規模によっても異なるものの、旅館業を経営するには比較的多くの資金が必要だといわれています。
特に土地や建物を取得する場合は、多くの資金が必要といえるでしょう。
この記事では旅館業経営で必要な初期費用や内訳、資金調達の方法について紹介します。
また新規開業以外の旅館業経営を始める方法も併せて解説するため、ぜひ参考にしてください。
目次
旅館業の種類
旅館業は旅館業法により、以下の3つに分類されます。
- ホテル・旅館営業
- 簡易宿所営業
- 下宿営業
宿泊料をもらって人を宿泊させる営業のうち、簡易宿所営業・下宿営業に該当しないものがホテル、ならびに旅館です。
旅館とホテルは別物と考えられる傾向にありますが、法律上の明確な違いはありません。ただし、一般的にホテルは「洋式の構造及び設備を主とする施設」、旅館は「和式の構造及び設備を主とする施設」として区別されています。
カプセルホテルや民宿、ユースホステルなどは簡易宿所営業です。簡易宿所営業の定義は、宿泊場所を多人数で共用する構造や設備があることとされています。なお下宿営業とは、1ヵ月以上の単位で人を宿泊させる営業のことです。
旅館業経営を始めるために必要な資金とは
新たに旅館業を開始する場合は、最低でも1,500万円以上の資金が必要とされています。
では、具体的にどういった費用が必要になるのでしょうか。旅館業を始めるために必要な費用の詳細について詳しく解説します。
1:建設・改修費用
初期費用の中で最も高額になるのが建設・改修費用です。
旅館を開業するために、新たに物件を取得する場合は取得費用もかかります。
立地によって物件の取得費用は大きく異なるため、初期費用の総額が1,500万円を大きく上回ることもあるでしょう。
建築費も規模によってさまざまです。規模が大きいほど多額の費用がかかる傾向にあります。一方で、居抜き物件を改修して開業するのであれば、比較的費用を抑えられるでしょう。
また旅館をどのようなグレード・コンセプトにするかによって変動するのが内装費用です。高級路線であれば客室や共用部の設備も高級品を用意する必要があるため、費用がかさみやすいといえます。
2:許認可取得費用
旅館を経営するためには、旅館業営業許可証の申請・取得が必要です。
一般的に許可が下りるまでに10日~2週間程度かかるとされているため、余裕を持って申請しましょう。
なお申請手数料に関しては、自治体ごとで異なります。
自身で申請手続きを進めることも可能ですが、不安な場合は行政書士に依頼すると安心できるでしょう。ただし、依頼するためには費用が必要になる点に注意が必要です。
3:家具・什器・備品などの購入費用
客室のベッドやテレビ、タオルやシーツなどのリネン類といった備品も開業までにそろえておく必要があります。
また従業員のユニフォームや厨房器具なども、従業員のトレーニングが始まるまでに購入しておきましょう。
客室の備品のようなお客様の目に触れる物は、旅館のコンセプトや客層に合わせることが大切です。
4:初期運営費用
旅館を開業しても、経営が軌道に乗るまではある程度の時間がかかります。
客室稼働率が高まり十分な収入を得られるようになるまでは、家賃や人件費、販促費などの費用が売上を上回ることもあるかもしれません。
旅館業で利益を上げられるようになるまでの運営費用をあらかじめ確保しておきましょう。確保しておきたい運営費用の一例は以下のようなものが挙げられます。
人材募集費 | 人件費 | 水道光熱費 |
広告・販促費 | その他の集客費 | システム維持費 |
食材等の仕入れにかかる費用 | 消耗品・備品にかかる費用 |
旅館業経営に必要な資金の調達方法
旅館業経営には多額の費用がかかるのが一般的です。
全額を自己資金で賄えない場合、新たに資金調達をする必要があります。
出資者を探す
資金調達方法の一つが、旅館業に投資してくれる人や団体を探す方法です。
出資金に関しては厳密には借りているわけではないため、返済の必要がないことがメリットといえるでしょう。また利息も発生しません。
ただし、出資者には旅館業で得た利益の一部を受け取る権利があります。一般的に株式を渡すケースが多いでしょう。全ての利益が自社のものとならないことは押さえておきたいポイントです。
またデメリットとしては、経営に口出しされる可能性があることが挙げられます。出資割合が多い場合は、経営権を握られることもあるかもしれません。
金融機関の融資を受ける
一般的な資金調達方法は、金融機関から借り入れることです。
金融機関から融資を受けるメリットは、経営に介入される可能性が低いことです。
またお金を貸す・借りるだけの関係でなく、金融機関から経営上のアドバイスをもらえる可能性があることもメリットといえるでしょう。
