企業などからの依頼に基づいてソフトウェア開発を手掛ける受託ソフトウェア開発事業。
デジタル化の成長によって、さまざまな業種においてそのニーズが高まり成長を続けています。
そこで本記事では、受託ソフトウェア開発の市場規模について解説します。
あわせて、成長に伴い増加傾向にあるM&Aの動向や実際に行われた事例のご紹介もするので、受託ソフトウェア開発事業の売却や買収を検討されている方はぜひ参考にしてください。
↓ こちらから知りたい情報へ移動できます ↓
目次
受託ソフトウェア開発の市場規模
IDC Japan株式会社の調査によると、2024年度上半期のソフトウェア開発市場規模は2兆5,498億円超となり、前年比10.8%増という大幅な成長を遂げました。
この数字から受託システム開発事業も成長を続けていることが予測でき、企業のDX化推進が進められるという背景から今度さらにニーズは拡大するでしょう。
一方で市場競争も激化しており、既存の受託ソフトウェア開発企業にとっては生き残りをかけた経営戦略の策定が重要な課題となっています。
参考:IDC Japan株式会社|2024年上半期の国内ソフトウェア市場は前年比10.8%増
受託ソフトウェア開発事業におけるM&Aの動向
2023年度のIT・ソフトウェア業界のM&A件数(公表済み)は148件で過去10年で最多を記録しており、受託ソフトウェア開発事業に対するニーズの高さが伺えます。
主な背景として、次のような要因によってM&Aが活発化しているといわれています。
- エンジニアの採用や育成が難しい
- 業績低迷
- 後継者が見つからない
少子高齢化による労働人口不足や後継者問題の解決、さまざまな要因が絡み合うことで低迷する業績からの脱却を目的とし、今後もM&Aは増加すると考えられるでしょう。
参考:M&A Online|【2023年のIT・ソフトウェア業界】過去10年でM&A案件最多に、クロスボーダー低調で取引金額は低迷
受託ソフトウェア開発事業のM&Aで得られるメリット
受託ソフトウェア開発事業のM&Aでは、買い手となる企業、そして売却する側の企業それぞれにメリットをもたらします。
買手側と売手側、それぞれの立場からみたメリットを解説します。
【買手側】M&Aで得られるメリット
受託ソフトウェア事業を買収する企業は、M&Aによって次のようなメリットが得られます。
- 売り手企業の市場獲得
- 即戦力となるエンジニアの確保
- シナジー効果による事業成長の加速
- 新たな開発ノウハウの獲得
上記のなかでも、エンジニア不足が課題となっている昨今では即戦力となるエンジニアが確保できることは事業を拡大するうえで大きなメリットとなります。
また、技術の成長が続くなかで新たな開発ノウハウを獲得することができれば、激化する市場競争のなかで他社との差別化を図り、市場拡大を目指すことも可能です。
【売手側】M&Aで得られるメリット
受託システム開発事業を売却し、売手側が得られるメリットは以下のとおりです。
- 後継者・エンジニア不足の解消
- 新規事業の開始
- シナジー効果による事業規模の拡大
- 個人保証からの解放
近年では、後継者が見つからなかったり人材不足が原因によって廃業に追い込まれる企業が増加しています。
しかしM&Aによって買い手企業の傘下に入ることができれば、後継者の選択肢が増えるだけでなく、人的リソースを活用して人材不足の解消の実現が可能です。
また、事業売却によって個人保証から解放されることにより、経済的リスクや精神的なプレッシャーからも解放され、次のキャリアを目指すこともできます。
受託ソフトウェア開発事業のM&Aで起こりうるリスク
買手側と売手側、双方にさまざまなメリットをもたらすM&Aですが、成功させるためにはリスクを把握したうえで慎重に進めることが重要です。
買手側に起こりうるリスク
M&Aの交渉が開始されると、対象企業からさまざまな情報が提出され、情報をもとにデューデリジェンスを実施します。
しかし、このデューデリジェンスが不十分だった場合、契約締結後に簿外債務が発覚したり、訴訟リスクが隠れていたりといった新たなリスクが発覚する可能性があります。
また、異なる企業風土や業務プロセスの統合(PMI)がうまくいかなかった場合は現場に混乱が起こるだけでなく、不満や不安を抱いた従業員が離職するリスクもあります。
売手側に起こりうるリスク
