する経営者が多いです。
2024年問題へ対応するためにM&Aを選択する経営者が増加
近年、働き方改革の一環として労働基準法が改正され、2019年4月より施行されました。
この法令により、時間外労働の上限規制が定められます。しかし、土木業界を含めた一部の業界では、迅速な環境改善が難しいことから適用が2024年まで猶予されました。2024年までに解決しなければならない問題のことを「2024年問題」といいます。
この規制に対応するには従業員の増員が必要ですが、慢性的な人員不足に悩む土木業界においては限界があるでしょう。そのため、M&Aにより大手企業の傘下に入る会社が増えています。
近い業種とのM&Aが増加
土木業界に限らず、建設業界で増えているのは近い業種とのM&Aです。
例えば、電気工事を専門とする会社が基礎工事を専門とする会社を買収するケースがあります。ほかにも、トンネル工事と道路工事を専門とする会社が河川工事を専門にやっている会社を買収するケースもあるでしょう。
近い業種とM&Aを行うことで、業務範囲が広がるため、新たな売上の確保につながるかもしれません。
土木業界におけるM&Aの買い手側のメリット
近年では、さまざまな目的でM&Aが実施されていますが、土木会社を買収することでどのようなメリットが得られるのでしょう。
ここでは、土木業界におけるM&Aの買い手側のメリットについて解説していきます。
新たな事業エリアに進出できる
土木業界におけるM&Aは、新たな事業エリアへの進出に有効な方法です。
例えば、首都圏の企業が地方の企業を買収することで、その地方での足掛かりを築くことができ、新たな事業エリアへ進出がスムーズに進みます。また、同じ地域の土木会社を買収した場合は、その地域でのシェアを拡大することが可能です。
このように、近隣または遠隔地で事業を展開している企業を買収すれば、自社だけでエリアの拡大を目指すよりも、効率的に実現できます。
技術を持った人材を確保できる
先述した通り、土木業界では人手不足が深刻化しています。
また、土木業界の仕事には専門的な知識と経験が必要です。
そのため、新しい人材を採用しても育成するのに時間やコストがかかるでしょう。
しかし、M&Aにより土木会社を買収すれば、優秀な人材をまとめて確保することが可能です。また、確保できるだけでなく、専門的な知識や経験を既に持っている人材を雇用できるため、育成にかかる時間とコストを削減できます。
下請け会社を設立できる
M&Aにより土木業界の企業を買収できれば、自社の下請け会社を設立できる点もメリットの一つです。
ゼネコンや建築業者がM&Aを行い、土木業界の企業を買収すると、その買収した企業は自社グループの下請け会社になります。
自社の下請け会社を持つことで、さらに効率的な受発注が可能です。
公共事業や民間工事へ参入できる
土木業界は、公共事業の工事が中心ですが、なかには民間事業の工事もあります。
そのため、多くの土木会社は、公共事業を中心に行っている会社と、民間工事を中心に行っている会社のどちらかに分かれているのが特徴です。
M&Aを活用すれば、両方に対応できる会社を実現できます。例えば、公共事業中心の会社が民間工事中心の会社を買収すれば、民間工事にも対応することが可能です。
このように公共事業と民間工事の双方に対応できることで、事業をさらに拡大できるでしょう。
土木業界におけるM&Aの事例
土木業界におけるM&Aでは、事業エリアの拡大や人材の確保など多くのメリットがありますが、事例について気になる人も多いでしょう。
ここからは、当社の仲介でM&Aが行われた土木業界の事例を紹介します。
コンクリート事業つながりで双方が満足のいくM&Aを実現
株式会社横浜システック様は、コンクリート構造物工事に関わるコンサルタント業やコンクリート構造物の補修・補強工事業、土木工事業などを行っている会社です。コンクリート補修会社として東海道新幹線や高速道路などの工事の実績があります。
さまざまな業績を伸ばしましたが、人材不足や後継者問題、資金面などの課題を抱えておりM&Aを検討し始めて当社へ相談しました。当社のアドバイザーは、シナジー効果の見込めそうな会社である横浜産業株式会社様を提案しています。
横浜システック様に、当社が提案した横山産業様は、当時、メイン事業である生コンクリート事業と不動産事業を行っていた会社です。しかし、このとき、これらの二本柱に加えて、コンクリート補修事業を三本目の柱として探していた最中でした。
当社の紹介で横浜システック様とのトップ面談を実施した際に、コンクリートに対する熱意や親和性を感じて買収先企業として決定しました。
その後、株式会社横浜システック様は横山産業株式会社様とのM&Aを実施します。これにより人材不足や後継者問題の解消だけでなく、さらなる事業拡大を実現しました。
M&Aにより大切な従業員の継続雇用が実現
株式会社大志工業は、建設・土木工事業を行っている会社です。
代表取締役社長である小川氏は、36歳で独立し1990年6月に大志向上を起業しました。当初は防波堤工事に従事していましたが、その後陸上の工事に転換することになります。
従業員を育て、家族のような絆を築き上げており、33年経ったときの従業員数は23人、下請け企業を入れると35人前後いました。
小川氏は、70歳を過ぎたころから将来を考え、M&Aを検討し始めます。1社目は、銀行から建築会社を紹介されたものの、ご息女の病気により話がなくなりました。続く2社目の候補企業は、投資色が強く従業員が散ってしまうと懸念し断ります。
そのあとに当社のアドバイザーと出逢い、3社目でようやくM&Aを成立させました。相手企業は舗装工事を行っている会社です。これにより、事業の継続や従業員の雇用を守ることを実現しています。
M&Aにより顧客基盤の拡大や施工能力の向上を実現
進和基礎工業株式会社様は、グラウンドアンカー工事やボーリング工事を手がけている会社です。進和基礎工業様は、負債や人材不足などの課題を抱えており、M&Aを検討するようになりました。
代表取締役社長の須長氏は、当社のアドバイザーから対等なM&Aの形を紹介され、三和ボーリング株式会社様とトップ面談を実施しました。三和ボーリング様は、地質調査やボーリング工事を展開する会社です。
須長氏は、三和ボーリング様の代表取締役社長である湯川氏の人柄や能力に惹かれ、双方の強みを伸ばすM&Aに可能性を感じるようになったと語っています。
その後、進和基礎工業株式会社様は三和ボーリング株式会社様とのM&Aが成立しました。これにより、顧客基盤の拡大や施工能力の向上などを実現しました。
まとめ
今回は、土木業界におけるM&Aの動向や土木会社を買収することで得られるメリットなどについて解説しました。
土木業界は、今後も需要が見込まれる業界です。しかし、土木業界の企業の多くが人材不足や後継者問題などの課題を抱えています。
これらを解消し、会社を存続させるにはM&Aが有効です。
ほかにも、2024年問題に対応するためのM&Aや、業務範囲を拡大するために近い業種とのM&Aなどが増えています。
M&Aを行うことで、事業エリアの拡大や優秀な人材の確保などのメリットを得られるでしょう。
M&Aで得られるメリットを最大化するには、専門的な知識が必要になるため、お困りであれば、「M&Aベストパートナーズ」へご相談ください。