建設業界におけるM&Aを行うメリットとは?業界の現状や課題について解説

近年の建設業界では、人手不足後継者不足などといった課題があります。

なかには、こういった悩みを抱えながら運営している企業もいるのではないでしょうか。解決策の1つとして、M&Aを行うことで解消できる可能性があります。

しかし、いざM&Aを検討しようとしても「M&Aで本当に課題が解決できるのか」「M&Aを成功させるうえで注意すべき点はあるのか」といったような不安や気になる点もあるでしょう。

そこで本記事では、建設業界におけるM&Aの動向や得られるメリット、M&Aを進めるにあたって注意すべき点を解説していきます。

建設業の特徴と現状

建設業界M&Aを行うにあたって、まずは建設業の概要について理解する必要があります。

ここでは建設業の特徴と現状について解説していきます。

 

建設業界の特徴

建設業界では、建築物の建設から土木工事までを包括的に請け負います。

よく混同されやすい用語として「建築」がありますが、土木工事を含みません。

例えば、建築業はビルや住宅といった建物のみの施工を行いますが、道路や橋、水路などの造成は、土木業の工事範囲となります。

建設業では建設工事の分野ごとに、都道府県知事か国土交通大臣の許可が必要です。道路や橋を造成する場合には「土木一式工事」、ビルや住宅といった建物を建築する場合には「建築一式工事」といった分野があります。

ほかにも27種類の専門工事を合わせた計29の工事分野に分類され、それぞれ建設許可の申請が必要です。

ただし、工事の請け負い代金が500万円に満たない工事の場合などは必ずしも許可を受けなくてもよいとされています。

建設業の業務は、ピラミッド型の下請け構造から成り立っています。元請けは工事の受注から建設計画、施工管理までを総合的に取りまとめることが主な仕事です。

下請けであるサブコンや、更にその下請けの工事業者は実際の施工業務を担当しています。

工事の規模によっては下請けが何層にもなるため、発注者から見えない形で数多くの作業員が関わっていることが建設業の大きな特徴です。

 

建設業界の現状について

建設業界全体で高齢化が進んでおり、若い世代の就労者が増えないことから、技術継承者の不足が課題といえるでしょう。

(引用元:国土交通省「建設業の働き方改革の現状と課題」

令和元年では、29歳以下の就労者数が増減していないにも関わらず、55歳以上の就労者が約1万人増加しています。

また、就労者の総数も年々減少しており、平成9年では685万人だったのが令和2年には492万と、約200万人も減少していることになります 。若者の就業者についても年々減少傾向にあるため、深刻な人手不足に常に悩まされていることも建設業界における、大きな課題の1つです。

建設業は、発注者から注文を受けて作業を開始する受注生産型です。そのため、工事規模が拡大すると、作業員を確保するための人件費や必要な建築資材、外注費用などが増えていくので、利益が得にくいことが課題となります。

このような利益を得にくい状況を解消するため、M&Aを検討するケースが増えてきています。

近年における建設業のM&A動向とは

近年における建設業界では、M&Aを行う企業が増えつつあります。

背景には、建設業界全体の高齢化が進み、事業を継続するための後継者が不足していることが挙げられるでしょう。建設業において、技術を継承する後継者が不足すると、経営者や就労者の高齢化が進み、事業自体を継続するのが困難になります。

そこで、M&Aによって買い手企業を新たな経営者(後継者)にすることで、事業を存続できるでしょう。

また、ハウスメーカーや不動産など異業種からのM&Aも増加傾向にあります。異業種からM&Aを行うと、自社事業の拡大や買収先企業の技術やノウハウを用いたシナジー効果が期待できることが大きなメリットです。

なお、自社内で建設業務を一本化することを目的に、今まで工事を外注していた建設企業をM&Aにより買収するケースもあります。

国内における建設業の市場規模は、この先縮小されることが予想されています。解決策として、これからインフラ設備の需要が高まってくる海外市場に参入し、海外企業を買収するクロスボーダーM&Aも増えてきています。

建設業におけるM&Aを行うメリット

建設業界がM&Aを行うと、売り手側・買い手側にどのようなメリットがあるのでしょうか。

以下では、建設業界でM&Aを行うメリットについて解説します。

 

売り手側のメリット

建設業界は少子高齢化が進んでいるため、後継者不足の問題が深刻化しています。仮に経営が順調だったとしても、後継者が見つからないことから事業継続が困難になる建設会社も多いでしょう。

