倉庫業のM&Aにおけるメリット・デメリットをそれぞれの立場から解説

著者
M&Aベストパートナーズ MABPマガジン編集部

物流事業における5大機能の一つ、保管業務を担う倉庫業では、物流業界の活発化に伴いM&Aが増加しています。

本記事では、倉庫業のM&Aによって得られるメリット・デメリットを、譲渡側と譲受側それぞれの立場から解説します。

あわせて、M&Aを成功させるためのポイントも解説するので、ぜひ参考にしてください。

この記事でわかること

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【立場別】M&Aで得られるメリット

はじめに、譲渡側と譲受側それぞれの立場から見たM&Aのメリットを解説します。

【譲渡側】M&Aのメリット

M&Aによって倉庫事業を譲渡する場合、次のようなメリットを得ることができます。

投資資金の回収・債務の返済

倉庫業を営むためには、物の保管・管理を行うための倉庫の用意、そして倉庫の維持・管理費用が必要です。

その他にも、フォークリフトといった業務に伴う設備や人材雇用、営業費など、さまざまな設備投資が必要となり、企業によっては融資を利用してまかなっているケースもあるでしょう。

M&Aによって事業を売却して資金を得ることができれば、これまで自社へ投資してきた資金の回収が可能です。

さらに、個人保証によって融資を受けている場合、得られた資金で債務を返済したり、事業とあわせて負債を譲渡したりすることができれば、個人保証からの解放というメリットを得ることができます。

後継者問題の解消

倉庫業に限らず、近年では多くの企業が少子高齢化に伴う後継者問題を抱えています。

帝国データバンクの調査によると、2024年に後継者問題が原因で倒産した件数は507件と、2年連続で500件を超える結果となっています。

この調査結果からもわかるように、いつまでも後継者が見つからない場合は事業の存続が危ぶまれますが、M&Aによって引き継ぐことができれば、事業を存続させ、守ってきた社名を残すことが可能です。

参考:帝国データバンク|後継者難倒産の動向調査(2024年度)

従業員の雇用維持

500件を超える後継者難倒産だけでなく、労働人口減少に伴う人手不足倒産も増加しており、2025年上半期だけでも202件が倒産しています。

企業が倒産した場合、長年一緒に頑張ってくれた従業員は仕事を失うことになりますが、M&Aによって他企業の傘下に入ることで会社を存続させ、従業員の雇用を守ることができます。

また、合併などのスキームを選択すれば、譲受企業側から人材を提供してもらい、人手不足を解消することも可能です。

参考:帝国データバンク|人手不足倒産の動向調査(2025年上半期)