受託ソフトウェア開発を手掛ける企業には、さまざまな機密情報があります。
M&Aの交渉では保有する開発ノウハウや取引先情報なども開示しますが、これらの情報が漏洩してしまった場合、企業としての信用を失う可能性があります。
そのため、必ず NDA(秘密保持契約)を締結し、大切な情報資産が漏洩しないよう十分な対策をする必要があります。
受託ソフトウェア開発業界で行われたM&A事例
受託ソフトウェア開発業界では、これまで数多くのM&Aが行われてきました。
なかでも代表的なものを5つご紹介します。
株式会社マクアケによるM&A
アタラシイモノや体験の応援購入サービス「MAKUAKE」を中心とした各種支援サービスの運用や製品プロデュース支援事業などを手掛ける株式会社マクアケは、ソフトウェアサービスの提供やWebサイト・アプリケーション開発、コンサルティングなどを提供する株式会社ジジバリの全株式を取得、子会社化としたうえで吸収合併しました。
この子会社化により、マクアケは事業成長に必要な各種システムの強化やリスク分散を期待し、さらに生産性向上や管理コストの削減といった業務効率化を図るとしています。
参考:株式会社マクアケ|株式会社ジシバリの株式の取得(子会社化)及び吸収合併(簡易合併・略式合併)について
アイホンによるM&A
ドアホンやインターホン、ナースコールといった通信機器・音響機器や各種電気機器などの製造・販売を展開するアイホン株式会社は、2021年にシステム開発、システム運用管理を展開する株式会社ソフトウェア札幌の全株式を取得して子会社化しました。
アイホンは、この子会社化によりソフトウェア開発の強化を行い、多様化するニーズに応えるためにさらなる事業拡大を目指すとしています。
デジタル・インフォメーション・テクノロジーによるM&A
金融・医療を中心とした業務システム開発やシステム運用保守サービス、社債・半導体を主とした組み込み系システム開発や検証業務を手掛けるデジタル・インフォメーション・テクノロジー(DIT)株式会社は、2022年にITソリューションやコンサルティングサービスを行う株式会社シンプリズムを子会社化しました。
この子会社化により、DITは喫緊の課題となっていた人員強化によりしソース不足による機会損失の削減を図り、新プリズムは社員のキャリアアップに向けた環境の確保や新たな分野での技術獲得といったシナジー効果を見込んでいるとしています。
参考:デジタル・インフォメーション・テクノロジー株式会社|株式取得(子会社化)に関するお知らせ
クレスコによるM&A
2023年、IT戦略立案や開発・運用・保守など幅広いITサービスを展開する株式会社クレスコは、主に銀行や保険、流通、物流を対象にオフトウェア開発を行っている日本ソフトウェアデザイン株式会社の全発行済株式を取得、子会社化しました。
クレスコは、この子会社化によってより付加価値の高いサービスを実現し、総合力をはっきしてビジネスの拡大を図るとしています。
参考:株式会社クレスコ|日本ソフトウェアデザイン株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ
CIJによるM&A
大型コンピューターの基盤システムや大規模システム開発などを行ってきた株式会社CIJは、2023年に制御系、通信系などのソフトウェア開発などを手掛けてきた日伸ソフトウェア株式会社の全株式を取得、子会社化しました。
この子会社化によって、CIJは技術領域の拡大や技術者のスキルアップ、顧客層の拡大などによる両社のさらなる成長・発展を目指すとしています。
参考:株式会社CIJ|日伸ソフトウェア株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ
まとめ
デジタル化の成長によって、さまざまな業種においてそのニーズが高まり成長を続けている受託システム開発業界では、さまざまな背景からM&Aが活発化しています。
しかし、M&Aを成功させるためには求めるシナジー効果など目的を明確にしたうえで、M&Aに関する専門的知識やノウハウを駆使しながら慎重に行う必要があります。
M&Aによって受託システム開発事業の売却・買収を検討されている方は、ぜひお気軽にM&Aベストパートナーズへご相談ください。
受託システム開発業界に精通した専任アドバイザーが目指すゴールを丁寧にヒアリングさせていただき、M&Aを成功に導くためのサポートをさせていただきます。