M&Aを行い、買い手企業に事業経営を引継いでもらうことで、後継者問題を解消できます。

また、従業員の雇用を守れることもM&Aを行う大きなメリットです。後継者不足や財政難という理由で企業が廃業してしまうと、働いている従業員の雇用が失われます。

それだけではなく、廃業にはさまざまな公的文書の準備が必要なうえ、費用もかかってしまうため、経済的な負担が増える結果になるかもしれません。M&Aでほかの建設会社に事業継承できれば、従業員の雇用を守れます。

廃業を選択すると資産の処分などでコストがかかるため、金銭的な利益はほとんどありません。経営者の場合は、会社員と違い退職金がないため、老後の資金繰りに困るケースも考えられるでしょう。

しかし、M&Aにより買い手企業に事業または会社を売却すると、売り手側は売却益を得られるので、その利益を老後の資金に充てられます。

 

買い手側のメリット

建設会社同士でM&Aを行えば、従業員や設備環境を一気に獲得できるため、事業をスムーズに拡大できます。しかし、高いブランド力を持った建設会社がいる地域に新規参入することは容易ではないことを理解しておきましょう。

M&Aでこのような企業を買収できれば、周辺地域に対する高いブランド力を維持した状態で新たな事業エリアを拡大できます。

また、建設業界のM&Aでは、有資格者や技術ノウハウを持った従業員などを一気に獲得できるため、自社内で従業員を育成する必要がなくなります。そのため、育成にかかるコストや時間をかけることなく、技術継承を容易に行えるというメリットがあります。

建設業には29種類の工事分野があり、それぞれの分野において建設許可が必要です。そのため、新しい建設分野に新規参入する場合、建設許可を取得するための資格取得や、新規分野に関する技術の習得が必要となります。

そこで、新規参入したい建設分野のノウハウや建設許可を既に持っている企業を買収することで、新しい業種へスムーズに進出できるでしょう。

建設業におけるM&Aを行う前に確認すべきこと

建設業におけるM&Aを成功させるには、売り手と買い手それぞれで確認すべきポイントがあります。

 

売り手側が確認すべきポイント

M&Aを検討・開始する段階で、売り手側が進行中の案件を抱えている場合があります。

その場合は、買い手または別の建設会社に案件の引継ぎを検討しなければなりません。案件を引継ぐ場合は、費用面でのトラブルを回避するため、工事にかかる費用分担を明確にしておきましょう。

また、建築業許可についても引継ぎが必要ですが、譲渡方法によって対応が変わります。
株式譲渡の場合は、建設許可はそのまま買い手側に引継がれますが、事業譲渡や会社の合併・分割の場合には建設許可は引継がれません。

その場合、買い手側が建設業許可を取得する必要がありますが、最大4ヶ月の期間を要するため、M&Aのスケジュールを調整することが重要です。

建設業界のM&Aでは、市場規模の縮小や入札機会が減るといったデメリットも少なからず存在します。そのため、M&Aによって買い手が得られるメリットについて把握して、買い手側に伝えることが重要です。

例えば、「技術力を有した人材を確保できる」「特定地域における高いブランド力がある」といった具体的なメリットを提示できるとよいでしょう。

 

買い手側が確認すべきポイント

建設業では、保有している資格によって施工可能な工事が決まります。

建設業の許可には、「5年以上の実務経験」「資格を持った専任技術者」「財産的な基礎の安定」「欠格事由に該当しない」ことが要件であるため、事前に確認しておきましょう。

また、建設業は横のつながりが強い業界のため、ビジネス上の合理性だけではなく人間関係を重視する傾向にあります。M&A後に、取引先や従業員の人間関係に配慮しないと、有資格者の引抜きや施工を拒否される場合があるため、買収先企業の周辺環境も調査することが重要です。

買収先の企業が、金融機関からの融資を受けるために粉飾決算を行っている場合があるため注意が必要です。買収した後に発覚すれば、訴訟に発展、最悪の場合懲役や罰金刑が科せられる場合もあります。

売り手企業の財務面についての調査を徹底することが、M&Aを成功させるうえでの重要なポイントです。

まとめ

建設業界では、人手不足後継者不足といった課題が深刻化しています。

M&Aをうまく利用すれば、このような課題を解決する糸口になるだけではなく、更なる事業拡大にもつながるでしょう。

M&Aベストパートナーズでは、業界に特化した専門家が在籍しているため、信頼度の高い充実したサポートを提供できます。

「今の会社でM&Aをすべきか悩んでいる」「建設業でM&Aを進めるにはどうすればよいか」といったお悩みを持つ人はぜひご相談ください。

著者

MABPマガジン編集部

M&Aベストパートナーズ

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