【譲受側】M&Aのメリット

M&Aによって倉庫業を引き継ぐ譲受側が得られるメリットは、以下のようなことが挙げられます。

事業規模の拡大

倉庫事業をさらに広げる場合、新たな倉庫や人材の確保、新規顧客の獲得など、長い時間と労力、そして資金が必要です。

しかし、すでに倉庫業を営む会社を手に入れることができれば、既存倉庫や人材はもちろん、すでに関係を構築している顧客も引き継ぎ、事業規模の拡大がしやすくなります。

また、異業種から新たに倉庫事業へ参入するといった場合でも、既存事業を引き継ぐことでスムーズな事業参入を果たすことができます。

スピーディーな人材確保の実現

多くの企業にとって人手不足は深刻となっており、新規雇用ができたとしても雇入教育などに多くの時間を要します。

しかし、M&Aによって事業とともに人材を引き継ぐことにより、すでに倉庫事業の知識やノウハウを身につけた即戦力となりうる人材を雇用することが可能です。

【立場別】M&Aで生じるデメリットと注意点

多くのメリットがあるM&Aですが、デメリットも存在しており、メリット・デメリットそれぞれを把握したうえで検討することが重要です。

M&Aによって生じる可能性があるデメリットを解説します。

【譲渡側】生じるデメリットと注意点

事業を譲渡する側に生じる可能性のあるデメリットは以下のとおりです。

譲渡先がすぐに見つからない可能性がある

企業価値にどれだけ魅力があったとしても、タイミングが合わなかったり、譲渡条件がマッチしないといった理由からすぐに譲渡先が見つからないケースは少なくありません。

また、目的が曖昧なままスタートした場合も、考えにブレが生じて相手企業との交渉がうまくいかない可能性があります。

ステークホルダーからの信頼を損なう恐れがある

M&Aを実施する場合、従業員はもちろん、株主や既存顧客など、多くのステークホルダーへ影響を与えます。

そのため、説明や対応が不十分だと不安や不満がつのり、信頼を損なう恐れがあります。

ステークホルダーからの信頼を失った場合、企業価値低下によってM&A自体が不成立となるリスクも高まるでしょう。

【譲受側】生じるデメリットと注意点

譲受側となる企業に生じるデメリットには、以下のようなことが挙げられます。

簿外債務が発覚するリスクがある

M&Aのプロセスには、相手企業の状況を把握するためのデューデリジェンスが行われますが、帳簿では確認できない簿外債務(未払残業代や訴訟のリスクなど)や偶発債務が隠れている場合があります。

これらが確認できないままM&Aの最終契約を締結してしまうと、思わぬ支払いが発生したり、訴訟によって企業価値の低下を招くリスクが生じます。

統合プロセス(PMI)が失敗する可能性がある

M&A締結後の企業文化や業務プロセス、システム関連などの統合プロセス(PMI)は、M&Aによるシナジー効果を最大化させるための重要なプロセスです。

このPMIを成功させるためには、シナジー効果創出に向けて両社がしっかり歩み寄ることが必要なため、意見の食い違いや反発などが生じると失敗に終わる可能性があります。

倉庫業におけるM&Aを成功させるためのポイント

倉庫業のM&Aは、以下のポイントをおさえて実行に移すことで成功により近づくことができます。

早い段階でステークホルダーへの説明を行う

M&Aの実施が決まってから説明までの期間が長くなってしまった場合、不信感を抱かれる可能性があります。

また、最初の説明で理解が得られなかった場合、残された短い時間で説得ができず、関係性が悪化して自社から離れていく可能性もあるでしょう。

このような状況を招かないようにするためにも、M&Aの検討を始めたらできる限り早くステークホルダーへの説明を行い、理解を得たうえでプロセスを進めることが大切です。

入念なデューデリジェンスの実施

デューデリジェンスが足りていなかった場合、簿外債務などさまざまなリスクを背負うことになります。

M&Aによって起こりうるであろうリスクを最小限にするためにもデューデリジェンスは入念に行い、場合によっては弁護士や税理士といった専門家へ依頼をするようにしましょう。

統合プロセス(PMI)の事前計画と実行

異なる企業文化や業務プロセス、システムなどを統合するためには多くの時間を要します。

また、統合には人事評価制度なども含まれており、失敗すると優秀な人材が離職してしまうといったリスクも伴います。

そのため、M&Aの交渉が進んだら早い段階でPMIが必要な課題や起こりうるリスクを洗い出し、しっかりとスケジュールを組んだうえで計画的に行うことが重要です。

M&A仲介会社のサポートを受ける

M&Aを実施するためには多くのプロセスがあり、全プロセスを確実にクリアするためには専門的な知識やノウハウが必要です。

M&Aに精通したM&A仲介会社によって相手企業とのマッチングから交渉、契約締結に至るまでの一連のプロセスについてサポートを受けることにより、複雑な課題を乗り越えて、より成功率を高めることができます。

まとめ

抱えているさまざまな課題を解決するために増加傾向にある物流業界のM&Aの影響もあり、関連事業である倉庫業でもM&Aが活発化しています。

倉庫業におけるM&Aはさまざまなメリットがある一方でデメリットもあり、M&Aによるシナジー効果を最大化するためには専門的な知識やノウハウを駆使して各プロセスを確実にこなすことが重要です。

M&Aにおけるプロセスの課題を乗り越えて成功させ、求めるシナジー効果の創出を目指したいとお考えの方は、まずは私たちM&Aベストパートナーズへご相談ください。

これまで多くのM&Aを成功に導いてきた専任アドバイザーが、各プロセスのサポートを全力でさせていただきます。

著者

MABPマガジン編集部

M&Aベストパートナーズ

石橋 秀紀

ADVISOR

各業界に精通したアドバイザーが
多数在籍しております。

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