一方で、デメリットは利息の返済が必要な点です。また審査結果次第では、希望通りの金額を融資してもらえないこともあります。
金額が大きいほど審査が厳しくなる傾向にあることから、納得させられるような事業計画書の作成が必要です。
さらに、場合によっては個人の資産を担保に入れる必要があることもデメリットといえるでしょう。
補助金を利用する
旅館を開業する際、政府や地方公共団体による補助金を利用できる可能性があります。
観光地や観光産業の再生、インバウンド客の誘致など、補助金の種類はさまざまです。
補助金を活用するメリットとして、基本的に返済の必要がないことが挙げられます。
一方で、補助金を申請するための手続きが煩雑である点は、デメリットといえるでしょう。また使途を限定した補助金が多い点にも注意が必要です。
例えばIT導入補助金は、中小企業のDXを推進することを目的とした補助金です。そのため、受け取った補助金はITツールの導入費用・導入関連費用にしか使えません。
また予算には金額の上限や期限があります。必ずもらえるとは限らない点や申請から受給までに時間がかかる可能性がある点などもデメリットといえるでしょう。開業資金の一部を調達する方法と認識しておいた方がよいです。
旅館業経営におけるリスクとは
旅館業経営を始める前に、考えられるリスクを把握しておくことは大切なことです。
ここではどういったリスクがあるのかを詳しく解説します。
リスク1:高額な初期投資が必要
高額な初期投資が必要な点は、リスクの一つです。
特に土地の取得や施設の建築といった物件取得費用が高額になりやすいです。
想定よりも高額になり費用が用意できなかったり、投資回収に時間がかかってしまったりなどのリスクが考えられます。
なお物件を取得できたとしても、リフォーム費用や備品代などの経費が別途必要です。投資に見合う利益が得られそうか、事業計画を立てて慎重に判断しましょう。
リスク2:外部環境の影響を受けやすい
旅館業を含む宿泊業は、外部環境の影響を受けやすい事業であることもリスクの一つといえるでしょう。
特に近年は訪日外国人(インバウンド)の割合が高くなっています。
為替相場や国際情勢によって、売上が大きく左右される可能性がある点は押さえておくべきです。
また、立地によっては台風や豪雨のような自然災害、風評被害などのリスクも考えられるでしょう。
リスク3:季節・時期による変動が大きい
季節・時期による変動が大きいことも、旅館業経営のリスクとして挙げられます。
観光シーズンに繁忙でも、それ以外のシーズンはガラガラというケースも少なくありません。
また近くにスタジアムのような施設や名所などがある場合は、特定時期に開催されるイベントや祭り期間のみ満室で、終了後は客足が遠のくというケースも考えられます。
閑散期であっても家賃や人件費などの固定費はかかることから、リスク管理を怠ると経営不振に陥ってしまうでしょう。
オフシーズンに集客するアイデアや、外注委託費を使って経費を柔軟にコントロールするなどの対策が必要です。
新規開業以外で旅館業経営を始める方法
旅館を経営する場合、土地や建物を取得したり、自社保有の土地に建築したりすることから始めるケースが一般的です。
しかし、新規開業以外の方法であれば、より素早くかつ費用を抑えながら旅館業経営が始められます。
リース形式による運営
リース形式とは土地と建物の所有者は元のままで、旅館の運営自体を譲り受ける方法のことです。
リース費用が発生するものの、不動産の取得費用や建築費用などがかかりません。初期投資を大幅に抑えられる点がメリットといえるでしょう。
ホテル運営のノウハウがあれば、大きな利益を上げることも可能です。
M&Aによる事業承継
M&Aで旅館業を承継する方法もあります。
近年は後継者不足などで廃業する旅館が増えていることから、M&Aが成立しやすい環境です。新規雇用や教育の必要が少ないことや、顧客基盤をそのまま利用できることなどがメリットといえます。
また収益構造に関しては、DXの導入などの新しいノウハウの活用によって改善できる可能性があるでしょう。既存の設備や知名度を活かしつつ、新しい経営手法やアイデアを持ち込むことでさらなる発展を実現できるかもしれません。
まとめ
旅館業経営を始めるための資金調達方法には、融資を利用するほか、出資者を探したり補助金を活用したりする方法があります。
またM&Aによって新規開業するよりも初期投資が少なくて済む可能性もあります。
M&Aによって旅館経営をスタートしたいと検討している方は、まずはお気軽にM&Aベストパートナーズへご相談ください。
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